【風邪とは?】風邪症候群の原因・症状・治療・受診目安まで総まとめ|放置は危険?

おとなの病気

1.風邪症候群とは?|かぜの正体を知ろう

「風邪(かぜ)」という言葉は誰もが日常的に使っていますが、医学的には「風邪症候群(かぜしょうこうぐん)」または「急性上気道炎(Acute Upper Respiratory Infection)」と呼ばれます。

これは、ウイルスが原因となって鼻やのど、気管など上気道に炎症を起こす感染症の総称です。厚生労働省の報告によれば、風邪は日本人が最も頻繁にかかる疾患の1つであり、年間で1人あたり平均2〜3回は風邪を引くとされています[厚生労働省, 2023]。

なぜ「症候群」と呼ぶの?

風邪に関係するウイルスは100種類以上も存在し、症状も多様であるため、1つの病名では定義できません。そのため、共通の症状を含む「症候群」として総称されているのです。


2.風邪症候群の主な症状|風邪とインフルエンザの違いにも注意

風邪症候群では、以下のような症状がみられます。

  • のどの痛み(咽頭痛)
  • 鼻水・鼻づまり
  • くしゃみ
  • 咳(せき)
  • 微熱(37〜38℃程度)
  • 頭痛・だるさ

これらは一般的に数日から1週間以内に軽快します。

インフルエンザや新型コロナとどう違う?

  • インフルエンザ: 高熱、筋肉痛、関節痛、全身症状が強く急速に悪化。
  • 新型コロナ: 発熱や咳に加え、嗅覚・味覚障害や下痢などが出ることも。

症状が強い・長引くときは、他の疾患との鑑別が必要です。


3.風邪症候群の診断方法|検査より大切なのは問診と診察

風邪症候群は、検査なしでも診断が可能なことが多く、以下のような医師の診察によって診断されます。

診断の基本

  • 問診: いつから症状が出たか、どのような経過か
  • 視診・聴診: のどの腫れ、肺音の異常など
  • 必要に応じた迅速検査: インフルエンザや溶連菌感染を疑うときに実施

風邪はウイルス性であるため、血液検査やCTなどの画像検査は通常行いません。一方で、肺炎や副鼻腔炎の合併が疑われる場合には検査が必要になることがあります。


4.風邪症候群の原因ウイルス|風邪の9割以上はウイルス性!

風邪の大半はウイルス感染が原因です。以下の表に代表的なウイルスと特徴をまとめました。

ウイルス名 特徴
ライノウイルス 最も一般的。鼻水・鼻づまりが中心で、発熱は少ない。
コロナウイルス(一般型) 鼻やのどに軽い炎症。重症化しにくい。
アデノウイルス 高熱・結膜炎・咽頭痛を起こす。いわゆる“プール熱”の原因。
RSウイルス 乳幼児で重症化しやすく、細気管支炎の原因に。
パラインフルエンザウイルス クループ症候群(犬吠様咳嗽)の原因となる。

※新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は別枠で扱われ、通常の風邪症候群とは分類されません。


5.風邪の治療法|抗生物質はいらない!

風邪はウイルス性の病気であるため、抗生物質(抗菌薬)は効果がありません。むしろ不要な抗生物質の使用は、耐性菌を生み出す原因にもなるため注意が必要です[日本感染症学会, 2016]。

対症療法が基本

症状 対応薬
発熱・頭痛 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
咳・痰 鎮咳薬、去痰薬
鼻水・鼻づまり 抗ヒスタミン薬、点鼻薬
のどの痛み うがい薬、トローチなど

自宅でできるケア

  • 十分な休息と水分補給
  • 栄養バランスの良い食事
  • 部屋の加湿と適温の維持

補足:漢方薬も選択肢に

「葛根湯」や「麻黄湯」など、症状に応じた漢方薬を取り入れるのも選択肢のひとつです。体質やタイミングに合えば症状緩和に有効です。


6.どんな時にクリニックを受診すべき?|重症化のサインに注意

風邪は基本的に自宅でのケアで回復しますが、次のような症状がある場合には早めの受診を検討してください。

受診の目安

  • 38.5℃以上の高熱が2日以上続く
  • 呼吸が苦しい、息がゼーゼーする
  • 咳が止まらず、夜も眠れない
  • 水分が摂れない、ぐったりしている
  • 乳幼児・高齢者・基礎疾患がある人

医療機関では、インフルエンザやコロナ、肺炎などとの鑑別を行うための検査も可能です。


7.風邪の時、お風呂に入っても大丈夫?|昔の常識は今は違う

昔は「風邪のときにお風呂はダメ」とされていましたが、現在では入浴は必ずしも禁止ではありません。体調と相談しながら入浴することは、血行を良くして回復を促す可能性もあります。

入浴してよい場合

  • 微熱や軽い咳・鼻水程度
  • 体が冷えていない、元気がある
  • 入浴後にすぐ保温・休息できる

入浴を避けたほうがよい場合

  • 高熱(38.5℃以上)
  • 強い寒気、倦怠感がある
  • 心臓・肺など持病が悪化しやすい人

長時間の入浴や熱すぎる湯は避け、短時間で済ませましょう。


8.まとめ|風邪はありふれた病気だからこそ正しい対処を

風邪は多くの人が経験するありふれた病気ですが、軽視すると長引いたり、重症化することもあります。

  • 原因は主にウイルス
  • 抗菌薬は原則不要
  • 対症療法とセルフケアが大切
  • 高熱や重い症状があれば早めに受診
  • 入浴は体調次第でOK

風邪の正しい知識を身につけ、無理せずしっかり休むことが回復のカギです。


参考文献

  1. 厚生労働省. 風邪(かぜ)の予防と対策について. https://www.mhlw.go.jp/
  2. 日本感染症学会. かぜ症候群に対する抗菌薬の適正使用. https://www.kansensho.or.jp/
  3. MSDマニュアル家庭版. かぜ. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム
  4. 日本呼吸器学会. 急性上気道感染症の診療ガイドライン. 2017年版.
  5. 吉村長久ほか. 「風邪症候群」の診療の実際. 日本医事新報, 2015.
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