- 1.マダニ感染症とは?ダニに刺されたあとに注意したい病気
- 2.マダニに刺されたらどうする?自分で引き抜いてよい?
- 3.すぐ受診したほうがよい症状|マダニ感染症の危険サイン
- 4.日本紅斑熱・SFTS・ツツガムシ病の違い
- 5.SFTSとは?高齢者では特に注意が必要なマダニ感染症
- 6.日本紅斑熱とは?発熱・発疹・刺し口が特徴
- 7.ツツガムシ病とは?黒いかさぶたのような刺し口に注意
- 8.マダニ感染症の診断|医療機関では何を調べる?
- 9.マダニ感染症の治療|市販薬で様子を見てよい?
- 10.マダニ感染症を予防する方法
- 11.よくある質問|マダニに刺されたときの不安
- 12.まとめ|マダニに刺された後の発熱・発疹は早めに相談を
- 参考文献
1.マダニ感染症とは?ダニに刺されたあとに注意したい病気
マダニ感染症とは、マダニやツツガムシなどのダニに刺されることで、ウイルスや細菌が体内に入り発症する感染症の総称です。
「ダニに噛まれたけど大丈夫?」「マダニに刺されたあと、いつ受診すればいい?」と不安になる方は少なくありません。多くの場合、ダニに刺されただけで必ず感染症になるわけではありません。しかし、数日〜2週間ほどしてから発熱、発疹、だるさ、下痢、腹痛、刺し口の腫れなどが出た場合は、マダニ感染症の可能性があります。
日本で注意したい代表的なダニ媒介感染症には、以下のような病気があります。
- 日本紅斑熱
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- ツツガムシ病
- ライム病
- ダニ媒介脳炎
特に日本紅斑熱、SFTS、ツツガムシ病は、発熱や発疹などの症状が似ているため、一般の方には区別が難しい病気です。この記事では、マダニに刺されたあとに注意すべき症状、受診の目安、日本紅斑熱・SFTS・ツツガムシ病の違い、予防法をわかりやすく解説します。


まず知っておきたいポイント
- マダニに刺されても、すぐ症状が出るとは限りません。
- 発熱や発疹は、数日〜2週間後に出ることがあります。
- 無理にマダニを引き抜くと、口器が皮膚に残ることがあります。
- 発熱、発疹、強いだるさ、下痢、意識がぼんやりする場合は早めに受診しましょう。
2.マダニに刺されたらどうする?自分で引き抜いてよい?
マダニは、蚊のように一瞬で刺すのではなく、皮膚にしっかり吸着して数日間にわたり血を吸うことがあります。そのため、入浴時や着替えの際に「黒いできもののようなものが皮膚についている」と気づくことがあります。写真はダニが刺している状態です。

マダニを見つけたときの対応
- 無理に引き抜かない
- つぶさない
- アルコールや火で取ろうとしない
- 可能であれば医療機関で除去してもらう
- いつ、どこで刺された可能性があるかをメモしておく
無理に引き抜くと、マダニの口の部分が皮膚に残って炎症を起こすことがあります。また、マダニをつぶすことで体液に触れてしまう可能性もあるため注意が必要です。すでに自然に取れている場合でも、その後1〜2週間は体調の変化に注意しましょう。発熱、発疹、強い倦怠感、下痢、腹痛などが出た場合は、医療機関を受診してください。
3.すぐ受診したほうがよい症状|マダニ感染症の危険サイン
マダニに刺されたあと、次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 38℃以上の発熱がある
- 体に赤い発疹が出てきた
- 刺された場所が黒くかさぶたのようになっている
- 強いだるさ、頭痛、関節痛がある
- 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛がある
- 意識がぼんやりする、ぐったりしている
- 高齢者、持病がある方、免疫力が低い方
受診時には、医師に以下の情報を伝えると診断の助けになります。
- いつ刺されたか
- どこで刺された可能性があるか
- 山、畑、草むら、河川敷、公園、キャンプ場などに行ったか
- ペットや野生動物との接触があったか
- 発熱や発疹がいつから出たか
救急受診も考える症状
高熱に加えて、意識がぼんやりする、出血しやすい、ぐったりして水分が取れない、呼びかけへの反応が悪い場合は、重症化している可能性があります。早急な受診を検討してください。
4.日本紅斑熱・SFTS・ツツガムシ病の違い
マダニ感染症で特に重要なのが、日本紅斑熱、SFTS、ツツガムシ病です。いずれも発熱や発疹を伴うことがありますが、原因となる病原体、潜伏期間、治療法、重症化のしやすさに違いがあります。
| 比較項目 | 日本紅斑熱 | SFTS | ツツガムシ病 |
|---|---|---|---|
| 主な媒介 | マダニ | マダニ、感染動物との接触 | ツツガムシ |
| 原因 | リケッチア・ジャポニカ | SFTSウイルス | オリエンチア・ツツガムシ |
| 潜伏期間 | 2〜8日程度 | 6〜14日程度 | 5〜14日程度 |
| 主な症状 | 発熱、発疹、刺し口 | 発熱、強い倦怠感、下痢・嘔吐・腹痛、血小板減少 | 発熱、発疹、刺し口、リンパ節腫脹 |
| 発疹の特徴 | 手足を含めて全身に出ることがある | 発疹は目立たないこともある | 体幹部を中心に出ることがある |
| 治療 | 抗菌薬 | 全身管理、必要に応じて抗ウイルス薬を検討 | 抗菌薬 |
| 注意点 | 治療が遅れると重症化することがある | 高齢者で重症化・死亡例がある | 治療が遅れると重症化することがある |
日本紅斑熱とツツガムシ病は、どちらもリケッチア感染症の仲間で、早期に適切な抗菌薬を開始することが重要です。一方、SFTSはウイルス感染症であり、血小板減少や白血球減少、肝機能障害などを伴うことがあります。
5.SFTSとは?高齢者では特に注意が必要なマダニ感染症
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルスを持つマダニに刺されることで感染する病気です。近年では、SFTSを発症したネコやイヌなどの動物との接触による感染も報告されており、動物を介した感染にも注意が必要です。
SFTSの主な症状
- 発熱
- 強いだるさ
- 食欲低下
- 吐き気、嘔吐
- 下痢、腹痛
- 頭痛、筋肉痛
- 意識障害
- 出血しやすくなる
SFTSでは、血液検査で白血球減少、血小板減少、肝酵素上昇などがみられることがあります。重症化すると命にかかわることがあり、特に高齢者や基礎疾患のある方では注意が必要です。
以前はSFTSに対して特別な抗ウイルス薬はないとされていましたが、現在は病状に応じて抗ウイルス薬の使用が検討される場合があります。ただし、自己判断で対応できる病気ではないため、疑わしい症状がある場合は早めの受診が大切です。
6.日本紅斑熱とは?発熱・発疹・刺し口が特徴
日本紅斑熱は、病原体を持つマダニに刺されることで感染するリケッチア感染症です。西日本を中心に報告が多い病気ですが、地域によっては身近な感染症として注意が必要です。
日本紅斑熱の三大症状
- 発熱
- 発疹
- 刺し口
潜伏期間は一般的に2〜8日程度です。急な高熱で発症し、手足を含む全身に赤い発疹が出ることがあります。刺し口は小さく、本人が気づかないこともあります。治療には、主にテトラサイクリン系抗菌薬が使用されます。治療が遅れると重症化することがあるため、野外活動後の発熱と発疹がある場合は早めに受診しましょう。
7.ツツガムシ病とは?黒いかさぶたのような刺し口に注意
ツツガムシ病は、ツツガムシというダニの一種に刺されることで感染するリケッチア感染症です。秋から初冬に多いイメージがありますが、地域によっては春にも発生することがあります。
ツツガムシ病の主な症状
- 高熱
- 強い倦怠感
- 頭痛
- 発疹
- リンパ節の腫れ
- 黒いかさぶたのような刺し口
ツツガムシ病では、刺された場所に黒いかさぶたのような刺し口がみられることがあります。脇の下、下腹部、足の付け根、背中など、自分では見つけにくい場所にできることもあります。治療が遅れると重症化する場合がありますが、早期に適切な抗菌薬を使用することで改善が期待できます。
8.マダニ感染症の診断|医療機関では何を調べる?
マダニ感染症が疑われる場合、医療機関では以下のような情報をもとに診断を進めます。
- マダニに刺された、または野外活動をした経緯
- 発熱、発疹、刺し口の有無
- リンパ節の腫れ
- 血液検査の異常
- PCR検査や抗体検査
血液検査では、白血球、血小板、肝機能、炎症反応などを確認します。SFTSでは白血球や血小板の低下がみられることがあり、日本紅斑熱やツツガムシ病でも肝機能異常や炎症反応上昇がみられることがあります。マダニ感染症は、初期には風邪や胃腸炎のように見えることがあります。そのため、「草むらに入った」「畑仕事をした」「キャンプに行った」「ペットにマダニがついていた」といった情報を医師に伝えることが重要です。
9.マダニ感染症の治療|市販薬で様子を見てよい?
マダニ感染症は、市販の解熱剤やかゆみ止めだけで治せる病気ではありません。原因となる病気によって治療法が異なります。
| 疾患名 | 主な治療 |
|---|---|
| SFTS | 全身管理、補液、必要に応じた集中治療、抗ウイルス薬の検討 |
| 日本紅斑熱 | テトラサイクリン系抗菌薬など |
| ツツガムシ病 | テトラサイクリン系抗菌薬など |
| ライム病 | 抗菌薬治療 |
特に日本紅斑熱やツツガムシ病は、早期に適切な抗菌薬を開始することが重症化予防につながります。発熱や発疹がある状態で「虫刺されだろう」と自己判断して様子を見続けるのは危険です。
10.マダニ感染症を予防する方法
マダニ感染症の予防で最も大切なのは、マダニに刺されないことです。山林、草むら、畑、河川敷、公園、キャンプ場、ペットの散歩コースなどでは注意しましょう。
野外活動時の服装
- 長袖・長ズボンを着用する
- ズボンの裾を靴下や長靴の中に入れる
- 首にタオルを巻く
- 帽子や手袋を着用する
- サンダルではなく、足を覆う靴を履く
- マダニを見つけやすい明るい色の服を選ぶ
虫よけ剤の使用
虫よけ剤は、マダニ対策の補助として役立ちます。ディートやイカリジンを含む虫よけ剤を、使用方法を守って使いましょう。ただし、虫よけ剤だけで完全に防げるわけではないため、服装や帰宅後の確認も大切です。
帰宅後に確認したい場所
- わきの下
- 足の付け根
- 膝の裏
- 手首
- お腹まわり
- 胸の下
- 頭皮、髪の毛の中
帰宅後は早めに入浴し、衣類を着替えましょう。ペットにもマダニがつくことがあるため、犬や猫の体も確認し、必要に応じて動物病院でマダニ予防薬について相談しましょう。
11.よくある質問|マダニに刺されたときの不安
Q1.マダニに刺されたら必ず感染症になりますか?
いいえ。マダニに刺されても、必ず感染症になるわけではありません。ただし、刺されたあと数日〜2週間程度は発熱、発疹、だるさ、下痢などの症状に注意しましょう。
Q2.マダニを自分で取ってしまいました。受診した方がいいですか?
マダニの一部が皮膚に残っている、赤みや腫れが強い、発熱や発疹がある場合は受診をおすすめします。症状がなくても不安が強い場合や、高齢者・基礎疾患がある方は相談してください。
Q3.刺し口がない場合でもマダニ感染症の可能性はありますか?
あります。刺し口は小さく、自分では見つけられないことがあります。野外活動後の発熱や発疹がある場合は、刺し口が見つからなくても医療機関で相談しましょう。
Q4.家族や周囲の人にうつりますか?
日本紅斑熱やツツガムシ病は、通常、人から人へ感染する病気ではありません。一方、SFTSでは血液や体液との濃厚接触で感染する可能性があるため、医療機関での適切な対応が重要です。
Q5.ペットから感染することはありますか?
ペットにマダニが付着して家の中に持ち込まれることがあります。また、SFTSでは感染した動物との接触が問題になることがあります。ペットのマダニ予防や、体調不良の動物との接触には注意しましょう。
12.まとめ|マダニに刺された後の発熱・発疹は早めに相談を
マダニ感染症は、ダニに刺された直後には症状がなくても、数日〜2週間ほどしてから発熱や発疹、消化器症状などが出ることがあります。
特に、日本紅斑熱、SFTS、ツツガムシ病は、早期に気づくことが大切な感染症です。マダニに刺されたあとに発熱、発疹、強いだるさ、下痢、腹痛、意識障害などがある場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。
受診時には、「マダニに刺された可能性がある」「草むらや山に入った」「ペットにマダニがついていた」などの情報を伝えることが、早期診断につながります。
マダニ感染症を防ぐ基本は、刺されないことです。野外活動では肌の露出を減らし、帰宅後は入浴と体のチェックを行いましょう。
参考文献
- 厚生労働省:ダニ媒介感染症
ダニ媒介感染症 - 厚生労働省:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A - 国立健康危機管理研究機構:日本紅斑熱
日本紅斑熱|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト - 国立健康危機管理研究機構:つつが虫病・ダニ媒介感染症
IDWR 2021年第36号<注目すべき感染症>ダニ媒介感染症:つつが虫病・日本紅斑熱|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト - 国立健康危機管理研究機構:国内外における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の発生状況
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html - 日本感染症学会:日本紅斑熱(Japanese spotted fever)
日本紅斑熱(Japanese spotted fever)症状からアプローチするインバウンド感染症への対応 - 感染症クイック・リファレンス|日本感染症学会

