「最近、疲れやすくなった」「食事量は変わらないのに体重が増えた」「寒さがつらい」「顔や手足がむくむ」と感じていませんか。
こうした症状の原因の一つとして考えられるのが、甲状腺機能低下症です。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの働きが不足し、全身の代謝や臓器の働きが低下する病気です。症状はゆっくり進むことが多く、更年期、加齢、疲労、うつ病、貧血などと間違われることもあります。一方、血液検査でTSHとFT4を測定すれば、比較的簡単に甲状腺機能を調べられます。
この記事では、甲状腺機能低下症の初期症状、原因、橋本病との違い、血液検査、治療法、薬の正しい飲み方、妊娠中の注意点について、わかりやすく解説します。
1.甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの産生・分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが不足する病態です。甲状腺は、喉ぼとけの少し下にある、蝶が羽を広げたような形の臓器です。甲状腺から分泌される主なホルモンには、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があります。甲状腺ホルモンは、次のような働きに関係しています。
- エネルギー消費や基礎代謝の調節
- 体温の維持
- 心拍数や心臓の働きの調節
- 脂質・糖質・たんぱく質の代謝
- 脳や神経、筋肉の働き
- 子どもの成長や発達
- 月経、排卵、妊娠の維持
甲状腺ホルモンが不足すると全身の働きが少しずつ低下するため、疲労感、寒がり、むくみ、便秘、体重増加、眠気、物忘れなど、多くの臓器に症状が現れます。
2.甲状腺機能低下症の初期症状
甲状腺機能低下症の症状は、数週間から数年かけてゆっくり進むことがあります。初期には症状が軽く、本人も周囲も気づかないケースが少なくありません。代表的な症状は次のとおりです。
全身に現れる症状
- 体がだるい、疲れやすい
- 十分に寝ても眠い
- 寒さに弱くなった
- 食事量が変わらないのに体重が増えた
- 汗をかきにくくなった
- 顔、まぶた、手足がむくむ
- 動作や話し方がゆっくりになる
皮膚や髪に現れる症状
- 皮膚が乾燥してカサカサする
- 髪が抜ける、髪が細くなる
- 眉毛の外側が薄くなる
- 爪が割れやすくなる
- 顔色が青白い、または黄色っぽく見える
胃腸・筋肉・心臓に現れる症状
- 便秘
- 筋肉痛、筋肉のこわばり
- 筋力の低下
- 脈が遅くなる
- 階段や運動で息切れする
- 声が低くなる、声がかすれる
心や脳に現れる症状
- 集中力が続かない
- 物忘れが増える
- やる気が出ない
- 気分が落ち込む
- 考える速度が遅くなったと感じる
女性に現れやすい症状
- 月経量が増える
- 月経周期が乱れる
- 排卵障害
- 妊娠しにくくなる
ただし、これらの症状は貧血、睡眠不足、更年期障害、うつ病、心不全、腎臓病、肝臓病などでも現れます。症状だけで甲状腺機能低下症と診断することはできません。
3.甲状腺機能低下症を疑うチェックポイント
次の項目が複数当てはまる場合は、医療機関で甲状腺機能の検査を相談しましょう。
- 以前より明らかに疲れやすくなった
- 寒さに弱くなった
- 顔やまぶた、手足がむくむ
- 原因がわからない体重増加がある
- 便秘が続いている
- 皮膚の乾燥や抜け毛が目立つ
- 声がかすれる、首が腫れている
- 眠気、集中力低下、物忘れがある
- 健康診断でLDLコレステロール高値を指摘された
- 月経異常や不妊がある
- 家族に橋本病やバセドウ病の人がいる
- 甲状腺の手術や放射性ヨウ素治療を受けたことがある
- 出産後に強い疲労感、むくみ、抑うつ症状が出た
高齢者では、典型的な寒がりや体重増加が目立たず、食欲低下、無気力、物忘れ、歩行速度の低下などが中心となる場合があります。「年齢のせい」と決めつけないことが大切です。
4.甲状腺機能低下症の主な原因
甲状腺機能低下症は、原因となる場所によって大きく次の2種類に分けられます。
- 原発性甲状腺機能低下症:甲状腺そのものに原因がある
- 中枢性甲状腺機能低下症:甲状腺を調節する下垂体や視床下部に原因がある
大部分は原発性甲状腺機能低下症です。
4-1.橋本病(慢性甲状腺炎)
日本を含むヨウ素を十分摂取できる地域では、甲状腺機能低下症の代表的な原因が橋本病です。橋本病は、免疫の仕組みが誤って自分の甲状腺を攻撃する自己免疫疾患です。炎症が長期間続くことで甲状腺組織が少しずつ傷つき、甲状腺ホルモンを十分に作れなくなることがあります。ただし、橋本病と診断された人全員が甲状腺機能低下症になるわけではありません。日本甲状腺学会の診断ガイドラインでは、橋本病のうち甲状腺機能低下症になるのは約1割とされています。
4-2.甲状腺の手術後
甲状腺がん、甲状腺腫瘍、バセドウ病などで甲状腺の一部または全部を手術で切除すると、甲状腺ホルモンが不足することがあります。甲状腺を全摘した場合は、原則として生涯にわたる甲状腺ホルモン補充が必要です。一部切除の場合は、残った甲状腺の働きによって治療の必要性が異なります。
4-3.放射性ヨウ素治療や放射線治療後
バセドウ病に対する放射性ヨウ素治療や、首・胸部のがんに対する放射線治療によって甲状腺が障害され、数か月から数年後に甲状腺機能低下症になることがあります。
4-4.甲状腺炎
無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、出産後に起こる産後甲状腺炎では、最初に甲状腺ホルモンが一時的に増え、その後、甲状腺機能低下症に移行することがあります。甲状腺炎による機能低下は自然に回復することもありますが、一部は永続的な甲状腺機能低下症になります。
4-5.ヨウ素の過剰摂取・不足
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料ですが、多すぎても少なすぎても甲状腺機能に影響します。昆布や海藻を食べる習慣がある日本では、ヨウ素不足よりも、昆布、昆布だし、ヨウ素を含む健康食品などによるヨウ素の過剰摂取が問題になることがあります。特に橋本病がある人では、過剰なヨウ素摂取によって甲状腺機能が低下する場合があります。通常の食事で海藻を完全に禁止する必要はありませんが、昆布を毎日大量に食べる、濃い昆布だしを大量に飲む、ヨウ素サプリメントを使用するといった習慣がある場合は医師に伝えましょう。
4-6.薬による甲状腺機能低下症
次のような薬が甲状腺機能に影響することがあります。
- 抗甲状腺薬
- リチウム
- アミオダロン
- インターフェロン製剤
- 一部の免疫チェックポイント阻害薬
- 一部の分子標的薬
該当する薬を使用している場合でも、自己判断で中止してはいけません。主治医と相談しながら定期的に甲状腺機能を確認します。
4-7.下垂体・視床下部の病気
下垂体腫瘍、下垂体の手術、放射線治療、出産時の大量出血などによって、甲状腺を刺激するTSHが十分に分泌されなくなることがあります。これを中枢性甲状腺機能低下症といいます。中枢性甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンが低いにもかかわらず、TSHが高くならず、基準範囲内または低値になることがあります。疑われる場合は、内分泌内科などで詳しい検査が必要です。
5.橋本病と甲状腺機能低下症の違い
橋本病と甲状腺機能低下症は同じ意味で使われることがありますが、厳密には異なります。
| 項目 | 橋本病 | 甲状腺機能低下症 |
|---|---|---|
| 何を表すか | 甲状腺に起こる自己免疫性の炎症 | 甲状腺ホルモンの働きが不足した状態 |
| 甲状腺機能 | 正常な場合も多い | 顕性ではFT4が低下する |
| 主な検査 | 抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体、超音波検査 | TSH、FT4 |
| 治療 | 機能が正常なら経過観察になることがある | 原因や程度に応じてレボチロキシンを使用する |
つまり、橋本病は甲状腺機能低下症の原因の一つですが、橋本病があっても甲状腺ホルモンが正常であれば、すぐに薬が必要とは限りません。
6.甲状腺機能低下症の検査と診断
6-1.TSHとFT4の血液検査
甲状腺機能低下症の診断で最も重要なのが、TSHとFT4の血液検査です。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン):脳下垂体から分泌され、甲状腺にホルモンを作るよう指示する
- FT4(遊離サイロキシン):血液中で実際に利用できる甲状腺ホルモンの量を反映する
| TSH | FT4 | 考えられる状態 |
|---|---|---|
| 高値 | 低値 | 原発性甲状腺機能低下症 |
| 高値 | 基準範囲内 | 潜在性甲状腺機能低下症 |
| 低値~基準範囲内 | 低値 | 中枢性甲状腺機能低下症など |
FT3は重症度や病状によって測定することがありますが、甲状腺機能低下症の初期診断では、一般にTSHとFT4の方が重要です。
6-2.甲状腺自己抗体検査
橋本病が疑われる場合は、次の抗体を調べます。
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体、TPOAb)
- 抗サイログロブリン抗体(TgAb)
これらの抗体が陽性の場合、橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患の可能性が高まります。ただし、抗体が陽性でも甲状腺機能が正常な人はおり、抗体の有無だけで薬を開始するわけではありません。
6-3.その他の血液検査
甲状腺機能低下症では、次のような異常がみられることがあります。
- LDLコレステロールや総コレステロールの上昇
- クレアチンキナーゼ(CK)の上昇
- 貧血
- 肝機能検査値の異常
- ナトリウムの低下
健康診断で原因不明のLDLコレステロール高値やCK高値を指摘されたことが、甲状腺機能低下症発見のきっかけになる場合もあります。
6-4.甲状腺超音波検査
甲状腺の腫れ、しこり、左右差がある場合や、橋本病が疑われる場合には、甲状腺超音波検査を行うことがあります。ただし、TSHが高いという理由だけで、すべての人に超音波検査が必要になるわけではありません。
6-5.ビオチンサプリによる検査への影響
髪や爪を目的としたサプリメントに含まれるビオチンは、一部の甲状腺ホルモン検査に影響し、実際とは異なる数値を示すことがあります。ビオチンを含むサプリメントを使用している場合は、採血前に必ず医師や検査担当者へ伝えてください。中止する期間については、製品の含有量や検査方法によって異なるため、医療機関の指示に従いましょう。
7.潜在性甲状腺機能低下症とは?
潜在性甲状腺機能低下症とは、FT4は基準範囲内に保たれているものの、TSHが基準値より高くなっている状態です。明らかな症状がないことも多く、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されます。軽度のTSH上昇は一時的なこともあるため、すぐに治療を開始せず、数か月後に再検査する場合があります。治療するかどうかは、TSHの値だけでなく、次の要素を総合して判断します。
- TSH上昇が持続しているか
- TSHが10mIU/L以上か
- 甲状腺機能低下症を疑う症状があるか
- 抗TPO抗体が陽性か
- 甲状腺腫があるか
- 脂質異常症や心血管疾患のリスクがあるか
- 年齢
- 妊娠中または妊娠を希望しているか
一般に、TSHが持続的に10mIU/L以上の場合は治療を検討することが多く、軽度上昇の場合は症状、年齢、抗体、妊娠の有無などによって個別に判断します。特に高齢者では、加齢に伴ってTSHがやや高くなることがあります。軽度の潜在性甲状腺機能低下症を一律に治療すると、薬が効きすぎて心房細動や骨量低下を招くおそれがあるため、慎重な判断が必要です。
8.甲状腺機能低下症の治療
8-1.レボチロキシンによる甲状腺ホルモン補充療法
顕性の甲状腺機能低下症では、不足している甲状腺ホルモンを補うレボチロキシンによる治療が基本です。日本ではチラーヂンSなどの商品名で処方されています。レボチロキシンは、体内で作られるT4と同じ働きをする薬です。適切な量を使用すれば、甲状腺ホルモンを正常範囲に保ち、症状の改善や合併症の予防が期待できます。開始量は、次の条件を考慮して決めます。
- 年齢
- 体重
- 甲状腺機能低下症の程度
- 原因
- 心臓病などの基礎疾患
- 妊娠の有無
若く、心臓病のない人では必要量に近い量から開始することがあります。一方、高齢者や狭心症、不整脈などがある人では、少量から始めてゆっくり増量するのが一般的です。
8-2.治療開始後の血液検査
レボチロキシンを開始または増減した後は、一般に6~8週間程度でTSHやFT4を再検査します。レボチロキシンは体内で安定するまで時間がかかるため、数日ごとに量を変更する薬ではありません。適切な量が決まった後も、通常は半年から1年ごとを目安に甲状腺機能を確認します。ただし、妊娠、体重の大きな変化、他の薬の開始、症状の再発などがあれば、より早く検査する場合があります。
8-3.レボチロキシンの正しい飲み方
レボチロキシンは食事や他の薬の影響を受けやすいため、毎日なるべく同じ条件で服用することが大切です。
- 一般には朝食前の空腹時に服用する
- 朝食前が難しい場合は、就寝前など一定の時間に服用する方法もある
- 水またはぬるま湯で服用する
- 自己判断で増量、中止しない
- 薬の銘柄や製造元が変わった場合は主治医に伝える
次の薬や食品は、レボチロキシンの吸収に影響することがあります。
- 鉄剤、鉄を含むサプリメント
- カルシウム製剤、カルシウムサプリメント
- 一部の胃薬や制酸薬
- 一部のコレステロールを下げる薬
- 大豆製品を大量に摂取する食生活
これらを使用する場合は服用時間をずらす必要があることがあります。具体的な間隔は薬によって異なるため、医師または薬剤師に確認してください。
8-4.T3製剤や甲状腺エキスは必要?
甲状腺機能低下症の標準治療は、レボチロキシン単独療法です。T3製剤との併用療法は、一部の患者で検討されることがありますが、全員に有効であるという十分な根拠はなく、動悸、不眠、不整脈などの副作用にも注意が必要です。自己判断で輸入薬や甲状腺エキス、甲状腺ホルモンを含むサプリメントを使用してはいけません。
9.薬が効きすぎた場合の症状
レボチロキシンの量が多すぎると、甲状腺機能亢進症に似た症状が現れます。
- 動悸、脈が速い
- 手の震え
- 汗が増える
- 暑がりになる
- 体重が減る
- イライラ、不安感
- 眠れない
長期間にわたって過剰投与が続くと、心房細動や骨量低下のリスクが高まることがあります。症状がある場合でも自己判断で薬を中止せず、医療機関へ相談してください。
10.妊娠・妊娠希望と甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンは、妊娠の維持や胎児の脳・神経の発達に重要です。妊娠中に甲状腺機能低下症が十分に治療されていない場合、流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクが高くなる可能性があります。次に当てはまる人は、妊娠前または妊娠がわかった時点で、早めに医療機関へ相談してください。
- すでに甲状腺機能低下症の治療を受けている
- 橋本病と診断されている
- 甲状腺の手術歴がある
- 過去にバセドウ病の治療を受けた
- 甲状腺疾患の家族歴がある
- 不妊治療中である
- 流産や早産を繰り返している
妊娠するとレボチロキシンの必要量が増えることがあります。妊娠がわかった場合は、薬を中止せず、速やかに主治医へ連絡し、TSHとFT4を確認しましょう。妊娠中の目標値や治療開始基準は、妊娠週数、甲状腺自己抗体、施設の基準値などによって異なるため、通常の成人とは分けて判断します。
11.子どもと高齢者の甲状腺機能低下症
子どもの場合
子どもの甲状腺ホルモン不足では、疲れやすさだけでなく、身長の伸びが悪い、学習面の変化、思春期の遅れ、甲状腺の腫れなどが現れることがあります。乳幼児期の甲状腺ホルモンは脳や体の発達に重要であるため、先天性甲状腺機能低下症は新生児マススクリーニングの対象となっています。
高齢者の場合
高齢者では、症状が典型的でないことが少なくありません。食欲低下、体重減少、認知機能低下、抑うつ、転倒、筋力低下などが主な症状になる場合があります。また、治療薬が効きすぎると心房細動や骨折のリスクにつながるため、若い人より少量から慎重に治療することがあります。
12.甲状腺機能低下症の合併症
顕性の甲状腺機能低下症を長期間放置すると、次のような問題につながる可能性があります。
- LDLコレステロール上昇
- 動脈硬化や心血管疾患
- 徐脈や心不全
- 末梢神経障害
- 筋力低下
- 月経異常、不妊
- 妊娠・出産への影響
- 抑うつ症状や認知機能低下
粘液水腫性昏睡
粘液水腫性昏睡は、重度の甲状腺機能低下症を背景に、感染症、寒冷、薬剤、手術などをきっかけとして起こる、まれですが命にかかわる緊急疾患です。次のような症状がある場合は、救急車を呼ぶことを検討してください。
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い
- 体温が著しく低い
- 脈が極端に遅い
- 呼吸が浅い、息苦しい
- 強いむくみと全身状態の悪化がある
13.甲状腺機能低下症の日常生活と食事
特別な食事療法は必要?
レボチロキシンによる治療が必要な甲状腺機能低下症を、食品やサプリメントだけで治すことはできません。基本はバランスのよい食事です。海藻を完全に避ける必要はありませんが、昆布やヨウ素を含む健康食品を毎日大量に摂取するのは控えましょう。
運動はしてもよい?
甲状腺ホルモン値が安定していれば、通常は運動できます。ただし、未治療で強い疲労感、息切れ、徐脈、筋力低下がある場合は、無理な運動を避け、治療後に少しずつ再開しましょう。
薬を飲めば体重は必ず減る?
甲状腺機能低下症によるむくみや代謝低下が改善すると、体重が減ることはあります。しかし、甲状腺ホルモン薬はダイエット薬ではありません。甲状腺機能が正常な人が体重を減らす目的で使用すると、動悸、不整脈、骨量低下などを引き起こす危険があります。
14.医療機関を受診する目安
次のような場合は、内科、内分泌内科、甲状腺を診療する医療機関へ相談しましょう。
- 疲労感、寒がり、便秘、むくみなどが数週間以上続く
- 原因不明の体重増加がある
- 首の前側が腫れている、しこりを感じる
- 健康診断でコレステロール高値やCK高値を指摘された
- 月経異常、不妊、流産を繰り返している
- 甲状腺疾患の家族歴がある
- 甲状腺の手術や放射性ヨウ素治療を受けたことがある
- 治療中に症状が再び悪化した
- 妊娠を希望している、または妊娠がわかった
15.甲状腺機能低下症についてよくある質問
Q1.甲状腺機能低下症は治りますか?
原因によって異なります。橋本病、甲状腺全摘後、放射性ヨウ素治療後などでは、生涯にわたり薬が必要になることがあります。一方、産後甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、ヨウ素過剰などによる機能低下は、回復する場合があります。
Q2.橋本病なら必ず薬を飲む必要がありますか?
必ずしも必要ではありません。橋本病でもTSHとFT4が正常で、症状がなければ定期検査のみとなる場合があります。薬の必要性は甲状腺機能の数値で判断します。
Q3.甲状腺機能低下症になると必ず太りますか?
体重増加やむくみが起こることはありますが、すべての人が太るわけではありません。大幅な体重増加がある場合は、食事、運動量、薬、むくみを起こす他の病気なども確認する必要があります。
Q4.レボチロキシンは一生飲み続けても安全ですか?
レボチロキシンは不足しているホルモンを補う薬です。適切な量であれば長期間使用できます。ただし、必要量は年齢、体重、妊娠、他の薬などによって変化するため、定期的な血液検査が必要です。
Q5.症状が改善したら薬をやめてもよいですか?
症状が改善したのは薬によって甲状腺ホルモンが補われているためかもしれません。自己判断で中止すると再び機能低下になる可能性があるため、必ず主治医に相談してください。
Q6.何科を受診すればよいですか?
まずは内科でTSHとFT4の検査を受けられます。診断が難しい場合、中枢性甲状腺機能低下症が疑われる場合、妊娠中、治療しても数値が安定しない場合などは、内分泌内科や甲状腺専門医への紹介が検討されます。
16.まとめ
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが不足し、全身の代謝や臓器の働きが低下する病気です。疲れやすさ、寒がり、むくみ、便秘、体重増加、皮膚の乾燥、抜け毛、物忘れ、抑うつ症状などが代表的ですが、症状だけでは他の病気と区別できません。診断では、TSHとFT4の血液検査が重要です。橋本病が疑われる場合は、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体を調べることがあります。顕性の甲状腺機能低下症では、レボチロキシンによる甲状腺ホルモン補充療法が基本です。一方、FT4が正常な潜在性甲状腺機能低下症では、TSHの程度、症状、年齢、妊娠、抗体などを考慮して、治療または経過観察を選択します。気になる症状が複数続いている場合や、健康診断でコレステロール高値を指摘された場合は、「疲れているだけ」「年齢のせい」と決めつけず、医療機関で甲状腺機能の検査を相談しましょう。
※本記事は一般的な医療情報を提供するもので、個別の診断や治療を代替するものではありません。症状や検査値については、医療機関でご相談ください。
参考文献
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
- NICE「Thyroid disease: assessment and management」
- American Thyroid Association「Hypothyroidism」
- American Thyroid Association「Thyroid Hormone Treatment」
- American Thyroid Association「Thyroid Function Tests」
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases「Hypothyroidism」
- American Thyroid Association「2026 Guidelines on Thyroid Disease in Preconception, Pregnancy, and Postpartum」

