甲状腺機能低下症とは？症状・原因・検査・治療まで徹底解説

１．甲状腺機能低下症とは？

甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンが不足することによって、全身の代謝が低下する病気です。甲状腺ホルモンは、首の前側にある甲状腺という臓器から分泌され、体温の調節、心拍数、脂質・糖代謝、精神機能などに関与しています。

このホルモンが十分に分泌されなくなると、エネルギーを生み出す力が弱まり、体や心にさまざまな不調が現れます。主に中高年の女性に多い病気ですが、どの年齢でも発症する可能性があります。

甲状腺機能低下症は、はじめは自覚しにくい症状が多く、見逃されやすいのが特徴です。以下のような症状がゆっくりと進行します：

特に高齢者では、「年齢のせい」と思われがちな症状が多いため注意が必要です。

甲状腺機能低下症には、**原発性（甲状腺自体の異常）と続発性（脳下垂体の異常）**がありますが、多くは原発性です。主な原因は以下のとおりです。

自己免疫の異常によって、自分の甲状腺を攻撃してしまう病気です。女性に多く、日本人の甲状腺機能低下症の最大の原因です。

バセドウ病や甲状腺がんの治療で甲状腺を手術・摘出した後、ホルモンの分泌が減少することがあります。

甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素の不足や過剰摂取も原因となります（日本では過剰摂取の方が問題になることが多いです）。

リチウムや抗甲状腺薬など、一部の薬剤が甲状腺機能を抑制することがあります。

次のような状況がある場合には、甲状腺機能低下症を疑うべきです：

こうした変化がある場合には、医療機関で甲状腺の検査を受けることをおすすめします。

甲状腺機能低下症の診断には、血液検査が重要です。特に以下のホルモン値を測定します：

これらが陽性であれば自己免疫性疾患の可能性が高まります。また、必要に応じて甲状腺超音波検査（エコー）で甲状腺の腫れや内部構造を確認することもあります。

甲状腺機能低下症の治療は、不足している甲状腺ホルモンを補うことが基本です。

最も一般的なのがレボチロキシン（商品名：チラーヂンSなど）による内服治療です。毎日1回、適切な量を内服し、体内のホルモンレベルを正常化させます。

治療中は、定期的に血液検査を行って、TSHとFT4の値をモニターし、薬の量を調整していきます。

甲状腺ホルモンの不足が続くと、さまざまな合併症が起こることがあります：

特に高齢者や基礎疾患のある方は、早めの治療が大切です。

甲状腺機能低下症は、「命にかかわることは少ないが、生活の質を著しく低下させる」病気です。

以下の理由から治療は必須です：

早期発見・早期治療により、多くの症状は改善され、通常の日常生活を送ることが可能になります。