デング熱とは?症状・原因・治療・海外渡航時の注意点まで徹底解説【最新版】

おとなの病気

1.デング熱とは?

デング熱は、蚊を媒介として広がるウイルス感染症の一つです。主に熱帯・亜熱帯地域で流行しており、世界では年間約4億人が感染すると推定されています(WHO, 2024)。特に日本でも、海外旅行者や帰国者を中心に報告される例が増えており、注意が必要です。

デング熱の原因となるのは「デングウイルス(Dengue virus)」で、フラビウイルス科に属し、4つの血清型(DENV-1〜DENV-4)があります。一度感染しても他の型に再感染する可能性があり、再感染時の方が重症化しやすいとされています。

2.デング熱の症状

デング熱は、感染後3~7日程度の潜伏期間を経て、急激に以下のような症状が現れます。

主な症状

  • 高熱(39~40℃以上)
  • 激しい頭痛(特に眼の奥の痛み)
  • 筋肉痛・関節痛(「骨が砕けるような痛み」と形容される)
  • 発疹(発熱後2~5日目に現れることが多い)
  • 悪心・嘔吐・倦怠感

重症化のリスク:デング出血熱/デングショック症候群

一部の人では、血小板減少や血管透過性の亢進によって出血傾向やショック症状をきたすことがあります。これらを総称して「デング出血熱」「デングショック症候群(DSS)」と呼び、命に関わることもあるため、特に再感染時や小児では要注意です。

3.デング熱の原因

デング熱の原因は、前述の通りデングウイルスの感染です。このウイルスを媒介する主な蚊は、以下の2種類です。

  • ネッタイシマカ(Aedes aegypti)
  • ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)

蚊に刺されることで感染

感染者の血液を吸った蚊が、次に健康な人を刺すことでウイルスが広がります。人から人への直接感染はありません。

日本での感染状況

日本国内では、ヒトスジシマカが都市部でも見られることから、夏季に国内感染が報告されることもあります。2014年には代々木公園での集団感染が話題となりました。

4.デング熱の検査と診断

デング熱の診断は、以下のような検査を組み合わせて行われます。

血液検査

  • 白血球減少・血小板減少:ウイルス感染を示唆
  • 肝機能異常(AST/ALT上昇):重症例で高値になることがある

特異的検査

  • NS1抗原検査:発症早期(1~5日目)に有用
  • RT-PCR:ウイルスの遺伝子を検出
  • IgM/IgG抗体検査:発症後数日以降に陽性

診断には発熱時の渡航歴や、流行地域への滞在歴が非常に重要です。医療機関受診時には、必ず伝えるようにしましょう。

5.デング熱の治療

特効薬はない

現在のところ、デングウイルスに対する特効薬は存在しません。そのため、対症療法が中心となります。

対症療法の内容

  • 解熱剤(アセトアミノフェンが第一選択)
  • 水分補給(脱水・ショック予防のため)
  • 安静

アスピリンやNSAIDsは禁忌:出血傾向を助長する可能性があるため、使用は避けます。

入院の目安

  • 持続する吐き気・腹痛
  • 出血傾向(鼻血、皮下出血など)
  • 血小板数の著しい減少

重症化の兆候があれば、迅速な医療介入が必要です。

6.デング熱の患者分布(海外)

デング熱は、以下の地域で特に流行しています。

地域 発生状況
東南アジア タイ、インドネシア、フィリピンなど常在
南アジア インド、バングラデシュなど
南米・中南米 ブラジル、ペルー、コロンビアなど
アフリカ中部 コンゴ民主共和国、ケニアなど
カリブ海諸国 ドミニカ共和国、キューバなど

特に2023年から2024年にかけては、南米ブラジルでの爆発的流行が報告され、国際的な公衆衛生上の懸念となりました(PAHO, 2024)。

7.海外渡航時の注意・対応

デング熱予防の鍵は、蚊に刺されないことです。以下のポイントを意識して行動しましょう。

渡航前の準備

  • 渡航先の感染状況を確認(外務省・厚生労働省の感染症情報を参照)
  • 蚊よけスプレー、長袖・長ズボン、蚊帳の準備

渡航中の対策

  • 早朝・夕方の蚊が活発な時間帯は特に注意
  • 屋内でも蚊取り線香や蚊取り器具を使用
  • 飲食店やホテルでもスプレーや防蚊剤の利用を

ワクチンについて

日本では現在、デング熱ワクチンは認可されていませんが、フィリピンやブラジルなど一部の国では「Dengvaxia」などのワクチンが使用されています。ただし、既感染者に限定されるなどの制限があり、広く推奨されているわけではありません。

8.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

以下のような症状が出現した場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 高熱と全身倦怠感、関節痛
  • 発熱後の発疹
  • 渡航歴がある発熱(特に流行国)
  • 出血傾向(歯茎出血、鼻血など)

また、「帰国後の発熱」はマラリアやチフスなど他の熱帯感染症の可能性もあるため、熱帯病専門の外来や感染症内科を受診するのが望ましいです。


9.参考文献

  1. WHO. Dengue and severe dengue. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/dengue-and-severe-dengue (2024年5月閲覧)
  2. 厚生労働省検疫所 FORTH「デング熱」https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name17.html
  3. PAHO/WHO. Epidemiological Update: Dengue in the Americas. May 2024.
  4. Shepard DS, et al. “Economic impact of dengue illness in the Americas.” Am J Trop Med Hyg. 2011.
  5. Halstead SB. “Dengue vaccine development: a 75% solution?” Lancet. 2012.
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