1.肉離れとは?(原因・なりやすい人)
肉離れとは、筋肉や筋膜(筋肉を包む膜)の一部が急な動作や過負荷により損傷するケガです。医学的には「筋挫傷(きんざしょう)」や「筋損傷」とも呼ばれます。
主な原因
- 急激なダッシュやジャンプ
- ストップ&ゴーの動作(例:サッカーやバスケ)
- 柔軟性不足のまま運動を始めたとき
- 筋肉疲労がたまっている状態での運動
特に下肢(太もも・ふくらはぎ)で多く見られます。
肉離れになりやすい人
以下のような人は、肉離れを起こしやすいとされています。
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 筋肉の柔軟性が低い人 | ストレッチ不足、加齢による筋の硬化 |
| スポーツ愛好者 | サッカー、ラグビー、バスケ、陸上(特に短距離走)など |
| 急に運動を始めた人 | ウォーミングアップなしで激しい運動を行った場合 |
| 過去に肉離れを経験している人 | 損傷部位の再発が多い |
2.肉離れの症状
肉離れでは以下のような症状がみられます。
- 突然の鋭い痛み:「ブチッ」という感覚とともに激しい痛みを感じる
- 患部の腫れや内出血:損傷の程度によっては紫色に変色する
- 歩行困難:重症例では足をつけない、歩けないほどの痛み
- 筋肉のへこみ:筋繊維の断裂により凹みが触れることもある
重症度分類(Grading)
| グレード | 損傷の程度 | 主な症状 |
|---|---|---|
| グレード1(軽度) | 筋繊維の微小損傷 | 軽度の痛み、動作可能 |
| グレード2(中等度) | 部分断裂 | 中等度の痛み、動作困難 |
| グレード3(重度) | 完全断裂 | 激痛・歩行不能・筋の陥凹 |
3.肉離れの診断
問診と身体診察
- 発症の状況(運動中か、再発かなど)
- 痛みの部位と程度
- 腫れや内出血の有無
画像検査
- 超音波検査(エコー):その場で確認でき、筋損傷の大きさや部位を把握しやすい
- MRI:損傷範囲を詳しく評価したい場合に有用。競技復帰の目安にも
他の疾患との鑑別
- アキレス腱断裂
- 靭帯損傷
- 骨折
これらと区別するために、エコーやMRIを用いた診断が重要です。
4.肉離れの治療
急性期(受傷直後〜数日)
「RICE処置」が基本です。
| 処置 | 内容 |
|---|---|
| Rest(安静) | 患部を動かさず、筋の修復を促す |
| Ice(冷却) | 15〜20分間隔で患部を冷やし、腫れや痛みを軽減 |
| Compression(圧迫) | 弾性包帯などで腫脹を抑える |
| Elevation(挙上) | 足を心臓より高く上げることで、腫れを軽減 |
※受傷後48時間以内はアイシングと安静が大切です。
亜急性期(数日後〜)
- 温熱療法(血流改善による修復促進)
- 軽いストレッチや可動域訓練
回復期(2〜3週間後〜)
- 筋トレやジョギングによる再発予防
- スポーツ復帰のための段階的な負荷調整
再発予防と競技復帰の判断
- 痛みの完全消失
- 可動域と筋力の左右差がない
- スポーツ動作に耐えられること
再発率が高いため、完全な治癒を待つことが重要です。
5.肉離れの予防・対応
日常でできる予防法
| 方法 | 解説 |
|---|---|
| ウォームアップとクールダウン | 運動前後のストレッチで筋肉の柔軟性を維持 |
| 筋力トレーニング | 特にハムストリングスや大腿四頭筋のバランス強化 |
| 栄養と水分管理 | 筋肉の代謝を支える食事、脱水予防 |
| 疲労回復の徹底 | 睡眠、アイシング、軽い運動など |
スポーツ中の注意
- 準備運動を省略しない
- 疲労を感じたら無理をせず休む
- 寒い時期や雨天時は筋肉が硬くなりやすいため、特に注意
肉離れの再発防止
- リハビリ中に完全に痛みがなくなっても、復帰には慎重なステップが必要です。
- サポーターやテーピングも一時的には有効です。
6.参考文献
- Garrett WE. Muscle strain injuries: clinical and basic aspects. Med Sci Sports Exerc. 1990;22(4):436-443.
- Askling CM, Tengvar M, Saartok T, Thorstensson A. Sports Med. 2013;43(5):413–423.
- 日本整形外科学会. スポーツ外傷・障害の診療ガイドライン 2020
- Jarvinen TA, et al. Muscle injuries: biology and treatment. Am J Sports Med. 2005;33(5):745-764.
- Orchard J, Best TM, Verrall GM. Return to play following muscle strains. Clin J Sport Med. 2005;15(6):436-441.

