「足の血管がボコボコと浮き出てきた」「夕方になると足がむくむ」「足が重くだるい」「寝ているときに足がつる」――このような症状がある場合、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)が関係している可能性があります。下肢静脈瘤は、足の静脈にある弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流することで静脈が拡張し、蛇行した状態です。命に関わることは多くありませんが、進行すると、むくみや痛みだけでなく、皮膚炎、色素沈着、皮膚潰瘍、出血などを起こすことがあります。一方で、血管が目立っていても症状がほとんどない人もいます。下肢静脈瘤の治療が必要かどうかは、見た目だけではなく、症状、皮膚の状態、超音波検査で確認した血液の逆流などを総合して判断します。
この記事では、下肢静脈瘤ができる原因と仕組み、症状、検査、弾性ストッキング、血管内レーザー治療や高周波治療、グルー治療、手術適応、自宅でできる対策について、わかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 下肢静脈瘤は、静脈の弁が壊れて血液が逆流することで起こります。
- 主な症状は、足のむくみ、重さ、だるさ、痛み、かゆみ、こむら返りです。
- 診断と治療方針の決定には、下肢静脈超音波検査が重要です。
- 弾性ストッキングは症状を軽くしますが、壊れた静脈弁そのものを治す治療ではありません。
- 症状を伴う静脈逆流には、血管内レーザー治療、高周波治療、グルー治療などが検討されます。
- 皮膚炎、色素沈着、潰瘍、出血がある場合は、早めの受診が必要です。
1.下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは、足の表面近くを流れる表在静脈が拡張し、曲がりくねって見える病気です。足の静脈には、大きく分けて次の3種類があります。
- 深部静脈:筋肉の中を通り、足の血液の大部分を心臓へ戻す静脈
- 表在静脈:皮膚の下を通る静脈。大伏在静脈、小伏在静脈など
- 穿通枝:表在静脈と深部静脈をつなぐ静脈
一般的な下肢静脈瘤は、皮膚の下にある表在静脈で起こります。特に、足の内側を走る大伏在静脈や、ふくらはぎの後ろ側を走る小伏在静脈の弁不全が原因になることが多くあります。下肢静脈瘤と深部静脈血栓症は別の病気です。ただし、過去の深部静脈血栓症によって静脈の流れが悪くなり、二次的に静脈瘤や慢性静脈不全を起こすことがあります。
2.下肢静脈瘤ができる仕組み
静脈の弁と「ふくらはぎの筋肉」が血液を押し戻す
足は心臓より低い位置にあるため、血液は重力に逆らって心臓へ戻る必要があります。このとき重要なのが、静脈の中にある逆流防止弁と、歩行時にふくらはぎの筋肉が静脈を圧迫する筋ポンプ作用です。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれることもあります。
- 歩くとふくらはぎの筋肉が収縮する
- 筋肉の中の静脈が圧迫される
- 血液が心臓の方向へ押し上げられる
- 静脈弁が閉じ、血液が下へ戻るのを防ぐ
弁が壊れると血液が逆流する
加齢や遺伝、妊娠、長時間の立ち仕事などの影響で静脈弁がうまく閉じなくなると、立っているときに血液が下方向へ逆流します。すると、足の静脈に高い圧力がかかる静脈高血圧という状態になり、静脈が徐々に広がります。静脈が広がると弁がさらに閉じにくくなり、逆流が悪化するという悪循環が起こります。この状態が長く続くと、血管から周囲の組織へ水分や炎症に関係する物質が漏れ出し、むくみ、かゆみ、湿疹、色素沈着、皮膚硬化、潰瘍などにつながります。
3.下肢静脈瘤ができる原因・なりやすい人
多くの下肢静脈瘤は、ひとつの原因だけで起こるのではなく、体質や生活環境などが重なって発症します。
| 要因 | 理由 |
|---|---|
| 加齢 | 静脈壁や静脈弁が弱くなり、逆流しやすくなります。 |
| 家族歴・遺伝 | 両親や兄弟姉妹に下肢静脈瘤がある人は、発症しやすい傾向があります。 |
| 妊娠・出産 | ホルモンの変化、血液量の増加、子宮による骨盤内静脈の圧迫などが影響します。 |
| 長時間の立ち仕事 | 重力によって足に血液がたまりやすくなります。調理、美容、販売、医療・介護職などで起こりやすくなります。 |
| 長時間の座り仕事 | ふくらはぎの筋ポンプが働きにくくなり、静脈の流れが滞ります。 |
| 肥満 | 腹圧の上昇や運動量の低下などによって、足から心臓へ血液が戻りにくくなります。 |
| 運動不足 | ふくらはぎの筋ポンプ作用が低下します。 |
| 深部静脈血栓症の既往 | 血栓によって深部静脈の弁が傷つくと、慢性静脈不全を起こすことがあります。 |
女性に多い病気ですが、男性にも起こります。男性では、症状が進行して皮膚炎や潰瘍ができてから受診するケースもあるため、性別にかかわらず注意が必要です。
4.下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤には、太さや原因となる静脈によっていくつかの種類があります。
| 種類 | 特徴 | 主な治療 |
|---|---|---|
| 伏在型静脈瘤 | 大伏在静脈や小伏在静脈の弁不全が原因。太い血管が広い範囲で浮き出ます。 | 血管内焼灼術、グルー治療、ストリッピング手術など |
| 側枝静脈瘤 | 伏在静脈から枝分かれした静脈が、こぶ状に膨らみます。 | 静脈瘤切除術、硬化療法、条件によってレーザー治療 |
| 網目状静脈瘤 | 青色や緑色の細い静脈が網目状に見えます。 | 硬化療法など |
| クモの巣状静脈瘤 | 赤色や紫色の非常に細い血管が、クモの巣のように広がります。 | 硬化療法、皮膚レーザーなど |
クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤は、主に見た目の問題となることが多く、必ずしも足のむくみやだるさの原因とは限りません。治療前には、奥にある太い静脈の逆流がないか確認することが重要です。
5.下肢静脈瘤の主な症状
下肢静脈瘤では、次のような症状がみられます。
- 足の血管が浮き出る、ボコボコする
- 夕方になると足がむくむ
- 足が重い、だるい、疲れやすい
- ふくらはぎが張る、痛む
- 足が熱く感じる
- 足がかゆい
- 寝ているときに足がつる
- 静脈に沿って硬いしこりや赤みができる
- 足首周辺の皮膚が茶色くなる
- 湿疹や皮膚のただれが繰り返される
- 皮膚が硬くなる
- 傷が治りにくくなり、潰瘍ができる
症状は、朝より夕方、横になっているときより長時間立っているときに強くなる傾向があります。歩いたり、足を高くして休んだりすると軽くなることがあります。
見た目の程度と症状の強さは一致しない
静脈瘤が大きくても症状がほとんどない人がいる一方で、目立つ血管が少なくても、だるさやむくみが強い人もいます。また、足のむくみやこむら返りには、心不全、腎臓病、肝臓病、甲状腺疾患、薬の副作用、リンパ浮腫、腰部脊柱管狭窄症、末梢動脈疾患など、下肢静脈瘤以外の原因もあります。「足がつる=下肢静脈瘤」とは限らないため、症状と超音波検査の結果が一致しているかを確認することが大切です。
6.下肢静脈瘤を放置するとどうなる?
下肢静脈瘤は、すべての人が急速に悪化するわけではありません。しかし、静脈の逆流や静脈高血圧が長く続くと、次のような合併症を起こすことがあります。
うっ滞性皮膚炎
足首周辺に赤み、かゆみ、湿疹、皮むけなどが現れます。一般的な湿疹として塗り薬だけで治療しても、静脈うっ滞が改善しなければ再発することがあります。
色素沈着
血管から漏れた赤血球の成分が皮膚に沈着し、足首周辺が茶色や黒褐色になります。一度強くなると、治療後も完全には消えないことがあります。
脂肪皮膚硬化症
慢性的な炎症によって、皮膚や皮下組織が硬くなります。足首が細く、ふくらはぎが太く見えることもあります。
表在静脈血栓症
皮膚の近くの静脈に血栓と炎症が起こり、静脈に沿って赤く、硬く、痛いしこりができます。血栓の位置や広がりによっては、深部静脈血栓症への進展を確認する必要があります。
静脈性潰瘍
足首の内側を中心に、治りにくい傷ができます。潰瘍の治療では、傷の処置だけでなく、適切な圧迫療法や静脈逆流に対する治療が重要です。
静脈瘤からの出血
皮膚が薄くなった静脈瘤をぶつけたり、かき壊したりすると、出血することがあります。静脈の圧力が高くなっているため、思った以上に出血することがあります。
7.下肢静脈瘤の検査
問診
症状が出る時間帯、立ち仕事の有無、妊娠・出産歴、家族歴、深部静脈血栓症の既往、治療歴などを確認します。
立った状態での診察
下肢静脈瘤は、立つと血液が足にたまって目立ちやすくなります。そのため、立った状態で血管の分布、むくみ、皮膚炎、色素沈着、潰瘍などを確認します。足の動脈の拍動や皮膚温も確認し、末梢動脈疾患が疑われないかを評価します。
下肢静脈超音波検査
下肢静脈瘤の診断で最も重要なのが、下肢静脈超音波検査(デュプレックス超音波検査、カラードプラ検査)です。超音波検査では、次の点を確認します。
- どの静脈で血液が逆流しているか
- 逆流している範囲
- 静脈の太さや走行
- 深部静脈が正常に流れているか
- 血栓がないか
- 過去の治療後に再発していないか
見た目だけで治療する静脈を決めるのではなく、超音波検査で「逆流の原因となる静脈」を特定してから治療計画を立てます。
足関節上腕血圧比(ABI)
足の動脈が細くなる末梢動脈疾患が疑われる場合は、腕と足首の血圧を比較するABI検査を行うことがあります。動脈の血流が低下している人が、自己判断で強い弾性ストッキングを使用すると、足の血流をさらに悪化させる可能性があります。
CT・MRIなど
一般的な下肢静脈瘤では、通常、超音波検査だけで診断できます。ただし、片足だけの強いむくみ、骨盤内の静脈閉塞、腫瘍、血管奇形などが疑われる場合には、CTやMRIなどを追加することがあります。
8.下肢静脈瘤の重症度
医療機関では、下肢静脈瘤を含む慢性静脈疾患の重症度を、CEAP分類という方法で評価することがあります。
| 分類 | 主な状態 |
|---|---|
| C0 | 見た目の静脈異常がない |
| C1 | クモの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤 |
| C2 | こぶ状に拡張した静脈瘤 |
| C3 | むくみ |
| C4 | 色素沈着、湿疹、皮膚硬化などの皮膚変化 |
| C5 | 治った静脈性潰瘍がある |
| C6 | 治療中の静脈性潰瘍がある |
C3以上のむくみや、C4以上の皮膚変化がある場合は、慢性静脈不全が進行している可能性があります。
9.下肢静脈瘤の治療方針
治療の目的は、単に見えている血管を消すことではありません。
- 足のだるさ、むくみ、痛みなどを軽くする
- 皮膚炎や潰瘍を治療・予防する
- 出血や表在静脈血栓症のリスクを減らす
- 生活の質を改善する
- 見た目の悩みを改善する
治療方法は、症状の程度、超音波検査で確認した逆流の部位、血管の太さや走行、年齢、持病、患者さんの希望などによって決まります。
10.自宅でできる下肢静脈瘤対策
歩く習慣をつける
歩行によってふくらはぎの筋肉が動くと、静脈の血液が心臓へ戻りやすくなります。無理のない範囲で、毎日の散歩やウォーキングを続けましょう。
かかとの上げ下げ運動
立った状態、または椅子に座った状態で、かかとをゆっくり上げ下げします。ふくらはぎの筋ポンプを働かせるため、デスクワークや長時間の移動中にも行いやすい運動です。
同じ姿勢を長時間続けない
立ち仕事や座り仕事では、定期的に歩く、足首を動かす、かかとを上げ下げするなどして、足の静脈がうっ滞しないようにしましょう。
足を高くして休む
横になるときに、足を心臓より少し高い位置にすると、むくみやだるさが軽くなることがあります。ただし、極端に高くする必要はありません。
体重を適正に保つ
肥満がある場合は、無理のない減量によって足への負担や腹圧を減らすことが期待できます。
皮膚を保湿する
静脈うっ滞がある皮膚は乾燥し、かゆみや湿疹を起こしやすくなります。保湿剤で皮膚を保護し、かき壊さないことが大切です。赤み、熱感、痛み、ジュクジュクした傷がある場合は、自己判断で市販薬だけを使い続けず、医療機関を受診してください。
11.弾性ストッキングによる圧迫療法
弾性ストッキングは、足首を強く、上に向かうほど弱く圧迫することで、静脈の血液を心臓へ戻しやすくする医療用のストッキングです。圧迫療法には、次のような効果が期待できます。
- 足の痛み、重さ、だるさの軽減
- むくみの軽減
- うっ滞性皮膚炎や皮膚硬化の改善補助
- 静脈性潰瘍の治療と再発予防
一方で、弾性ストッキングは壊れた静脈弁を元に戻す治療ではありません。着用している間は症状が軽くなっても、脱ぐと症状が戻ることがあります。2025年の日本静脈学会ガイドラインでは、症状のない下肢静脈瘤に圧迫療法を一律に行うことは原則として勧めず、痛み、むくみ、皮膚炎、静脈性潰瘍などがある場合に活用する考え方が示されています。
弾性ストッキングを使うときの注意点
- 足がむくむ前の朝に着用する
- しわや折り返しを作らない
- 医師から指示がなければ、通常は就寝中に着用しない
- 痛み、しびれ、皮膚の色の変化が出たら外して相談する
- 適切なサイズと圧迫圧を選ぶ
末梢動脈疾患、重い心不全、足の感覚障害、皮膚感染などがある人では、圧迫療法が適さないことがあります。自己判断で強い製品を購入するのではなく、医療機関で相談しましょう。
12.下肢静脈瘤の血管内治療
超音波検査で大伏在静脈や小伏在静脈に明らかな逆流があり、症状や皮膚障害を伴っている場合は、逆流している静脈を閉鎖する治療が検討されます。治療した表在静脈を閉鎖しても、足の血液の大部分は正常な深部静脈を通って心臓へ戻るため、通常は血液循環に大きな問題は生じません。
血管内レーザー焼灼術
逆流している静脈の中に細いカテーテルを入れ、レーザーの熱で静脈を内側から閉鎖する治療です。
- 局所麻酔を用いて行われる
- 傷が小さい
- 多くは日帰りで行われる
- 従来のストリッピング手術より、術後の痛みや皮下出血が少ない傾向がある
高周波焼灼術
カテーテルから高周波による熱を加え、静脈を閉鎖する治療です。治療の考え方はレーザー治療と同様で、レーザー治療とともに代表的な血管内焼灼術です。
血管内焼灼術の主な合併症
- 痛み、腫れ、皮下出血
- 皮膚のつっぱり感
- 一時的なしびれや知覚低下
- 表在静脈血栓症
- 熱による皮膚・神経障害
- 深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症
- 治療した静脈の再開通や静脈瘤の再発
深部静脈血栓症などの重大な合併症は多くありませんが、治療前にリスク評価を行い、治療後も必要に応じて超音波検査を行います。
13.グルー治療(シアノアクリレート治療)
グルー治療は、医療用の接着材を静脈内に注入し、逆流している静脈を閉鎖する治療です。代表的なものにベナシールがあります。レーザーや高周波と異なり、熱を使用しない非熱性・非浸潤麻酔型治療です。
グルー治療の特徴
- 静脈の周囲に大量の局所麻酔を注入する必要がない
- 熱による神経障害のリスクを避けやすい
- 針を刺す回数が比較的少ない
- 治療後の圧迫療法が不要または短期間で済む場合がある
グルー治療の注意点
接着材に対する炎症反応やアレルギー反応により、治療した静脈に沿って赤み、かゆみ、痛みが出ることがあります。シアノアクリレート系接着材に対するアレルギー歴がある人には使用できません。強いアレルギー体質、自己免疫疾患、感染を伴う皮膚潰瘍などがある場合も、慎重な判断が必要です。
14.硬化療法
硬化療法は、静脈内に硬化剤を注射して炎症を起こし、静脈を閉鎖する治療です。液体または泡状にした薬剤を使用します。主に次のような静脈瘤に用いられます。
- クモの巣状静脈瘤
- 網目状静脈瘤
- 細い側枝静脈瘤
- 手術後に残った静脈瘤
- 再発した静脈瘤
太い伏在静脈の逆流にも超音波ガイド下フォーム硬化療法が行われることがありますが、長期的な再発や再開通を重視する場合は、レーザー治療や高周波治療などが選択されることがあります。
硬化療法の主な副作用
- 注射部位の痛みや腫れ
- 色素沈着
- しこり
- 表在静脈血栓症
- 皮膚障害
- 深部静脈血栓症
- 一時的な視覚症状や頭痛
一度の治療で完全に消えず、複数回の治療が必要になることがあります。
15.静脈瘤切除術
皮膚に数ミリ程度の小さな穴を開け、専用の器具でボコボコした側枝静脈瘤を取り除く治療です。スタブ・アバルジョン、瘤切除術などと呼ばれます。伏在静脈に対する血管内焼灼術と同時に行う場合もあれば、症状や見た目の経過を確認して、後日追加することもあります。
16.ストリッピング手術
ストリッピング手術は、逆流している大伏在静脈や小伏在静脈にワイヤーを通し、静脈を抜き取る従来から行われてきた手術です。現在は低侵襲な血管内治療が第一選択になることが増えていますが、次のような場合にはストリッピング手術が検討されます。
- 静脈が大きく蛇行し、カテーテルを通しにくい
- 血管内治療に適さない解剖学的条件がある
- 血管内治療の設備や対応がない
- 再発例などで複雑な治療が必要
17.下肢静脈瘤の手術適応
血管が見えるという理由だけで、必ず手術が必要になるわけではありません。一般的には、超音波検査で治療対象となる静脈逆流が確認され、次のような状態がある場合に手術や血管内治療を検討します。
| 治療を検討する状態 | 具体例 |
|---|---|
| 日常生活に支障をきたす症状 | 痛み、重だるさ、むくみ、かゆみなどが仕事や生活の妨げになる |
| 皮膚障害 | うっ滞性皮膚炎、色素沈着、脂肪皮膚硬化症などがある |
| 静脈性潰瘍 | 現在潰瘍がある、または過去に潰瘍があった |
| 出血 | 静脈瘤から出血したことがある |
| 表在静脈血栓症 | 静脈に沿った痛いしこりや炎症を繰り返す |
| 本人の希望 | 保存療法では症状が十分に改善せず、治療を希望する |
近年のガイドラインでは、症状を伴う大伏在静脈・小伏在静脈の逆流があり、治療可能な健康状態であれば、弾性ストッキングを長期間続けることだけを必須とせず、血管内治療を選択肢として提示することが推奨されています。一方で、症状が軽い場合、高齢や持病のため治療リスクが高い場合、本人が保存療法を希望する場合には、運動や圧迫療法で経過をみることも適切です。
18.妊娠中の下肢静脈瘤
妊娠中は、ホルモンの変化や子宮による静脈圧迫によって、下肢静脈瘤が悪化しやすくなります。妊娠中は弾性ストッキングなどで症状を軽くすることを基本とし、出血などの特別な事情がなければ、血管内治療や手術は出産後まで延期するのが一般的です。出産後に静脈瘤が目立たなくなることもあるため、産後の体調が落ち着いてから改めて評価します。
19.すぐに受診したほうがよい症状
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 静脈瘤から出血した
- 片足だけが急に腫れた
- ふくらはぎに急な痛みや熱感がある
- 静脈に沿って赤く硬いしこりができた
- 足首周辺に湿疹や色素沈着が出てきた
- 足に治りにくい傷や潰瘍ができた
- 足の指が冷たい、白い、紫色になる
片足の急激な腫れや痛みに加えて、息苦しさ、胸痛、失神、血痰などがある場合は、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の可能性があります。救急受診を検討してください。
静脈瘤から出血したときの応急処置
- 横になり、出血している足を心臓より高く上げる
- 清潔なガーゼやタオルで出血部位を直接、持続的に圧迫する
- 圧迫しても止まらない場合は、救急要請または速やかに受診する
出血が止まっても再出血する可能性があるため、後日そのまま放置せず、血管外科や心臓血管外科などへ相談しましょう。
20.下肢静脈瘤に関するよくある質問
下肢静脈瘤は自然に治りますか?
一度壊れた静脈弁が自然に元へ戻ることは、基本的に期待できません。運動や弾性ストッキングによって症状を軽くすることはできますが、逆流している静脈そのものを閉鎖するには血管内治療や手術が必要です。
マッサージで治りますか?
軽く足を動かすことや、足を高くして休むことは、むくみやだるさの軽減に役立ちます。しかし、マッサージだけで壊れた静脈弁が治るわけではありません。急な腫れ、赤み、痛み、硬いしこりがある場合は、血栓症の可能性があるため、強いマッサージをせずに受診してください。
薬やサプリメントで血管は消えますか?
現在のところ、飲み薬、塗り薬、サプリメントだけで、拡張した静脈や壊れた静脈弁を元に戻すことはできません。症状を軽くする目的で薬が使用されることはありますが、治療の中心は運動・圧迫療法・静脈への処置です。
手術をすれば二度と再発しませんか?
治療した静脈が再開通したり、別の静脈に新しい逆流が生じたりすることがあります。そのため、治療後も静脈瘤が再発する可能性はあります。再発時には、超音波検査で原因を確認し、硬化療法、静脈瘤切除術、再度の血管内治療などを検討します。
見た目だけでも治療できますか?
クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤は、美容目的で治療することもできます。ただし、見えている血管の奥に伏在静脈の逆流が隠れていることがあるため、治療前の診察や超音波検査が重要です。美容目的のみの治療は、自費診療となる場合があります。保険適用の条件は、症状、治療法、医療機関によって異なります。
21.まとめ
下肢静脈瘤は、足の静脈弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流することで起こる病気です。初期には、足の血管が浮き出る、夕方のむくみ、重だるさなどがみられます。進行すると、うっ滞性皮膚炎、色素沈着、皮膚硬化、静脈性潰瘍、出血などを起こすことがあります。診断と治療方針の決定には、下肢静脈超音波検査が重要です。症状が軽い場合は、歩行、足首運動、足を高くして休む、弾性ストッキングなどで経過をみます。一方、超音波検査で明らかな静脈逆流があり、痛み、むくみ、皮膚障害などがある場合は、血管内レーザー治療、高周波治療、グルー治療、硬化療法、静脈瘤切除術などを検討します。「血管が目立つだけだから」と放置せず、症状や皮膚の変化がある場合は、かかりつけ医、血管外科、心臓血管外科などへ相談しましょう。
参考文献
- 日本静脈学会「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」
- 日本静脈学会・日本血管外科学会「ESVS 2022 下肢慢性静脈疾患診療ガイドライン日本語要約」
- 日本静脈学会「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019」
- 日本静脈学会「下肢静脈瘤に対するシアノアクリレート系接着材による血管内治療のガイドライン」
- Society for Vascular Surgery/American Venous Forum/American Vein and Lymphatic Society:下肢静脈瘤診療ガイドライン Part I
- Society for Vascular Surgery/American Venous Forum/American Vein and Lymphatic Society:下肢静脈瘤診療ガイドライン Part II
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。実際の診断や治療方法は、症状、超音波検査所見、持病、服用中の薬などによって異なります。

