子どもの夜驚症とは?夜中に突然泣き叫ぶ原因・対処法・受診の目安を医師が解説

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こどもの症状
「寝ていた子どもが突然、大声で泣き叫んだ」「目を開けているのに、声をかけても反応してくれない」

「抱っこしようとしても暴れてしまい、何か怖い病気なのではないかと心配になった」

このような症状を初めて見ると、多くの保護者は驚いてしまいます。しかし、幼児期の子どもにみられるこのような症状の一部は、「夜驚症(やきょうしょう:sleep terrors / night terrors)」と呼ばれる睡眠中の現象です。

夜驚症は、睡眠中に脳が完全には目覚めていない状態で起こるNREM睡眠関連の「覚醒障害(disorders of arousal)」の一つです。見た目は非常に激しくても、典型的な夜驚症であれば、多くの場合は成長とともに自然に減っていきます。

この記事では、子どもの夜驚症について、現在の睡眠医学の知見をもとに、症状、原因、起こりやすい年齢、家庭での対処法、治療、悪夢やてんかんとの違い、病院を受診すべきタイミングまで詳しく解説します。

1.夜驚症(やきょうしょう)とは?

夜驚症は、睡眠中に突然起き上がったり、泣き叫んだり、強い恐怖を感じているような行動を示したりする睡眠現象です。医学的には、夢をみるREM睡眠ではなく、主に深いNREM睡眠(特にN3睡眠)から脳が部分的に覚醒するときに起こります。完全に眠っているわけでも、完全に起きているわけでもない「中間の状態」になっていると考えると分かりやすいでしょう。そのため、子どもは目を開けていたり、座ったり、大声で叫んだりしていても、実際には十分に覚醒していません。保護者から見ると非常に怖い症状ですが、子ども本人は翌朝ほとんど覚えていないことが特徴です。

2.夜驚症ではどのような症状が起こる?

典型的な夜驚症では、寝ついてからおよそ1~3時間程度、つまり夜の前半に突然症状が始まります。次のような様子がみられることがあります。

  • 突然、大声で叫ぶ・泣き出す
  • 急にベッドの上で起き上がる
  • 非常に怖がっているような表情をする
  • 目を大きく開けている
  • 呼びかけても反応が乏しい
  • 親のことが分かっていないように見える
  • 抱っこや声かけでかえって興奮する
  • 心拍数が速くなる
  • 呼吸が速くなる
  • 汗をかく
  • 顔が赤くなる
  • 手足を激しく動かす
  • 数分すると自然に落ち着き、再び眠る
  • 翌朝は本人がほとんど覚えていない

多くは数分程度で落ち着きますが、長い場合には10~20分以上続くこともあります。夜驚症は保護者を非常に驚かせますが、本人は「怖い夢を長時間見続けて苦しんでいる」という状態とは少し違います。

3.夜驚症は何歳くらいに多い?

夜驚症は特に幼児期に多く、年齢とともに減っていきます。カナダで約1,940人の子どもを13歳まで追跡した大規模な縦断研究では、夜驚症がみられた割合は、

年齢 夜驚症がみられた割合
1歳半 34.4%
2歳半 20.7%
5歳 13.4%
7歳 10.1%
13歳 5.3%

と報告されています。つまり、1~3歳頃には決して珍しい現象ではありません。一方で、年齢が上がるにつれて頻度は低下し、多くの子どもでは思春期までに自然に改善していきます。

4.なぜ夜驚症が起こるの?

夜驚症の原因が一つに決まっているわけではありません。現在では、子どもの脳の睡眠・覚醒システムが発達途中であることを背景として、深い睡眠から脳が不完全に覚醒することによって起こると考えられています。脳の一部は目覚めている一方で、別の部分はまだ深く眠っているという「解離した状態」が起こり、叫ぶ、起き上がる、心拍数が増えるなどの行動につながると考えられています。

睡眠不足

夜驚症を増やす重要な要因の一つが睡眠不足です。疲れすぎていると深いNREM睡眠が強くなり、そこからの不完全な覚醒が起こりやすくなると考えられています。特に、保育園や幼稚園への入園、旅行、夜更かし、昼寝が突然なくなるなど、生活リズムが変化したときには注意が必要です。

不規則な生活

寝る時間や起きる時間が日によって大きく変化すると、睡眠が不安定になり、夜驚症が起こりやすくなる場合があります。

発熱や体調不良

風邪や発熱など、身体的なストレスによって一時的に睡眠が不安定になり、夜驚症が増えることがあります。

精神的なストレスや環境の変化

入園・入学、引っ越し、旅行、家族環境の変化などをきっかけとして増えることがあります。ただし、夜驚症があるからといって、必ず精神的な問題があるという意味ではありません。

遺伝的な要因

夜驚症や夢遊症(睡眠時遊行症)は家族内で起こりやすいことが知られています。双生児研究や大規模な縦断研究でも遺伝的要因の関与が示されており、両親に子どもの頃の夢遊症や夜驚症の経験がある場合、子どもにも起こりやすくなる傾向があります。

睡眠時無呼吸症候群など別の睡眠障害

夜驚症が頻繁に起こる場合には、睡眠を途中で分断する病気が隠れていることがあります。特に、

  • 大きないびき
  • 睡眠中に呼吸が止まる
  • 口を開けて寝ている
  • 寝汗が多い
  • 非常に寝相が悪い

などがある場合には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)などが夜驚症を誘発していないかを考える必要があります。

5.夜驚症と悪夢(怖い夢)はどう違う?

夜驚症は「怖い夢」と混同されやすいのですが、睡眠医学的には異なるものです。

夜驚症 悪夢
起こりやすい時間 夜の前半 夜の後半
睡眠 主に深いNREM睡眠 REM睡眠
本人の覚醒 十分に目覚めていない 目が覚める
親への反応 反応しにくい 親を認識できる
なだめる 難しいことが多い 比較的なだめやすい
夢の内容 通常は明確に覚えていない 怖い夢を覚えている
翌朝の記憶 ほとんどない 覚えていることが多い

例えば、子どもが「怖い怪物の夢を見た」と泣きながら親のところに来て、その内容を説明できるのであれば、夜驚症よりも悪夢の可能性が高くなります。

6.夜驚症と夜泣きは違う?

乳幼児の「夜泣き」と夜驚症も同じではありません。一般的な夜泣きでは、子どもが目を覚まして泣き、抱っこや授乳、声かけなどによって落ち着くことがあります。一方、夜驚症では、

「目を開けて激しく泣いているのに、親を認識していない」「抱こうとするとさらに暴れる」「しばらくすると突然眠ってしまう」

といった特徴があります。

7.夜驚症が起きたら、子どもを起こしたほうがいい?

原則として、夜驚症の最中に無理やり起こす必要はありません。夜驚症の最中の子どもは完全には目覚めていないため、声をかけ続けたり、揺さぶったり、無理に抱き起こしたりすると、かえって混乱して興奮が強くなることがあります。基本的には、

  1. 子どもがけがをしないよう安全を確保する
  2. 激しく揺さぶったり無理に起こしたりしない
  3. 落ち着いてそばで見守る
  4. ベッドから出ようとした場合は静かに誘導する
  5. 自然に再び眠るのを待つ

という対応で十分です。見守っている保護者にとっては長く感じるかもしれませんが、通常は自然に治まります。

8.家庭でできる夜驚症の対策

① 十分な睡眠時間を確保する

夜驚症対策で最も重要なのは、子どもを睡眠不足にしないことです。American Academy of Sleep Medicine(AASM)は、健康な子どもの1日あたりの睡眠時間として、次の範囲を推奨しています。

年齢 推奨される睡眠時間
4~12か月 12~16時間(昼寝を含む)
1~2歳 11~14時間(昼寝を含む)
3~5歳 10~13時間(昼寝を含む)
6~12歳 9~12時間
13~18歳 8~10時間

夜驚症が増えたときは、まず「最近寝る時間が遅くなっていないか」「昼寝が急になくなっていないか」を確認してみましょう。

② 毎日の睡眠時間をなるべく一定にする

休日だけ極端に夜更かししたり、起床時間が大きく変わったりする生活は避け、寝る時間と起きる時間をなるべく一定にします。

③ 寝る前は興奮しすぎないようにする

激しい遊びや刺激の強い動画・ゲームなどは寝る直前には控え、入浴、歯みがき、絵本、就寝など毎日同じ流れを作ると睡眠が安定しやすくなります。

④ けがをしない環境を作る

夜驚症に夢遊症が伴う場合には、転倒や転落などの事故を予防することが重要です。ベッド周囲の危険な家具を避ける、階段に安全柵を設置する、窓や玄関を安全に管理するなどの対策を検討します。

⑤ 夜驚症が起こる時刻を記録する

「寝てから何分後に起こったか」「何分間続いたか」を記録しておくと診断にも役立ちます。スマートフォンで動画を撮影できる状況であれば、安全を優先したうえで短時間撮影しておくと、医療機関で夜驚症とてんかんなどを区別する際に非常に参考になります。

9.毎晩ほぼ同じ時間に起こるなら「予定覚醒法」も

夜驚症が頻繁に起こり、毎晩ほぼ同じ時刻に発生する場合には、予定覚醒法(scheduled awakening / anticipatory awakening)という方法があります。例えば毎晩22時30分頃に夜驚症が起こる場合、その15~30分ほど前に子どもを一度軽く起こします。いったん覚醒させてから再び眠らせることで睡眠サイクルを変化させ、夜驚症を起こりにくくする方法です。小児の夜驚症や夢遊症に対して改善が報告されていますが、研究数や対象人数はまだ限られており、強固なエビデンスが確立している治療ではありません。頻回に起こって困っている場合には、小児科や睡眠を専門とする医師と相談しながら行うとよいでしょう。

10.夜驚症に薬は必要?

ほとんどの子どもの夜驚症では、薬は必要ありません。治療の基本は、

  • 保護者への説明と安心
  • 十分な睡眠
  • 規則正しい生活
  • 睡眠不足の改善
  • 安全対策
  • 睡眠時無呼吸など誘因となる病気の治療

です。一方、夜驚症が非常に頻回で、本人や家族の生活に大きな支障を生じている場合や、けがの危険が高い場合には、専門医の判断で薬物療法が検討されることがあります。海外ではクロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤が用いられることがありますが、小児に対して日常的に使用する治療ではありません。薬物療法についての質の高い小児臨床試験は乏しいため、薬を使うとしても重症例に限定し、専門医が利益とリスクを十分に検討することが重要です。メラトニンについても報告はありますが、夜驚症そのものに対する十分な有効性が確立しているわけではありません。

11.夜驚症と「てんかん」はどう見分ける?

夜中に突然叫んだり、体を激しく動かしたりする症状は、まれに睡眠中のてんかん発作でも起こることがあります。典型的な夜驚症では、

  • 寝ついてから1~3時間程度に起こる
  • 数分程度続く
  • その後また眠る
  • 翌朝覚えていない
  • 毎回の動きが完全に同じとは限らない

といった特徴があります。一方、

  • 1回の発作が非常に短い
  • 一晩に何度も繰り返す
  • 毎回ほぼ全く同じ動きをする
  • 体の一部分だけが規則的にけいれんする
  • 日中にも同様の症状がある
  • 発達や神経学的な異常を伴う

といった場合には、睡眠関連てんかんなどとの鑑別が必要になります。

American Academy of Sleep Medicine(AASM)は、典型的な夜驚症であれば睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG)は通常必要ないとしています。一方、症状が非典型的であったり、けがにつながったり、てんかんとの区別が難しかったりする場合には、ビデオ付きPSGや脳波検査が検討されます。

12.夜驚症で病院を受診したほうがよいタイミング

典型的な夜驚症がたまに起こるだけで、昼間は元気に生活できている場合には、必ずしも緊急受診する必要はありません。ただし、次のような場合には一度小児科へ相談することをおすすめします。

  • 夜驚症が毎晩または非常に頻繁に起こる
  • 長時間続く
  • 一晩に何度も繰り返す
  • 本人や家族が睡眠不足になっている
  • 日中の強い眠気がある
  • 学校や保育園での生活に影響が出ている
  • ベッドから飛び出すなど、けがの危険がある
  • 症状が毎回全く同じで、てんかんが心配
  • 体のけいれんや硬直を伴う
  • 日中にも意識がなくなるような症状がある
  • 大きないびきや睡眠中の無呼吸がある
  • 思春期以降に突然始まった
  • 夜驚症として典型的かどうか分からない

13.すぐに受診・救急要請を考えたほうがよい症状

夜驚症そのものは基本的には緊急疾患ではありません。ただし、

  • 呼吸が止まっている、明らかに苦しそう
  • 顔色や唇が青い
  • けいれんが長時間続く
  • 意識がなかなか戻らない
  • 転落などによる大きなけがをした
  • 夜だけでなく日中にもけいれんや意識障害がある

などがある場合には、夜驚症と思い込まず、速やかに医療機関へ相談してください。

14.受診するとどのような検査をする?

典型的な夜驚症では、多くの場合、詳しく症状を聞くだけで診断できます。特に重要なのは、

  • 何歳から始まったか
  • 寝てから何時間後に起こるか
  • 1回何分くらい続くか
  • 一晩に何回起こるか
  • 毎回同じ動きか
  • 翌朝覚えているか
  • いびきや無呼吸がないか
  • 日中の眠気がないか

といった情報です。スマートフォンで撮影した動画が診断に役立つこともあります。典型的な夜驚症だけであれば、CTやMRI、脳波、睡眠検査などを全員に行う必要はありません。一方、てんかんが疑われる場合には脳波検査、睡眠時無呼吸が疑われる場合には睡眠検査、非典型的な症状ではビデオ付き終夜睡眠ポリグラフ検査などが検討されます。

15.夜驚症はいつまで続く?

多くの夜驚症は成長とともに減っていきます。幼児期に多く、小学生以降徐々に減少し、多くの子どもでは思春期までに自然に改善します。夜驚症そのものによって脳に障害が起こったり、将来の発達に悪影響を及ぼしたりするというものではありません。そのため、典型的な夜驚症については、「止めなければならない病気」というより、「成長過程でみられることのある睡眠現象」として理解することも大切です。

16.お母さん・お父さんへ|見た目ほど子ども本人は苦しんでいないことが多いです

夜中に突然わが子が悲鳴をあげ、目を見開き、声をかけても反応してくれなければ、保護者が不安になるのは当然です。しかし、夜驚症では子どもの脳は完全に目覚めているわけではありません。そのため、外から見ると非常に怖がっているように見えても、翌朝本人には記憶がなく、本人が心理的な恐怖を長く抱えているわけではないことがほとんどです。発作が起きたときに何とかして止めようとする必要もありません。

「起こさず、安全を確保して、静かに見守る」

まずはこれが最も大切な対応です。そして、最近睡眠不足になっていないか、就寝時間が遅くなっていないかを確認してみましょう。一方、症状が頻繁であったり、いびきや無呼吸を伴ったり、毎回全く同じ動きを繰り返したりする場合には、夜驚症以外の睡眠障害やてんかんが隠れていることがあります。「これは本当に夜驚症なのかな?」と迷う場合には、症状を動画に撮って小児科へ相談すると診断の助けになります。

17.まとめ

夜驚症は、子どもが睡眠中に突然泣き叫んだり、怖がったりするNREM睡眠関連の覚醒障害です。幼児期には比較的よくみられ、睡眠不足、生活リズムの乱れ、発熱、ストレス、睡眠時無呼吸などによって起こりやすくなることがあります。発作中は無理に起こそうとせず、けがをしないよう安全を確保して静かに見守ることが基本です。また、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけることが予防につながります。多くの場合は成長とともに自然に改善し、薬による治療が必要になることはほとんどありません。一方、非常に頻繁に起こる場合、けがにつながる場合、いびき・無呼吸を伴う場合、症状が毎回完全に同じでてんかんが疑われる場合などには、医療機関での評価をおすすめします。

参考文献

この記事について

この記事は、公的機関・診療ガイドライン・医学論文などを参考に作成しています。

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療を代替するものではありません。 気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆者:小林 知貴
所属:いしうちファミリークリニック 院長
資格:医学博士/家庭医療専門医/総合診療専門医/総合内科専門医

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