エピペンとネフィーの違いとは?アナフィラキシーに備える注射薬・点鼻薬を医師が解説

ワクチン・予防医療

食物アレルギー、ハチ刺され、薬剤アレルギーなどによって、突然強いアレルギー反応が起こることがあります。じんましんだけでなく、息苦しさ、のどの違和感、嘔吐、意識がもうろうとするなどの症状が急に出た場合、アナフィラキシーの可能性があります。

アナフィラキシーは、対応が遅れると命に関わることがあります。そのため、過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方や、今後起こすリスクが高い方では、緊急時に使うアドレナリン製剤をあらかじめ持っておくことがあります。

これまで代表的な薬として知られてきたのが、太ももに注射するエピペンです。さらに最近では、鼻に噴霧して使う点鼻タイプのネフィーも登場し、アナフィラキシーへの備え方に新しい選択肢が加わりました。

この記事では、エピペンとネフィーの違い、使うタイミング、処方・入手方法、家庭や学校での備え方について、できるだけわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • アナフィラキシーとはどのような状態か
  • エピペンとネフィーの違い
  • エピペンの使い方と注意点
  • ネフィーの使い方と注意点
  • どんな人が処方対象になるのか
  • 使うタイミングと救急受診の必要性
  • 家庭・学校・保育園・職場で備えるポイント

1.アナフィラキシーとは?命に関わる急なアレルギー反応

アナフィラキシーとは、食物、薬、ハチ毒、ラテックスなどに対するアレルギー反応が全身に急速に広がる状態です。皮膚の症状だけでなく、呼吸器、消化器、循環器など複数の臓器に症状が出ることがあります。特に、息苦しさや血圧低下、意識障害を伴う場合は、緊急性が高い状態です。

アナフィラキシーでみられる主な症状

部位 症状の例
皮膚 じんましん、かゆみ、赤み、顔やまぶたの腫れ
呼吸器 息苦しさ、ゼーゼーする、咳込み、声がかすれる、のどが詰まる感じ
消化器 嘔吐、腹痛、下痢、吐き気
循環器・神経 めまい、顔面蒼白、ぐったりする、意識がもうろうとする

「じんましんだけ」なら軽症のこともありますが、皮膚症状に加えて、息苦しさ・嘔吐・ぐったりするなどの症状がある場合は、アナフィラキシーを疑います。

重要なポイント

アナフィラキシーは、時間とともに急速に悪化することがあります。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方が、原因となる食物や薬、ハチ刺されなどの後に明らかな異常を感じた場合は、早めの対応が大切です。

2.アナフィラキシーに使う薬は「アドレナリン」

アナフィラキシーの緊急対応で中心となる薬がアドレナリンです。アドレナリンには、血圧を保つ、気管支を広げる、のどや粘膜のむくみを抑えるなどの作用があります。アレルギーの薬というと、抗ヒスタミン薬やステロイドを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、命に関わるアナフィラキシーでは、アドレナリンが最も重要な緊急治療薬です。ただし、エピペンやネフィーは、どちらも医療機関での治療を受けるまでの補助治療薬です。使用して症状が落ち着いたように見えても、再び症状が出ることがあるため、使用後は必ず救急受診が必要です。

3.エピペンとは?太ももに注射するアドレナリン自己注射薬

エピペンとは、アナフィラキシーが起きたときに、アドレナリンを太ももの外側に筋肉注射できる自己注射薬です。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方、または今後アナフィラキシーを起こすリスクが高いと医師が判断した方に処方されます。エピペンは、本人だけでなく、保護者、家族、学校や保育施設の関係者など、近くにいる人が緊急時に使用することも想定されています。

エピペンの基本的な使い方

  1. 青色の安全キャップを外す
    使用する直前に安全キャップを外します。
  2. 太ももの外側に垂直に強く押し当てる
    衣服の上からでも使用できます。
  3. 「カチッ」と音がしたら、そのまま保持する
    薬液が注入されるまで太ももに押し当てます。
  4. 使用後はすぐに救急要請・医療機関受診
    症状が改善しても、必ず医師の診察を受けます。

エピペンは「注射」と聞くと不安に感じる方もいますが、緊急時に迷わず使えるよう、処方時に練習用トレーナーで使い方を確認しておくことが大切です。

エピペンの注意点

  • 使用後は必ず救急車を呼ぶ、または医療機関を受診する
  • 手や指への誤注射を避けるため、持ち方を事前に確認しておく
  • 使用期限を定期的に確認する
  • 保管場所を家族や学校・職場と共有しておく
  • 副作用として動悸、ふるえ、頭痛、めまいなどが出ることがある

4.ネフィーとは?鼻に噴霧する新しいアドレナリン点鼻薬

ネフィーは、アドレナリンを有効成分とする点鼻タイプのアナフィラキシー補助治療薬です。太ももに注射するエピペンと異なり、鼻の中に薬液を噴霧して使用します。「注射が怖い」「針を使うことに抵抗がある」「周囲の人が緊急時に注射するのが不安」という場合に、点鼻タイプであるネフィーは新しい選択肢になり得ます。ただし、ネフィーもエピペンと同じく、アナフィラキシーを根本的に治す薬ではありません。医療機関で治療を受けるまでの補助治療薬であり、使用後は必ず救急受診が必要です。

ネフィーの基本的な使い方

  1. 容器を取り出す
    緊急時にすぐ使えるよう、保管場所を決めておきます。
  2. 先端を鼻の穴に入れる
    原則として、医師・薬剤師から説明された方法に従います。
  3. ボタンを押して鼻の中に噴霧する
    注射針を使わず、鼻腔内にアドレナリンを投与します。
  4. 使用後はすぐに救急要請・医療機関受診
    症状が落ち着いても、必ず医師の診察を受けます。

ネフィーの用量の目安

体重 通常使用する製剤
15kg以上30kg未満 ネフィー点鼻液1mg
30kg以上 ネフィー点鼻液2mg

ネフィーは、原則として体重15kg以上の患者さんで使用が検討されます。効果が不十分な場合には、医師から説明された条件のもとで追加投与が検討されることがあります。実際の使用方法や追加投与の判断は、処方時に必ず主治医・薬剤師から説明を受けてください。

ネフィーの注意点

  • 点鼻薬ですが、通常の鼻炎薬とはまったく違う緊急用の薬です
  • 処方時に練習用見本などで使い方を確認しておく必要があります
  • 鼻づまりや鼻出血がある場合など、状況によって使い方の確認が必要です
  • 使用後は必ず救急要請・医療機関受診が必要です
  • 動悸、ふるえ、頭痛、めまいなどが出ることがあります

5.エピペンとネフィーの違いを比較

エピペンとネフィーは、どちらも有効成分はアドレナリンです。大きな違いは、投与方法が「注射」か「点鼻」かという点です。

項目 エピペン ネフィー
薬の種類 アドレナリン自己注射薬 アドレナリン点鼻薬
投与方法 太ももの外側に筋肉注射 鼻の中に噴霧
針の有無 針を使用する 針を使用しない
使用する場面 アナフィラキシーが疑われる緊急時 アナフィラキシーが疑われる緊急時
対象 体重や年齢、リスクを考慮して医師が判断 体重15kg以上を目安に医師が判断
メリット これまでの使用実績が多い 注射への抵抗感が少ない
注意点 誤注射や針への不安がある 点鼻方法を事前に確認しておく必要がある
使用後 必ず救急受診 必ず救急受診

どちらが一方的に優れているというより、患者さんの年齢、体重、原因アレルゲン、過去の症状、生活環境、学校・職場での管理体制などを考えて、主治医と相談して選ぶことが大切です。

6.どんな人がエピペン・ネフィーを持つべき?

エピペンやネフィーは、誰でも自由に購入できる薬ではありません。医師がアナフィラキシーのリスクを評価し、必要と判断した場合に処方されます。

処方が検討される主なケース

原因 処方が検討される理由
食物アレルギー 卵、牛乳、小麦、ナッツ、甲殻類などで重い症状を起こすリスクがある
ハチ刺されアレルギー 再度刺されたときに重いアナフィラキシーを起こす可能性がある
薬剤アレルギー 抗菌薬、解熱鎮痛薬などで急速な全身症状が出ることがある
特発性アナフィラキシー 原因がはっきりしなくても、過去に重い反応を起こしたことがある
運動誘発アナフィラキシー 食事や運動が関係して症状が出ることがある

小児では、家庭だけでなく、学校、保育園、幼稚園、習い事、旅行先などで発症する可能性も考える必要があります。処方された場合は、本人だけでなく、周囲の大人が使い方を知っておくことが大切です。

7.エピペン・ネフィーを使うタイミング

アナフィラキシーでは、「もう少し様子を見よう」と迷っている間に症状が進行することがあります。処方を受けた方は、どのような症状が出たら使うのかを、あらかじめ主治医と確認しておくことが重要です。

使用を考える症状の例

  • アレルギー症状に加えて、息苦しさやゼーゼーが出た
  • のどが詰まる感じ、声がかすれる、咳込みが強い
  • 嘔吐や強い腹痛を伴う
  • 顔色が悪い、ぐったりしている、反応が鈍い
  • めまい、ふらつき、意識がもうろうとする
  • 過去にアナフィラキシーを起こした原因物質を誤って摂取し、明らかな異常を感じた

迷ったときの考え方

エピペンやネフィーを処方されている方は、「どの症状が出たら使用するか」を事前に医師と決めておくことが大切です。緊急時には本人も周囲も慌てやすいため、家庭・学校・職場で対応手順を共有しておきましょう。

8.使用後は必ず救急受診が必要

エピペンやネフィーを使うと、一時的に症状が改善することがあります。しかし、これは「治った」という意味ではありません。アナフィラキシーでは、時間をおいて再び症状が悪化することがあります。また、点滴、酸素投与、追加の薬剤治療、経過観察が必要になることもあります。そのため、エピペンまたはネフィーを使用したら、必ず119番通報または救急受診をしてください。

救急車を呼ぶときに伝えること

  • アナフィラキシーが疑われること
  • 原因として考えられる食物・薬・ハチ刺されなど
  • 症状が始まった時刻
  • エピペンまたはネフィーを使用した時刻
  • 使用した薬の種類と本数・回数
  • 既往歴や持病、普段飲んでいる薬

9.エピペン・ネフィーはどこで手に入る?処方・入手方法

エピペンやネフィーは、市販薬ではありません。医師の診察を受け、アナフィラキシーのリスク評価を行ったうえで処方される処方箋医薬品です。

処方までの流れ

  1. 内科・小児科・アレルギー科などを受診する
    過去の症状、原因、検査結果、生活環境を確認します。
  2. アナフィラキシーのリスクを評価する
    過去の症状や再発リスクをもとに、携帯が必要か判断します。
  3. エピペンまたはネフィーの処方を検討する
    年齢、体重、使いやすさ、保管・管理方法を考慮します。
  4. 医療機関や薬局で使い方の説明を受ける
    練習用トレーナーや見本を使って、緊急時の操作を確認します。
  5. 使用期限を確認しながら保管する
    期限切れにならないよう、定期的な更新が必要です。

ネフィーは新しい薬剤のため、処方できる医療機関や在庫状況が限られる場合があります。希望される場合は、事前に医療機関へ相談するとよいでしょう。

10.学校・保育園・職場での備え方

アナフィラキシーは、自宅だけで起こるとは限りません。食物アレルギーのある子どもでは、学校給食、遠足、宿泊行事、部活動、習い事などで発症する可能性があります。エピペンやネフィーを処方された場合は、本人や家族だけでなく、学校・保育園・職場などでも情報共有をしておくことが大切です。

共有しておきたい内容

  • 原因となるアレルゲン
  • 過去に出た症状
  • 使用すべき症状の目安
  • 薬の保管場所
  • 使用方法
  • 使用後の救急対応
  • 保護者・主治医・救急連絡先

学校や保育施設では、生活管理指導表などを活用し、日頃から対応を決めておくことが重要です。緊急時に「誰が」「どこにある薬を」「どのタイミングで」「どのように使うか」を明確にしておくことで、命を守る行動につながります。

11.よくある質問

Q1.エピペンとネフィーはどちらがよいですか?

どちらが絶対によい、というものではありません。エピペンは太ももに注射するタイプで、これまで広く使われてきた実績があります。ネフィーは鼻に噴霧するタイプで、注射への抵抗感がある方には使いやすい可能性があります。年齢、体重、症状、生活環境、学校や職場での対応体制をふまえて、主治医と相談して選びましょう。

Q2.エピペンやネフィーを使ったら、症状が落ち着いても病院に行く必要がありますか?

はい。必ず医療機関を受診してください。症状が一時的に改善しても、再び悪化することがあります。使用後は救急車を呼ぶ、または速やかに救急受診することが大切です。

Q3.抗ヒスタミン薬やステロイドを飲めば大丈夫ですか?

軽いじんましんでは抗ヒスタミン薬が使われることがありますが、息苦しさ、ぐったりする、嘔吐を繰り返す、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、抗ヒスタミン薬だけでは不十分です。アナフィラキシーではアドレナリン製剤による早期対応が重要です。

Q4.子どもでもネフィーは使えますか?

ネフィーは体重を目安に用量が決められます。原則として体重15kg以上の患者さんで使用が検討され、30kg未満では1mg、30kg以上では2mgが目安です。実際に使えるかどうかは、年齢だけでなく体重や病状をふまえて医師が判断します。

Q5.一度もアナフィラキシーを起こしたことがなくても処方されますか?

過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方が主な対象ですが、アナフィラキシーを起こすリスクが高いと医師が判断した場合には、処方が検討されることがあります。食物アレルギー、ハチ刺され、薬剤アレルギーなどで不安がある方は、医療機関で相談してください。

12.まとめ:エピペンとネフィーは、アナフィラキシーから命を守るための備え

エピペンとネフィーは、どちらもアナフィラキシーに備えるためのアドレナリン製剤です。エピペンは太ももに注射する自己注射薬、ネフィーは鼻に噴霧する点鼻薬という違いがあります。どちらも、いざという時に命を守るための大切な薬ですが、使用後は必ず救急受診が必要です。また、処方された本人だけでなく、家族、学校、保育園、職場など周囲の人が使い方を知っておくことも重要です。

  • アナフィラキシーは急速に悪化することがある
  • エピペンは太ももに注射するアドレナリン自己注射薬
  • ネフィーは鼻に噴霧するアドレナリン点鼻薬
  • どちらも医療機関での治療までの補助治療薬
  • 使用後は必ず119番通報または救急受診が必要
  • 家庭・学校・職場で事前に対応を共有しておくことが大切

食物アレルギー、ハチ刺され、薬剤アレルギーなどで強い症状を起こしたことがある方、またはご家族に不安がある方は、エピペンやネフィーが必要かどうか、一度医療機関で相談してみましょう。

参考文献

  1. 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2022
  2. エピペン公式サイト
  3. ネフィー公式サイト
  4. エピペン添付文書情報
  5. ネフィー添付文書情報
  6. 厚生労働省:アレルギー疾患対策
  7. 文部科学省:学校等におけるアナフィラキシー対応
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