1.プラセンタとは?
プラセンタ(placenta)とは、胎盤のことを指します。胎盤は妊娠中に母体と胎児をつなぐ重要な臓器で、成長因子、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、核酸、酵素など豊富な生理活性物質が含まれており、そのエキスが医療や美容に応用されています。
医療現場で使用される「プラセンタ注射」は、ヒトの胎盤から抽出した製剤(メルスモン・ラエンネック)で、特定の症状に対して保険適応があります。一方、市販のサプリメントや化粧品には、豚や馬由来のプラセンタが多く使われています。
2.プラセンタの保険適応
プラセンタ注射は、日本で以下のように保険診療の対象となっています。
製品名 | 主な適応疾患 | 保険適応の有無 |
---|---|---|
メルスモン | 更年期障害(女性) | あり |
ラエンネック | 慢性肝疾患(肝機能障害) | あり(美容目的は自由診療) |
※2023年には製造体制の見直しにより一時的に出荷制限がかかりましたが、現在は供給が再開されています。
3.プラセンタの効果|最新研究と臨床報告をもとに解説
(1)更年期障害の緩和(エビデンスあり)
メルスモンは、日本産婦人科医会の更年期障害診療ガイドラインにも記載されており、ホルモン補充療法が難しい女性への代替治療として評価されています。
参考文献:
日本産婦人科医会「更年期障害診療ガイドライン2021」
(2)肝機能の改善
ラエンネックは、慢性肝炎や脂肪肝など肝機能障害の補助療法として承認されており、ALTやASTの値が改善する症例もあります。
参考文献:
日本肝臓学会「肝疾患診療ガイドライン」
厚生労働省 PMDA 医薬品添付文書(ラエンネック)
(3)美肌・アンチエイジング(自由診療)
プラセンタに含まれる成長因子は、線維芽細胞の増殖を促進しコラーゲン産生を助けるとされ、シワやたるみの改善、美白効果が期待されています。ただし、美容領域での使用は自由診療であり、医学的根拠は限定的です。
(4)疲労回復・自律神経調整作用
ヒト試験において、倦怠感の改善や睡眠の質向上、自律神経バランスの調整などが報告されていますが、全ての人に効果があるわけではなく、効果には個人差があります。
4.プラセンタの副作用と注意点
プラセンタは比較的安全とされていますが、以下のような副作用が報告されています。
- 注射部位の痛み、赤み、腫れ
- 発疹、かゆみ、発熱などのアレルギー反応
- 月経周期の乱れ(女性)
- ごくまれに肝機能の一時的変化
さらに、ヒト胎盤由来製剤を使用した場合、感染症予防の観点から献血が一生禁止となります(日本赤十字社規定)。
5.どのような人にプラセンタは効果があるか?
有効とされる主な対象者
状態・症状 | プラセンタの適応例 |
---|---|
更年期障害 | メルスモンによる保険診療可能 |
肝機能障害 | ラエンネックにて保険適応 |
疲労感が強い | 自由診療で注射や点滴療法を選択可 |
肌トラブル(乾燥・くすみ) | 美容目的の自由診療 |
不眠・自律神経の乱れ | 医師の裁量により投与されることあり |
6.プラセンタは男性にも投与可能?
はい、男性にもプラセンタ注射は可能です。特にラエンネックは性別を問わず慢性肝疾患に使われており、また自由診療においては男性の疲労回復、肌質改善、男性更年期(LOH症候群)のサポートとしても活用されることがあります。
男性でもストレスや加齢による体調不良が続く場合、医師と相談のうえ試してみる選択肢の一つです。

7.まとめ|プラセンタは万能ではないが、選択肢として有効
プラセンタ療法は、更年期障害や肝機能障害の治療においてエビデンスがある治療法です。自由診療では、美容や疲労回復目的でも使用されており、適切な用途・頻度で行えば一定の満足度が得られます。
ただし、過度な期待は禁物であり、副作用や献血制限についての理解も必要です。継続的な投与を希望する場合は、信頼できる医療機関で定期的な評価を受けるようにしましょう。
参考文献
- 厚生労働省「医薬品添付文書(メルスモン・ラエンネック)」
- 日本産婦人科医会「更年期障害診療ガイドライン2021年版」
- 日本肝臓学会「肝機能障害の診療指針」
- PMDA:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 医薬品データベース
- 日本赤十字社「献血制限についてのQ&A」