【医師監修】ロタウイルス感染症とは?症状・原因・検査・治療まで徹底解説

こどもの病気

1.ロタウイルス感染症とは?

ロタウイルス感染症は、主に乳幼児に多くみられる急性胃腸炎の一つで、特に5歳以下の子どもにとって重症化しやすい感染症です。感染力が非常に強く、集団保育の現場や家庭内で爆発的に感染が広がることもあります。

ロタウイルスは糞口感染(便から口への感染)が主な経路であり、汚染された手指やおもちゃ、ドアノブなどを介して簡単に感染します。冬から春先(12月〜5月ごろ)に流行のピークを迎え、年間で何万人もの乳幼児が入院することもあります。

ロタウイルスとノロウイルスの違い

項目 ロタウイルス ノロウイルス
主な発症時期 冬~春(12月〜5月) 冬(11月〜3月)
主な対象 乳幼児 全年齢
症状の重さ 重度 中等度
主な感染経路 糞口感染 飛沫・接触感染

2.ロタウイルス感染症の症状

ロタウイルス感染症の主な症状は以下の通りです。

  • 激しい下痢(水様便)
  • 嘔吐(数日続くことも)
  • 発熱(38℃程度)
  • 腹痛
  • 全身のだるさ・食欲不振
  • 脱水症状(尿量減少、口渇、皮膚の弾力低下など)

特に脱水症状は重篤化の原因になり、乳児では命に関わることもあります。したがって、早期の水分補給や医療機関への受診が重要です。

脱水症の危険サイン

  • おしっこが半日以上出ていない
  • 泣いても涙が出ない
  • 口が乾燥している
  • ぐったりしている・意識がぼんやり

3.ロタウイルス感染症の原因

ロタウイルスはレオウイルス科のウイルスで、A群・B群・C群に分けられますが、主にA群ロタウイルスが乳幼児の感染症の原因です。

感染経路の大半は次の2つです。

  • 糞口感染:感染者の便に触れた手で口に触れるなど
  • 接触感染:汚染された玩具、家具、タオルなどに触れる

また、ウイルスは環境中で数日間生存するため、家庭内や保育園での二次感染が非常に起こりやすいです。

感染力が強い理由

  • 10〜100個程度のウイルス粒子でも発症する
  • 乾燥環境でもウイルスは数日間生存可能
  • 消毒に強い(アルコールでは不十分)

対策としては塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)の使用が推奨されます。

6.ロタウイルス感染症の検査と診断

ロタウイルス感染症は以下の方法で診断されます。

1. 症状と診察による診断

典型的な症状が出ている場合、医師の問診と診察によっておおよその診断が可能です。

2. 便検査

便中のウイルス抗原検出キット(イムノクロマト法)により、迅速にロタウイルス感染かどうかを判定できます。保険適用外の施設もあるため、事前確認が必要です。

3. PCR検査(研究・集団感染時)

大規模な集団感染や疫学調査ではロタウイルスPCR検査も用いられますが、日常の診療ではあまり行われません。

7.ロタウイルス感染症の治療

1. 対症療法が基本

ロタウイルスに対する特効薬は存在しません。したがって、以下のような対症療法が中心です。

  • 水分補給(経口補水液が推奨)
  • 整腸剤の投与
  • 解熱剤(必要時)
  • 点滴(脱水が進んだ場合)

特に重要なのが脱水症状への対処で、飲める場合は経口補水液(OS-1など)を少量ずつ頻回に与えることが推奨されます。

2. 抗菌薬・下痢止めの使用について

ロタウイルスはウイルスなので抗菌薬は無効です。また、下痢止めの使用はウイルスの排出を妨げる可能性があるため原則として避けます

8.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

以下のような場合は早めに医療機関を受診しましょう。

  • 嘔吐や下痢が続いて水分が摂れない
  • ぐったりして元気がない
  • 高熱が3日以上続く
  • 便に血が混じっている
  • けいれんを起こした
  • 生後6か月未満の乳児が発症した

特に乳幼児は脱水症状を早く進行させるため、少しでも異変を感じたら小児科を受診してください。

9.ロタウイルスワクチンで重症化を予防できる

ロタウイルスには予防接種(任意接種→定期接種化)が有効です。

項目 ロタリックス ロタテック
1価ワクチン 5価ワクチン
接種回数 2回(生後6週〜24週) 3回(生後6週〜32週)
接種方法 経口投与 経口投与
重症化予防効果 約85〜90%

2020年から定期接種化されたことで、入院患者数の減少が報告されており、早期の接種が極めて重要です(国立感染症研究所, 2021)。

参考文献

  1. 国立感染症研究所「ロタウイルス感染症とは」https://www.niid.go.jp/
  2. 厚生労働省「ロタウイルスワクチンに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/
  3. 日本小児科学会「予防接種スケジュール」https://www.jpeds.or.jp/
  4. Tate JE et al. “Global impact of rotavirus vaccines.” Pediatr Infect Dis J. 2021.
  5. Dennehy PH. “Rotavirus infection: A disease of the past?” Clin Microbiol Rev. 2020.
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