1.AGA(男性型脱毛症)とは?
AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)は、思春期以降に発症する進行性の脱毛症で、日本人男性の約30〜40%が発症していると言われています(日本皮膚科学会ガイドライン, 2017)。原因は、遺伝と男性ホルモン(アンドロゲン)の影響とされており、額の生え際や頭頂部の毛髪が徐々に細く、短くなり、やがて抜けてしまうのが特徴です。
AGAが起こるメカニズム
AGAは、テストステロンという男性ホルモンが5α-還元酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛根に存在する毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体に結合することで毛周期(ヘアサイクル)が乱れ、成長期が短縮されていきます。その結果、毛髪が太く長く育つ前に抜けてしまいます。
2.AGA(男性型脱毛症)の特徴
AGAは、自然脱毛と異なり、特定の部位から徐々に進行するのが特徴です。
主な症状と進行パターン
症状部位 | 特徴 |
---|---|
前頭部(生え際) | M字型に後退していく |
頭頂部(つむじ) | O字型に薄くなる |
混合型 | M字・O字の両方から進行 |
その他の特徴
- かゆみや炎症がない(通常のAGAでは皮膚炎症状は伴わない)
- 髪の毛が細くなる(軟毛化)
- 抜け毛の本数が多くなくても進行することがある
このように、AGAは進行性であるため、放置すると広範囲に及ぶ可能性があります。
3.AGA(男性型脱毛症)の診断
AGAの診断は、主に視診・問診・家族歴の確認により行われますが、最近では下記のような補助的な検査も行われています。
診断の流れ
- 視診・問診:進行パターン、生活習慣、発症時期などを確認
- 写真撮影:経過観察や効果判定に活用
- マイクロスコープ検査:毛髪の太さや密度の確認
- 血液検査:内分泌疾患や他の脱毛症との鑑別
また、女性の脱毛症(FAGA)と間違われるケースもあるため、医師による正確な診断が重要です。
4.AGA(男性型脱毛症)の治療
AGAは自然治癒しないため、医療による継続的な治療が必要です。主な治療法は以下の通りです。
AGAの主な治療方法
治療法 | 内容 |
---|---|
内服薬(フィナステリド、デュタステリド) | DHT生成を抑制 |
外用薬(ミノキシジル) | 発毛を促進 |
自毛植毛 | 毛包を移植する外科的治療 |
LED・低出力レーザー治療 | 血流を改善し、毛根を活性化 |
サプリメント・栄養療法 | 鉄、亜鉛、ビタミンDなどの補助 |
5.治療薬の種類と特徴
AGA治療の中心は、内服薬と外用薬の併用療法です。以下に代表的な治療薬を紹介します。
内服薬
薬剤名 | 主な作用 | 特徴 |
---|---|---|
フィナステリド(プロペシア等) | 5α-還元酵素II型阻害 | 抜け毛抑制、1日1回服用 |
デュタステリド(ザガーロ等) | 5α-還元酵素I・II型阻害 | より広範囲にDHT抑制効果あり |
フィナステリドとデュタステリドの違い
項目 | フィナステリド | デュタステリド |
---|---|---|
商品名(例) | プロペシア、フィナステリド錠 | ザガーロ、デュタステリドカプセル |
作用機序 | 5α-還元酵素Ⅱ型を阻害 | 5α-還元酵素Ⅰ型・Ⅱ型を両方阻害 |
効果発現までの期間 | 約3〜6か月 | 約3〜6か月(より強力な効果が出ることも) |
臨床的効果 | 脱毛進行の抑制 | 脱毛進行の抑制+毛髪増加効果がやや強い |
推奨対象 | AGA初期〜中等度 | AGA中等度〜進行例やフィナステリド無効例 |
副作用リスク | 性機能低下(1〜2%) | 性機能低下(1〜5%)、乳房の違和感など |
価格(目安) | 月3,000〜6,000円 | 月6,000〜10,000円 |
【比較解説】フィナステリド vs デュタステリド:AGA治療で効果が高いのはどっち?
AGA(男性型脱毛症)の治療薬として代表的なフィナステリドとデュタステリド。どちらも男性ホルモンに関連する脱毛の進行を抑える内服薬ですが、その効果や副作用、作用メカニズムに違いがあります。この記事では、それぞれの薬の特徴を比較しながら、「どちらが効果があるのか?」をわかりやすく解説します。
外用薬
薬剤名 | 主な作用 | 特徴 |
---|---|---|
ミノキシジル(リアップ等) | 血流改善・毛母細胞刺激 | 発毛促進、男女使用可、1日2回塗布が基本 |
6.治療薬の副作用と注意点
AGA治療薬は効果が期待できる一方で、副作用にも注意が必要です。
フィナステリド・デュタステリドの副作用
- 性欲減退、勃起不全(数%に見られる)
- 肝機能異常(定期的な血液検査が必要)
- 精子量の減少
ミノキシジルの副作用
- 頭皮のかぶれ・かゆみ
- 低血圧や心拍数増加(高濃度使用時)
- 一時的な脱毛(初期脱毛)
注意点
- 治療効果の実感まで少なくとも6ヶ月以上かかる
- 中止すると再び進行するため、継続が必要
- 医師の指導のもとで使用することが大切
7.AGA治療の費用と通院頻度
AGA治療は自由診療であり、健康保険は適用されません。参考価格は以下の通りです。
項目 | 費用目安 |
---|---|
診察料(初回) | 3,000〜5,000円程度 |
フィナステリド | 月3,000〜8,000円 |
デュタステリド | 月6,000〜10,000円 |
ミノキシジル外用薬 | 月5,000〜10,000円 |
多くの場合、月1回の通院で薬の処方と経過観察が行われます。
8.AGA治療を始める前に知っておくべきこと
Q&A形式でのまとめ
-
Q1:治療はいつから始めるべき?
→ AGAは進行性なので、気になったら早めの受診が推奨されます。 -
Q2:治療をやめるとどうなる?
→ 効果が徐々に消失し、再び脱毛が進行します。 -
Q3:市販の育毛剤でも効果ある?
→ ミノキシジル成分を含むものは効果がある可能性がありますが、医師による処方の方が効果的です。 -
Q4:女性のAGA(FAGA)との違いは?
→ 女性は全体的なボリュームダウンが主で、M字やO字型の薄毛は少ない傾向です。
9.参考文献
- 日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」
- Kaufman KD, et al. “Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia.” J Am Acad Dermatol. 1998
- Olsen EA, et al. “A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus placebo.” J Am Acad Dermatol. 2002
- Rossi A, et al. “Comparative effectiveness of finasteride and dutasteride in AGA.” J Dermatolog Treat. 2016
- 日本臨床皮膚科医会「脱毛症の治療について」