健康診断で「肝機能異常」と言われた方へ
健康診断の結果で、AST・ALT・γ-GTPなどの数値に「異常」「要再検査」「要精密検査」と書かれていると、不安になりますよね。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることがあり、肝機能異常があっても自覚症状がほとんどないことがあります。そのため、健診での異常は、肝臓からの大切なサインです。
この記事では、健康診断で肝機能異常を指摘された方に向けて、AST・ALT・γ-GTPの見方、よくある原因、受診の目安、再検査で確認することをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 肝機能異常とは何か
- AST・ALT・γ-GTPの意味と見方
- AST・ALT・γ-GTPが高いときに考えられる原因
- 脂肪肝・アルコール・肝炎ウイルスとの関係
- 再検査や受診が必要な目安
- 病院で行う検査と生活で気をつけること
1.肝機能異常とは?
肝機能異常とは、血液検査で肝臓や胆道に関連する数値が基準範囲を外れている状態を指します。健康診断でよく確認される代表的な項目は、次の3つです。
- AST(GOT)
- ALT(GPT)
- γ-GTP(γ-GT)
これらの数値が高い場合、脂肪肝、アルコールによる肝障害、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、胆道系の病気などが隠れていることがあります。ただし、数値だけで病名が決まるわけではありません。過去の健診結果、飲酒量、体重変化、内服薬、サプリメント、腹部エコー所見などを合わせて判断します。
2.AST・ALT・γ-GTPの見方
ASTとは?
ASTは、肝臓だけでなく、心臓や筋肉にも多く含まれる酵素です。ASTが高い場合は、肝臓の病気だけでなく、激しい運動後、筋肉の障害、心臓の病気などでも上昇することがあります。そのため、ASTだけが高い場合には、「肝臓だけの問題」と決めつけず、ALTやCK、症状なども合わせて確認します。
ALTとは?
ALTは、ASTよりも肝臓に多く存在する酵素です。肝臓の細胞が傷つくと、血液中にALTが漏れ出し、数値が上昇します。そのため、ALTは肝臓の炎症や障害を反映しやすい検査です。日本肝臓学会の「奈良宣言2023」では、健康診断などでALTが30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することが勧められています。「少し高いだけだから大丈夫」と思って放置せず、原因を確認することが大切です。
γ-GTPとは?
γ-GTPは、肝臓や胆道に関連する酵素です。特に、飲酒習慣がある方で上がりやすい検査として知られていますが、γ-GTPが高い=必ずお酒が原因というわけではありません。γ-GTPは、次のような場合にも上昇します。
- アルコール性肝障害
- 脂肪肝
- 胆石や胆汁の流れの異常
- 薬剤性肝障害
- 慢性肝炎
γ-GTPだけが高い場合でも、飲酒量、薬、サプリメント、ALPやビリルビン、腹部エコーなどを確認することが重要です。
3.健診結果の目安|どのくらいなら受診?
基準値は検査機関によって多少異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 項目 | 主に見ていること | 受診を考える目安 |
|---|---|---|
| AST | 肝臓・筋肉・心臓などの障害 | 基準値を超える、または上昇傾向がある |
| ALT | 肝臓の炎症・肝細胞の障害 | ALT 30超で一度相談を推奨 |
| γ-GTP | 肝臓・胆道・飲酒・薬剤の影響 | 基準値を超える、100以上、または毎年上昇している |
特に、以下に当てはまる場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
- ALTが30を超えている
- AST・ALTが50以上、または100以上に上昇している
- γ-GTPが100以上、または毎年上昇している
- 「要精密検査」「要医療」と書かれている
- 過去にも肝機能異常を指摘されている
- 脂肪肝、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満がある
- 毎日飲酒している、または飲酒量が多い
- 肝炎ウイルス検査を受けたことがない
- 薬やサプリメントを複数使用している
4.肝機能異常でよくある原因
脂肪肝
健康診断で肝機能異常を指摘される原因として、非常に多いのが脂肪肝です。脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態です。肥満、内臓脂肪、糖尿病、脂質異常症、運動不足、食べすぎ、飲酒などが関係します。以前は「脂肪肝は軽い病気」と考えられることもありましたが、放置すると脂肪肝炎、肝線維化、肝硬変、肝がんへ進行することがあります。また、脂肪肝は太っている人だけの病気ではありません。体型が標準でも、内臓脂肪、糖尿病、脂質異常症、遺伝的な要因などで起こることがあります。
アルコールによる肝障害
お酒を飲む習慣がある方で、γ-GTPが高い場合は、アルコールの影響を考えます。ただし、飲酒による肝障害は、γ-GTPだけでなくASTやALTも上がることがあります。飲酒量が多い状態が続くと、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変へ進行することがあります。「休肝日があるから大丈夫」と思っていても、1回あたりの飲酒量が多い場合は注意が必要です。
B型肝炎・C型肝炎
肝機能異常がある場合、必ず確認しておきたいのがB型肝炎・C型肝炎です。B型肝炎やC型肝炎は、感染していても自覚症状がないまま経過することがあります。しかし、慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因になることがあります。現在は治療法が進歩しており、早く見つけて適切につなげることが重要です。これまで一度も肝炎ウイルス検査を受けたことがない方は、HBs抗原、HCV抗体などの血液検査を受けることをおすすめします。自治体や保健所で無料または公費で受けられる場合もあります。
薬・サプリメントによる肝障害
薬やサプリメント、漢方薬、健康食品でも肝機能異常が起こることがあります。特に、最近飲み始めた薬やサプリメントがある場合、肝機能異常との関係を確認する必要があります。自己判断で急に薬を中止すると危険な場合もあるため、内服中の薬やサプリメントは、受診時に必ず医師へ伝えましょう。
胆石・胆道系の病気
γ-GTPやALP、ビリルビンが高い場合は、肝臓そのものだけでなく、胆汁の通り道である胆道系の異常も考えます。胆石、胆管炎、胆汁うっ滞などが原因になることがあります。右上腹部の痛み、発熱、黄疸がある場合は、早めの受診が必要です。
筋肉の影響
ASTは筋肉にも含まれるため、激しい運動、筋肉痛、筋肉の病気などで上がることがあります。健診の前日に激しい運動をした場合などは、ASTが一時的に上がることもあります。必要に応じて、CKという筋肉の検査を追加して確認します。
5.すぐに受診した方がよい症状
肝機能異常は無症状のことも多いですが、次のような症状がある場合は早めに医療機関を受診してください。
早めの受診が必要な症状
- 皮膚や白目が黄色い
- 尿の色が濃い、茶色い
- 強いだるさが続く
- 食欲がない、吐き気がある
- 右上腹部が痛い
- 発熱がある
- お腹が張る、足がむくむ
- 出血しやすい、あざが増えた
- 意識がぼんやりする
これらは、急性肝炎、胆道感染、肝機能低下などのサインである可能性があります。
6.病院ではどんな検査をする?
肝機能異常で受診した場合、まずは健診結果を確認し、必要に応じて追加検査を行います。
血液検査
再検査では、AST・ALT・γ-GTPだけでなく、以下の項目を確認することがあります。
- ALP
- ビリルビン
- アルブミン
- 血小板
- PT-INR
- HBs抗原
- HCV抗体
- 血糖・HbA1c
- 中性脂肪・LDLコレステロール
- CK
- 自己免疫性肝疾患に関する検査
肝臓の炎症だけでなく、肝臓の働き、肝炎ウイルス、脂肪肝に関連する生活習慣病、筋肉の影響などを確認します。
腹部エコー検査
肝機能異常では、腹部エコー検査が重要です。腹部エコーでは、脂肪肝の有無、肝臓の形、胆石、胆管の拡張、肝腫瘤の有無などを確認できます。血液検査だけではわからない情報が得られるため、肝機能異常が続く場合や脂肪肝が疑われる場合には検討されます。
肝線維化の評価
脂肪肝や慢性肝炎では、肝臓が硬くなる肝線維化が進んでいないかを確認することがあります。血液検査から計算するFIB-4 index、腹部エコー、専門医療機関で行う肝硬度測定などを使って評価します。肝線維化が進んでいる場合は、消化器内科や肝臓専門医への紹介が必要になることがあります。
7.肝機能異常を指摘されたときに自分でできること
健診結果を保管する
肝機能の数値は、1回だけでなく過去からの変化が重要です。去年より少しずつ上がっているのか、一時的な異常なのかで判断が変わります。受診時には、過去の健診結果も持参しましょう。
飲酒量を見直す
γ-GTPが高い方、AST・ALTも上がっている方は、飲酒量を見直しましょう。「毎日少しだけ」のつもりでも、合計すると肝臓に負担がかかっていることがあります。まずは飲酒量を記録し、減酒や休肝日について医師と相談することが大切です。
体重・内臓脂肪を減らす
脂肪肝が疑われる場合、体重や内臓脂肪を減らすことが重要です。急激なダイエットではなく、食事内容の見直し、間食・甘い飲み物・夜食の調整、適度な運動を継続することが大切です。
糖尿病・脂質異常症・高血圧を放置しない
脂肪肝は、糖尿病、脂質異常症、高血圧などと関連します。肝機能異常だけでなく、血糖値、HbA1c、中性脂肪、LDLコレステロール、血圧も合わせて確認しましょう。
薬・サプリメントを整理する
薬剤性肝障害は、処方薬だけでなく、市販薬、漢方薬、サプリメント、健康食品でも起こることがあります。受診時には、飲んでいるものをすべてメモするか、現物を持参すると診察がスムーズです。
8.よくある質問
Q1.肝機能異常は放置しても大丈夫ですか?
一時的な変動のこともありますが、放置してよいとは限りません。特にALTが30を超えている場合、脂肪肝、肝炎ウイルス、アルコール、薬剤などの原因を確認することが大切です。
Q2.γ-GTPだけ高いのはお酒のせいですか?
お酒が原因のことは多いですが、それだけではありません。脂肪肝、胆道系の異常、薬剤の影響、慢性肝炎などでもγ-GTPは上がります。飲酒習慣がない方でも、γ-GTP高値が続く場合は一度相談しましょう。
Q3.脂肪肝は痩せていれば関係ありませんか?
痩せている方でも脂肪肝になることがあります。体型だけで判断せず、血液検査、腹部エコー、糖尿病や脂質異常症の有無などを合わせて確認します。
Q4.再検査だけ受ければよいですか?
再検査は大切ですが、数値を確認するだけでは原因がわからないことがあります。肝炎ウイルス検査、腹部エコー、飲酒量や薬剤の確認、生活習慣病の評価などを組み合わせて判断します。
Q5.肝臓がんが心配です。健診でわかりますか?
通常の健診の肝機能検査だけで、肝臓がんを早期に見つけることは難しい場合があります。B型肝炎、C型肝炎、肝硬変、進行した脂肪肝などリスクがある方は、腹部エコーなどの定期的な検査が必要になることがあります。
9.まとめ|肝機能異常は「早めに原因を確認する」ことが大切です
健康診断で肝機能異常を指摘されても、すぐに重い病気と決まるわけではありません。しかし、肝臓は症状が出にくい臓器です。自覚症状がないからといって放置すると、脂肪肝、慢性肝炎、肝線維化、肝硬変などが進行してしまうことがあります。
この記事のポイント
- AST・ALT・γ-GTPは、肝臓や胆道の異常を見つける大切な検査です。
- ALTは肝臓の障害を反映しやすく、ALT 30超では一度受診がすすめられます。
- γ-GTP高値はお酒だけでなく、脂肪肝、胆道系、薬剤でも起こります。
- 肝機能異常の原因として、脂肪肝、アルコール、B型・C型肝炎、薬剤性肝障害などがあります。
- 自覚症状がなくても、健診で異常を指摘されたら原因を確認しましょう。
健診結果で「肝機能異常」「要再検査」「要精密検査」と書かれていた方は、健診結果を持参して、かかりつけ医や内科で相談してください。
