「爪に横線が入っている」「白い線が何本もある」「最近、爪の縦線が目立ってきた」など、爪の変化を見つけて心配になる方は少なくありません。
爪にできる「線」にはいくつか種類があり、代表的なものとして、
Beau線(ボー線)、Mees線(ミーズ線)、Muehrcke線(ミュルケ線)、縦線(縦溝・onychorrhexis)
があります。
見た目は似ていますが、それぞれ原因や意味が異なります。
ただし、最初に知っておいていただきたいのは、
爪に線があるからといって、すぐに重大な病気を意味するわけではない
ということです。
特に縦線は加齢による変化として非常によくみられます。また、Beau線は数週間〜数か月前の発熱や感染症などの影響が、時間がたってから爪に現れていることがあります。
この記事では、爪にできる代表的な線について、見分け方、原因、受診の目安をわかりやすく解説します。
- まず確認|爪の線は「色」と「へこみ」で見分ける
- Beau線・Mees線・Muehrcke線・縦線の違い
- ① Beau線(ボー線)|爪にできる横向きの「へこみ」
- ② Mees線(ミーズ線)|爪そのものにできる白い横線
- ③ Muehrcke線(ミュルケ線)|押すと消える白い横線
- Mees線とMuehrcke線の簡単な見分け方
- ④ 爪の縦線・縦溝|多くは加齢に伴う変化
- 「縦線=栄養不足」とは限りません
- 注意したい「黒や茶色の縦線」
- 1本だけの線と、全部の爪にある線では意味が違う?
- 爪に線があったら、どんな検査をする?
- 自宅でできる爪のケア
- こんな爪の線は病院で相談しましょう
- 爪の線についてよくある質問
- まとめ|爪の線は「形・色・動き」を見ることが大切
- 参考文献
まず確認|爪の線は「色」と「へこみ」で見分ける
爪の線を見つけたら、まず次のポイントを確認してみましょう。
- 横線ですか?縦線ですか?
- 白い線ですか?それとも爪そのものがへこんでいますか?
- 線を指で触ると段差がありますか?
- 爪を上から押すと白い線が消えますか?
- 時間がたつと線が爪先方向へ移動していますか?
- 1本だけですか?複数の爪にありますか?
これらを確認すると、ある程度タイプを推測できます。
Beau線・Mees線・Muehrcke線・縦線の違い
| 種類 | 見た目 | 押すと消える? | 爪と一緒に移動? | 代表的な原因・関連 |
|---|---|---|---|---|
| Beau線 (ボー線) |
横向きの溝・へこみ | 消えない | 移動する | 発熱、感染症、重い体調不良、外傷、薬剤、抗がん剤など |
| Mees線 (ミーズ線) |
白い横線。通常へこみはない | 消えない | 移動する | 薬剤、抗がん剤、重金属曝露、全身疾患など |
| Muehrcke線 (ミュルケ線) |
2本1組のような白い横線 | 薄くなる・消える | 基本的に移動しない | 低アルブミン血症、慢性疾患、化学療法など |
| 縦線・縦溝 | 爪の根元から先端に向かう線 | 消えない | 爪そのものの変化 | 加齢、乾燥、爪の脆弱化、慢性的な刺激、皮膚疾患など |
① Beau線(ボー線)|爪にできる横向きの「へこみ」
Beau線(Beau’s lines)とは、爪を横切るようにできる溝やへこみです。白い線というよりも、横方向に爪が「くぼんでいる」ことが特徴です。
Beau線はなぜできる?
爪は、爪の根元にある「爪母(そうぼ)」でつくられています。発熱や感染症などによって爪母の細胞分裂が一時的に低下すると、その時期につくられる爪が薄くなります。その部分が成長して表面に出てきたものがBeau線です。つまりBeau線は、「少し前に爪の成長が一時的に低下していた記録」と考えることができます。
Beau線の主な原因
- 高熱を伴う感染症
- インフルエンザなどの急性感染症
- 手足口病などのウイルス感染症
- 重い全身疾患
- 手術や入院
- 爪の根元への外傷・圧迫
- 一部の薬剤
- 抗がん剤治療
- 強い身体的ストレス
1本だけに出ている場合には、その指への外傷や爪への刺激が原因の可能性があります。一方、複数の爪のほぼ同じ位置に横溝がある場合には、同じ時期に身体全体へ負担がかかった可能性を考えます。
爪の位置から「いつ頃の出来事か」を推測できる
手の爪はおおむね1か月に約3mm前後伸びます。そのため、例えば爪の根元から6mm程度離れた位置にBeau線があれば、おおよそ2か月前に何らかの出来事があった可能性を考えることができます。ただし爪の成長速度には個人差があるため、あくまで目安です。
Beau線は治る?
原因がすでに解消されていれば、通常は特別な治療を必要としません。正常な爪が根元から伸びてくると、Beau線も少しずつ爪先方向へ移動し、最終的には爪を切る部分まで進んでなくなります。

② Mees線(ミーズ線)|爪そのものにできる白い横線
Mees線(Mees’ lines)は、爪を横切る白い線です。Beau線とは異なり、基本的には爪に明らかなへこみはありません。医学的には「真性白色爪(true leukonychia)」の一種とされ、爪そのものの角化に変化が生じることで白く見えます。
Mees線の特徴
Mees線では、白い線が爪そのものに存在します。そのため、爪を上から押しても白い線は消えません。さらに爪が伸びるにつれて、白い線も少しずつ爪先方向へ移動します。
Mees線の原因は?
Mees線は古くからヒ素などの重金属中毒との関連で知られています。ただし、Mees線があるからといって、すぐに「重金属中毒」というわけではありません。実際には、
- 抗がん剤治療
- 一部の薬剤
- 重い全身疾患
- 爪母への障害
- ヒ素などの重金属への曝露
など、さまざまな原因でみられることがあります。複数の爪に明瞭な白い横線が突然現れ、原因に心当たりがない場合には、一度医療機関で相談するとよいでしょう。
③ Muehrcke線(ミュルケ線)|押すと消える白い横線
Muehrcke線(Muehrcke’s lines)も白い横線ですが、Mees線とは仕組みが異なります。Muehrcke線は爪そのものではなく、爪の下にある爪床の血流などの変化によって白く見える「見かけ上の白色爪(apparent leukonychia)」です。
Muehrcke線の特徴
典型的には、平行する2本の白い横線としてみられます。そして重要な特徴が2つあります。
- 爪を上から圧迫すると白い線が薄くなる、あるいは消える
- 爪が伸びても線の位置が爪先方向へ移動しない
この2点がMees線との重要な違いです。
Muehrcke線と低アルブミン血症
Muehrcke線は古典的には、血液中のアルブミンが低下した状態(低アルブミン血症)との関連が知られています。例えば、
- ネフローゼ症候群
- 重い肝疾患
- 高度の低栄養
- 蛋白喪失を伴う病気
- 重い慢性疾患
などでみられることがあります。一方で、化学療法など、必ずしも低アルブミン血症だけでは説明できないケースも報告されています。したがって、「Muehrcke線=腎臓病」「Muehrcke線=低アルブミン」と単純に判断することはできません。
Mees線とMuehrcke線の簡単な見分け方
白い横線を見つけたときには、爪を軽く押してみることが参考になります。
| Mees線 | Muehrcke線 | |
|---|---|---|
| 白線の場所 | 爪そのもの | 主に爪床 |
| 指で押す | 消えない | 薄くなる・消える |
| 爪が伸びる | 先端方向へ移動 | 基本的に移動しない |
| へこみ | 通常なし | なし |
④ 爪の縦線・縦溝|多くは加齢に伴う変化
爪の根元から先端に向かって伸びる縦方向の線は、非常によくみられる爪の変化です。医学的には、縦方向の筋や亀裂をonychorrhexis(爪甲縦裂症・縦溝)と表現することがあります。特に年齢とともに爪の水分量や構造が変化すると、縦方向の筋が目立ちやすくなります。そのため、数本〜多くの爪に均等な細い縦線があり、痛みや色の変化がない場合には、加齢による生理的変化であることが多いと考えられます。
縦線が目立つ原因
- 加齢
- 乾燥
- 爪の脆弱化
- 水仕事の繰り返し
- 洗剤やアルコールなどへの頻回な曝露
- マニキュアや除光液などによる刺激
- 慢性的な爪への外傷
また、湿疹、乾癬、扁平苔癬などの皮膚疾患でも縦方向の変形がみられることがあります。
「縦線=栄養不足」とは限りません
爪に縦線があると、
「鉄分が足りないのでは?」
「亜鉛不足では?」
「何かのビタミン不足?」
と心配される方もいます。しかし、縦線だけを見て特定の栄養素不足を診断することはできません。多くの場合は加齢や乾燥、爪の脆弱化などによって説明できます。体重減少、食欲低下、極端な食事制限、貧血症状などが伴っている場合には、必要に応じて血液検査などを検討します。
注意したい「黒や茶色の縦線」
ここまで説明した縦溝とは別に、爪に黒色や茶色の縦方向の帯が現れる「縦方向色素線条(longitudinal melanonychia)」があります。多くは良性ですが、まれに爪の悪性黒色腫(メラノーマ)が原因となることがあります。特に、
- 1本の爪だけに新しく黒い線が出てきた
- 線が徐々に太くなる
- 色が均一ではない
- 境界が不整
- 黒い色が爪の周囲の皮膚まで広がっている
- 爪そのものが変形してきた
といった場合には、自己判断せず皮膚科で相談することをおすすめします。
1本だけの線と、全部の爪にある線では意味が違う?
爪の変化を考えるうえでは、何本の爪に変化があるかも重要です。
1本だけの場合
その爪だけへの外傷や圧迫、爪周囲の炎症など、局所的な原因を考えやすくなります。
複数の爪に同じ変化がある場合
感染症、全身疾患、薬剤、栄養状態など、身体全体に影響する出来事が関係している可能性を考えます。特に複数の爪のほぼ同じ高さにBeau線がある場合には、数週間〜数か月前に共通して爪の成長を抑える出来事があった可能性があります。
爪に線があったら、どんな検査をする?
すべての爪の線に血液検査が必要なわけではありません。まず重要なのは、
- いつから変化があるか
- 1本か複数か
- 発熱や感染症がなかったか
- 最近大きな病気や手術をしていないか
- 服用している薬
- 爪への外傷
- 体重減少や食欲低下
- 皮膚疾患の有無
などを確認することです。診察結果によっては、血算、アルブミン、肝機能、腎機能、鉄関連検査などを検討することがありますが、爪の線だけを理由に一律に多くの検査をする必要はありません。
自宅でできる爪のケア
爪に縦線やBeau線がある場合でも、爪を健康に保つ基本的なケアは共通しています。
- 爪を極端に長くしない
- 爪や甘皮を強く削らない
- 水仕事では手袋を使用する
- 手洗い後はハンドクリームなどで保湿する
- 除光液やネイル処理を繰り返しすぎない
- 爪を噛んだり、根元をいじったりしない
Beau線などを削って平らにしようとすると、かえって爪が薄くなることがあるため注意しましょう。
こんな爪の線は病院で相談しましょう
次のような場合には、一度医療機関で確認してもらうと安心です。
- 原因が分からない横線が複数の爪に突然現れた
- 横溝を何度も繰り返している
- 爪が変形したり、はがれてきたりする
- 爪の周囲に腫れ、赤み、痛み、膿がある
- 白い横線が複数の爪に出ている
- 体重減少、食欲不振、むくみなどを伴う
- 黒や茶色の縦線が新しく出現し、徐々に太くなっている
- 爪周囲の皮膚まで色素が広がっている
爪の線についてよくある質問
Q.爪の縦線は老化のサインですか?
年齢とともに縦線が目立つことはよくあります。
特に複数の爪に細く均等な縦線がある場合には、加齢性変化の可能性が高くなります。
Q.爪に横線があると大きな病気でしょうか?
必ずしもそうではありません。
Beau線の場合、数か月前の発熱や感染症、外傷などが原因で、現在はすでに問題がなくなっていることもあります。
Q.白い横線はカルシウム不足ですか?
白い線だけからカルシウム不足と判断することはできません。
Mees線やMuehrcke線、軽い外傷による白斑など、白く見える原因は複数あります。
Q.Beau線は自然に消えますか?
爪母が正常な爪を再びつくっていれば、爪の成長とともにBeau線は先端へ移動し、最終的には爪を切ることでなくなります。
Q.爪の線は何科に行けばいい?
爪の変形や色の変化そのものを詳しく診てもらう場合には皮膚科が専門です。一方、むくみ、体重減少、強い倦怠感など全身症状を伴う場合には、内科やかかりつけ医に相談してもよいでしょう。
まとめ|爪の線は「形・色・動き」を見ることが大切
爪の線にはいくつか種類があります。
Beau線は、爪の成長が一時的に低下したことで生じる横向きの「へこみ」です。
Mees線は爪そのものにできる白い横線で、押しても消えず、爪の成長とともに移動します。
Muehrcke線は爪床の変化によって生じる白い線で、押すと薄くなり、爪が伸びても基本的には位置が変わりません。
縦線は加齢によって目立つことが多く、特にほかの異常を伴わなければ過度に心配する必要のないケースが多くあります。
爪は身体の状態を反映することがありますが、
「爪に線がある=重大な病気」というわけではありません。
線の形や色、何本の爪に出ているか、爪とともに移動するかなどを確認し、気になる変化が続く場合や、全身症状を伴う場合には医療機関で相談しましょう。
参考文献
- DermNet. Nail terminology.
- DermNet. White nail — Leukonychia: An overview.
- Lipner SR, et al. Optimal diagnosis and management of common nail disorders. 2022.
- Lee DK, Lipner SR. Beau’s Lines and Onychomadesis: A Systematic Review of Characteristics and Aetiology.
- Nails in older adults. Review of physiologic and pathologic nail changes associated with ageing.
- Nails in systemic disease. Review of nail manifestations associated with systemic disorders.
- StatPearls. Muehrcke Lines of the Fingernails.
