1.風疹とは?
風疹(ふうしん)は、「三日ばしか」とも呼ばれるウイルス性感染症で、発疹・発熱・リンパ節の腫れが主な特徴です。主に小児に多く見られる病気ですが、大人もかかることがあり、特に妊娠初期の女性が感染すると、胎児に深刻な影響を及ぼす「先天性風疹症候群(CRS)」の原因になります。
風疹ウイルスは飛沫感染や接触感染で広がり、感染力はインフルエンザ並みに高いとされています。ワクチンで予防できる疾患の一つであり、予防接種がとても重要です。
2.風疹の症状
風疹に感染すると、2~3週間の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
- 発熱(38℃前後):比較的軽度
- 全身の発疹:顔から始まり、全身に広がる
- リンパ節の腫れ:特に耳の後ろや後頭部
- 倦怠感・関節痛・目の充血などの全身症状
発疹は通常3日程度で消えるため「三日ばしか」と呼ばれる所以です。ただし、大人では小児より症状が重くなる傾向があり、発熱や関節痛が強く出ることもあります。
3.風疹の原因
風疹の原因は風疹ウイルス(Rubella virus)による感染です。このウイルスは飛沫(くしゃみや咳)によって他人に感染します。特に感染力が高いのは、発疹が出る前後の1週間程度とされています。
感染経路は以下の通りです:
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみのしぶきから
- 接触感染:ウイルスがついた手指や物を介して
風疹は1度かかると多くの人は免疫を獲得しますが、ワクチン未接種者や免疫が不十分な人は再感染の可能性もあります。
6.風疹の検査と診断
風疹の診断は、症状だけでは他のウイルス性発疹症との区別が難しいため、血液検査やウイルス検出を行います。
主な検査方法:
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血清抗体検査(IgM/IgG)
IgM抗体陽性で急性期の風疹感染が疑われます。IgG抗体は過去の感染やワクチン接種で得られた免疫を示します。 -
PCR検査
咽頭ぬぐい液や尿からウイルスの遺伝子を検出する検査です。 -
妊婦健診での抗体検査
妊娠初期の女性に対して、風疹抗体の有無を確認する検査が行われます。抗体が不十分な場合、感染予防が強く求められます。
7.風疹の治療薬とその種類
風疹には、インフルエンザのような特効薬(抗ウイルス薬)は存在しません。そのため、治療は対症療法が基本となります。
主な対処法:
- 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど):発熱や関節痛の緩和
- 安静・水分補給:脱水予防と体力回復のために重要
- 必要に応じた入院:特に妊婦や重症例では医療機関での管理が必要です
妊婦への感染が疑われる場合は、胎児への影響を考慮し専門機関での精密検査が必要です。
7.風疹の合併症と予後
風疹は多くの場合、軽症で自然回復しますが、以下のような重篤な合併症を引き起こすこともあります。
主な合併症:
- 関節炎:特に成人女性に多く、一時的な関節の痛みや腫れが出る
- 血小板減少性紫斑病:皮膚や粘膜に出血斑が生じる
- 脳炎:まれだが、重篤な後遺症を残す可能性あり
- 先天性風疹症候群(CRS):妊娠初期に母体が感染すると、胎児に先天異常が起こる可能性(心疾患、難聴、白内障など)
予後:
- 通常は1週間程度で回復しますが、合併症があると長引くこともあります。
- CRSを防ぐためにも、妊娠前のワクチン接種が非常に重要です。
8.なぜ風疹を治療しないといけないのか?
風疹は大多数の人が軽症で済みますが、放置してはいけない理由がいくつもあります。
妊婦と胎児への影響:
最も深刻なのが妊娠初期の女性が風疹に感染することです。胎児の器官が形成される時期に風疹ウイルスに感染すると、先天性風疹症候群(CRS)として、心疾患・難聴・白内障・精神遅滞などの障害が生じるリスクがあります。
集団免疫の確保:
風疹はワクチンで予防可能ですが、ワクチン未接種者が多いと集団免疫が低下し、小規模な流行や大規模な感染拡大が起きやすくなります。特に40代から50代の男性はワクチン接種歴が不十分な場合があり、感染源となる可能性が高いとされています。
風疹ゼロを目指す取り組み:
厚生労働省は、風疹撲滅を目標に成人男性の抗体検査・ワクチン接種の無料クーポン配布を行っています。自分を守るだけでなく、他人の命を守る行動が求められています。
9.参考文献
- 厚生労働省. 風しんについて
- 国立感染症研究所. 風しんとは
- 日本小児科学会. 予防接種スケジュール
- CDC (Centers for Disease Control and Prevention). Rubella