1.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome、重症熱性血小板減少症候群)は、ウイルスによって引き起こされる新興感染症で、致死率が高く、早期の診断と対応が求められます。SFTSウイルス(SFTSV)はブニヤウイルス科に属し、マダニによって媒介されます。日本では2013年に初めて確認され、特に西日本を中心に毎年感染者が報告されています。
感染症法においては「四類感染症」に分類されており、発症が確認された場合には速やかな届出が義務付けられています。
なぜSFTSが怖いのか?
- 致死率が高い(10〜30%)
- 特効薬がなく、対症療法が中心
- ヒト-ヒト感染も稀に起こり得る
- 重症化すると多臓器不全や意識障害を伴う
自然の中でのレジャーや農作業をする方は特に注意が必要です。
2.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の症状
SFTSの症状は感染後6日から14日ほどの潜伏期間を経て現れ、次のような特徴があります。
主な初期症状:
- 発熱(38℃以上)
- 全身倦怠感
- 食欲不振、悪心、嘔吐
- 下痢や腹痛などの消化器症状
進行した場合の症状:
- 意識障害やけいれん
- 出血傾向(点状出血、血尿、血便)
- 肝機能・腎機能の低下
- 血小板・白血球の減少
特に高齢者では重症化しやすく、死亡リスクも高まります。
3.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の原因
SFTSVは、マダニ(主にフタトゲチマダニやタカサゴキララマダニ)を媒介としてヒトに感染します。ウイルスはマダニの唾液に含まれており、刺咬された際に体内に侵入します。
マダニの活動時期
- 春〜秋(特に5〜10月)が感染リスクの高い季節です。
- 山林や草むらなどに多く生息しています。
その他の感染経路
- 感染動物の血液や体液への接触
- 発症者の体液(血液や嘔吐物)との濃厚接触(稀)
動物では猫や犬も感染源となり得るため、ペットとの接触にも注意が必要です。
4.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の検査と診断
SFTSの確定診断には、以下のような検査が用いられます。
血液検査:
- 白血球減少
- 血小板減少
- AST、ALTの上昇(肝機能障害)
- LDH、CKの上昇
特異的検査:
- PCR検査(ウイルス遺伝子の検出)
- 血清抗体検査(ペア血清による抗体上昇の確認)
地域によっては、SFTSを疑った場合には地方衛生研究所や国立感染症研究所に検体を送付して検査を行います。
5.SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の治療
SFTSに対する特効薬は現時点で存在せず、主に対症療法が行われます。
対症療法:
- 輸液(脱水予防、電解質補正)
- 解熱鎮痛薬の使用(NSAIDsは慎重に)
- 血小板輸血や抗菌薬の併用(二次感染予防)
- 重症例では集中治療室での管理が必要
研究中の治療法:
- リバビリンなどの抗ウイルス薬が一部で検討されていますが、十分な有効性は確立されていません(Liu et al., 2014)。
- 免疫グロブリン療法やステロイドの併用についても臨床研究段階です。
6.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう
以下のような症状があり、最近マダニに刺された可能性がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
受診の目安:
- 発熱が続く(38℃以上)
- 吐き気・嘔吐・下痢がある
- 倦怠感やめまいが強い
- 出血斑が出てきた
- 意識がもうろうとしてきた
また、ペットがマダニに刺された後に体調を崩した場合にも、獣医師への相談が必要です。
参考文献
- 国立感染症研究所. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS). https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html
- Liu Q, et al. The pathogenesis of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus infection. Virology Journal. 2014;11:6.
- Ministry of Health, Labour and Welfare (厚生労働省). マダニ媒介感染症に関するQ&A. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
- Sun Y, et al. Epidemiological and clinical characteristics of SFTS in China. New England Journal of Medicine. 2012;367:2256-64.
- 西日本におけるSFTSウイルスの分布と流行. 日本感染症学会雑誌. 2018;92(2):89-97.