はじめに
目薬は日常的に使う医薬品のひとつですが、意外と「正しい使い方」を知らずに自己流でさしている人も多いのではないでしょうか。この記事では、目薬の正しいさし方や使用時の注意点、複数の目薬を併用する場合の間隔や順番、コンタクトレンズ使用者の注意点などについて、最新の医療知識と文献的考察を交えてわかりやすく解説します。
1.正しい目薬のさし方とは?
目薬を正しくさすことで、薬の効果を最大限に引き出すことができます。以下の手順で行いましょう。
正しい目薬のさし方(ステップ形式)
- 石けんで手を洗う。
- 上を向いて仰向けになるか、軽く上目づかいになる。
- 下まぶたを軽く引いて、結膜嚢(けつまくのう)と呼ばれるポケット部分を露出。
- 目薬の先端がまぶたやまつげに触れないように注意しながら、1滴だけ垂らす。
- さした後は、1〜2分間目を閉じる(まばたきしない)。
- 軽く目頭(目と鼻の間)を押さえて、薬が鼻に流れるのを防ぐ。
なぜこの方法が推奨されるのか?
点眼後にまばたきをしたり目をこすってしまうと、薬液が涙と一緒に流れてしまい、効果が薄れます。また、目薬の先が眼やまつげに触れると細菌汚染の原因になります。
日本眼科学会. 目薬の正しい使い方(https://www.nichigan.or.jp)
2.何滴入れたらいい?「1滴で十分」の理由
「2〜3滴くらい入れた方が効きそう」と感じる方も多いですが、結膜嚢に保持できる容量は約30μL程度で、1滴の目薬量(約50μL)でも溢れてしまうと言われています(Yamazaki et al., 2007)。
つまり、1回1滴で十分効果があるということです。それ以上入れても流れてしまい、意味がないばかりか副作用のリスクやコストの無駄につながります。
3.2つ以上の目薬を使うときは?順番と間隔のルール
点眼薬を複数使う場合には、以下のような順番と時間間隔が推奨されます。
【基本ルール】
- 点眼の間隔は5分以上空ける。
- 液体→懸濁→ゲル→軟膏の順番が基本。
これは、先にさした薬が次の薬で流されないようにするためです。
例:ドライアイ用のヒアルロン酸点眼薬と緑内障治療薬を併用する場合
- ヒアルロン酸点眼薬を1滴点眼
- 5分待つ
- 緑内障点眼薬を点眼
このように順番と時間を意識することで、各薬剤の吸収効率を最大化することができます。
4.コンタクトレンズと目薬:使用可否の違いに注意!
【目薬×コンタクト】基本原則
- 防腐剤入りの目薬は基本的にコンタクト装用中に使用NG
- コンタクトを外してから目薬をさす → 15分以上経過後に装着
コンタクト別の注意点
コンタクトの種類 | 使用可否 | 注意点 |
---|---|---|
ハードレンズ | 一部の目薬は使用可 | 医師の指示が必要 |
ソフトレンズ | 基本的にNG | 防腐剤がレンズに吸着し角膜障害の原因に |
1日使い捨て | 装着前・後ともにNG | 装着前に点眼、十分に待つこと |
コンタクト使用者向けの目薬(防腐剤フリー)
近年では防腐剤無添加の「ワンデー点眼薬」も登場しており、コンタクトユーザーにとって安全性が高まっています。
5.目薬をさすタイミングは?
服薬との関係
内服薬との関係はほとんどありませんが、以下のようなルールを守ることで安定した効果が期待できます。
推奨される点眼のタイミング(例)
用法 | 推奨タイミング |
---|---|
1日1回 | 朝または夜(就寝前)に統一 |
1日2回 | 朝・夜 |
1日3回 | 朝・昼・夜、8時間間隔が理想 |
目薬の効果が出るまでの時間
目薬の種類によっては**効果発現に数日〜数週間かかるもの(例:抗アレルギー薬)**もあるため、継続使用が大切です。
6.目薬の種類とその特徴
目薬にはさまざまな種類があり、目的によって使い分けが必要です。
種類 | 主な目的 | 例 |
---|---|---|
抗菌薬 | 結膜炎・ものもらい | オフロキサシン、レボフロキサシン |
抗アレルギー薬 | 花粉症・アレルギー性結膜炎 | アレジオン、パタノール |
人工涙液 | ドライアイ | ヒアレイン、ソフトサンティア |
抗炎症薬 | 手術後・アレルギー | フルメトロン、ステロイド系 |
緑内障治療薬 | 眼圧を下げる | キサラタン、チモプトール |
【注意】市販の目薬の中には、血管収縮剤(ナファゾリンなど)を含み、連用で悪化するケースもあるため、長期間使用は避けましょう。
7.まとめ:正しい目薬の使い方で目を守ろう
目薬は使い方次第で効果が変わる薬です。以下のポイントを押さえて、安全かつ効果的に使用しましょう。
- 目薬は1回1滴、目頭を軽く押さえて目を閉じる。
- 複数の目薬は5分以上空けて使用。
- コンタクトレンズ装用中は使用できない目薬もあるため要注意。
- 防腐剤フリーの点眼薬を選ぶとより安心。
日常のちょっとしたケアが、目の健康を長く守る第一歩です。
参考文献
- 日本眼科学会. 目薬の正しい使い方. https://www.nichigan.or.jp
- 山崎靖子ほか. 点眼薬の適正使用についての検討. 薬理と治療. 2007; 35(5): 627-634.
- Azuara-Blanco A, et al. Compliance and drop administration in glaucoma. Br J Ophthalmol. 2002;86(7):760-762.
- 田野保彦. 点眼薬の適正使用. 臨床眼科. 2005;59(4):453-459.
- 日本コンタクトレンズ学会. コンタクトレンズ装用時の点眼薬使用についての指針.