【医師が解説】溶連菌感染とは?症状・治療・人食いバクテリアとの関係までわかりやすく解説!

おとなの病気

1.溶連菌感染とは?

溶連菌(ようれんきん)感染症とは、正式には「A群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus)」による感染症です。主に子どもに多くみられますが、大人にも感染することがあります。喉の痛みや発熱を引き起こす「咽頭炎」「扁桃炎」として知られていますが、皮膚や血液など他の部位にも感染が広がることがあります。

溶連菌は飛沫感染や接触感染で人から人へと広がり、集団生活をしている保育園・小学校での流行がしばしば報告されます。

溶連菌の名前の由来

「溶血性」とは、細菌が血液中の赤血球を破壊する能力を持つことを意味します。「連鎖球菌」は丸い球状の菌が鎖のようにつながっていることに由来しています。


2.溶連菌感染の症状

溶連菌による感染症には、以下のような多様な症状があります。最も典型的なのは咽頭炎(扁桃炎)です。

主な症状 解説
のどの強い痛み 食べ物や水分が飲み込みにくいほどの痛みが出ることもあります
発熱 突然の高熱(38~39℃以上)が出ることがあります
いちご舌(舌に赤いぶつぶつ) 猩紅熱に見られる特徴的な症状
発疹 全身に細かい赤い発疹が出ることがあり、触るとざらざらします(猩紅熱)
頭痛・腹痛・吐き気 子どもによく見られる付随症状
リンパ節の腫れ 首のリンパ節が腫れて痛むことがあります

猩紅熱(しょうこうねつ)

咽頭炎に加えて赤い発疹が全身に出る状態を「猩紅熱」と呼びます。古くは重症疾患とされましたが、現在では抗菌薬で十分治療可能です。


3.溶連菌感染と人食いバクテリア

人食いバクテリア」というショッキングな名称で報道されることがあるのが、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS: Streptococcal Toxic Shock Syndrome)」です。これは溶連菌の一部が引き起こす極めて重篤な感染症で、急速に組織を壊死させ、敗血症や多臓器不全に陥る危険があります。

劇症型溶連菌感染症の特徴

  • 高熱・血圧低下・意識障害が急激に進行
  • 四肢の激しい痛みや腫れ
  • 発症後24~48時間で死亡に至るケースも

日本でも近年、STSSの症例数が増加しており、国立感染症研究所の報告によると2023年には年間1,000例を超える報告がありました(感染症週報より)。

STSSと通常の溶連菌感染の違い

項目 通常の溶連菌感染 劇症型溶連菌感染(STSS)
発症部位 咽頭・皮膚など 筋膜、皮下組織、血流中など
症状 発熱、咽頭痛など 急速なショック、壊死、意識障害など
予後 抗菌薬で良好 重症化すると死亡率30%以上
対応 外来で治療可能 入院、集中治療管理が必要

6.溶連菌感染の検査と診断

検査の方法

  1. 迅速抗原検査
     綿棒で喉をこすって検体を取り、10分程度で結果がわかります。陽性であればほぼ確定です。
  2. 咽頭培養検査
     より正確な診断をするために行います。結果まで1~2日かかりますが、耐性菌の有無もわかります。
  3. 血液検査(CRP, WBC)
     感染の程度をみるために補助的に行われることもあります。

検査のポイント

ウイルス性の風邪との見分けが重要です。溶連菌感染では咳や鼻水は少ないのが特徴です。逆に、咳が目立つ場合はウイルス性感染が疑われます。


7.溶連菌感染の治療

溶連菌感染は細菌性のため、抗菌薬(抗生物質)による治療が必須です。自然に治ることもありますが、合併症を防ぐために必ず治療を受ける必要があります。

主な治療薬

薬剤名 解説
ペニシリン系(アモキシシリンなど) 第一選択薬。10日間の内服が推奨されます
セフェム系(セファクロルなど) ペニシリンアレルギーのある人に用いられます
マクロライド系(クラリスロマイシンなど) 代替薬として使われることも

※薬の途中中断は再発や耐性菌の原因になるため、処方通り最後まで飲みきることが大切です。

合併症の予防

適切な治療をしないと、以下のような合併症(非化膿性合併症)が起こることがあります:

  • 急性糸球体腎炎
  • リウマチ熱
  • 心内膜炎

8.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

以下のような症状が見られたら、早めに医療機関を受診しましょう:

  • 高熱が続く(38.5℃以上が2日以上)
  • のどの痛みが強く、水分も取れない
  • 首のリンパ節が腫れている
  • 赤い発疹が出て、ざらざらしている(猩紅熱)
  • 手足の激しい痛みや腫れ(STSSの疑い)

特に、急激な症状の進行や意識障害、呼吸困難などがあれば、救急外来を受診する必要があります。


9.参考文献

  1. 国立感染症研究所 感染症週報 IDWR
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr.html
  2. 日本小児科学会「小児感染症診療ガイドライン2023」
  3. Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases. 9th ed.
  4. Stevens DL, Bryant AE. “Severe Group A Streptococcal Infections.” Clinical Infectious Diseases. 2016.
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