はじめに|かかりつけ医の存在が、あなたの健康と寿命を左右する?
「風邪をひいたら、まず誰に相談しますか?」
この質問に即答できる人は、自分にとっての「かかりつけ医」がいる状態です。近年、医療界や厚生労働省でも“かかりつけ医”の重要性が再認識されており、その存在は単なる診療の入り口ではなく、人生の健康を支える伴走者とされています。
本記事では、「かかりつけ医とは何か」から始まり、持つことのメリット、寿命や入院リスクへの影響、そして信頼できる医師の選び方まで、エビデンスを交えながら丁寧に解説します。
1.かかりつけ医とは?
● あなたの「健康の第一相談窓口」
かかりつけ医とは、日常的な体調不良から健康管理、生活指導、慢性疾患のフォローまでを一貫して担当してくれる医師のことです。風邪や腹痛だけでなく、血圧やコレステロール、さらには心の健康にまで目を配ってくれる医療の“よろず相談所”ともいえる存在です。
かかりつけ医がいることで、必要に応じて専門医への紹介もスムーズに行われ、医療の質が向上します。
2.かかりつけ医の定義と制度的背景
● 厚生労働省が示す「かかりつけ医機能」
厚生労働省は、かかりつけ医について以下のように定義しています(厚生労働省, 2022年):
「身近で相談でき、必要に応じて専門医療機関への紹介を行う医師であり、生活に密着した継続的な医療を提供する者」
また、2022年度からの「かかりつけ医機能制度」では、医療機関が一定の基準を満たすことで、制度上の“かかりつけ医機能”を明示できるようになりました。
3.かかりつけ医を持つことのメリット
● メリット①:病気の早期発見・早期治療が可能に
ちょっとした体調の変化でも相談できるため、大病を未然に防ぐ可能性が高まります。かかりつけ医はあなたの健康状態や既往歴を把握しており、「いつもと違う」にいち早く気づけます。
● メリット②:慢性疾患の管理が安定
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は継続管理が重要。かかりつけ医がいれば、治療の継続や薬の調整が容易になります。
● メリット③:無駄な検査や重複診療を防げる
病院を受診するたびに同じ検査を受けていませんか?かかりつけ医がいることで、医療資源の効率的な利用が可能になります。
● メリット④:医療費削減につながる
病気の早期発見や重症化の防止により、将来的な医療費の抑制が期待できます。これは国全体の医療費抑制にも寄与する重要な視点です(日本医療政策機構, 2021年)。
4.エビデンスで見るかかりつけ医の効果|入院・寿命への影響
● 長く付き合う医師がいると、死亡率が下がる?
英国で行われた研究(BMJ Open 2018)では、同じ医師との関係が長いほど死亡率が低下するという驚くべき結果が報告されました。これは、医師との信頼関係により、適切な治療や健康行動の継続がしやすくなるためと考えられています。
● 日本でも「かかりつけ医あり」は入院率が低い
日本医療政策機構が2021年に行った全国調査によると、かかりつけ医がいる人は、いない人に比べて緊急入院や重症化のリスクが低いことが報告されました。
このように、かかりつけ医の存在が医療の質だけでなく、寿命や生活の質(QOL)にも直結しているのです。
5.どのような医師をかかりつけ医にすればよいか?
選ぶポイントは以下のとおりです。
観点 | チェックポイント |
---|---|
通いやすさ | 自宅や職場からアクセスしやすい場所にある |
コミュニケーション | 話をよく聞いてくれ、説明が丁寧 |
総合診療のスキル | 病名にとらわれず、幅広い診療ができる |
紹介体制 | 必要な時に専門医への紹介が適切に行われる |
継続性 | 長期的に関係を築けるか |
とくに、高齢者や慢性疾患を持つ人にとっては、「継続性」と「生活背景の理解力」が重要なポイントとなります。
6.家庭医がかかりつけ医になることのメリット
● 家庭医(Family Physician)とは?
家庭医とは、子どもから高齢者まで、性別・年齢・疾患を問わず総合的な診療を提供する医師のことです。日本では「総合診療医」とも呼ばれます。
● 家庭医がかかりつけになると、こんなに安心!
- 家族全体の健康を包括的にサポート
- 発熱・腹痛・めまいなど原因不明の症状も的確に対応
- 生活や環境まで把握した助言が可能
- 予防医療や健康指導も継続的に受けられる
家庭医は、「病気を診る」だけでなく「人を診る」ことを大切にしており、健康寿命を延ばすパートナーとして最適な存在です。

7.まとめ|かかりつけ医は“健康寿命”を延ばす鍵
かかりつけ医は単なる“お医者さん”ではありません。あなたの健康や人生に寄り添い、早期発見・予防・安心感を与えてくれる存在です。
とくに家庭医のように総合的に診てくれる医師がかかりつけになることで、医療の効率性と質の両立が可能になります。人生100年時代において、「自分だけの健康パートナー=かかりつけ医」を持つことが、最も身近で効果的な健康投資です。
参考文献
- 厚生労働省. かかりつけ医機能報告制度(2022年)
- 日本医師会. 「かかりつけ医の定義と役割」
- 日本医療政策機構. かかりつけ医に関する国民調査(2021年)
- BMJ Open. Pereira Gray DJ et al. “Continuity of care with doctors and mortality: systematic review and meta-analysis.” BMJ Open 2018;8:e021161.
- 星野雄一. 「家庭医療の可能性」日本総合診療医学会雑誌(2020年)
- WONCA(世界家庭医機構). “What is a Family Doctor?”