偽痛風とは?症状・原因・治療法・予防法まで徹底解説【痛風との違いも】

おとなの病気

1.偽痛風とは?

偽痛風(ぎつうふう)とは、関節内にピロリン酸カルシウム結晶が沈着し、炎症を引き起こす病気です。正式には「ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)」と呼ばれ、痛風と似たような関節炎症状を呈するため「偽(にせ)の痛風」と表現されます。

痛風は「尿酸結晶」が原因ですが、偽痛風は「ピロリン酸カルシウム」が原因であり、似て非なる病気です。中高年以降の方に多く、特に高齢者の膝関節痛の一因として注目されています。


2.偽痛風の症状

偽痛風の主な症状は、以下のように急激な関節の腫れと痛みです。

主な症状

  • 突然の関節の腫れと激痛
  • 関節の熱感、発赤
  • 発熱や悪寒を伴うこともある
  • 膝関節に最も多く起こる(他に手首・肩・肘・足首も)

症状の持続は数日から1〜2週間ほどで、自然に軽快する場合もあります。繰り返すことで関節の変形や機能障害を残すこともあります。

痛風との違い

特徴 痛風 偽痛風
原因結晶 尿酸結晶 ピロリン酸カルシウム結晶
好発年齢 30~50代の男性 60歳以上の男女
好発部位 足の親指の付け根 膝関節が最多
発作の持続 数日~1週間 1週間前後(痛風よりやや長い)

3.偽痛風の原因

偽痛風の原因は、関節内に**ピロリン酸カルシウム二水和物結晶(CPP結晶)**が蓄積されることです。結晶は関節軟骨内で形成され、何らかのきっかけで関節内に遊離し、炎症を引き起こします。

なぜピロリン酸カルシウムが蓄積されるのか?

明確な原因は解明されていない部分もありますが、以下のような因子が関与していると考えられています。

加齢

  • 関節軟骨の変性や老化により結晶が沈着しやすくなる

関節疾患

  • 変形性関節症などの慢性関節疾患があるとCPPDが起こりやすい

内分泌・代謝疾患

  • 副甲状腺機能亢進症
  • ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)
  • 低マグネシウム血症、低リン血症

遺伝的要因

  • 家族性のCPPD症例も報告されており、遺伝的素因も関与


4.どのような人が偽痛風になりやすいか?

以下のような特徴を持つ方が偽痛風を発症しやすいとされています。

高リスク群

  • 60歳以上の高齢者
  • 変形性関節症のある人
  • 関節リウマチなどの関節疾患のある人
  • 副甲状腺機能異常がある人
  • 糖尿病や腎機能障害のある人
  • カルシウムやリン代謝異常がある人

男女差はあまり見られませんが、高齢女性にやや多くみられる傾向があります。


5.偽痛風の検査・診断

偽痛風の診断には、以下のような検査が行われます。

① 関節液検査(結晶同定)

  • 発症部位から関節液を採取し、偏光顕微鏡でピロリン酸カルシウム結晶を確認
  • 偽痛風と確定診断するための最も重要な検査です

② 血液検査

  • 炎症反応(CRP、白血球数)やカルシウム・マグネシウム・副甲状腺ホルモンなどの測定

③ 画像検査

  • X線検査で関節軟骨や半月板の石灰化(線状沈着)を確認
  • 超音波やCTでも結晶の沈着や関節腫脹の評価が可能

痛風との鑑別が重要

  • 痛風か偽痛風かを見分けるには関節液での結晶検出がカギとなります


6.偽痛風の治療法

偽痛風の治療は、痛みや腫れを抑える対症療法が中心です。

急性期治療

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):第一選択。イブプロフェン、ロキソプロフェンなど
  • コルヒチン:痛風と同様に発作初期に使用することも
  • 副腎皮質ステロイド(内服または関節内注射):高齢者やNSAIDs禁忌の方に有効
  • 冷却や安静も有効です

慢性化・再発予防

  • 根本的な治療薬は現時点で存在せず、発作の予防には基礎疾患の管理が重要です
  • カルシウム代謝異常の是正(副甲状腺疾患、マグネシウム不足などの治療)

7.偽痛風の対処法(食事・生活習慣)

偽痛風の再発予防には、以下のような日常生活の見直しが役立ちます。

食事のポイント

  • カルシウムの過剰摂取は避ける
  • マグネシウム・ビタミンDなどの栄養素をバランス良く
  • 炎症を促進する糖質過多・脂質過多の食生活は見直す

生活習慣の改善

  • 関節に負担をかけすぎない(特に膝・股関節)
  • 肥満や運動不足の解消
  • 適度な運動で筋力維持と血流改善
  • 水分摂取を意識して関節内の老廃物の排出を促す

定期的な検診

  • 基礎疾患(副甲状腺、糖尿病、腎疾患など)のチェックと管理が大切


8.参考文献

  1. 日本リウマチ学会. 「ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)診療ガイドライン 2020」
  2. 日本内科学会編. 「内科学 第12版」. 南江堂, 2019年
  3. 中井淳. 「痛風・偽痛風」. 日本医師会雑誌 2020年 149巻
  4. Mayo Clinic. Pseudogout (Calcium pyrophosphate deposition disease)
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「関節痛の原因疾患」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

まとめ

偽痛風は、高齢者に多い関節炎のひとつであり、痛風と似た症状を呈しますが、原因となる結晶が異なります。膝の痛みや腫れが突然起きた場合は、痛風だけでなく偽痛風の可能性も考える必要があります。

確定診断のためには、医療機関での関節液検査が必要です。適切な治療を受けることで痛みを緩和し、再発の予防も可能です。生活習慣の見直しや基礎疾患の管理を通じて、再発リスクを減らしましょう。

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