【医師が解説】片頭痛とは?症状・原因・治療・食べ物・対処法まで徹底ガイド!

おとなの病気

はじめに|「ただの頭痛」じゃない?つらい片頭痛に悩む人へ

「ズキズキと頭が痛む」「光や音がつらい」「吐き気がして仕事も手につかない」——それ、もしかすると片頭痛かもしれません。

片頭痛は日本人の約840万人(成人の8.4%)に見られる慢性疾患で、特に20~40代の女性に多く発症します(日本頭痛学会, 2021)。この記事では、片頭痛の基礎知識から最新の治療法、悪化を防ぐ食生活の工夫まで、文献をもとにわかりやすく解説します。


1.片頭痛とは?|脳の過敏反応が引き起こす「神経血管性頭痛」

片頭痛は、脳の神経系と血管の異常な反応によって起こる一次性頭痛の一種です。

特徴

  • ズキズキする拍動性の痛み
  • 4〜72時間続く頭痛
  • 動作によって悪化
  • 吐き気や光・音に過敏
  • 10代~30代の女性に多い

疾患概念と疫学

片頭痛は一次性頭痛に分類され、脳や頭部に明らかな異常がないにも関わらず生じる痛みです。世界保健機関(WHO)は、片頭痛を「日常生活に深刻な影響を及ぼす慢性神経疾患のひとつ」としており、疾患負荷(disease burden)が高いことでも知られています。


2.片頭痛の症状|前兆あり?なし?それぞれの違いを知ろう

一般的な症状(前兆なし)

  • 頭の片側(または両側)が痛む
  • 拍動性の痛み
  • 吐き気・嘔吐
  • 光(光過敏)・音(音過敏)に過敏
  • 身体を動かすと痛みが悪化

前兆あり片頭痛(約20%に見られる)

片頭痛の前に現れる一時的な神経症状で「閃輝暗点」が代表的です。

  • 視界にキラキラした光が見える
  • 視野が欠ける
  • 言葉が出にくい
  • 手足がしびれる

前兆は通常5〜60分以内で消失し、その後に頭痛が出現します。


3.片頭痛の原因|なぜ片頭痛が起こるのか?

片頭痛の原因は完全には解明されていませんが、現在有力な仮説として以下が挙げられます。

神経血管仮説(Neurovascular hypothesis)

  • 三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経伝達物質が放出
  • これが脳血管の拡張炎症反応を引き起こす
  • 痛みとして知覚される

その他の要因

  • ホルモンの変動(特に女性ホルモンのエストロゲン)
  • 遺伝的要因(片頭痛患者の約半数に家族歴)
  • ストレス・疲労・睡眠不足
  • 天候や気圧の変化

4.片頭痛を悪化させる食べ物とは?

片頭痛の引き金となる食品は人によって異なりますが、以下のような食べ物が「トリガーフード」として知られています。

食品 誘因成分 説明
熟成チーズ チラミン 血管拡張を引き起こす
チョコレート フェニルエチルアミン 神経興奮を促す
赤ワイン タンニン・アルコール 血管反応を変化
加工肉(ハム・ベーコン) 亜硝酸塩 血管への影響
MSG(グルタミン酸ナトリウム) 調味料添加物 過敏な人で頭痛誘発
空腹・カフェイン中毒 低血糖・離脱症状 エネルギー不足が誘因

対策:頭痛日記の活用

食事・睡眠・ストレス・天候を記録しておくことで、自分のトリガーを特定できます。


5.片頭痛の検査・診断|CTやMRIは必要?

片頭痛は問診と診断基準によって診断されることがほとんどです。医師は以下のような症状から総合的に判断します。

国際頭痛分類(ICHD-3)による診断基準(抜粋)

  • 頭痛が4~72時間持続
  • 片側性、拍動性、中~重度の痛み
  • 身体活動で悪化
  • 吐き気や光・音過敏を伴う

画像検査が必要な場合

以下のような場合には、CTやMRIが行われることがあります。

  • 急激に発症した激しい頭痛(雷鳴頭痛)
  • 神経学的異常を伴う
  • 50歳以上で初発
  • がんや感染症の既往がある

6.片頭痛の治療法|生活習慣・薬・注射まで幅広い選択肢

① 急性期治療(発作を和らげる)

  • トリプタン製剤(スマトリプタンなど):片頭痛専用薬
  • NSAIDs(イブプロフェンなど):痛みを抑える
  • 制吐剤(メトクロプラミドなど):吐き気対策

重要なのはできるだけ早く服用すること。症状が重くなる前が勝負です。

② 予防療法(発作の回数を減らす)

  • β遮断薬(プロプラノロール)
  • 抗てんかん薬(トピラマート)
  • 抗うつ薬(アミトリプチリン)
  • CGRP関連抗体製剤(注射薬)
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片頭痛ガイドライン2021では、月4回以上の発作や治療抵抗性の患者に推奨。


7.片頭痛の対処法|日常生活でできること

発作時の緊急対処から、普段の予防まで、できることはたくさんあります。

発作時の対処

  • 静かな暗い部屋で安静
  • 冷却(頭・首元)
  • トリプタン薬の早期服用
  • 水分補給
  • 少量のカフェイン摂取(過剰は逆効果)
  • 予防のための生活習慣
  • 睡眠リズムを整える
  • ストレス管理(瞑想・ヨガ)
  • 軽度の有酸素運動
  • トリガーフードの回避
  • 頭痛日記の継続


8.まとめ|片頭痛は「正しく知って、正しく対処」する時代へ

片頭痛は「気のせい」でも「贅沢病」でもありません。れっきとした神経疾患であり、治療法や予防策は日々進化しています。正しい知識を持ち、医療機関への早めの相談が症状改善の第一歩です。


参考文献

  1. 日本頭痛学会. 頭痛の診療ガイドライン2021.
  2. Goadsby PJ, et al. Pathophysiology of migraine. Lancet Neurol. 2017;16(1):25–35.
  3. Diener HC, et al. The diagnosis and treatment of migraine. Dtsch Arztebl Int. 2019;116(21):365–376.
  4. Finocchi C, et al. Food as trigger and aggravating factor of migraine. Neurol Sci. 2012;33 Suppl 1:S77–S80.
  5. 日本神経学会. 神経疾患診療ガイドライン(片頭痛)
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