日本紅斑熱とは?マダニ感染症の症状・治療・予防をわかりやすく解説

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病気について

「マダニに刺されたあとに熱が出た」「発疹が出てきた」「黒いかさぶたのような刺し口がある」――このような場合に注意したい病気のひとつが、日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)です。

日本紅斑熱は、マダニが媒介する感染症のひとつで、早期に適切な抗菌薬治療を行えば改善が期待できます。一方で、治療が遅れると重症化することがあり、まれに命に関わることもあります。

この記事では、日本紅斑熱の症状、潜伏期間、検査、治療、SFTSとの違い、マダニに刺されたときの対応、予防法について、わかりやすく解説します。

1.日本紅斑熱とは?

日本紅斑熱(Japanese spotted fever)は、Rickettsia japonica(リケッチア・ジャポニカ)という細菌によって起こる感染症です。

この細菌を持ったマダニに刺されることで感染します。人から人へ感染する病気ではありません。

日本紅斑熱は1984年に日本で初めて報告され、その後、西日本を中心に患者報告が増えてきました。近年は報告地域が広がっており、沖縄から東北南部まで発生が確認されています。

特にマダニの活動が活発になる春から秋、主に4月〜11月頃に多くみられます。農作業、草刈り、登山、キャンプ、庭仕事、河川敷での活動などの後に発症することがあります。

ポイント

  • 日本紅斑熱はマダニに刺されて感染する細菌感染症
  • 主な症状は発熱・発疹・刺し口
  • 潜伏期間は2〜8日程度
  • 治療はテトラサイクリン系抗菌薬が中心
  • 治療が遅れると重症化することがある

2.日本紅斑熱の症状|発熱・発疹・刺し口が三大症状

日本紅斑熱の潜伏期間は、一般的に2〜8日程度です。マダニに刺されたあと、数日してから症状が出ることが多いです。代表的な症状は、以下の3つです。

発熱

突然の高熱で発症することが多く、38〜40℃前後の発熱がみられます。頭痛、悪寒、強い倦怠感、筋肉痛、関節痛を伴うこともあります。

発疹

発熱と同じ頃、または少し遅れて、赤い発疹が出てきます。発疹は手足、手のひら、足の裏、体幹、顔などに広がることがあります。日本紅斑熱の発疹は、かゆみが目立たないこともあります。また、点状出血のように見えることもあります。

刺し口

マダニに刺された部分に、黒いかさぶたのような刺し口が見つかることがあります。ただし、刺し口は小さく、自分では気づかないこともあります(日本紅斑熱の刺し口は見つかりにくいことが多いです)。マダニはわき腹、足の付け根、膝の裏、首まわり、頭皮、背中など、見えにくい場所に付着することがあります。

その他の症状

  • 頭痛
  • 強いだるさ
  • 筋肉痛・関節痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 食欲低下

血液検査では、血小板減少、肝機能障害、CRP上昇などがみられることがあります。

3.日本紅斑熱は重症化する?

日本紅斑熱は、早期に診断して適切な抗菌薬を開始すれば、多くの場合は改善が期待できます。しかし、治療開始が遅れると、以下のような重症化を起こすことがあります。

  • DIC(播種性血管内凝固症候群)
  • 多臓器不全
  • 意識障害
  • けいれん
  • 重い肝障害
  • 腎機能障害

特に高齢者、持病がある方、免疫力が低下している方では注意が必要です。

早めに受診してほしい症状

  • 山や草むらに入った数日後に高熱が出た
  • 発熱と発疹が同時にある
  • 黒いかさぶたのような刺し口がある
  • だるさが強く、ぐったりしている
  • 発疹が手足や全身に広がっている
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が悪い

4.日本紅斑熱の原因|マダニに刺されて感染します

日本紅斑熱の原因は、Rickettsia japonicaというリケッチア属の細菌です。この病原体を持ったマダニが人を刺すことで、皮膚から体内に病原体が入り、感染します。

マダニに刺されやすい場所

マダニは、以下のような場所に生息しています。

  • 山林
  • 草むら
  • 田畑
  • 河川敷
  • やぶ
  • 庭や公園の草地

登山やキャンプだけでなく、農作業、草刈り、庭仕事、犬の散歩など、日常生活の中でも刺されることがあります。

5.日本紅斑熱の検査と診断

日本紅斑熱は、症状だけでは風邪、インフルエンザ、COVID-19、薬疹、ウイルス性発疹症、SFTS、つつが虫病などと区別が難しいことがあります。そのため、診断では以下の情報が重要です。

  • 発熱があるか
  • 発疹があるか
  • 刺し口があるか
  • 数日以内に山・草むら・田畑・河川敷に入ったか
  • マダニに刺された記憶があるか
  • 地域で日本紅斑熱の発生があるか

主な検査

検査 内容
PCR検査 血液や刺し口の痂皮・皮膚組織などから病原体の遺伝子を検出します。
血清抗体検査 急性期と回復期の血液を比較し、抗体価の上昇を確認します。
血液検査 血小板減少、肝機能障害、炎症反応上昇などを確認します。

ただし、検査結果を待っている間に病状が進むことがあります。そのため、日本紅斑熱が疑われる場合は、検査結果を待たずに治療を開始することがあります。

6.日本紅斑熱の治療|早期の抗菌薬治療が重要です

日本紅斑熱は細菌感染症のため、抗菌薬による治療を行います。第一選択薬は、一般的にテトラサイクリン系抗菌薬です。代表的な薬に、ドキシサイクリンやミノサイクリンがあります。重要なのは、できるだけ早く治療を開始することです。治療が遅れると、重症化や死亡のリスクが高まることがあります。

通常の風邪薬や解熱薬だけでは治りません

日本紅斑熱は、ウイルス性の風邪とは異なります。解熱薬で一時的に熱が下がっても、原因菌に対する治療にはなりません。また、一般的な細菌感染症でよく使われる一部の抗菌薬では効果が不十分なことがあります。疑わしい場合は、マダニ感染症を考えて治療薬を選ぶ必要があります。

重症例では入院が必要になることもあります

高熱が続く、血小板が低い、肝機能障害が強い、意識障害がある、全身状態が悪い場合には、入院治療が必要になることがあります。

7.日本紅斑熱とSFTS・つつが虫病の違い

マダニやダニが関係する感染症には、日本紅斑熱以外にもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)つつが虫病があります。

病気 主な原因 主な症状 治療
日本紅斑熱 リケッチア・ジャポニカ 発熱、発疹、刺し口 抗菌薬が有効
つつが虫病 オリエンティア・ツツガムシ 発熱、発疹、刺し口、リンパ節腫脹 抗菌薬が有効
SFTS SFTSウイルス 発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少 支持療法が中心

症状が似ていることもあるため、自己判断は危険です。マダニに刺された可能性があり、発熱や発疹がある場合は早めに医療機関を受診してください。

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8.マダニに刺されたときの対応

マダニに刺されていることに気づいた場合、無理に引き抜かないようにしましょう。マダニは皮膚にしっかり食いついていることがあり、無理に引っ張ると、口の部分が皮膚に残ることがあります。

マダニに刺されたときの対応

  • 無理に引き抜かない
  • 可能であれば皮膚科など医療機関で除去してもらう
  • 刺された日、場所、活動内容を記録しておく
  • 数日〜2週間程度は発熱・発疹・だるさに注意する
  • 症状が出たら、マダニに刺されたことを医師に伝える

マダニに刺されたからといって、必ず日本紅斑熱になるわけではありません。しかし、発熱や発疹が出た場合には早めの受診が大切です。

9.日本紅斑熱の予防|マダニに刺されないことが一番大切

日本紅斑熱を予防するワクチンはありません。そのため、最も大切なのはマダニに刺されない対策です。

屋外活動時の服装

  • 長袖・長ズボンを着用する
  • ズボンの裾を靴下や長靴に入れる
  • 首元をタオルなどで覆う
  • 帽子や手袋を使用する
  • 明るい色の服を着て、マダニを見つけやすくする

行動の注意点

  • 草むらに直接座らない
  • 地面に衣服や荷物を置かない
  • やぶや草の多い場所に不用意に入らない
  • 虫よけ剤を使用する

帰宅後のチェック

  • 帰宅後は早めに入浴する
  • 体にマダニが付いていないか確認する
  • 衣類はすぐに洗濯する
  • 首、わき、足の付け根、膝の裏、頭皮などを確認する

10.こんなときは早めにクリニックを受診しましょう

以下に当てはまる場合は、日本紅斑熱などのマダニ感染症の可能性があります。

  • 山、草むら、田畑、河川敷に入ったあとに発熱した
  • 発熱と発疹がある
  • 手足や手のひら・足の裏に発疹が出ている
  • 黒いかさぶたのような刺し口がある
  • マダニに刺されたあと、数日して体調が悪くなった
  • 高熱が続き、だるさが強い
  • 発疹が広がっている

受診時には、「いつ、どこで、どのような屋外活動をしたか」を医師に伝えてください。マダニに刺された記憶がなくても、山や草むらに入った情報が診断の手がかりになります。

まとめ|日本紅斑熱は早期受診・早期治療が大切です

日本紅斑熱は、マダニが媒介する感染症のひとつです。発熱、発疹、刺し口が代表的な症状で、治療が遅れると重症化することがあります。一方で、早期に適切な抗菌薬治療を行えば、改善が期待できる病気です。特に春から秋にかけて、山林、草むら、田畑、河川敷などで活動したあとに発熱や発疹が出た場合には、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省「日本紅斑熱」
    日本紅斑熱
    日本紅斑熱についての情報をお伝えしています
  2. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「日本紅斑熱」
    日本紅斑熱|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
  3. 岡山県「日本紅斑熱に注意しましょう」
    『 日本紅斑熱 』に注意しましょう - 岡山県ホームページ(感染症情報センター)
  4. 千葉県「日本紅斑熱 感染症予防のための情報提供について」
    【日本紅斑熱】感染症予防のための情報提供について(令和8年5月21日発表)
  5. 山口県感染症情報センター「日本紅斑熱」
    日本紅斑熱 - 山口県感染症情報センター(トップページ) - 山口県ホームページ

この記事について

この記事は、公的機関・診療ガイドライン・医学論文などを参考に作成しています。

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療を代替するものではありません。 気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆者:小林 知貴
所属:いしうちファミリークリニック 院長
資格:医学博士/家庭医療専門医/総合診療専門医/総合内科専門医

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