痛風とは?原因・症状・治療・予防まで徹底解説【医師監修】

おとなの病気

1.痛風とは?

痛風(つうふう)は、体内で尿酸が過剰にたまることで関節に炎症を起こす病気です。特に足の親指の付け根に突然激しい痛みが起こるのが特徴で、「風が当たるだけでも痛い」と表現されるほどの強い痛みから「痛風」という名前がつけられました。

医学的には、「高尿酸血症」によって関節内に尿酸結晶が沈着し、免疫反応が起こることで発症します。中年以降の男性に多くみられ、生活習慣病とも深く関わりがあります。


2.痛風の症状

痛風の主な症状は以下の通りです。

急性関節炎(痛風発作)

  • 突然の激しい関節の痛み
  • 関節の腫れ・発赤・熱感
  • 特に夜間から明け方に発症しやすい
  • 最も多いのは足の親指の付け根(第一中足趾関節)ですが、足首や膝、手の指に起こることもあります。

慢性期の症状

  • 発作を繰り返すと、痛風結節(尿酸の塊)が皮下や関節にできる
  • 関節の変形や腎障害(尿路結石、腎不全)などの合併症が生じることも

痛風の発作は初回こそ1週間程度で自然に治まることもありますが、放置すると発作の頻度が増し、重症化していきます。


3.痛風の原因

痛風は、尿酸という老廃物が体内に過剰に蓄積されることで起こる病気です。尿酸はプリン体という物質の代謝産物で、通常は腎臓から尿として排出されますが、産生が過剰であったり排泄が不十分であると、血液中の尿酸値が高くなります。

尿酸値が7.0mg/dL以上になると「高尿酸血症」と診断され、これが続くことで痛風が引き起こされます。

主な原因は以下の通りです。

尿酸の産生増加

  • プリン体を多く含む食品(レバー、魚卵、アルコールなど)の過剰摂取
  • 激しい運動やストレスによる代謝亢進
  • 血液疾患やがんによる細胞崩壊

尿酸の排泄低下

  • 腎機能の低下
  • アルコール(特にビール)や果糖の過剰摂取
  • 利尿薬、サイアザイドなどの薬剤

4.どのような人が痛風になりやすいか?

痛風になりやすい人の特徴は、生活習慣と体質に大きく関係しています。

高リスク群

  • 30~50代の男性
  • 肥満・メタボリックシンドローム
  • アルコールを多く飲む人(特にビール)
  • プリン体の多い食品を好む人
  • 家族に痛風患者がいる(遺伝的要因)
  • ストレスが多い、運動不足の人
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病がある人

特に、食習慣や飲酒量が多い男性会社員層が最も多くの患者を占めています。最近では若年層や女性の発症も増加傾向にあり、注意が必要です。


5.痛風の検査・診断

痛風の診断には、以下の方法が用いられます。

血液検査

  • 尿酸値:7.0mg/dL以上で高尿酸血症と診断
  • 白血球数や炎症反応(CRP、ESR)も併せて確認

関節液の検査

  • 関節腫脹がある場合に、関節液を採取し、尿酸結晶の確認を行うことで確定診断できます。

画像検査

  • X線で関節破壊の有無を評価
  • 超音波検査やCTで結晶沈着を確認することもあります

※発作時には尿酸値が一時的に正常化する場合があるため、発作のない時期の尿酸値測定が重要です。


6.痛風の治療法

治療は、発作時の急性期治療と、再発予防のための長期管理の2段階に分けられます。

急性期治療

痛みと炎症を抑えることが目的です。

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):インドメタシン、ナプロキセンなど
  • コルヒチン:発作初期に効果的
  • 副腎皮質ステロイド:重症例やNSAIDsが使えない人に使用

長期管理(再発予防)

高尿酸血症の改善と再発防止を目指します。

  • 尿酸生成抑制薬:アロプリノール、フェブキソスタット
  • 尿酸排泄促進薬:ベンズブロマロン、プロベネシド
  • 生活習慣の改善:食事・体重管理・禁酒などが重要

※薬の選択や投与量は、腎機能や他の疾患に応じて医師が判断します。


7.痛風の対処法(食事や生活習慣など)

日常生活の見直しは、痛風の予防・再発防止に不可欠です。以下のポイントを意識しましょう。

食事の工夫

  • プリン体の多い食品を控える(レバー、白子、魚卵、干物など)
  • アルコールを減らす(ビールは特に注意)
  • 果糖を多く含む清涼飲料水を控える
  • 野菜、海藻、乳製品などアルカリ性食品を積極的に摂取
  • 水分を十分に取る(1日2リットルを目安に)

🔝 プリン体含有量が多い食品・飲料ランキング(上位20)

順位 食品・飲料名 プリン体量(mg/100g)
1 鶏レバー(生) 約312.2 mg
2 イサキ白子(生) 約305.7 mg
3 カツオ節 約493.3 mg
4 アンコウの肝(あん肝) 約399.2 mg
5 豚レバー(生) 約284.8 mg
6 牛レバー(生) 約219.8 mg
7 サンマ干物(焼き) 約208.3 mg
8 マイワシ干物 約305.7 mg
9 干し椎茸(乾燥) 約379.5 mg
10 煮干し 約746.1 mg
11 鰹(生) 約210.4 mg
12 サバ(缶詰) 約150~200 mg
13 干しエビ 約273.2 mg
14 イワシ(生) 約210.4 mg
15 サケの白子 約180.9 mg
16 ビール(市販) 約3.3~7.2 mg
17 発泡酒 約6~12 mg
18 日本酒 約1.2~1.8 mg
19 ウニ(生) 約137.3 mg
20 タラコ 約120 mg
  • 煮干しやカツオ節、干し椎茸、干しエビなどの乾物類は、水分が少ないため含有量が非常に高くなります。
  • レバー類(鶏・豚・牛)や魚の白子、アンキモなどの内臓系もプリン体が多く含まれます。
  • ビールや発泡酒などのアルコール飲料にも少量ですがプリン体が含まれ、多量摂取は尿酸値を上げる要因となります。
  • なお、「日本酒」や「焼酎」「ウイスキー」などの蒸留酒はプリン体はほぼゼロですが、代謝の関係で尿酸値を上げる作用があります。

生活習慣の改善

  • 適度な有酸素運動を取り入れる
  • 肥満を解消し、体重を適正に保つ
  • ストレスをため込まない
  • 規則正しい生活を送る
  • 定期的に尿酸値をチェック

8.参考文献

  1. 日本痛風・核酸代謝学会. 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」. 診断と治療社, 2022年
  2. 日本内科学会編. 「内科学 第12版」. 南江堂, 2019年
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「痛風」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-021.html
  4. 日本腎臓学会. 「腎機能と薬物療法」.
  5. 日本医師会. 「生活習慣病と痛風の予防」

まとめ

痛風は一度発症すると非常に強い痛みを伴い、生活の質(QOL)を著しく下げる病気です。しかし、早期の診断と治療、そして日常生活の見直しによりコントロール可能です。特に、食事や飲酒、運動習慣の改善は、薬物治療と同じくらい重要です。

「たかが痛風」と甘く見ず、しっかりと予防・対策をして健康的な生活を目指しましょう。

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