1.水痘(みずぼうそう)とは?
水痘(すいとう)、通称みずぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる急性の感染症です。特に幼児から小学生の間に多く見られる病気で、一度かかると強い免疫がつきますが、ウイルスは体内に潜伏し、将来「帯状疱疹」として再発することもあります。
感染力が非常に強く、保育園や小学校などで集団感染を起こしやすいため、予防と早期対応が大切です。
2.水痘(みずぼうそう)の症状
水痘の症状は以下のような流れで進行します。
● 初期症状(潜伏期:10~21日)
感染してからすぐに症状が出るわけではなく、約2週間前後の潜伏期間を経て発症します。
● 主な症状
- 発熱(38℃前後)
- 全身に広がる発疹(赤い斑点から水ぶくれ)
- かゆみ
- 全身のだるさや食欲不振
最初は赤い小さな斑点から始まり、数時間以内に水ぶくれ(水疱)に変化します。その後、かさぶたになって自然に治癒します。
水疱は顔、頭皮、体幹、四肢と全身に広がるのが特徴で、かゆみが強く、ひっかくことで跡が残ることもあります。
3.水痘(みずぼうそう)の原因
水痘の原因は、**水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus:VZV)**です。これはヘルペスウイルスの一種で、感染経路は以下のとおりです。
● 感染経路
- 飛沫感染(くしゃみ・咳などによる空気中の飛沫)
- 接触感染(水疱の内容液に触れる)
- 空気感染(空中に浮遊するウイルスを吸い込む)
非常に感染力が強く、発疹が出る1〜2日前から、すべての発疹がかさぶたになるまで感染力が持続します。
6.水痘(みずぼうそう)の診断と治療法
● 診断
水痘は典型的な発疹と水疱のパターンがあるため、診察による視診で診断されることがほとんどです。必要に応じてウイルス検査(PCR検査)などが行われることもあります。
● 治療法
水痘は通常自然に治癒する病気ですが、症状の緩和や合併症予防のために以下の治療が行われます。
◆ 抗ウイルス薬(※特に重症化リスクがある場合)
- アシクロビル:初期に使うと重症化を防ぐ効果あり
- バラシクロビルなどの内服薬も使用されることあり
◆ 対症療法
- 解熱剤(アセトアミノフェンなど)で発熱を抑える
- 抗ヒスタミン薬やかゆみ止めローションでかゆみの緩和
- 水疱の保清管理(清潔を保ち、ひっかかないよう注意)
※アスピリン系の解熱剤は「ライ症候群」のリスクがあるため、使用を避けましょう。
7.水痘(みずぼうそう)の合併症と予後
● 合併症
多くの子どもは軽症で済みますが、以下の合併症に注意が必要です。
- 細菌の二次感染(水疱が化膿してとびひに)
- 肺炎(特に免疫力が低い人)
- 脳炎・髄膜炎(まれだが重篤)
- 帯状疱疹(後年に再発)
高齢者や免疫不全のある人、乳児では重症化するケースもあるため注意が必要です。
● 予後
通常は1週間から10日程度でかさぶたになり、後遺症なく回復することが多いですが、水疱をひっかいた場合や感染が重かった場合には色素沈着や瘢痕が残ることもあります。
8.水痘(みずぼうそう)で注意すること(日常生活など)
水痘にかかった際の生活上の注意点は以下の通りです。
● 出席停止の基準(学校・保育園)
- すべての発疹がかさぶたになるまで登校・登園は禁止
- 発症後7〜10日ほどかかることが一般的です
● 日常生活での注意点
- 入浴は可能ですが、長湯は避け、肌をこすらず優しく洗う
- 爪を短く切って、ひっかき防止
- 発疹部を清潔に保つことで化膿やとびひを予防
- 他人への感染を防ぐため、外出は最小限に
- 家族への感染対策(手洗い・換気・タオルの共有を避ける)
9.水痘(みずぼうそう)とワクチン
水痘はワクチンで予防可能な感染症です。
● 定期接種の対象
-
日本では、1歳から2回接種(1回目:1歳、2回目:3か月以上の間隔をあけて)が定期予防接種に含まれています。
● ワクチンの効果
- 感染を約80〜90%防ぎ、重症化を防ぐ効果はほぼ100%とされています。
- 接種していても軽くかかる「ブレイクスルー感染」はありますが、症状は軽く済むことがほとんどです。
● 大人も接種可能?
- 子どもの頃に感染していない人、妊娠を希望する女性、医療従事者などは接種を検討する価値があります。
- 成人で水痘にかかると重症化しやすく、高熱や肺炎を伴うことが多いため特に注意が必要です。
10.参考文献
- 厚生労働省感染症情報センター「水痘とは」
- 国立感染症研究所 感染症発生動向調査
- 日本小児科学会 予防接種スケジュール
- Merck Manual Professional Edition, Varicella
- CDC: Chickenpox (Varicella)