1.低用量ピルとは?
低用量ピル(Low-dose oral contraceptive pills)とは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲスチンの2種類を少量含んだ経口薬で、主に避妊や月経トラブルの改善に使われます。正確には、「OC(経口避妊薬)」や「LEP(治療用低用量ピル)」として分類され、目的によって使い分けられています。
避妊だけでなく、生理痛の緩和、月経不順の改善、子宮内膜症の治療、ニキビの改善など、女性のQOL(生活の質)を高める目的でも使われています。
2.OCとLEPとは?その違いと使い分け
低用量ピルには「OC(経口避妊薬)」と「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)」という2つのカテゴリーがあります。
項目 | OC(経口避妊薬) | LEP(治療用ピル) |
---|---|---|
主な目的 | 避妊 | 月経困難症、子宮内膜症などの治療 |
保険適用 | 自由診療(自費) | 保険適用(診断が必要) |
主な使用者 | 避妊を希望する女性 | 治療を必要とする女性 |
主な商品名 | マーベロン、トリキュラー、アンジュ、ファボワールなど | ヤーズ、ヤーズフレックス、ルナベル、フリウェル、ジェミーナなど |
使い分けのポイント
- 避妊が目的 → OC(自由診療)
- 月経痛や内膜症の治療 → LEP(保険適用)
- 両方希望する場合は医師の判断で処方が分かれる
3.低用量ピルの適応(年齢・条件)
15歳以上で月経がある女性であれば、原則として服用が可能ですが、以下のような注意点があります。
適応となる例
- 避妊を希望する健康な女性
- 生理不順や過多月経に悩んでいる方
- 月経困難症やPMSが重い方
- 子宮内膜症の診断を受けた方
注意すべき年齢・リスク
- 35歳以上で喫煙している場合 → 血栓症リスクあり、原則禁忌
- 高血圧、肥満、片頭痛(特に前兆あり)などがある場合は医師と相談
服用できないケース(禁忌)
- 血栓症の既往がある
- コントロール不良の高血圧
- 心疾患、脳血管障害の既往
- 乳がん・子宮がんなどホルモン依存性疾患
4.低用量ピルの種類と服用方法
種類による分類
種類 | 特徴 |
一相性ピル | 全錠に同じホルモン量が含まれており、初心者におすすめ |
三相性ピル | 3段階でホルモン量が変化し、自然な月経サイクルに近い |
超低用量ピル | エストロゲン量が少なく、副作用軽減が期待される |
商品名の具体例
- 一相性:マーベロン、ファボワール(OC)
- 三相性:トリキュラー、アンジュ(OC)
- 超低用量:ヤーズ、ジェミーナ(LEP)
飲み方の基本
- 毎日1錠、同じ時間帯に服用
- 21錠タイプ → 21日服用+7日休薬
- 28錠タイプ → 偽薬含む28日連続服用(飲み忘れ防止)
飲み忘れた場合の対応
- 24時間以内:すぐに1錠服用し、以降は通常通り
- 48時間以上:避妊効果が低下するため、別途避妊を併用
5.服用開始時の注意点(婦人科受診の重要性)
初回は必ず婦人科を受診しましょう
安全に使用するためには、初回は医師による診察が必須です。
- 血圧測定や体重確認
- 血液検査(肝機能、凝固機能)
- 必要に応じて超音波検査や内診
オンライン診療の活用も可能
継続的に使用している方は、オンライン診療での処方継続も可能です。ただし、副作用の有無など定期的な確認は重要です。
6.低用量ピルの副作用
副作用 | 発生頻度 | 備考 |
吐き気・嘔吐 | 初期に多い(10〜30%) | 通常は数週間で軽快 |
頭痛・乳房の張り | 比較的よくみられる | 耐え難い場合は変更を検討 |
不正出血 | 10%前後 | 初期使用時に多く、3ヶ月以内に改善 |
血栓症(まれだが重篤) | 約1万人に3〜9人 | 喫煙者・肥満・高齢でリスク増 |
血栓症の初期症状に注意
- 足の腫れ・痛み、息切れ、胸痛など → すぐに医療機関を受診
7.OCとLEPの商品名一覧と違いまとめ
項目 | OC(避妊用) | LEP(治療用) |
主な商品名 | マーベロン、トリキュラー、アンジュ、シンフェーズ、ファボワールなど | ヤーズ、ヤーズフレックス、ルナベルLD/ULD、フリウェルLD/ULD、ジェミーナなど |
保険適用 | なし(自費) | あり(保険診療) |
目的 | 避妊 | 月経困難症、内膜症などの治療 |
処方条件 | 診察は必要だが比較的自由 | 医師による治療目的の診断が必須 |
価格の目安 | 月3,000円前後(自由診療) | 月1,000〜2,000円程度(保険3割負担) |
8.まとめ
- 低用量ピルは、女性の体と生活をサポートする医療選択肢
- 避妊を主目的とするOCと、治療目的で使うLEPの違いを理解しよう
- 初回は必ず婦人科を受診し、リスク評価を受けて安全に使用すること
参考文献
- 日本産科婦人科学会. OC・LEPガイドライン 2020年版
- 厚生労働省. 医薬品保険適用情報
- World Health Organization. Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, 5th Edition
- ACOG Practice Bulletin. Combined Hormonal Contraceptives
- Curtis KM et al. U.S. Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, MMWR 2016