「草むらや山林に行ったあとに高熱が出た」「体に黒いかさぶたのような刺し口がある」「ダニに刺されたかもしれない」――このような場合に注意したい感染症の一つが、ツツガムシ病です。
ツツガムシ病は、早期に診断して適切な抗菌薬を使えば改善が期待できる病気です。一方で、治療が遅れると肺炎、脳炎、多臓器不全などを起こし、命に関わることもあります。
この記事では、ツツガムシ病の症状、刺し口の特徴、潜伏期間、検査、治療法、予防法、受診の目安について、ダニに刺されたかもしれない方にもわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- ツツガムシ病は、ツツガムシの幼虫に刺されて感染する病気です
- 潜伏期間はおよそ5〜14日です
- 代表的な症状は発熱・発疹・刺し口です
- 早期治療にはテトラサイクリン系抗菌薬が重要です
- ワクチンはなく、肌の露出を避けるなどの予防が大切です
1.ツツガムシ病とは?
ツツガムシ病は、Orientia tsutsugamushi(オリエンティア・ツツガムシ)というリケッチアの一種によって起こる感染症です。病原体を持ったツツガムシの幼虫に刺されることで感染します。ツツガムシはダニの一種ですが、一般的に話題になる「マダニ」とは異なります。
日本では、北海道など一部地域を除き、全国で報告があります。発生時期は地域によって異なりますが、全国的には春から初夏と秋から初冬に多くみられます。ツツガムシ病は、感染症法では4類感染症に分類されており、診断した医師は保健所への届出が必要です。
ツツガムシ病は人から人へうつる?
ツツガムシ病は、インフルエンザや新型コロナのように人から人へ直接うつる病気ではありません。感染の多くは、屋外で病原体を持つツツガムシに刺されることで起こります。
マダニ感染症との違い
ダニが関係する感染症には、ツツガムシ病以外にも、日本紅斑熱やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などがあります。
いずれも、発熱・発疹・倦怠感など似た症状を起こすことがあるため、症状だけで自己判断するのは難しいです。野外活動後に高熱や発疹が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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2.ツツガムシ病の症状
ツツガムシ病の潜伏期間は、一般的に5〜14日程度です。つまり、草むら・山林・農地・河川敷などで活動した数日後から2週間以内に症状が出ることがあります。
代表的な症状は、発熱・発疹・刺し口です。これらは「ツツガムシ病の三徴」として重要です。
ツツガムシ病の主な症状
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 発熱 | 38〜40℃程度の高熱が出ることがあります。突然の発熱で始まることもあります。 |
| 頭痛・倦怠感 | 強いだるさ、食欲不振、悪寒、筋肉痛、関節痛を伴うことがあります。 |
| 発疹 | 発熱後数日して、体幹や顔面を中心に赤い発疹が出ることがあります。 |
| 刺し口 | 黒いかさぶたのような病変ができることがあります。痛みやかゆみが目立たないこともあります。 |
| リンパ節の腫れ | 刺し口の近くのリンパ節が腫れることがあります。 |
刺し口はどこにできやすい?
ツツガムシ病の刺し口は、皮膚の柔らかい場所や衣類で隠れる場所にできやすいとされています。
- わきの下
- 胸・腹部
- 腰まわり
- 太ももの内側
- 陰部周辺
- 膝の裏
刺し口は痛みやかゆみが少ないこともあり、自分では気づきにくい場合があります。発熱や発疹がある場合は、入浴時などに全身を確認してみましょう。ただし、刺し口が見つからないからといって、ツツガムシ病を完全に否定できるわけではありません。
【ツツガムシの特徴的な刺し口】

重症化するとどうなる?
ツツガムシ病は、早期に治療すれば改善が期待できる一方で、治療が遅れると重症化することがあります。重症化すると、以下のような合併症を起こすことがあります。
- 肺炎
- 肝機能障害
- 腎機能障害
- 意識障害・脳炎症状
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 多臓器不全
特に、高齢者、基礎疾患のある方、免疫が低下している方では注意が必要です。
3.ツツガムシ病の原因と感染経路
ツツガムシ病は、病原体を持つツツガムシの幼虫に刺されることで感染します。ツツガムシの幼虫は非常に小さく、肉眼では見つけにくいことがあります。そのため、「ダニに刺された記憶がない」という方でも、ツツガムシ病を発症することがあります。
感染の流れ
- 草むら、山林、農地、河川敷などで活動する
- 病原体を持ったツツガムシの幼虫が皮膚に吸着する
- 刺された部位から病原体が体内に入る
- 数日〜2週間ほどの潜伏期間を経て発症する
注意したい場所・活動
ツツガムシ病は、野外活動のあとに発症することが多い病気です。以下のような場面では注意しましょう。
- 農作業
- 草刈り
- 家庭菜園
- 山菜採り
- キャンプ
- ハイキング
- 釣り
- 河川敷での作業
- ペットの散歩
「山奥に行っていないから大丈夫」とは限りません。地域によっては、田畑、河川敷、住宅地近くの草むらでも感染の可能性があります。
4.ツツガムシ病の検査と診断
ツツガムシ病の診断では、症状だけでなく、野外活動歴、刺し口の有無、発疹の特徴、血液検査などを総合的に判断します。
問診で大切なこと
受診時には、以下の情報を医師に伝えると診断の手がかりになります。
- 1〜2週間以内に草むら・山林・農地・河川敷に行ったか
- 農作業、草刈り、キャンプ、ハイキングをしたか
- ダニに刺された可能性があるか
- 発熱がいつから始まったか
- 発疹がいつから出たか
- 黒いかさぶたのような刺し口があるか
血液検査でわかること
| 検査 | 確認する内容 |
|---|---|
| 白血球数・CRP | 炎症や感染の程度を確認します。 |
| 血小板 | 血小板減少がないか確認します。SFTSなどとの鑑別にも関係します。 |
| 肝機能 | AST、ALTなどの上昇がないか確認します。 |
| 腎機能 | 腎障害を合併していないか確認します。 |
| 抗体検査 | Orientia tsutsugamushiに対する抗体を確認します。時期によっては再検査が必要になることがあります。 |
| PCR検査 | 病原体の遺伝子を検出する検査です。早期診断に役立つ場合があります。 |
ツツガムシ病では、検査結果がそろう前でも、症状や経過から疑わしい場合には早めに治療を開始することがあります。治療の遅れが重症化につながることがあるためです。
5.ツツガムシ病の治療
ツツガムシ病の治療では、テトラサイクリン系抗菌薬が第一選択となります。代表的には、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどが使用されます。適切な治療が行われると、比較的速やかに症状が改善することがあります。
主に使われる薬
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| ドキシサイクリン | ツツガムシ病の代表的な治療薬です。早期投与が重要です。 |
| ミノサイクリン | テトラサイクリン系抗菌薬の一つです。症状や状況に応じて使用されます。 |
| アジスロマイシン | 妊婦や小児など、テトラサイクリン系が使いにくい場合に検討されることがあります。 |
なお、一般的な風邪に使われるような抗菌薬や、βラクタム系抗菌薬はツツガムシ病に有効ではありません。自己判断で市販薬だけで様子を見るのではなく、疑わしい症状がある場合は医療機関を受診してください。
入院が必要になることはある?
軽症であれば外来治療が可能なこともありますが、以下のような場合には入院が必要になることがあります。
- 高熱が続いている
- ぐったりして水分が取れない
- 肝機能障害や腎機能障害がある
- 血小板が低下している
- 意識がぼんやりしている
- 高齢者や基礎疾患がある
重症化が疑われる場合は、総合病院や感染症対応が可能な医療機関と連携して治療を行います。
6.ツツガムシ病と似ている病気
ツツガムシ病は、発熱や発疹を伴うため、他の感染症と見分けが難しいことがあります。特に、ダニが関係する感染症との鑑別が重要です。
| 病気 | 主な特徴 |
|---|---|
| ツツガムシ病 | 発熱、発疹、刺し口が特徴。ツツガムシの幼虫に刺されて感染します。 |
| 日本紅斑熱 | マダニに刺されて感染します。発熱、発疹、刺し口を認めることがあります。 |
| SFTS | マダニに関連する重症感染症です。発熱、消化器症状、血小板減少などがみられ、重症化することがあります。 |
| ウイルス感染症 | インフルエンザ、新型コロナ、麻疹、風疹などでも発熱や発疹が出ることがあります。 |
| 薬疹 | 薬の影響で発疹が出ることがあります。発熱を伴う場合もあります。 |
野外活動後の発熱では、「ただの風邪」と思っていても、ダニ媒介感染症が隠れていることがあります。
7.こんな症状があれば早めに受診しましょう
以下のような場合は、ツツガムシ病や他のダニ媒介感染症の可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
受診の目安
- 草むら・山林・農地などに行ったあと、5〜14日以内に発熱した
- 39℃前後の高熱がある
- 体に赤い発疹が出てきた
- 黒いかさぶたのような刺し口がある
- 強い頭痛や倦怠感がある
- 発熱に加えて、吐き気・下痢・食欲不振がある
- 市販薬を使っても熱が下がらない
受診時には、「いつ、どこで、どのような野外活動をしたか」を伝えることが大切です。ツツガムシ病は早期に疑うことが診断と治療につながります。
8.ツツガムシ病の予防法
ツツガムシ病には、現在利用できるワクチンはありません。そのため、ツツガムシに刺されないようにすることが最も大切です。
野外活動時の服装
- 長袖・長ズボンを着用する
- ズボンの裾を靴下や長靴の中に入れる
- 首元にタオルを巻く
- 肌の露出をできるだけ少なくする
- 明るい色の服を着て、虫がついていないか確認しやすくする
虫よけ剤の使用
野外活動では、虫よけ剤を使用することも予防につながります。製品の説明書を確認し、適切な量と方法で使用しましょう。
帰宅後に行うこと
- 帰宅後は早めに入浴する
- 衣類をすぐに着替える
- 体に刺し口や発疹がないか確認する
- 作業着は屋内に持ち込まず、早めに洗濯する
特に、わきの下、腰まわり、太ももの内側、膝の裏など、皮膚が柔らかく衣類で隠れる場所を確認しましょう。
9.まとめ:野外活動後の発熱・発疹・刺し口は早めに相談を
ツツガムシ病は、ツツガムシの幼虫に刺されることで感染する病気です。代表的な症状は、発熱・発疹・刺し口です。
早期に診断して適切な抗菌薬を使用すれば改善が期待できますが、治療が遅れると重症化することがあります。
特に、草むら、山林、農地、河川敷などで活動したあとに、数日〜2週間以内に高熱や発疹が出た場合は、ツツガムシ病を含むダニ媒介感染症の可能性があります。
「ただの風邪かな」と自己判断せず、野外活動歴を医師に伝えたうえで、早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献
- 厚生労働省「つつが虫病」
つつが虫病つつが虫病についてお伝えしています - 厚生労働省「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について つつが虫病」
つつが虫病|厚生労働省つつが虫病について紹介しています。 - 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「つつが虫病」
つつが虫病|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト - 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「つつが虫病 詳細版」
つつが虫病(詳細版)|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト - 日本感染症学会・日本化学療法学会「JAID/JSC感染症治療ガイドライン」

