流行性耳下腺炎(おたふく風邪)完全ガイド:症状・原因・予防法まで徹底解説

おとなの病気

1.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)とは?

流行性耳下腺炎、通称「おたふく風邪」は、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症です。主に小児を中心に発症しますが、思春期や成人でもかかることがあり、重症化しやすいのが特徴です。

名前の由来は、耳の下(耳下腺)が腫れて顔が「おたふく」のように見えることから。発症すると発熱とともに耳下腺や顎下腺の腫れと痛みが見られます。

日本ではワクチンの定期接種には含まれておらず、**任意接種(自費)**で行われています。そのため、今でも流行が見られる感染症の一つです。


2.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の症状

おたふく風邪の典型的な症状は以下の通りです。

  • 発熱(38〜39℃程度)
  • 耳下腺の腫れと痛み(片側または両側)
  • 顎下腺、舌下腺の腫れ
  • 嚥下や咀嚼時の痛み
  • 頭痛、倦怠感、筋肉痛

潜伏期間

感染後、約16~18日(12~25日)の潜伏期間を経て症状が現れます。

無症状のケースも

感染しても症状が出ない(不顕性感染)場合もあり、本人が気づかないうちに他人に感染させることがあります。


3.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因

原因はムンプスウイルス(Mumps virus)で、飛沫感染・接触感染によって人から人へ広がります。

主な感染経路:

  • 咳やくしゃみの飛沫
  • ウイルスがついた手で口や鼻に触れる
  • おもちゃや食器の共有

感染力は発症1~2日前から腫れが引くまでの約9日間とされています。

流行時期:

一年を通じて発症がありますが、春から初夏にかけて流行しやすい傾向があります。


6.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の診断と治療法

診断

主に臨床症状と診察所見で診断されます。特に耳下腺の腫脹は診断の大きな手がかりになります。

確定診断が必要な場合には以下の検査が行われます。

  • ムンプスウイルス抗体検査(IgM抗体)
  • 咽頭ぬぐい液でのウイルス検出(PCR法)

治療法

おたふく風邪には特効薬はなく、対症療法が中心となります。

  • 解熱薬や鎮痛薬の使用(アセトアミノフェンなど)
  • 安静と水分補給
  • 食事は柔らかく刺激の少ないものを

使用注意:アスピリン系薬剤は使用禁止

小児に対してアスピリンを使用すると、ライ症候群のリスクがあるため避けましょう。


7.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の合併症と予後

多くの場合は1週間程度で自然に回復しますが、以下のような合併症があるため注意が必要です。

主な合併症

  • 無菌性髄膜炎(5~10%):発熱、頭痛、嘔吐など
  • 難聴(まれだが重篤):片側性が多い、治りにくい
  • 精巣炎・卵巣炎:特に思春期以降の男性に多い(精巣炎→不妊の原因になることも)
  • 膵炎:腹痛、嘔吐、発熱を伴う
  • 流産:妊娠初期の女性が感染した場合

予後

ほとんどのケースでは合併症なく回復しますが、難聴や不妊などの後遺症が残る可能性もあるため注意が必要です。


8.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)で注意すること(日常生活など)

日常生活の注意点

  • 発熱や腫れがある期間は自宅で安静に
  • 痛みがある時は冷やすと楽になることも
  • 柔らかく、酸味が少ない食事(スープ、プリンなど)を選ぶ
  • 十分な水分摂取

感染拡大を防ぐために

  • 発症後は登園・登校を控える
  • 兄弟・家族への感染にも注意
  • 手洗い・うがいの徹底
  • 食器やタオルの共用を避ける

9.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)とワクチン

ワクチンの種類と効果

おたふく風邪に対する**ムンプスワクチン(生ワクチン)**は、1回の接種で約80%、2回で約90%以上の発症予防効果があります。

日本における接種状況

現在、日本では任意接種の扱いであり、定期接種には含まれていません。そのため、2回の接種を受けていない子どもが多いのが現状です。

接種時期の目安(任意)

  • 1回目:1歳を過ぎたら
  • 2回目:就学前(5~6歳)

接種のメリット

  • 発症予防
  • 合併症(難聴・精巣炎など)のリスクを大幅に減らせる

9.流行性耳下腺炎(おたふく風邪)と登校

文部科学省の学校保健安全法によれば、

**「耳下腺などの腫れが発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」**は出席停止の対象です。

つまり、腫れが始まってから最低でも5日間は登園・登校禁止となります。医師による登校許可証の提出を求める場合もあります。

注意点:

  • 腫れが治まっても元気がない場合は登校を控えましょう
  • 症状がぶり返すこともあるため、完全回復を待つのが大切です

9.参考文献

  1. 厚生労働省 感染症・予防接種ナビ:https://www.mhlw.go.jp/
  2. 国立感染症研究所「流行性耳下腺炎(ムンプス)とは」https://www.niid.go.jp/
  3. 日本小児科学会「予防接種スケジュール」https://www.jpeds.or.jp/
  4. 学校保健安全法施行規則(出席停止基準)
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