毎年冬になると流行するインフルエンザ。高熱、関節痛、強いだるさで数日寝込んでしまうだけでなく、子どもではインフルエンザ脳症、高齢者では肺炎などの合併症につながることもあります。
「ワクチンを打ってもインフルエンザにかかることがあるなら、打つ意味はあるの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
結論からいうと、インフルエンザワクチンの大きな目的は、感染を完全に防ぐことではなく、発症や重症化、入院、死亡のリスクを下げることです。特に高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方、受験生、家族に重症化リスクの高い人がいる方には、毎年の接種をおすすめします。
この記事では、インフルエンザワクチンの効果、接種時期、副反応、接種をおすすめする人、打てない人について、2026年シーズンに向けてわかりやすく解説します。
インフルエンザワクチンとは?
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスに対する免疫をつけるための予防接種です。インフルエンザは、普通のかぜとは異なり、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、強い倦怠感などの全身症状が急に出ることが特徴です。さらに、小児ではまれに急性脳症、高齢者や免疫力が低下している方では肺炎などを合併し、重症化することがあります。日本で広く使われている注射タイプのインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンです。感染力をなくしたウイルス成分を体に入れることで、インフルエンザに対する免疫を作ります。インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変化します。そのため、ワクチンもその年に流行が予測されるウイルス株に合わせて毎年作られます。つまり、昨年ワクチンを打った方でも、今年も接種が必要です。
2026年のインフルエンザワクチンはどう変わる?
2026/27シーズンのインフルエンザワクチンは、国内で流行が予測されるウイルスに合わせて製造株が選定されています。
2026/27シーズンのインフルエンザHAワクチン製造株は、以下の3株です。
| 種類 | 2026/27シーズンの製造株 |
|---|---|
| A型 H1N1 | A/Switzerland(スイス)/6849/2025(IVR-278) |
| A型 H3N2 | A/Michigan(ミシガン)/105/2025(SAN-049A) |
| B型 | B/Tokyo(東京)/EIS13-175/2025(ビクトリア系統) |
以前は4価ワクチンが使われていましたが、近年はB/山形系統ウイルスの検出が世界的にほとんどみられないことから、3価ワクチンへ移行しています。ただし、患者さんが意識するべきポイントは難しい株名ではありません。大切なのは、インフルエンザワクチンは毎年そのシーズンに合わせて作られているため、毎年接種する意味があるということです。
インフルエンザワクチンの効果は?
ワクチンを打ってもインフルエンザにかかることはあります
インフルエンザワクチンを打ったからといって、インフルエンザに絶対かからないわけではありません。しかし、ワクチンには以下のような効果が期待できます。
- インフルエンザの発症を予防する
- 発症しても症状を軽くする
- 肺炎や脳症などの合併症を減らす
- 入院や死亡のリスクを下げる
- 家族や周囲への感染拡大を減らす
特に重要なのは、重症化を防ぐ効果です。高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方では、インフルエンザが「数日寝込む病気」では済まないことがあります。肺炎、脱水、持病の悪化、入院につながることもあるため、ワクチンで重症化リスクを下げることが大切です。
高齢者では死亡予防効果も期待されています
国内の研究では、65歳以上の高齢者福祉施設入所者において、インフルエンザワクチンにより発病を34〜55%、死亡を82%阻止する効果があったと報告されています。また、6歳未満の小児を対象とした研究では、発病防止に対する有効率が60%と報告されています。つまり、インフルエンザワクチンは「打っても意味がないワクチン」ではありません。かかりにくくする、かかっても重くしない、自分と周囲を守るための大切な予防策です。
インフルエンザワクチンはいつ打つのがよい?
インフルエンザワクチンは、10月〜11月の接種がおすすめです。日本では、インフルエンザは例年11月下旬から12月上旬ごろに流行が始まり、1月〜3月ごろに患者数が増えることが多いとされています。ただし、近年は流行開始が早まる年もあり、12月に入ってから接種すると流行に間に合わないことがあります。
接種後すぐに効果が出るわけではありません
インフルエンザワクチンは、接種してすぐに効果が出るわけではありません。一般的に、ワクチン接種後、免疫がつくまでに約2週間かかります。そして、効果はおおむね約5か月続くとされています。
| 接種時期 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 9月 | △ | 早すぎると春先まで効果が続きにくい可能性があります |
| 10月 | ◎ | 流行前に免疫をつけやすく、特におすすめです |
| 11月 | ◎ | 多くの方にとって標準的な接種時期です |
| 12月 | ○ | 流行前なら有効です。未接種なら接種を検討しましょう |
| 1月以降 | △〜○ | 流行状況によっては接種する意味があります。医師に相談してください |
受験生、医療・介護従事者、高齢者、基礎疾患のある方、乳幼児、妊婦、家族に高齢者や赤ちゃんがいる方は、できれば10月〜11月中に接種を済ませることをおすすめします。
インフルエンザワクチンを打つべき人
インフルエンザワクチンは多くの方におすすめできますが、特に以下に当てはまる方は接種を強く検討しましょう。
| 対象 | 接種をおすすめする理由 |
|---|---|
| 65歳以上の高齢者 | 肺炎、入院、死亡のリスクが高いため |
| 6か月〜5歳の乳幼児 | 免疫が未発達で、重症化することがあるため |
| 小学生・中学生・高校生 | 学校や部活動で感染が広がりやすく、家庭内感染のきっかけにもなるため |
| 受験生 | 大切な時期に発熱・欠席を避けるため |
| 妊婦 | 妊娠中は重症化しやすく、母体を守るため |
| 心臓・肺・腎臓・糖尿病などの持病がある方 | インフルエンザにより持病が悪化することがあるため |
| 医療・介護・保育・教育関係者 | 重症化リスクの高い人や子どもと接する機会が多いため |
| 家族に高齢者・乳児・妊婦・基礎疾患のある人がいる方 | 家庭内で感染を広げないため |
インフルエンザワクチンは、自分自身を守るだけでなく、家族や周囲の大切な人を守るためのワクチンでもあります。
子どものインフルエンザワクチンは何回打つ?
子どものインフルエンザワクチンは、年齢によって接種回数が異なります。
| 年齢 | 接種回数の目安 |
|---|---|
| 生後6か月〜12歳 | 2回接種 |
| 13歳以上 | 原則1回接種 |
小さなお子さんは免疫がつきにくいため、2回接種が基本です。1回目と2回目の間隔は、通常2〜4週間程度あけます。流行前に免疫をつけるためには、1回目を10月、2回目を10月下旬〜11月に済ませるスケジュールが理想です。
注射ワクチンとフルミストの違い
近年は、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンであるフルミストも選択肢になっています。
| 項目 | 注射のインフルエンザワクチン | フルミスト |
|---|---|---|
| 接種方法 | 皮下注射 | 鼻にスプレー |
| ワクチンの種類 | 不活化ワクチン | 経鼻弱毒生ワクチン |
| 主な対象 | 生後6か月以上 | 対象年齢に制限あり |
| 痛み | 注射の痛みあり | 注射の痛みなし |
| 注意点 | 幅広い方に使いやすい | 喘息、免疫低下、妊娠中などでは注意が必要 |
注射が苦手なお子さんにはフルミストが選択肢になることがあります。一方で、持病や年齢によっては注射ワクチンの方が適している場合もあります。どちらがよいか迷う場合は、年齢、持病、過去の接種歴、周囲の感染リスクを含めて医師に相談しましょう。
フルミストについてはこちらの記事も参考にしてください。

インフルエンザワクチンの副反応
インフルエンザワクチンの副反応は、多くの場合は軽度です。
よくある副反応
| 副反応 | 特徴 |
|---|---|
| 接種部位の赤み・腫れ・痛み | 比較的よくみられ、通常1〜3日程度で改善します |
| 発熱 | 接種後に軽い発熱が出ることがあります |
| だるさ | 一時的な倦怠感が出ることがあります |
| 頭痛 | 数日以内に自然に改善することが多いです |
接種した日は、激しい運動や過度の飲酒を避け、普段通りに過ごしましょう。入浴は体調がよければ可能ですが、接種部位を強くこすらないようにしてください。
まれに起こる重い副反応
非常にまれですが、以下のような重い副反応が報告されることがあります。
- アナフィラキシー
- じんましん、息苦しさ、顔色不良
- けいれん
- ギラン・バレー症候群などの神経症状
接種後に、息苦しさ、全身のじんましん、ぐったりしている、意識がぼんやりする、強いしびれや脱力がある場合は、すぐに医療機関へ相談してください。
インフルエンザワクチンを打てない人・注意が必要な人
インフルエンザワクチンは安全性の高いワクチンですが、以下に当てはまる方は接種前に医師へ相談してください。
| 対象 | 注意点 |
|---|---|
| 明らかな発熱がある方 | 37.5℃以上の発熱がある場合は延期することがあります |
| 重い急性疾患にかかっている方 | 体調が回復してから接種を検討します |
| 過去にインフルエンザワクチンで強いアレルギー反応が出た方 | 接種できない場合があります |
| 重い卵アレルギーがある方 | 接種可能な場合もありますが、必ず医師に相談してください |
| 免疫不全や重い基礎疾患がある方 | 病状や治療内容により判断します |
軽い鼻水や咳だけで、全身状態がよい場合は接種できることもあります。ただし、当日の体調を確認したうえで医師が判断します。
インフルエンザワクチンに関するよくある質問
Q. ワクチンを打つとインフルエンザになりますか?
注射のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。感染力をなくした成分を使っているため、ワクチンそのものでインフルエンザを発症することはありません。
Q. 去年打ったので今年は打たなくてもいいですか?
インフルエンザウイルスは毎年変化し、ワクチンも毎年の流行予測に合わせて作られます。そのため、昨年接種した方も今年の接種が必要です。
Q. 妊娠中でも接種できますか?
妊娠中の方はインフルエンザが重症化しやすいとされており、ワクチン接種が推奨されることがあります。接種時期や体調について、かかりつけ医や産婦人科医に相談しましょう。
Q. 卵アレルギーがあると打てませんか?
インフルエンザワクチンは製造過程で鶏卵を使用するものがあります。ただし、卵アレルギーがある方すべてが接種できないわけではありません。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方や重いアレルギーがある方は、必ず医師に相談してください。
Q. コロナワクチンと同時に接種できますか?
同時接種が可能な場合があります。ただし、年齢、基礎疾患、接種歴、体調によって判断が必要です。接種を希望する場合は、医療機関にご相談ください。
まとめ:インフルエンザワクチンは自分と家族を守る予防策です
インフルエンザワクチンは、インフルエンザを完全に防ぐワクチンではありません。しかし、発症を減らし、重症化、入院、死亡のリスクを下げるために重要な予防策です。
- インフルエンザワクチンは毎年接種が必要
- 接種時期は10月〜11月がおすすめ
- 効果が出るまで約2週間かかる
- 高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方は特に接種がおすすめ
- 副反応の多くは軽く、数日以内に改善することが多い
- ワクチンは自分だけでなく、家族や周囲の人を守るためにも大切
インフルエンザは、毎年多くの人が感染する身近な病気です。しかし、重症化する人にとっては命に関わることもあります。「今年は大丈夫」と思わず、流行前に早めの接種を検討しましょう。特に、家族に高齢者、赤ちゃん、妊婦、基礎疾患のある方がいる場合は、家庭内で感染を広げないためにもワクチン接種が大切です。

