【医師が解説】膠原病とは?症状・種類・受診の目安をわかりやすく紹介

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1.膠原病とは?

膠原病(こうげんびょう)とは、体の免疫システムが誤って自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の総称です。具体的には、関節や皮膚、血管、内臓などに炎症が起こることが特徴です。

本来、免疫はウイルスや細菌などの外敵から体を守る役割を担っています。しかし膠原病では、この免疫が暴走して、自分自身の組織を「異物」として攻撃してしまうのです。

代表的な特徴:

  • 慢性的な炎症が続く
  • 関節痛や発熱、全身倦怠感など、はっきりしない症状が続く
  • 皮膚・関節・内臓などさまざまな部位に症状が現れる

膠原病という名前は、「コラーゲン(膠原=こうげん)」という体内の結合組織に由来していますが、現在ではより広範囲な自己免疫疾患も含めて使われるようになっています。


2.膠原病の種類・疾患

膠原病と呼ばれる病気は、実際にはいくつかの疾患に分類されます。以下は代表的な病気の一覧です。

主な膠原病の種類(代表疾患)

疾患名 特徴的な症状
全身性エリテマトーデス(SLE) 発熱、関節痛、顔の紅斑(蝶形紅斑)、腎障害
関節リウマチ(RA) 手や足の関節の腫れと痛み、こわばり
強皮症(全身性硬化症) 皮膚が硬くなる、手指の冷感(レイノー現象)
多発性筋炎・皮膚筋炎 筋力低下、筋肉痛、皮膚の発疹
シェーグレン症候群 口や目の乾き、関節痛、疲れやすさ
混合性結合組織病(MCTD) SLEや強皮症、筋炎などが混在する症状
血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎など) 発熱、筋肉痛、皮膚の紫斑、腎障害

これらはすべて、「自己免疫の異常」が原因で体のあちこちに炎症が起こる病気です。いくつかの疾患では、発症初期に明確な診断が難しいこともあります。


3.どんなときに膠原病を疑うか?

膠原病の診断は難しいこともあり、症状があちこちに出たり、他の病気と似た症状が現れることも少なくありません。以下のような体の不調が長期間続く場合は、膠原病の可能性を考える必要があります。

こんな症状があるときは要注意!

  • 原因不明の発熱が何日も続いている
  • 関節の腫れや痛みが何カ所もある
  • 朝に関節がこわばる(動かしづらい)
  • 口や目が乾く(ドライマウス・ドライアイ)
  • 皮膚に赤い発疹(特に顔に蝶のような紅斑)
  • レイノー現象(手足の先が冷えて白→紫→赤と変色する)
  • 極端な疲労感や脱力感
  • 原因不明の筋肉痛や筋力低下
  • 血液検査で異常(白血球・赤血球の減少、自己抗体陽性など)

膠原病の症状は、「単なる疲れ」や「更年期」「風邪」などと間違われやすいため、長引く体調不良は見過ごさないことが重要です。


4.膠原病を疑ったら

もし膠原病を疑うような症状がある場合は、まず内科リウマチ科を受診しましょう。日本ではリウマチや膠原病を専門とする「膠原病内科」や「免疫内科」がある医療機関もあります。

診断の流れ

  1. 問診・診察
     全身の症状の経過を詳しく確認します。
  2. 血液検査
     自己抗体(抗核抗体、抗ds-DNA抗体、抗CCP抗体など)の有無をチェックします。
  3. 画像検査(レントゲン・CT・MRI)
     関節や内臓の状態を確認します。
  4. 必要に応じて生検や特殊検査
     筋肉や皮膚の組織を採取し、炎症の有無を調べます。

診断には複数の検査結果の総合判断が必要で、診断確定まで時間がかかることもあります。

早期発見・早期治療が重要

膠原病は慢性疾患であり、放置すると関節や内臓に深刻なダメージを与えることもあります。しかし、早期に治療を開始することで進行を抑え、日常生活を維持できるケースが多くあります。


5.膠原病の治療について

膠原病の治療は病気の種類や重症度によって異なりますが、主に次のような治療が行われます。

主な治療薬

  • ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を抑える中心的な治療薬
  • 免疫抑制薬:免疫の異常をコントロールする(メトトレキサート、アザチオプリンなど)
  • 生物学的製剤:関節リウマチなどに用いられる最新の抗体医薬
  • 抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキンなど):SLEなどで使用

生活上の注意点

  • 規則正しい生活とバランスの良い食事
  • ストレスを避ける
  • 紫外線を避ける(SLEでは日光で悪化する場合あり)
  • 感染症予防(免疫を抑える治療を行うため)

6.膠原病と間違われやすい病気とは?似ている症状と見分け方を解説

病名 主な症状 膠原病との違い 見分け方のポイント
更年期障害 疲労感、関節のこわばり、ほてり、気分の落ち込み ホルモンの変化による症状で、自己抗体は陰性 女性ホルモン検査でFSHやエストロゲン値を確認
慢性疲労症候群(CFS) 強い倦怠感、集中力低下、筋痛、睡眠障害 免疫異常ではあるが自己抗体は陽性にならない 血液検査に異常が出にくく、除外診断が必要
線維筋痛症 全身の筋肉・関節の痛み、朝のこわばり、睡眠障害 関節炎はなく、自己抗体や炎症反応は陰性 痛点の圧痛と他疾患の除外で診断
ウイルス感染症(風邪、EBウイルスなど) 発熱、関節痛、一過性の全身症状 通常は数日で回復し慢性化しない 経過観察とPCRや抗体検査でウイルス確認
うつ病・不安障害 疲労感、集中力低下、不眠、意欲低下 精神的要因が中心で身体の炎症は伴わない 心理テストや精神科評価で鑑別
甲状腺機能異常(バセドウ病・橋本病) 疲労、関節痛、体重変動、動悸 ホルモン異常が主原因で、免疫マーカーの種類が異なる 甲状腺ホルモン(TSH、FT4)と自己抗体で診断
変形性関節症 関節の痛み、腫れ、動作時に悪化 加齢や使いすぎが原因、左右非対称のことが多い X線で骨の変形を確認、朝のこわばりが短い
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参考文献

  1. 日本リウマチ学会「膠原病の診療ガイドライン」
  2. 難病情報センター「膠原病関連疾患ページ」
  3. 厚生労働省 難病対策課「指定難病情報」
  4. MedlinePlus(U.S. National Library of Medicine)
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