胸やけの正体?逆流性食道炎とは|症状・原因・治療法・生活改善まで徹底解説!

おとなの病気

1.逆流性食道炎とは?

「なんだか胸がムカムカする」「食後に喉の奥が苦い」といった経験はありませんか?
それはもしかすると「逆流性食道炎」かもしれません。

逆流性食道炎(Gastroesophageal Reflux Disease:GERD)は、胃の内容物、特に胃酸が食道へ逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。
現代では食生活の欧米化やストレス、運動不足の影響で年々増加傾向にあります。
日本人の10〜20%が何らかの症状を経験していると言われ、誰にでも起こり得る疾患です。

2.逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の主な症状には以下のようなものがあります。

主な自覚症状

  • 胸やけ(胸の中央部が焼けるように熱い感じ)
  • 呑酸(どんさん):口の中に酸っぱい液が上がってくる感覚
  • 喉の違和感・声がれ:胃酸が喉や声帯に刺激を与える
  • 慢性的な咳:特に夜間や横になると増える
  • 胸の痛み:狭心症と似たような痛みを訴える人も
  • 食後の膨満感やげっぷ

これらは必ずしも胃が痛いという「胃の病気」の典型とは異なるため、風邪や気管支炎と間違えやすいのが特徴です。

3.逆流性食道炎の原因・機序

胃酸の逆流がカギ

通常、食道と胃の間には「下部食道括約筋(LES)」という筋肉があり、逆流を防いでいます。
この筋肉の働きが弱くなったり、腹圧が過剰にかかったりすると、胃酸が食道へ逆流してしまいます。

主な原因

  • 食生活の乱れ(脂っこい食事、カフェイン、アルコール、チョコレートなど)
  • 肥満や妊娠による腹圧の上昇
  • 食後すぐに横になる生活習慣
  • 喫煙:括約筋の機能を低下させる
  • 加齢による括約筋の弛緩

その他の要因

  • ヘルニア(食道裂孔ヘルニア)
  • ストレスや自律神経の乱れ
  • 薬の副作用(カルシウム拮抗薬、抗コリン薬など)

胃の粘膜は強酸性の胃液から守られていますが、食道にはその防御機構がないため、逆流が起きると炎症が生じます。

6.逆流性食道炎の検査と診断

症状だけでは確定診断が難しいため、以下のような検査が行われます。

問診と診察

まずは症状の内容や生活習慣について丁寧な問診を行います。
「胸やけ」や「呑酸」が中心であれば、逆流性食道炎を強く疑います。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

  • 食道粘膜の炎症、びらん、潰瘍の有無を直接観察
  • バレット食道や食道がんとの鑑別も可能

24時間pHモニタリング

  • 食道内の酸性度を測定し、逆流の頻度や程度を客観的に評価

食道内圧測定

  • 下部食道括約筋の圧力や機能異常を調べる

軽症の場合は「PPI(プロトンポンプ阻害薬)治療への反応」を見る「治療的診断」も用いられます。

7.逆流性食道炎の重症度による治療

治療は症状の重さや内視鏡所見によって段階的に行われます。

軽症(非びらん性GERD)

  • 生活習慣の改善(後述)
  • 制酸薬(H2ブロッカーなど)
  • 必要に応じてPPIの短期使用

中等症〜重症(びらん性GERD)

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬):胃酸分泌を強力に抑制
  • 例:オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールなど
  • P-CAB(カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬):より強力かつ即効性がある(例:ボノプラザン)

※治療期間は一般に8週間前後が目安

難治性・再発例

  • 薬物治療に加えて手術(噴門形成術など)を検討
  • 心因性や機能性要因も評価が必要

8.逆流性食道炎の日常生活での対応

治療の柱の一つが「生活習慣の見直し」です。
特に以下の点に注意しましょう。

食事で気をつけたいこと

  • 脂っこい食事、チョコレート、ミント、炭酸飲料、アルコール、カフェインの摂取は控える
  • 一度に食べ過ぎない(腹八分目を心がける)
  • 夕食は寝る3時間前までに済ませる
  • よく噛んでゆっくり食べる

姿勢や生活面の工夫

  • 食後すぐに横にならない(座って休む、軽く散歩など)
  • 寝るときは上半身を少し高くして寝る(30度程度の傾斜)
  • 肥満の解消
  • 禁煙の徹底
  • ストレス対策(マインドフルネス、深呼吸など)

これらを習慣づけるだけでも、症状の改善につながります。

9.参考文献

  1. 日本消化器病学会ガイドライン「GERD診療ガイドライン 2021」
  2. Katz PO et al. Guidelines for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease. Am J Gastroenterol. 2013.
  3. Vakil N et al. The Montreal Definition and Classification of GERD: A Global Evidence-Based Consensus. Am J Gastroenterol. 2006.
  4. 厚生労働省e-ヘルスネット「逆流性食道炎」
  5. 日本消化器内視鏡学会「内視鏡によるGERD診断の実際」
タイトルとURLをコピーしました