海外旅行に必要なワクチンは?渡航先別の予防接種と接種時期を医師が解説

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ワクチン・予防医療

海外旅行に行くとき、「どのワクチンを受ければよいのだろう」「出発の何日前までに接種すればよいの?」と迷う方は少なくありません。

海外渡航に必要なワクチンは、旅行先の国だけで決まるわけではありません。都市部だけの短期観光なのか、農村部に長期間滞在するのか、動物と接触する可能性があるのかなどによって、必要なワクチンは大きく変わります。また、黄熱ワクチンや髄膜炎菌ワクチンのように、入国や巡礼の際に予防接種証明書が必要になるワクチンもあります。

この記事では、海外旅行に必要なワクチンについて、渡航先別の考え方、ワクチンの種類、接種回数、スケジュール、費用の目安を医師がわかりやすく解説します。

この記事の情報について

本記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。感染症の流行状況や各国の入国条件は随時変更されます。実際の渡航前には、厚生労働省検疫所FORTH、WHO、渡航先の大使館・領事館、航空会社などで最新情報をご確認ください。

1.海外旅行に必要な「渡航ワクチン」とは?

海外旅行や海外赴任、留学などに備えて接種するワクチンは、一般に「渡航ワクチン」「トラベルワクチン」と呼ばれます。渡航ワクチンには、大きく分けて次の3つの目的があります。

  • 海外で感染症にかかることを予防する
  • 感染症の重症化や後遺症を防ぐ
  • 渡航先の入国条件や学校・職場の要件を満たす

黄熱、A型肝炎、狂犬病、日本脳炎などは日本国内で遭遇する機会が少ない一方、海外の一部地域では重要な感染症です。

一方、麻しん、風しん、破傷風、ポリオ、水痘、インフルエンザなどは、日本でも接種される「定期接種・基本的なワクチン」ですが、海外渡航前に接種歴を見直すことが非常に重要です。

2.海外旅行のワクチンはいつから準備する?

理想的には、出発の2~3か月前までにトラベルクリニックや対応医療機関へ相談しましょう。

A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、ダニ媒介脳炎などは、十分な免疫をつけるために複数回の接種が必要です。厚生労働省検疫所FORTHも、可能であれば出発3か月以上前から接種計画を立てるよう案内しています。

出発までの期間 対応の目安
3か月以上 複数回接種を含め、余裕をもって計画できます
1~2か月 多くのワクチンを開始できますが、帰国後や現地で追加接種が必要になることがあります
2~4週間 優先順位を決めて接種します。黄熱、A型肝炎、腸チフス、髄膜炎菌などを検討します
出発まで2週間未満 接種できるワクチンもあります。時間がないからと諦めず、早めに医療機関へ相談してください

黄熱ワクチンは特に注意

黄熱の国際予防接種証明書、いわゆる「イエローカード」は、原則として接種10日後から有効です。証明書が必要な国へ渡航する場合は、乗り継ぎ国も含めて早めに確認しましょう。

3.海外旅行前にまず確認したい基本的なワクチン

渡航先特有のワクチンを考える前に、まず日本で通常接種するワクチンが完了しているかを確認します。

麻しん・風しん(MRワクチン)

麻しんは感染力が非常に強く、世界各地で流行が繰り返されています。先進国や都市部への旅行であっても感染する可能性があります。麻しん含有ワクチンを2回接種した記録がない方、接種歴が不明な方は、渡航前の接種を検討します。通常はMRワクチンを使用し、必要な場合は4週間以上の間隔を空けて2回接種します。

破傷風・ジフテリア・百日咳

破傷風菌は世界中の土壌に存在します。登山、キャンプ、災害支援、農作業、バイク旅行などでケガをする可能性がある場合は、特に重要です。小児期の基礎接種が完了している成人は、最後の接種からおおむね10年以上経過していれば追加接種を検討します。百日咳も含めて予防したい場合は、成人用Tdapワクチンが使用されることがあります。

ポリオ

小児期のポリオワクチンが完了しているか確認します。ポリオが発生している国への渡航では、成人でも追加接種を検討することがあります。特に1975~1977年生まれの日本人は、当時使用された経口ポリオワクチンによる免疫が十分でない可能性が指摘されています。

インフルエンザ・新型コロナ

航空機、空港、ホテル、会議、クルーズ船、巡礼など、人が密集する環境では呼吸器感染症が広がりやすくなります。渡航時期や年齢、基礎疾患に応じて、最新シーズンのインフルエンザワクチンや新型コロナワクチンを検討します。

水痘・おたふくかぜ

留学や寮生活では、接種証明書や抗体検査結果の提出を求められることがあります。特に米国、カナダ、オーストラリアなどへの留学では、学校ごとの要件を確認してください。

4.海外旅行で検討する主なワクチン一覧

以下は、成人が初めて接種する場合の代表的なスケジュールです。実際の接種回数や間隔は、年齢、過去の接種歴、使用する製品、出発日によって異なります。

ワクチン 主な対象 代表的な接種回数・スケジュール 1回あたりの費用目安 合計費用の目安
A型肝炎 アジア、アフリカ、中南米など 国産:0、2~4週、約6か月の3回
輸入:0、6~12か月の2回
約12,000~16,000円 約26,000~48,000円
B型肝炎 長期滞在、医療行為・性行為・血液接触の可能性がある人 0、1か月、6か月の3回 約7,000~8,000円 約21,000~24,000円
破傷風 世界各地。野外活動やケガの可能性がある人 基礎接種済み:追加1回
未接種・不明:0、約1か月、6~12か月の3回
約4,000~6,000円 約4,000~18,000円
成人用Tdap 破傷風・ジフテリア・百日咳を予防したい人、留学者 通常1回。接種歴により追加 約9,000~12,000円 約9,000~12,000円
狂犬病 アジア、アフリカ、中南米、動物との接触、医療アクセスが悪い地域 国内承認製剤:0、7日、21日または28日の3回 約13,000~17,000円 約39,000~51,000円
日本脳炎 東アジア・東南アジア・南アジアの農村部、長期滞在 未接種:0、1~4週、約1年後の3回
基礎接種済み成人:リスクにより追加1回
約7,000~9,000円 約7,000~27,000円
腸チフス 南アジア、東南アジア、アフリカ、中南米など 注射ワクチン1回。原則出発2週間以上前 約10,000~12,000円 約10,000~12,000円
黄熱 熱帯アフリカ、南米の一部。証明書を要求する国 1回。証明書は接種10日後から生涯有効 約18,000~20,000円 約18,000~20,000円
髄膜炎菌ACWY アフリカ髄膜炎ベルト、メッカ巡礼、海外留学・寮生活 通常1回。必要に応じて5年後に追加 約22,000~25,000円 約22,000~25,000円
ポリオ(IPV) ポリオ発生国・流行国への渡航 基礎接種済み成人は追加1回を検討。未完了者は複数回 約10,000~12,000円 接種歴により異なる
ダニ媒介脳炎 中東欧、北欧、バルト三国、ロシアなどで森林・草地活動をする人 0、1~3か月、2回目から5~12か月後の3回 約12,000~15,000円 約36,000~45,000円
MR 麻しん・風しんの免疫が不十分な人 必要に応じて4週間以上空けて2回 約11,000~14,000円 約11,000~28,000円
経口コレラ 流行地、難民キャンプ、衛生状態が著しく悪い環境 成人は通常2回。1~6週間隔で、出発1週間前までに完了 約10,000~13,000円 約20,000~26,000円

上記とは別に、初診料・相談料、英文証明書料、接種手帳代などが必要になる場合があります。また、輸入ワクチンは国内未承認製剤であることがあり、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象にならない場合があります。

5.渡航先別に検討したいワクチン

以下は一般的な目安です。同じ国でも、都市部のホテルに3日間滞在する場合と、農村部で半年間生活する場合では必要なワクチンが異なります。

渡航地域 国・地域の例 優先して確認するワクチン 滞在内容によって追加検討
北米 米国、カナダ MR、破傷風・Tdap、インフルエンザ、新型コロナ、水痘 留学・寮生活では髄膜炎菌ACWY、MenB、B型肝炎など
西欧・南欧 英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン MR、破傷風・Tdap、インフルエンザ、新型コロナ 森林活動ではダニ媒介脳炎。長期滞在ではB型肝炎
北欧・中東欧・東欧 スウェーデン、フィンランド、オーストリア、チェコ、ポーランド、バルト三国 基本ワクチン、MR、破傷風 春から秋に森林、草原、農村部で活動する場合はダニ媒介脳炎
東アジア 中国、韓国、台湾、香港、モンゴル A型肝炎、B型肝炎、破傷風、MR 腸チフス、狂犬病、日本脳炎。農村部・長期滞在で重要度が上がる
東南アジア タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシア A型肝炎、破傷風、MR B型肝炎、腸チフス、狂犬病、日本脳炎。黄熱流行国から入国する場合は証明書を確認
南アジア インド、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ A型肝炎、腸チフス、破傷風、MR B型肝炎、狂犬病、日本脳炎、ポリオ。感染リスクが比較的高い地域
中東 サウジアラビア、UAE、ヨルダン、トルコなど A型肝炎、破傷風、MR B型肝炎、腸チフス、狂犬病、ポリオ。メッカ巡礼では髄膜炎菌ACWY
北アフリカ エジプト、モロッコ、チュニジアなど A型肝炎、破傷風、MR B型肝炎、腸チフス、狂犬病。黄熱流行国からの入国要件を確認
サハラ以南アフリカ ケニア、タンザニア、ウガンダ、ガーナ、セネガル、ナイジェリアなど 黄熱、A型肝炎、破傷風、MR 腸チフス、B型肝炎、狂犬病、髄膜炎菌ACWY、ポリオ
中南米 メキシコ、ブラジル、ペルー、コロンビア、ボリビアなど A型肝炎、破傷風、MR 黄熱、腸チフス、B型肝炎、狂犬病。アマゾン流域や内陸部では黄熱が重要
カリブ海 キューバ、ドミニカ共和国、ジャマイカなど A型肝炎、破傷風、MR 腸チフス、B型肝炎、狂犬病。黄熱流行国からの入国条件を確認
オーストラリア・ニュージーランド オーストラリア、ニュージーランド MR、破傷風・Tdap、インフルエンザ、新型コロナ 滞在地域や季節により日本脳炎を検討する場合がある
太平洋島しょ国 パプアニューギニア、ソロモン諸島、フィジーなど A型肝炎、破傷風、MR B型肝炎、腸チフス、日本脳炎、狂犬病、ポリオなどを地域別に検討

6.代表的な渡航ワクチンを詳しく解説

A型肝炎ワクチン

A型肝炎は、ウイルスに汚染された水、氷、生野菜、果物、魚介類などから感染します。衛生状態が整っていない地域では、短期間の観光旅行でも感染する可能性があります。アジア、アフリカ、中南米などへの渡航では、優先度の高いワクチンです。国産ワクチンは通常3回接種ですが、最初の2回を2~4週間隔で受けることで、渡航前の一定の免疫獲得が期待できます。3回目は約6か月後に忘れず接種します。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎は、血液や体液を介して感染します。性行為だけでなく、交通事故などで現地の医療機関を受診した場合、注射、手術、歯科治療、入れ墨、ピアスなどでも感染する可能性があります。長期滞在者、医療従事者、現地で医療行為を受ける可能性がある方、性行為の可能性がある方では接種を検討します。一般的なスケジュールは0、1か月、6か月の3回です。出発まで時間がない場合には、製品によって短縮スケジュールが選択されることがあります。

狂犬病ワクチン

狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する感染症です。犬だけでなく、猫、サル、コウモリ、キツネなどの哺乳類から感染します。次のような方では、渡航前の曝露前接種を積極的に検討します。

  • アジア、アフリカ、中南米へ長期滞在する
  • 子どもを連れて渡航する
  • 動物と接触する可能性がある
  • 自転車・バイク・徒歩で移動する
  • 農村部、山間部、離島など医療アクセスが悪い場所へ行く
  • 獣医師、動物研究者、洞窟探検者など

国内承認ワクチンでは、通常0日、7日、21日または28日の3回接種です。WHOやCDCでは一部の渡航者に0日・7日の2回法が採用されていますが、日本での接種は使用する製品や医療機関の方針により異なります。

事前接種をしていても、動物に咬まれた後の対応は必要です。

傷口を石けんと流水で15分程度よく洗い、できるだけ早く医療機関を受診してください。事前接種済みでも、原則として曝露後ワクチンの追加接種が必要です。

日本脳炎ワクチン

日本脳炎は、ウイルスを保有する蚊に刺されることで感染します。東アジア、東南アジア、南アジアを中心に流行しています。短期間の都市観光だけであればリスクは一般に低いものの、次の場合は接種を検討します。

  • 流行地域に1か月以上滞在する
  • 農村部、水田地帯、養豚地域に滞在する
  • 夜間や屋外で活動することが多い
  • 雨期や日本脳炎の流行シーズンに渡航する

日本で小児期の定期接種を完了している成人は、渡航内容に応じて追加接種1回で対応できる場合があります。

腸チフスワクチン

腸チフスは、チフス菌に汚染された水や食べ物から感染します。特にインド、パキスタン、バングラデシュ、ネパールなどの南アジアでは重要です。注射タイプの腸チフスワクチンは通常1回で、原則として出発2週間以上前に接種します。国内では輸入ワクチンが使用されることがあります。ワクチンの予防効果は100%ではないため、接種後も生水、氷、カットフルーツ、生野菜、加熱不十分な料理には注意が必要です。

黄熱ワクチン

黄熱は蚊が媒介するウイルス感染症で、熱帯アフリカや南米の一部で流行しています。黄熱ワクチンには、次の2つの意味があります。

  • 黄熱流行地域で感染しないための予防
  • 渡航先の入国要件を満たすための国際証明書取得

1回の接種で原則として生涯有効とされ、国際予防接種証明書は接種10日後から有効です。過去に「有効期間10年」として発行された証明書も、原則として生涯有効です。黄熱ワクチンは生ワクチンであるため、妊娠中、免疫抑制状態、重い卵アレルギー、胸腺疾患、高齢者などでは慎重な判断が必要です。

髄膜炎菌ワクチン

髄膜炎菌感染症は、飛沫や唾液を介して感染し、髄膜炎や敗血症を起こします。発症から急速に重症化することがある感染症です。アフリカのサハラ砂漠南縁には「髄膜炎ベルト」と呼ばれる流行地域があります。また、米国、英国、オーストラリアなどの大学寮では、髄膜炎菌ワクチンの接種証明書を求められることがあります。サウジアラビアのメッカ巡礼では、最新の要件に合った4価髄膜炎菌ワクチンMenACWYの接種証明書が必要です。通常は渡航10日以上前に接種し、結合型ワクチンの証明書は一般に5年間有効とされますが、毎年の公式要件を必ず確認してください。MenACWYはA、C、W、Y群を予防しますが、B群は予防できません。留学先からMenBワクチンを指定される場合は、別のワクチンが必要です。

ポリオワクチン

ポリオは、便などに排泄されたウイルスが口から入り、まれに手足の麻痺を起こす感染症です。野生株ポリオは主にアフガニスタンとパキスタンで伝播が続いていますが、ワクチン由来ポリオウイルスの流行国は随時変わります。WHOは、ポリオ感染国の居住者や4週間を超える長期滞在者が国外へ出る場合、出国前4週間~12か月以内の追加接種と、国際予防接種証明書への記録を求める暫定勧告を出すことがあります。対象国は数か月単位で変更されるため、渡航直前に最新情報を確認してください。

ダニ媒介脳炎ワクチン

ダニ媒介脳炎は、ウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染します。中東欧、北欧、バルト三国、ロシアなどを中心に発生しています。都市観光だけでは通常リスクは高くありませんが、春から秋に流行地域でハイキング、キャンプ、登山、農作業、森林作業などを行う場合は接種を検討します。日本では2024年にダニ媒介脳炎ワクチンが承認されました。一般的には3回接種で、2回目を1~3か月後、3回目を2回目から5~12か月後に接種します。

7.入国時に接種証明書が必要になるワクチン

黄熱の国際予防接種証明書

黄熱の流行国へ入国する場合だけでなく、黄熱流行国から別の国へ移動する場合や、流行国の空港で長時間乗り継ぐ場合にも証明書が必要になることがあります。例えば、目的地には黄熱リスクがなくても、アフリカや南米の黄熱流行国を経由したために証明書を求められることがあります。

メッカ巡礼の髄膜炎菌ワクチン

サウジアラビアでHajjやUmrahに参加する場合は、MenACWYワクチンの接種証明書が重要です。季節性インフルエンザ、新型コロナ、ポリオ、黄熱などについても、出発国やその年の規定によって要件が追加されることがあります。

ポリオの接種証明書

ポリオ感染国に4週間を超えて滞在した後に出国する場合、出国前4週間~12か月以内の接種証明を求められることがあります。

留学・就労で求められる証明書

海外の学校、大学、医療機関、企業では、次の接種記録や抗体検査結果を求められることがあります。

  • MRまたはMMR
  • 水痘
  • B型肝炎
  • Tdap
  • 髄膜炎菌ACWY、MenB
  • ポリオ
  • 結核検査

学校指定の用紙がある場合は、初診時に必ず持参してください。英文証明書の発行には1~2週間以上かかる医療機関もあります。

8.短期間の観光旅行でもワクチンは必要?

滞在期間が短ければ、すべてのワクチンが不要になるわけではありません。例えばA型肝炎は、短期間の旅行でも現地の食事から感染する可能性があります。麻しんも、空港、飛行機、ホテル、観光地などで感染することがあります。一方、日本脳炎やダニ媒介脳炎は、滞在期間、季節、農村部や森林への訪問などを考慮して判断します。短期旅行の場合は、一般的に次の順番で確認するとわかりやすいでしょう。

  1. MR、破傷風、ポリオなどの基本ワクチン
  2. A型肝炎
  3. 渡航先で入国上必要な黄熱、髄膜炎菌など
  4. 行程に応じて腸チフス、狂犬病、日本脳炎など

9.子どもを連れて海外旅行に行く場合

子どもは動物に近づきやすく、咬まれたり引っかかれたりしても保護者に伝えないことがあります。そのため、狂犬病流行地域への渡航では、成人より曝露前接種の優先度が高くなる場合があります。また、年齢によって定期接種が途中の場合があります。母子健康手帳を持参し、次の点を確認しましょう。

  • 五種混合・四種混合、ポリオが年齢相応に完了しているか
  • MRワクチンを必要回数接種しているか
  • 日本脳炎ワクチンの接種状況
  • B型肝炎ワクチンの接種状況
  • 水痘、おたふくかぜ、インフルエンザなど

生後6~11か月の乳児が麻しん流行地域へ渡航する場合、通常の定期接種とは別に早期接種を検討することがあります。ただし、この接種は定期接種の2回に数えないことがあるため、小児科やトラベルクリニックで相談してください。

10.妊娠中・授乳中の渡航ワクチン

妊娠中でも、不活化ワクチンは感染リスクと接種の利益を考慮して接種できる場合があります。一方、MR、水痘、黄熱などの生ワクチンは、原則として妊娠中の接種を避けます。ただし、黄熱流行地域への渡航を避けられず、感染リスクが接種リスクを上回る場合には、専門医が個別に判断することがあります。妊娠中、妊娠を希望している方、免疫抑制薬を使用している方は、自己判断で接種せず、必ず事前に医師へ相談してください。

11.複数のワクチンを同じ日に接種できる?

渡航まで時間がない場合、複数のワクチンを同じ日に接種することがあります。多くの不活化ワクチンは同時接種が可能です。ただし、年齢、持病、アレルギー歴、過去の副反応、使用するワクチンの種類によって判断が異なります。同時接種後は、発熱、倦怠感、接種部位の痛みなどが出ることがあります。黄熱、MR、水痘などの生ワクチンを別の日に接種する場合は、一定の間隔が必要になることがあるため、接種計画を医療機関に確認してください。

12.海外旅行のワクチンは保険が使える?

海外渡航を目的としたワクチン接種は、原則として自由診療です。健康保険は通常使用できません。海外赴任や業務出張の場合は、勤務先が費用を負担することがあります。事前に会社の規定を確認しましょう。留学の場合も、学校指定のワクチンや検査に対する補助制度が設けられていることがあります。

13.ワクチンだけでは予防できない海外感染症

海外旅行で注意が必要な感染症のすべてに、一般旅行者向けのワクチンがあるわけではありません。

マラリア

日本で一般旅行者が受けるマラリアワクチンはありません。流行地域へ行く場合は、アトバコン・プログアニル、ドキシサイクリン、メフロキンなどの予防薬を検討します。

デング熱・ジカ熱・チクングニア熱

一般の日本人旅行者が国内で標準的に接種するワクチンは限られています。長袖、虫よけ剤、蚊帳などによる蚊対策が中心です。

旅行者下痢症

腸チフスやコレラ以外にも、多くの細菌やウイルスが旅行者下痢症を起こします。ワクチンだけでは予防できないため、「十分に加熱された料理を熱いうちに食べる」「未開封のボトル水を選ぶ」「氷を避ける」といった対策が重要です。

14.渡航外来を受診するときに持参するもの

  • パスポートまたはパスポートと同じ英字表記がわかるもの
  • 母子健康手帳
  • 過去の予防接種記録
  • 学校・勤務先・大使館指定の書類
  • 渡航国と経由国がわかる旅程表
  • 出発日、帰国予定日、滞在期間
  • 都市部・農村部などの滞在場所
  • 予定している活動内容
  • 内服薬、お薬手帳
  • アレルギーや過去の副反応に関する情報

15.海外旅行ワクチンについてよくある質問

Q.ワクチン接種歴がわからない場合はどうすればよいですか?

まず母子健康手帳や自治体、過去に接種した医療機関の記録を確認します。記録が見つからない場合は、年齢や渡航先に応じて追加接種または抗体検査を検討します。すべてのワクチンで抗体検査が有用とは限らないため、医師と相談してください。

Q.出発まで1か月しかありません。間に合いますか?

すべての接種を完了できない場合でも、接種を始める意義があります。A型肝炎、腸チフス、黄熱、髄膜炎菌、破傷風など、優先度の高いものから接種します。

Q.以前接種したワクチンは、最初からやり直す必要がありますか?

多くのワクチンでは、接種間隔が空いても最初からやり直す必要はありません。過去の記録を持参して医療機関へ相談してください。

Q.ワクチンを受ければ、食事や虫よけ対策は不要ですか?

不要にはなりません。ワクチンの予防効果は100%ではなく、ワクチンがない感染症も多いため、食事・飲み水・蚊・マダニ・動物への対策を組み合わせることが大切です。

Q.狂犬病ワクチンを受けていれば、犬に咬まれても受診しなくてよいですか?

必ず受診が必要です。事前接種済みでも、咬傷後の追加ワクチンが必要です。傷口を十分に洗い、速やかに医療機関を受診してください。

16.まとめ|海外旅行のワクチンは渡航先と行程に合わせて選ぶ

海外旅行に必要なワクチンは、渡航国だけでなく、滞在期間、滞在地域、季節、活動内容、年齢、持病、過去の接種歴によって異なります。まずはMR、破傷風、ポリオなどの基本的な予防接種を確認し、渡航先に応じてA型肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、日本脳炎、黄熱、髄膜炎菌、ダニ媒介脳炎などを追加します。理想的には出発の2~3か月前、遅くとも予定が決まった時点で医療機関へ相談しましょう。出発まで時間がない場合でも、接種できるワクチンや短期間で優先すべき対策があります。自己判断で諦めず、トラベルクリニックや渡航ワクチン対応医療機関へご相談ください。

重要

黄熱、ポリオ、髄膜炎菌などの入国要件は、流行状況や各国の方針によって変更されます。経由地や空港での滞在時間によって証明書が必要になることもあるため、渡航直前にも必ず最新情報をご確認ください。

参考文献・参考サイト

 

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