むずむず足症候群(レストレスレッグス症候群)とは?夜眠れない足の不快感の正体

おとなの病気

1.むずむず足症候群とは?

「むずむず足症候群(Restless Legs Syndrome, RLS)」は、主に夜間や安静時に足に不快な感覚が生じ、それを解消するために足を動かしたくなる衝動が起こる神経疾患です。日本語では「レストレスレッグス症候群」や「下肢静止不能症候群」とも呼ばれます。

患者は「足がむずむずする」「虫が這う感じ」「痛がゆい」「火照る」などと表現し、症状は夜間に強くなり、睡眠障害を引き起こすこともあります。軽症でも日常生活に支障をきたす可能性があり、適切な診断と対処が重要です。

2.むずむず足症候群の症状

RLSの症状は個人差がありますが、次の4つの特徴が国際的診断基準として用いられています(Allen et al., 2003):

  1. 足を動かしたいという強い欲求(多くは不快感に伴う)
  2. 安静時に症状が悪化
  3. 足を動かすことで症状が軽減
  4. 夕方から夜間にかけて症状が悪化

加えて、「周期性四肢運動障害(PLMS)」という睡眠中に脚がピクピク動く症状を伴うことが多く、慢性的な睡眠不足や疲労の原因となります。

3.むずむず足症候群の原因・遺伝子

原因の多くは「突発性」または「特発性」

RLSは原因不明の「原発性」と、何らかの疾患や薬剤によって引き起こされる「続発性」に分類されます。

原発性RLS

  • 遺伝的背景があり、家族歴がある場合が多い(遺伝率は50%程度とされる)。
  • ドパミン代謝異常が関与していると考えられており、脳内のドパミン神経の機能不全が症状を引き起こす。

続発性RLS

  • 鉄欠乏性貧血
  • 妊娠(特に妊娠後期)
  • 慢性腎不全(透析患者に多い)
  • パーキンソン病などの神経疾患
  • 一部の向精神薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬などの副作用

関与が疑われている遺伝子

遺伝的要因として、BTBD9遺伝子MEIS1遺伝子MAP2K5遺伝子などの関与が報告されています(Winkelmann et al., 2007)。これらは神経発達やドパミン調節に関わる遺伝子です。

6.むずむず足症候群の検査と診断

RLSは問診が中心の診断です。特徴的な症状と発症の時間帯、既往歴や服薬歴などを確認します。

補助的検査として:

  • 血液検査(特にフェリチン値鉄分の確認)
  • 睡眠ポリグラフ(周期性四肢運動の確認)
  • 神経学的検査(他疾患との鑑別のため)

重要なのは、糖尿病性末梢神経障害静脈瘤下肢の筋肉疲労など他の疾患との鑑別です。

7.むずむず足症候群の治療

治療は症状の程度と背景因子によって異なります。まずは原因の検索と除去が基本です。

1)生活習慣の見直し(軽症例)

  • カフェイン、アルコール、喫煙を避ける
  • 就寝前の軽い運動やストレッチ
  • 定期的な生活リズムの維持

2)鉄欠乏の補正

血清フェリチンが50 ng/mL未満であれば鉄剤の内服を検討します。

3)薬物療法

中等度〜重症例では薬物治療が行われます:

  • ドパミン作動薬(プラミペキソール、ロチゴチンなど)
  • 抗てんかん薬(ガバペンチン、プレガバリン)
  • ベンゾジアゼピン系薬(クロナゼパムなど、補助的使用)
  • オピオイド系薬剤(重症例のみに使用)

注意すべき副作用:

長期的なドパミン作動薬の使用により「オーグメンテーション(増悪)」が起こることがあります。これは、薬を使用することで症状がむしろ悪化してしまう現象で、定期的な再評価が必要です。

8.むずむず足症候群の日常生活での対応

むずむず足症候群と共に生きるには、薬物療法と生活習慣の工夫が重要です。以下の対処法が効果的とされています。

日常生活でできる工夫

  • 規則正しい睡眠習慣:毎日同じ時間に寝起きする
  • 入浴や足のマッサージ:就寝前に行うと症状が軽くなることがある
  • 軽いストレッチ:寝る前のヨガやストレッチも効果的
  • カフェイン制限:午後以降は控える
  • デバイスの使用制限:ブルーライトは脳を覚醒させやすく、症状を悪化させる可能性あり

周囲の理解も重要

「見た目にはわかりづらい」RLSは、家族や職場の理解が得られにくいことがあります。病気であること、症状が生活に支障をきたすことを周囲に伝えることも大切です。

9.参考文献

  1. Allen RP, Picchietti DL, Garcia-Borreguero D, et al. (2003). Restless legs syndrome: diagnostic criteria, special considerations, and epidemiology. Sleep Medicine, 4(2):101–119.
  2. Winkelmann J, Schormair B, Lichtner P, et al. (2007). Genome-wide association study of restless legs syndrome identifies common variants in BTBD9. Nature Genetics, 39(8):1000–1006.
  3. Trenkwalder C, Allen R, Högl B, et al. (2016). Comorbidities, treatment, and pathophysiology in restless legs syndrome. The Lancet Neurology, 15(11):1097–1112.
  4. 日本神経学会. むずむず脚症候群診療ガイドライン(2012)
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