1.正しい軟膏の塗り方とは?
皮膚科医が推奨する軟膏の基本的な塗り方は、「擦り込まないで、薄く均一にのばす」ことです。
ポイント:
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皮膚は清潔な状態で塗る
洗顔や入浴後など、皮膚が清潔なときが最適です。 -
塗る前に手を洗う
感染予防のためにも手洗いは重要です。 -
軟膏をやさしくのばす
こすりすぎると皮膚が刺激され、かえって悪化することも。
擦り込む必要はない理由
厚生労働省の資料によると、軟膏は「皮膚表面に薬剤の層を作ることで、長時間にわたって効果を発揮する」とされています[1]。強く擦り込むと皮膚バリアを傷つけてしまい、逆効果です。
2.どれくらいの量を塗ったらいい?
軟膏の適量は「FTU(フィンガーチップユニット)」という単位で測ります。
FTUとは?
・大人の人差し指の第一関節から指先までの長さに出した軟膏量=約0.5g
・この量で、手のひら2枚分の面積に塗ることができます。
使用部位 | おおよそのFTUの目安 | 対応面積 |
---|---|---|
顔 | 0.5 FTU | 両頬程度 |
両腕 | 3 FTU | 肘から手首まで両腕 |
背中 | 7 FTU | 背中全体 |
塗りすぎるとどうなる?
特にステロイド外用薬では、**副作用(皮膚の萎縮や毛細血管の拡張など)**のリスクがあります。反対に少なすぎると効果が不十分になるため、適切な量の把握が重要です。
3.2つ以上の塗り薬を使うとき
複数の外用薬を使う際は、順番と時間のあけ方がカギになります。
一般的な順番
- 水性ローション・ジェル(さらさらしたもの)
- クリーム
- 軟膏(油分が多く、ベタつくもの)
併用の注意点
- 5〜10分程度の間隔をあけて塗ることで、それぞれの薬の効果を維持できます。
- 同じ部位に重ね塗りする場合は、医師の指示を優先してください。
4.場所によって塗り方は変わる?
皮膚の厚さや吸収率は部位によって異なります。以下は代表的な違いです。
部位 | 皮膚の厚さ | 吸収率 | 使用薬剤の特徴 |
---|---|---|---|
顔 | 薄い | 高い | 弱い薬から開始 |
手のひら・足裏 | 厚い | 低い | 強めの薬も使用可 |
陰部・首 | 非常に薄い | 非常に高い | 特に注意が必要 |
特に顔や陰部は副作用が出やすいため、ステロイド外用薬などは慎重に使用しましょう。
5.軟膏を塗るタイミングは?
基本的には、入浴後や洗顔後、皮膚が清潔で水分を含んだタイミングがベストです。
効果的なタイミング:
- 1日1〜2回(朝・晩)
- 症状が強い場合は医師の指示通りに使用
軟膏の成分により作用時間が異なるため、定時での使用が望ましいとされています[2]。
6.塗り薬の種類・タイプ
外用薬には以下のようなタイプがあり、症状や使用部位によって使い分けます。
タイプ | 特徴 | 使用例 |
---|---|---|
軟膏(Ointment) | 油性、保湿性が高く刺激が少ない | 乾燥肌・敏感部位 |
クリーム(Cream) | 水分と油分のバランスが良い | 湿疹・かぶれ |
ローション(Lotion) | さらっとしていて広範囲に塗布しやすい | 頭皮・背中 |
ジェル(Gel) | 速乾性があり皮膚に密着する | にきび・多毛部位 |
特に保湿剤(ヒルドイドなど)やステロイド、抗菌薬入りの軟膏などは使用目的が異なるため、自己判断ではなく医師・薬剤師の指示を守ることが重要です。
7.まとめ
軟膏を正しく塗ることで、症状の改善が早くなるだけでなく、副作用も最小限に抑えることができます。以下のポイントを押さえて、日々のスキンケアや治療に役立てましょう。
まとめポイント:
- 擦り込まず、やさしくのばす
- FTUを目安に適量を塗る
- 使用順・部位に応じた使い分けが大切
- 入浴後・清潔な状態で塗布
- タイプ別の薬剤の特性を理解する
参考文献
- 厚生労働省. 外用薬の正しい使い方(https://www.mhlw.go.jp/)
- 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021
- British Association of Dermatologists. “Topical steroid information leaflet”
- National Eczema Association. “How much topical medicine should I use?”