「赤ちゃんのうんちが3日出ていない」「子どもが便をするときに泣く」「綿棒浣腸は毎日しても大丈夫?」「便秘薬を飲ませると癖にならない?」など、子どもの便秘について心配する保護者は少なくありません。
子どもの便秘で大切なのは、単純に「何日うんちが出ていないか」だけで判断しないことです。排便回数が少なくても、やわらかい便が苦痛なく出ていれば問題にならないことがあります。一方、毎日排便していても、便が硬い、排便時に痛がる、便を我慢している場合には便秘症の可能性があります。
2025年には、日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会による「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」が12年ぶりに改訂されました。今回は、このガイドラインやRome IV診断基準、国内外の最新のエビデンスをもとに、赤ちゃんから学童までの便秘について解説します。
- 子どもの便秘は「何日出ないか」だけではなく、便の硬さ・痛み・我慢行動も重要です。
- 硬い便を痛がって我慢すると、さらに便が硬くなる「便秘の悪循環」が起こります。
- 便が大量にたまっている場合は、まず「便塞栓除去」を行い、その後に維持療法を行うのが基本です。
- 2歳以上ではPEG(ポリエチレングリコール)が重要な治療選択肢です。
- 食物繊維や水分は「多ければ多いほど良い」のではなく、不足しないよう適切に摂ることが重要です。
- 乳児の綿棒浣腸は家庭で行われる方法ですが、標準治療として有効性を示す十分なエビデンスがあるわけではありません。
- 1.子どもの便秘とは?何日出なければ便秘?
- 2.小児慢性機能性便秘症とは?
- 3.なぜ子どもは便秘になりやすい?
- 4.赤ちゃんの便秘|乳児では「回数だけ」で判断しない
- 5.子どもの便秘は何日で病院を受診する?
- 6.赤ちゃんの綿棒浣腸はしてもいい?
- 7.小児便秘治療の基本は「便を出す→やわらかい状態を維持する」
- 8.子どもの便秘に使われる薬
- 9.便秘に食物繊維はどれくらい効果がある?
- 10.水をたくさん飲ませれば便秘は治る?
- 11.ヨーグルト・乳酸菌・整腸剤は便秘に効く?
- 12.生活習慣でできる便秘対策
- 13.子どもの便秘は治るまでどのくらいかかる?
- 14.よくある質問
- 15.まとめ|子どもの便秘は早めに「痛くない排便」に戻すことが大切
- 参考文献
1.子どもの便秘とは?何日出なければ便秘?
便秘とは、一般的には便が腸の中に長くとどまっている状態、または便が出しにくい状態をいいます。
「3日出なければ便秘」と考えられがちですが、子どもの正常な排便回数には大きな個人差があります。特に母乳栄養の乳児では、数日に1回しか排便しなくても、便がやわらかく、機嫌・哺乳・体重増加が良好であれば病的な便秘ではない場合があります。
一方、次のような状態があれば、排便回数がそれほど少なくなくても便秘を疑います。
- 便が硬い、コロコロしている
- 排便するときに痛がる、泣く
- 肛門が切れて血がつく
- 足を交差させる、体を反らせるなど便を我慢する
- 非常に大きな便が出る
- 腹痛やお腹の張りを繰り返す
- 食欲が落ちる
- パンツに少量の便が漏れる
2.小児慢性機能性便秘症とは?
子どもの便秘の多くは、腸そのものに重大な病気があるのではなく、排便習慣や便を我慢することなどが関係する「機能性便秘症」です。小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2025年版では、国際的に使用されているRome IV診断基準を用いて診断します。
4歳以下の機能性便秘症を疑う主な特徴
1か月以上にわたり、次のうち2項目以上がみられる場合に機能性便秘症を考えます。
- 排便が週2回以下
- 便を強く我慢する
- 硬い便、痛みを伴う排便
- 非常に大きな便が出る
- 直腸に大量の便がたまっている
トイレットトレーニングが終了している子どもでは、便失禁やトイレを詰まらせるほど大きな便も診断の手がかりになります。
3.なぜ子どもは便秘になりやすい?
小児便秘で非常に重要なのが、「痛い→我慢する→さらに硬くなる」悪循環です。
- 硬い便を排泄して痛い思いをする
- 「また痛いのが嫌だ」と便を我慢する
- 直腸に便が長時間たまる
- 便からさらに水分が吸収される
- 便がより硬く、大きくなる
- 次の排便がさらに痛くなる
これを繰り返すと直腸が拡張し、便がたまっている感覚そのものが鈍くなることがあります。そのため、慢性化した便秘では食事だけでは改善せず、薬によって一定期間やわらかい便を保つ治療が必要になります。
便秘が起こりやすい時期
- 母乳からミルクへ移行した時期
- 離乳食を開始した時期
- トイレットトレーニングを始めた時期
- 保育園・幼稚園への入園
- 小学校入学
- 学校のトイレを我慢するようになったとき
- 引っ越しや旅行など生活環境が変わったとき
4.赤ちゃんの便秘|乳児では「回数だけ」で判断しない
乳児は成長とともに排便回数が大きく変化します。特に母乳栄養児では、便が非常にやわらかい一方で排便間隔が数日あくこともあります。そのため、赤ちゃんでは「2日出ない」「3日出ない」という日数だけで便秘とは判断できません。次の点を一緒に確認します。
- 便が硬いか
- 排便時に痛がるか
- お腹が強く張っていないか
- ミルクや母乳を普段どおり飲めているか
- 嘔吐がないか
- 機嫌が良いか
- 体重が順調に増えているか
「うなるけれど、出てくる便はやわらかい」場合
生後9か月未満の赤ちゃんでは、顔を真っ赤にして10分以上いきんだり泣いたりするのに、最終的に出てくる便はやわらかいことがあります。これは乳児排便困難症(infant dyschezia)と呼ばれ、便秘とは異なります。お腹に力を入れることと肛門を緩めることの協調がまだ未熟なために起こる現象で、多くは発達とともに自然に改善します。便がやわらかく、体重増加や全身状態に問題がなければ、通常は便秘薬を必要としません。
5.子どもの便秘は何日で病院を受診する?
「何日出なかったら病院へ行く」という絶対的な基準はありません。ただし、硬い便や排便時痛が繰り返されている場合には、長期間様子を見るよりも早めに治療して「痛くない排便」に戻すことが重要です。
早めに小児科へ相談したい症状
- 便が硬く、排便のたびに痛がる
- 排便時に肛門が切れて出血する
- 便を我慢するようになった
- 3~4日以上便が出ないことを何度も繰り返す
- 腹痛や食欲低下を繰り返す
- 家庭で浣腸しても便が出ない
- 便秘が数週間以上続いている
- 便が漏れてパンツが汚れる
すぐに受診したほうがよい症状
- 緑色(胆汁性)の嘔吐
- 何度も嘔吐する
- お腹が著しく張っている
- 激しい、または持続する腹痛
- ぐったりしている
- 明らかな血便
- 哺乳できない
便秘の背景に病気が隠れていないか注意するサイン
小児便秘の大部分は機能性ですが、まれにHirschsprung病、甲状腺機能低下症、脊髄疾患、肛門・直腸の形態異常などが隠れていることがあります。特に次の場合は詳しい評価が必要です。
- 出生後48時間以上たっても胎便が出なかった
- 新生児期・生後早期から強い便秘がある
- 体重が増えない、成長が悪い
- 慢性的な著しい腹部膨満がある
- 嘔吐を繰り返す
- 非常に細い便が続く
- 肛門の位置や形に異常がある
- 下肢の神経症状や仙骨部の異常がある
- 家族にHirschsprung病がいる
6.赤ちゃんの綿棒浣腸はしてもいい?
乳児の便秘について検索すると「綿棒浣腸」という方法を目にすることがあります。綿棒浣腸は、肛門を綿棒でやさしく刺激し、排便反射を促す方法です。日本では昔から家庭や小児科診療で行われています。一方、現在のエビデンスでは、慢性機能性便秘症の標準治療として綿棒浣腸の有効性を裏付ける十分な研究はありません。したがって、便秘が続く場合に綿棒浣腸だけを繰り返すのではなく、便の硬さや便塞栓の有無を評価することが重要です。
家庭で行う場合の一般的な方法
- 赤ちゃんを仰向けにして、両脚をやさしく持ち上げます。
- 清潔な綿棒の綿球部分にワセリンやベビーオイルなどの潤滑剤を十分につけます。
- 肛門から綿球が隠れる程度(目安1~2cm程度)までゆっくり挿入します。
- 無理な力をかけず、肛門の内側を軽く円を描くように10~20秒程度刺激します。
- 便が出なければ無理に繰り返さず、便秘が続く場合は小児科へ相談します。
胃結腸反射によって腸が動きやすくなる授乳・食事後15~30分程度に行うと排便しやすいことがあります。
綿棒浣腸を中止したほうがよい場合
- 強い抵抗がある
- 赤ちゃんが強く痛がる
- 出血する
- 肛門に裂傷がある
- 強い腹部膨満がある
- 嘔吐している
このような場合は無理に続けず医療機関へ相談してください。
7.小児便秘治療の基本は「便を出す→やわらかい状態を維持する」
小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2025年版では、治療を大きく2段階に分けて考えます。
STEP1:たまっている便を取り除く(便塞栓除去)
直腸に大量の硬い便がたまっている状態を便塞栓(fecal impaction)といいます。便塞栓がある状態で少量の便秘薬だけを続けても治療がうまくいかないことがあります。そのため、まずたまった便を十分に取り除きます。医療機関では、状態に応じて経口下剤、グリセリン浣腸などを用います。
STEP2:便をためないための維持療法
便が出た後に治療をやめてしまうと、再び便がたまりやすくなります。そこで、「毎日~数日に1回、痛みなくやわらかい便が出る状態」を一定期間維持します。小児便秘では、この維持療法が非常に重要です。
8.子どもの便秘に使われる薬
子どもの便秘薬は、年齢、体重、便の硬さ、便塞栓の有無などによって選択します。自己判断で成人用の便秘薬を使用するのではなく、小児科で相談してください。
| 薬の種類 | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 浸透圧性下剤 | PEG(ポリエチレングリコール) | 腸管内に水分を保持し便をやわらかくする。小児便秘の中心的治療薬 |
| 浸透圧性下剤 | ラクツロース | 小児にも使用される。甘味のある液体製剤があり乳幼児にも使いやすい |
| 浸透圧性下剤 | 酸化マグネシウム | 便に水分を含ませる。腎機能などに応じて注意が必要 |
| 乳幼児便秘治療薬 | マルツエキス | 乳幼児に使用できる麦芽糖を主成分とした製剤 |
| 刺激性下剤 | ピコスルファートナトリウムなど | 腸を刺激して排便を促す。必要に応じて補助的に使用 |
| 直腸製剤 | グリセリン浣腸など | 便塞栓除去や一時的な排便促進に用いる |
PEG(ポリエチレングリコール)
現在、小児の慢性機能性便秘症で重要な薬剤がPEGです。PEGは腸管からほとんど吸収されず、腸内に水分を保持することで便をやわらかくします。国内外のガイドラインやレビューでは、小児機能性便秘症の重要な第一選択薬として位置づけられています。日本ではモビコール配合内用剤が2歳以上の慢性便秘症に使用できます。
ラクツロース
ラクツロースも浸透圧性下剤の一つで、小児の便秘症に使用されます。PEGが使用できない年齢や、飲みにくい場合などにも治療選択肢になります。
酸化マグネシウム
日本で以前から広く使用されている浸透圧性下剤です。一方、腎機能障害などがある場合には高マグネシウム血症に注意が必要です。必要以上に漫然と使用せず、年齢・体重や全身状態に合わせて使用します。
便秘薬を飲むと「癖になる」?
保護者から非常によく聞かれる質問ですが、便をやわらかくするPEGやラクツロースなどを適切に使用することで、「腸が自分で動かなくなる」という心配を過度にする必要はありません。むしろ、痛い便を何度も経験して我慢する状態を放置すると、便秘が慢性化しやすくなります。便が少し出たからすぐ薬をやめるのではなく、痛くない排便を一定期間続けることが重要です。薬の減量・中止時期は主治医と相談します。
9.便秘に食物繊維はどれくらい効果がある?
便秘には野菜や食物繊維をたくさん食べればよいと思われがちですが、ガイドラインでは食物繊維を通常以上に大量摂取することで慢性機能性便秘症が改善するという十分な根拠はありません。ただし、普段の摂取量が不足している子どもでは、年齢相応の適切な量を摂ることが大切です。
おすすめしやすい食品
- 野菜
- 果物
- いも類
- 豆類
- 海藻類
- きのこ類
- 全粒穀物
離乳食が始まっている乳児では、月齢に合った形態で野菜、いも、果物などを取り入れます。
プルーンや梨、キウイなどは?
プルーンや梨などには食物繊維に加えてソルビトールなどの糖アルコールが含まれ、便をやわらかくする方向に作用する可能性があります。ただし、特定の食品だけに頼らず、全体としてバランスの良い食事を心がけます。
10.水をたくさん飲ませれば便秘は治る?
水分不足や脱水があれば便が硬くなるため、十分な水分摂取は大切です。しかし、もともと十分な水分を摂取している子どもに通常以上の大量の水を飲ませることで便秘が改善するという十分なエビデンスはありません。「便秘だからとにかく水を大量に飲ませる」のではなく、年齢・食事量・活動量に応じた適切な水分補給を行いましょう。
11.ヨーグルト・乳酸菌・整腸剤は便秘に効く?
ヨーグルトやプロバイオティクスは腸内細菌叢を改善する可能性がありますが、現在の研究では、小児慢性機能性便秘症の標準治療として明確な効果が証明されているわけではありません。通常の食事としてヨーグルトなどを摂取することは問題ありませんが、便秘治療としては、必要に応じて浸透圧性下剤などエビデンスのある治療を優先します。
12.生活習慣でできる便秘対策
① 朝食を含め、規則正しく食事をする
食事をすると胃結腸反射によって大腸の動きが活発になります。特に朝食後は排便しやすい時間帯です。
② 食後にトイレへ座る習慣をつくる
トイレットトレーニングが可能な年齢では、朝食後や夕食後に5~10分程度トイレへ座る習慣を作ります。便が出なくても怒ったり叱ったりせず、「トイレに座れたこと」を褒めることが大切です。
③ 足が床につく姿勢にする
足が宙に浮いていると十分に腹圧をかけにくいため、子ども用便座や踏み台を利用します。膝が股関節より少し高い位置になる姿勢が排便しやすくなります。
④ 便を我慢させない
学校や外出先のトイレを嫌がり、長時間便を我慢することも便秘の原因になります。学校で便意を感じたらトイレに行ける環境を整えることも重要です。
⑤ 適度に身体を動かす
日常的に外遊びや運動を取り入れることは健康維持に有用です。ただし、便秘改善を目的として必要以上に運動量を増やすことを支持する十分な根拠はありません。
13.子どもの便秘は治るまでどのくらいかかる?
慢性機能性便秘症は、数日薬を飲めば完全に治る病気ではありません。直腸に大量の便がたまった状態が長く続いている子どもでは、便をためる癖や直腸の拡張が改善するまで数か月以上かかることもあります。大切なのは、
- 痛くない
- やわらかい
- 無理に我慢しない
- 自然にトイレで排便できる
という状態を十分な期間維持することです。
14.よくある質問
Q.赤ちゃんが3日うんちをしていません。便秘ですか?
3日出ていないという日数だけでは便秘とは判断できません。便がやわらかく、哺乳・機嫌・体重増加が良好で、お腹が強く張っていなければ正常範囲の場合があります。一方、硬い便、排便時痛、哺乳低下、腹部膨満がある場合は相談してください。
Q.綿棒浣腸は毎日しても大丈夫ですか?
綿棒刺激そのものによる生理的な「依存」が明確に証明されているわけではありません。ただし、毎日のように綿棒刺激が必要な状態であれば、単なる排便回数の問題ではなく慢性便秘症になっている可能性があります。綿棒浣腸だけを長期間続けず、小児科へ相談しましょう。
Q.便秘薬は長期間飲んでも大丈夫ですか?
PEGやラクツロースなどは、小児慢性機能性便秘症の維持療法として使用されます。適切な薬剤・用量を医師と調整しながら使用することが重要です。自己判断で急に中止すると便秘が再燃する場合があります。
Q.毎日うんちが出れば便秘ではありませんか?
毎日排便していても、便が非常に硬い、排便時に痛がる、少量しか出ず便が残っている場合には便秘症の可能性があります。
Q.便秘でお腹が痛くなることはありますか?
あります。小児の腹痛では便秘は非常によくみられる原因です。便が大量にたまると腹痛、腹部膨満、食欲低下、吐き気などを起こすことがあります。
15.まとめ|子どもの便秘は早めに「痛くない排便」に戻すことが大切
子どもの便秘は非常によくみられる症状ですが、長期間放置すると「硬い便→排便時痛→便を我慢→さらに硬い便」という悪循環に陥ります。特に大切なのは、「何日出なかったか」だけでなく、便の硬さ、排便時の痛み、我慢行動を確認することです。慢性便秘症では、便が大量にたまっていればまず便塞栓を取り除き、その後PEG、ラクツロースなどを利用して、やわらかい便が痛みなく出る状態を維持します。食事や水分、生活習慣も重要ですが、それだけで改善しない便秘に対して薬を必要以上に避ける必要はありません。便秘を繰り返す、排便を痛がる、便を我慢する、腹痛を繰り返す場合には、一度小児科へご相談ください。
参考文献
- 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版」
- Mindsガイドラインライブラリ「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 2025年版」
- Rome Foundation:Rome IV Criteria
- de Geus A, et al. An Update of Pharmacological Management in Children with Functional Constipation. Paediatr Drugs. 2023.
- Efficacy and safety of pharmacological therapies for functional constipation in children: systematic review and meta-analysis.
- NICE:Constipation in children and young people: diagnosis and management
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。実際の診断や治療、薬剤の選択・用量は年齢、体重、症状、基礎疾患などによって異なります。症状が続く場合や心配な症状がある場合は医療機関へご相談ください。

