【急性副鼻腔炎とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説】

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1.急性副鼻腔炎とは?

急性副鼻腔炎(きゅうせいふくびくうえん)とは、鼻の周囲にある「副鼻腔」と呼ばれる空洞にウイルスや細菌が感染し、炎症を起こす病気です。一般的には「蓄膿症(ちくのうしょう)」という俗称で知られていますが、実際には急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎は別物です。

副鼻腔とは?

副鼻腔は鼻のまわりにある4つの空洞(前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞)で、呼吸時の空気の流れを調整し、発声や頭の軽量化などに関与しています。風邪やアレルギー、鼻の異常によって炎症が広がり、副鼻腔にまで及ぶと副鼻腔炎になります。

急性副鼻腔炎の原因

急性副鼻腔炎は主に以下のような要因によって引き起こされます。

  • 風邪(ウイルス感染):最も多い原因。風邪が長引くと副鼻腔にまで炎症が波及します。
  • 細菌感染:ウイルス感染後、二次的に細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)が感染することがあります。
  • アレルギー性鼻炎:アレルギーによる鼻づまりが副鼻腔の換気を妨げ、細菌が繁殖しやすくなります。
  • 鼻中隔弯曲症や鼻ポリープなどの構造的な要因も、発症リスクを高めます。

2.急性副鼻腔炎に特徴的な症状

急性副鼻腔炎の症状は風邪と似ていますが、長引く鼻症状や顔の痛み・圧迫感がある場合は注意が必要です。以下のような症状が特徴的です。

主な症状

  • 鼻づまり(鼻閉)
  • 黄色〜緑色の膿性鼻汁(粘り気が強く、悪臭を伴うことも)
  • 顔面痛・圧迫感(特に頬や目の周囲)
  • 頭痛(前頭部や目の奥に鈍痛)
  • 歯の痛み(特に上の奥歯)
  • 嗅覚障害(匂いがわかりにくくなる)

風邪のような症状が1週間以上改善せず、むしろ悪化する場合は、副鼻腔炎の可能性が高まります。


3.急性副鼻腔炎はどうやって診断する?

急性副鼻腔炎は、症状や診察所見、必要に応じて検査を組み合わせて診断します。

問診と診察

  • 症状の持続期間や性質
  • 鼻や咽頭の診察で膿性分泌物を確認
  • 顔を押して痛みがないか(副鼻腔圧痛)

画像検査

  • 副鼻腔X線検査:膿や粘液がたまっている副鼻腔を確認します。
  • CT検査:詳細な画像診断が可能ですが、通常は重症例や再発例に限定されます。

細菌培養検査

  • 重症例や抗菌薬が効かない場合に、鼻汁の培養検査を行い、病原菌を特定します。

診断の目安(日本鼻科学会の定義)

以下の3つを満たす場合、「急性副鼻腔炎」と診断されます。

  1. 膿性鼻漏または後鼻漏
  2. 鼻閉
  3. 顔面痛、嗅覚障害、頭痛、歯痛のいずれか

4.急性副鼻腔炎の治療法

急性副鼻腔炎の治療は、症状の軽重に応じて、薬物療法や対症療法を組み合わせて行います。

1. 軽症の場合

多くはウイルス感染によるもので、自然に治ることが多いため、以下のような対症療法が中心です。

  • 解熱鎮痛薬(頭痛や顔面痛に)
  • 去痰薬(痰や鼻汁を出しやすく)
  • 抗ヒスタミン薬(アレルギーの要因がある場合)
  • 鼻スプレー(ステロイド点鼻薬)

2. 細菌感染が疑われる場合

以下のような症状がある場合、**抗菌薬(抗生物質)**が処方されることがあります。

  • 発熱
  • 黄色や緑の膿性鼻汁が続く
  • 強い顔面痛
  • 1週間以上の症状

主に使われる抗菌薬

  • アモキシシリン+クラブラン酸
  • セフェム系抗菌薬
  • マクロライド系(クラリスロマイシンなど)

※使用期間は5〜7日が一般的です。

3. その他の治療

  • 鼻洗浄(生理食塩水による):鼻の中を清潔に保ち、症状の軽減に有効。
  • ネブライザー(吸入療法):鼻粘膜の炎症を和らげます。
  • 漢方薬:小青竜湯、葛根湯加川芎辛夷などが使われることもあります。

4. 外科的治療(ごく一部)

慢性化や膿がたまり続ける場合は、耳鼻咽喉科で副鼻腔穿刺や手術的なドレナージが行われることもあります。

5.急性副鼻腔炎に抗菌薬(抗生物質)治療は必要か?

急性副鼻腔炎における抗菌薬治療の必要性は、症状の重症度や経過によって異なります。実際には、すべての急性副鼻腔炎に抗菌薬(抗生物質)が必要というわけではありません

■ 抗菌薬治療が必ずしも必要ない理由(軽症の場合)

多くの急性副鼻腔炎はウイルス感染が原因であり、抗菌薬は効果がありません。
米国感染症学会(IDSA)や日本耳鼻咽喉科学会のガイドラインでも、軽症であれば抗菌薬を使用せず、対症療法で様子を見ることが推奨されています。

● 対象となる軽症例:

  • 発症から7日未満
  • 鼻汁は透明または粘液性
  • 発熱や激しい顔面痛がない
  • 自然軽快傾向がある

こうした場合は、自然治癒が期待されるため、抗菌薬の使用は不要と考えられます。


■ 抗菌薬が推奨される場合(中等症〜重症)

一方で、細菌感染による急性副鼻腔炎と考えられる場合には、抗菌薬治療が有効です。

● 抗菌薬が推奨される症例の目安(IDSA・日本のガイドラインより):

  1. 症状が10日以上持続し改善しない
  2. 一時的に改善した後、再び悪化する(二相性経過)
  3. 発熱(38℃以上)、強い顔面痛、膿性鼻汁などの重症症状がある

これらのケースでは細菌感染の可能性が高く、抗菌薬を用いることで回復を早め、合併症を防ぐ効果があるとされています。


6.どんな時にクリニックを受診すべき?

風邪の延長と思って放置しがちな副鼻腔炎ですが、重症化や慢性化を防ぐためにも早めの受診が大切です。

以下のような場合は受診をおすすめします:

  • 鼻づまりや膿性鼻汁が7日以上続く
  • 顔の痛みや頭痛が強く、日常生活に支障をきたす
  • 片側だけの症状が強い
  • 熱が出たり、だるさを感じる
  • 目の腫れ、視力の変化、意識の低下などの症状(眼窩内や脳への合併症の可能性あり)

特にお子さんや高齢者は、重症化しやすい傾向があるため、症状が長引く場合は早めに耳鼻科を受診しましょう。


7.参考文献

  1. 日本耳鼻咽喉科学会. 「副鼻腔炎診療ガイドライン2020」
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 「副鼻腔炎」
  3. MedlinePlus. “Sinusitis”
  4. Merck Manual Professional Edition. “Acute Sinusitis”

8.まとめ

急性副鼻腔炎は、風邪がこじれて発症することが多く、「ただの風邪」と見逃されがちです。しかし、放置すると慢性化や合併症を招くこともあります。鼻づまり、膿のような鼻水、顔の痛みなどが1週間以上続く場合は、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。

早期に正しい治療を受けることで、多くの場合は1〜2週間で回復が見込めます。

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