● 『19番目のカルテ』とは?
『19番目のカルテ』は、医療漫画として人気のある作品で、原作・富士屋カツヒト、作画・川下寛次によって週刊漫画雑誌「モーニング」に連載されていました。本作は、総合診療専門医という新しい医師像をリアルかつ感動的に描いた作品であり、2021年に単行本化もされています。
主人公の徳重晃(とくしげ・あきら)は、大学病院に勤務する総合診療専門医。彼は「何科に行っても原因がわからなかった」「複数の症状が同時に出ている」「検査では異常がない」など、現代医療が抱える“隙間”のような患者たちに向き合い、詳細な問診と幅広い知識、そして鋭い直観力で診断を下していきます。
● タイトルの「19番目」とは?
『19番目のカルテ』というタイトルの「19番目」とは、日本専門医機構における「総合診療専門医が19番目の基本領域」として認定されたことに由来しています。
かつて日本の専門医制度は、内科や外科、小児科など臓器別・年代別に細分化されていました。しかし、患者の高齢化、複雑化する症状、多疾患併存などの時代の流れに応じて、“全人的・総合的に診る医師”の必要性が高まり、2018年に正式に「総合診療専門医」が19番目の専門領域として制度化されました。
この歴史的背景が、漫画のタイトルにも強く反映されています。
● 『19番目のカルテ』が教えてくれること
本作は単なる医療ドラマにとどまらず、以下のような総合診療の本質を浮き彫りにしています:
- 患者の話を丁寧に聴く(問診力)
- 症状の背景にある生活・社会・心理的要因までを考える
- 「正解のない医療」の中で悩みながらも寄り添う姿勢
総合診療専門医とは、「病気」だけでなく、「人間そのもの」と向き合う医師であるということを、漫画というメディアを通じて直感的に理解できます。
● 総合診療専門医を知る“最初の一冊”としておすすめ
「総合診療って、具体的に何をするの?」「内科と何が違うの?」と疑問を持つ人にとって、『19番目のカルテ』は、その答えの一端をエンターテインメントとして、そして教育的にも教えてくれる秀作です。
医療従事者にとっても、総合診療医の可能性や困難を再認識できる作品であり、医療系学生や多職種スタッフの教育教材としても注目されています。
参考文献・関連資料(追加)
- 富士屋カツヒト(原作)、川下寛次(作画).『19番目のカルテ 徳重晃の問診』講談社.
- 日本専門医機構.https://www.japan-senmon-i.jp/
- 日本プライマリ・ケア連合学会.https://www.primarycare-japan.com/