【男性更年期障害とは】疲れ・うつ・性欲低下の原因はホルモンの減少?LOH症候群をわかりやすく解説

おとなの病気

1. 男性更年期障害(LOH症候群)とは?

40代以降の男性で「疲れが抜けない」「やる気が出ない」「性欲がなくなった」といった症状に悩んでいませんか?
それは男性更年期障害(LOH症候群)の可能性があります。

LOH症候群とは、「Late-Onset Hypogonadism」の略で、加齢により男性ホルモン(テストステロン)が低下し、心と体にさまざまな不調が現れる状態です。

かつては「更年期障害=女性のもの」と考えられていましたが、2000年代以降、男性にも同様のホルモン変化があることが明らかになってきました(Matsumoto et al., 2002)。
日本でも2007年に、日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会がLOH症候群の診療指針を発表し、正確な診断と治療が可能になっています。


2. 男性更年期障害の症状とは?体と心に出るサイン

男性ホルモンの低下は、見た目だけでは気づきにくいですが、次のような症状が現れることがあります。

● 身体的な症状

  • 慢性的な疲れ・だるさ
  • 筋力や体力の低下
  • 性欲の減退・勃起機能の低下(ED)
  • 発汗や顔のほてり
  • 眠れない・途中で目が覚める

● 精神的な症状

  • うつっぽい気分
  • 不安感・イライラ
  • 集中力や記憶力の低下

これらの症状は、うつ病や自律神経の不調と間違えられやすく、見過ごされることもあります。
しかし、テストステロンの低下とこれらの症状には明確な関連があることが報告されています(Kaufman & Vermeulen, 2005)。


3. 男性更年期障害になりやすい人は?

テストステロンの減少は自然な加齢現象の一部ですが、以下のような生活習慣や体質も影響します。

要因 内容
加齢 40代以降、毎年1%ずつホルモンが減少(Harman et al., 2001)
ストレス ストレスホルモン(コルチゾール)がテストステロンの分泌を抑制
睡眠不足 睡眠中にホルモンが分泌されるため、睡眠が浅いと分泌低下
肥満 脂肪が多いとホルモンがエストロゲン化しやすくなる
飲酒・喫煙 ホルモンの合成や作用に悪影響

特に糖尿病や高血圧などの生活習慣病を持つ人は、男性ホルモンが低下しやすいことが知られています(Grossmann et al., 2008)。


4. 男性更年期障害の診断方法|チェックリストと血液検査

LOH症候群の診断は、以下の2つの方法で行われます。

ステップ①:問診票(AMSスコア)

「Aging Males’ Symptoms(AMS)」という17問のチェックリストを使い、身体・精神・性機能の状態を点数化します。
37点以上で、男性更年期の可能性が高まります。

ステップ②:血液検査(遊離テストステロン)

血液中の遊離テストステロン(FT)値を測定します。
午前中(7〜10時)の採血が推奨されており、8.5pg/mL未満でLOH症候群と診断されることが多いです

Wu et al.(2010)は、ホルモン値と症状には個人差があり、症状と検査結果の両面から総合的に診断することが重要と述べています。


5. 男性更年期障害の治療法|生活改善とホルモン補充

(1)まずは生活習慣の改善から

軽度のLOH症候群であれば、以下の方法で改善が期待できます。

  • 定期的な運動(ウォーキング、筋トレなど週150分以上)
  • 良質な睡眠(毎晩7〜8時間を目安に)
  • 栄養バランスの取れた食事(亜鉛、ビタミンD、マグネシウム)
  • 禁煙・節酒

Hayes et al.(2010)のレビューでは、定期的な運動がテストステロン値を高める可能性があると示唆されています。


(2)ホルモン補充療法(TRT)

ホルモン値が著しく低く、症状が強い場合は、テストステロン補充療法(TRT)が行われます。

投与法 内容と特徴
筋肉注射(エナルモン) 2~4週ごとに筋肉注射。通院が必要だが確実な方法
外用薬(アンドロフォルテなど) 肩や腕の皮膚に毎日塗布。自宅で使用でき、血中濃度が安定

TRTの注意点

  • 副作用:多血症、前立腺肥大、睾丸萎縮など
  • 禁忌:前立腺がんや重度の心疾患のある方には適応できないことも

Bhasin et al.(2010)は、TRTが性機能や筋力、骨密度、生活の質を改善することを明らかにした一方で、長期的なリスク管理が重要であると述べています。


(3)必要に応じた薬物治療

  • 抗うつ薬:精神的な落ち込みが強いとき
  • PDE5阻害薬(バイアグラ等):ED(勃起不全)に対する治療
  • 睡眠導入薬:不眠に対して短期間使用することも
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6. 何科にかかればいい?男性更年期障害の受診先

男性更年期障害が疑われるときは、以下の診療科で相談できます。

診療科 内容
泌尿器科 ホルモン検査と治療の専門。TRTが可能
総合診療科・内科 生活習慣病や全身の症状と合わせて評価
心療内科・精神科 抑うつ・不安が強い場合の対応が得意
男性外来・メンズヘルス外来 男性特有の症状に特化した専門外来(都市部中心)

7. まとめ|「年のせい」と思わず、正しく知って治療を

男性更年期障害(LOH症候群)は、放置すると仕事や家庭生活にも影響を及ぼす可能性がある重大なホルモンバランスの乱れです。

適切な検査と治療により、以前のような活力ある毎日を取り戻せる可能性があります。

症状に心当たりがある方は、「年齢のせい」とあきらめず、専門医に相談してみましょう。


参考文献

  1. 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群の診療指針 第2版」(2012)
  2. Matsumoto AM. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2002;57(2):M76-M99.
  3. Harman SM et al. J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(2):724–731.
  4. Kaufman JM, Vermeulen A. Endocr Rev. 2005;26(6):833-876.
  5. Wu FC et al. N Engl J Med. 2010;363(2):123-135.
  6. Bhasin S et al. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(6):2536-2559.
  7. Grossmann M et al. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(5):1834-1840.
  8. Hayes LD et al. Gerontology. 2010;56(4):369–376.
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