健康診断で肝機能異常と言われたら|AST・ALT・γ-GTPが高い原因と受診の目安

健診異常から探す

健康診断で「肝機能異常」「肝機能障害」「AST高値」「ALT高値」「γ-GTP高値」と書かれていると、驚いてしまう方は少なくありません。「お酒のせいかな」「脂肪肝と言われたことがあるけど放置していた」「症状がないから大丈夫では?」と思う方も多いと思います。しかし、肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。肝臓の病気は、初期には自覚症状がほとんどないことが多く、進行してから肝硬変、腹水、黄疸、肝がんなどで見つかることがあります。

健康診断で肝機能異常を指摘された段階は、肝臓からの大切なサインです。数値が少し高いだけでも、原因を確認しておくことで、将来の肝硬変や肝がんを防げる可能性があります。

この記事でわかること

  • 健康診断で「肝機能異常」「肝機能障害」と言われたときに考えること
  • AST・ALT・γ-GTPが高いときの見方
  • AST優位・ALT優位で考えやすい原因
  • アルコール、脂肪肝、MASLD、MASHとの関係
  • B型・C型・A型などウイルス性肝炎の確認が必要な理由
  • PBC、自己免疫性肝炎、薬剤性肝炎など見逃したくない病気
  • 肝硬変、腹水、黄疸など放置してはいけないサイン
  • 受診の目安と医療機関で行う検査

結論:ALTが30を超えていたら、一度は受診をおすすめします

日本肝臓学会の「奈良宣言2023」では、健康診断などで測定されるALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医などを受診することが勧められています。ALTが30を超えたからといって、すぐに重い肝臓病という意味ではありません。しかし、脂肪肝、アルコール、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎、PBCなど、背景に病気が隠れていないかを確認することが大切です。

ポイント:肝機能異常は「症状が出てから受診」ではなく、「健診で指摘された段階で原因を確認する」ことが大切です。

肝機能異常とは?AST・ALT・γ-GTPは何を見ている?

健康診断でよく測定される肝機能の項目には、AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビンなどがあります。

項目 主な意味 高いときに考えること
AST 肝臓、心筋、骨格筋などに含まれる酵素 肝障害、アルコール性肝障害、筋肉の障害など
ALT 肝臓に比較的多く含まれる酵素 脂肪肝、MASLD、MASH、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎など
γ-GTP 胆道系やアルコールの影響で上がりやすい酵素 飲酒、脂肪肝、胆道系疾患、薬剤の影響など
ALP 胆汁の流れや骨などに関係する酵素 胆石、胆道閉塞、PBCなど
ビリルビン 黄疸に関係する色素 肝炎、胆道閉塞、肝硬変、溶血など

AST優位・ALT優位で何がわかる?

ASTとALTはどちらも肝臓の細胞が傷つくと血液中に増える酵素です。ただし、どちらがより高いかによって、原因を考えるヒントになります。

AST優位とは?

ASTがALTより高い状態をAST優位といいます。AST優位では、以下のような原因を考えます。

  • アルコール性肝障害
  • 進行した肝線維化、肝硬変
  • 筋肉の障害、激しい運動後
  • 心筋障害など肝臓以外の原因

特に、飲酒量が多く、γ-GTPも高い場合は、アルコールによる肝障害が疑われます。ただし、ASTは筋肉にも含まれるため、筋トレや激しい運動、筋肉痛のあとに上がることもあります。その場合はCKという筋肉の酵素も一緒に確認することがあります。

ALT優位とは?

ALTがASTより高い状態をALT優位といいます。ALTは肝臓に比較的多く含まれるため、ALT高値は肝臓の炎症や障害を反映しやすい項目です。ALT優位では、以下のような原因を考えます。

  • 脂肪肝
  • MASLD、MASH
  • B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎
  • 薬剤性肝炎
  • 自己免疫性肝炎

健康診断でALTが30を超えている場合、たとえ軽度であっても、一度原因を確認しておくことがすすめられます。

肝機能異常の原因で多いもの

肝機能異常の原因はひとつではありません。健診で見つかる肝機能異常では、アルコール、脂肪肝、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎などが代表的です。

1. アルコールによる肝機能異常

お酒をよく飲む方で、AST、ALT、γ-GTPが高い場合は、アルコールによる肝障害を考えます。特にγ-GTPは飲酒の影響で上がりやすい項目です。ただし、γ-GTPが高いからといって必ずアルコールだけが原因とは限りません。脂肪肝、胆道系の病気、薬剤の影響でも上昇します。

純アルコール量の目安

飲酒量を考えるときは、「何杯飲んだか」だけでなく、純アルコール量で考えることが大切です。純アルコール量は、以下の式でおおよそ計算できます。

純アルコール量(g)=飲酒量(ml)× アルコール度数(%)÷100 × 0.8

お酒の種類 量の目安 純アルコール量の目安
ビール 5% 500ml 約20g
日本酒 1合 180ml 約22g
ワイン グラス1杯 120ml 約12g
ウイスキー ダブル 60ml 約20g

厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」として、通常のアルコール代謝能を有する日本人では1日平均純アルコール約20g程度が目安とされています。ただし、女性、高齢者、少量で顔が赤くなる方、肝機能異常がある方では、より少ない量が望ましい場合があります。

注意:肝機能異常を指摘された方は、「とりあえず飲酒量を減らす」だけで終わらせず、血液検査や腹部超音波検査で肝臓の状態を確認することが大切です。

2. 脂肪肝、MAFLD、MASLD、MASH

健診で肝機能異常を指摘される原因として多いのが脂肪肝です。脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態です。以前は「非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD」「非アルコール性脂肪肝炎:NASH」という名称がよく使われていました。近年は、国際的に名称が見直され、現在はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)という呼び方に移行しています。MAFLDという言葉を見かけることもありますが、現在はMASLD/MASHという名称が使われる流れになっています。

MASLDとは?

MASLDは、脂肪肝に加えて、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝異常が関係する肝臓病です。次のような方は注意が必要です。

  • 体重が増えてきた
  • BMIが高い
  • 腹囲が大きい
  • 血糖値やHbA1cが高い
  • 中性脂肪が高い
  • HDLコレステロールが低い
  • 高血圧がある
  • 脂肪肝を指摘されたことがある

MASHとは?

MASHは、脂肪肝に炎症や肝細胞の障害が加わり、肝臓の線維化が進みやすい状態です。単なる脂肪肝と思って放置していると、少しずつ肝臓が硬くなり、将来的に肝硬変や肝がんにつながることがあります。特に、糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症を合併している方は、肝機能の数値が軽度でも注意が必要です。

3. ウイルス性肝炎:A型・B型・C型

肝機能異常では、ウイルス性肝炎の確認も重要です。代表的なものに、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎があります。

種類 特徴 確認したい検査
A型肝炎 食べ物や水などを介して感染することがあります。多くは急性肝炎です。 IgM-HA抗体など
B型肝炎 血液や体液を介して感染します。慢性化すると肝硬変や肝がんの原因になります。 HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体など
C型肝炎 血液を介して感染します。治療の進歩により、現在は治癒を目指せる病気です。 HCV抗体、HCV-RNAなど

B型肝炎やC型肝炎は、症状がないまま長期間経過することがあります。気づかないうちに慢性肝炎、肝硬変、肝がんへ進むことがあるため、肝機能異常をきっかけに一度検査しておくことが大切です。

4. 薬剤性肝炎

薬やサプリメント、漢方薬、健康食品などが原因で肝機能異常を起こすことがあります。これを薬剤性肝炎、薬物性肝障害といいます。原因になりうるものには、以下のようなものがあります。

  • 解熱鎮痛薬
  • 抗菌薬
  • 抗真菌薬
  • 脂質異常症の薬
  • 抗がん剤
  • 漢方薬
  • サプリメント、健康食品

「病院の薬ではないから大丈夫」とは限りません。市販薬、サプリメント、プロテイン、ダイエット食品なども含め、受診時には使用しているものをすべて伝えることが大切です。

すぐに相談したい症状

  • 強いだるさ
  • 食欲不振
  • 吐き気、嘔吐
  • 発熱
  • 発疹
  • 皮膚のかゆみ
  • 尿の色が濃い
  • 白目や皮膚が黄色い、黄疸がある

5. PBC:原発性胆汁性胆管炎

PBC(原発性胆汁性胆管炎)は、胆汁の通り道である胆管に慢性的な炎症が起こる病気です。以前は「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていましたが、現在は「原発性胆汁性胆管炎」という名称が使われています。PBCでは、ASTやALTよりも、ALPやγ-GTPが目立って高いことがあります。初期には症状がないことも多いですが、進行すると以下のような症状が出ることがあります。

  • 皮膚のかゆみ
  • 強い疲れやすさ
  • 黄疸
  • 肝硬変
  • 食道静脈瘤

ALPやγ-GTPが高い状態が続く場合は、PBCなど胆汁うっ滞性の肝疾患も考えて検査する必要があります。

6. 自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、本来体を守る免疫が、自分の肝臓を攻撃してしまうことで起こる肝炎です。女性に多い傾向がありますが、男性にも起こります。ASTやALTが高くなり、慢性肝炎として見つかることがあります。自己免疫性肝炎は、適切に診断して治療を行うことで肝臓の炎症を抑えられる可能性があります。一方で、放置すると肝硬変へ進行することがあります。原因がはっきりしないAST・ALT高値が続く場合は、自己抗体やIgGなどを確認することがあります。

放置してはいけない症状:黄疸・腹水・強いだるさ

肝機能異常は無症状のことが多いですが、次のような症状がある場合は、肝臓病が進行している可能性があります。

早めに受診が必要な症状

  • 白目や皮膚が黄色い、黄疸がある
  • 尿の色が濃い
  • 便の色が白っぽい
  • お腹が張る、腹水が疑われる
  • 足がむくむ
  • 食欲がない
  • 強いだるさが続く
  • 吐き気、嘔吐がある
  • 発熱を伴う
  • 意識がぼんやりする
  • 血が止まりにくい、あざが増えた

肝硬変になると、肝臓が硬くなり、血液の流れが悪くなったり、肝臓の機能が低下したりします。その結果、腹水、食道静脈瘤、黄疸、肝性脳症などが問題になります。「症状がないから大丈夫」と思っていても、肝臓病は進行するまで症状が出にくいことがあります。健診異常の段階で確認することが重要です。

医療機関ではどんな検査をする?

肝機能異常で受診した場合、まずは健診結果の数値、過去の検査結果、飲酒量、内服薬、サプリメント、生活習慣、家族歴などを確認します。必要に応じて、以下のような検査を行います。

血液検査

  • AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン
  • 血小板数
  • アルブミン
  • PT-INRなど凝固能
  • 血糖値、HbA1c、脂質
  • B型肝炎、C型肝炎などのウイルス検査
  • 自己免疫性肝炎やPBCに関連する抗体検査
  • CKなど筋肉由来の異常を確認する検査

腹部超音波検査

腹部超音波検査では、脂肪肝、肝臓の形、肝腫瘤、胆石、胆管の拡張、腹水の有無などを確認します。血液検査だけでは、肝臓に脂肪がたまっているか、肝臓が硬くなっているか、胆道系に異常があるかは十分にわからないことがあります。そのため、肝機能異常では腹部超音波検査が重要になることがあります。

肝線維化の評価

脂肪肝や慢性肝炎では、肝臓がどれくらい硬くなっているか、つまり肝線維化の評価が重要です。血液検査からFIB-4 indexなどを計算したり、必要に応じて専門医療機関で詳しい検査を行ったりします。

受診の目安

次のような場合は、症状がなくても一度受診をおすすめします。

  • ALTが30を超えている
  • AST、ALT、γ-GTPの異常が2回以上続いている
  • γ-GTPが高い状態が続いている
  • 脂肪肝を指摘されたことがある
  • 飲酒量が多い
  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満がある
  • B型肝炎、C型肝炎の検査を受けたことがない
  • 薬やサプリメントを複数使用している
  • 家族に肝臓病、肝硬変、肝がんの人がいる
  • 黄疸、腹水、むくみ、強いだるさがある

健診結果をお持ちください:受診時には、今回の健診結果だけでなく、過去の健診結果もあると変化がわかりやすくなります。お薬手帳、サプリメントの情報、飲酒量のメモも役立ちます。

肝機能異常を改善するために自分でできること

原因によって治療は異なりますが、生活習慣の見直しで改善が期待できる肝機能異常もあります。

飲酒量を見直す

アルコールが原因として疑われる場合、まず飲酒量を正確に把握することが大切です。「休肝日を作っているから大丈夫」と思っていても、1回あたりの飲酒量が多いと肝臓への負担は大きくなります。肝機能異常がある方は、減酒または禁酒が必要になることがあります。

体重を見直す

脂肪肝、MASLD、MASHでは、体重管理が重要です。急激なダイエットではなく、食事、運動、睡眠を整えながら、無理のない体重減少を目指します。糖尿病、高血圧、脂質異常症がある方は、それらの治療も肝臓を守ることにつながります。

食事を整える

  • 甘い飲み物を控える
  • 間食や夜食を減らす
  • 揚げ物や脂質の多い食事をとりすぎない
  • 野菜、たんぱく質、食物繊維を意識する
  • 極端な糖質制限や自己流ダイエットは避ける

薬やサプリメントを自己判断で増やさない

肝臓によいと言われるサプリメントや健康食品が、逆に肝機能異常の原因になることもあります。肝機能異常を指摘された場合は、自己判断で薬やサプリメントを追加するのではなく、まず医師に相談しましょう。

よくある質問

Q. 肝機能異常は自然に治りますか?

一時的な体調不良、飲酒、薬剤、激しい運動などで一過性に上がることもあります。ただし、脂肪肝、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、PBCなどが隠れている場合もあるため、再検査や原因の確認が大切です。

Q. お酒を飲まないのに肝機能異常と言われました。なぜですか?

お酒を飲まない方でも、脂肪肝、MASLD、MASH、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎、PBCなどで肝機能異常が起こります。「お酒を飲まないから肝臓は大丈夫」とは限りません。

Q. γ-GTPだけ高い場合も受診した方がよいですか?

γ-GTPは飲酒で上がりやすい項目ですが、脂肪肝、胆道系疾患、薬剤の影響でも上がります。高値が続く場合や、ALP、ビリルビンも高い場合は受診をおすすめします。

Q. 脂肪肝は放置しても大丈夫ですか?

脂肪肝のすべてが進行するわけではありませんが、一部はMASHとなり、肝線維化、肝硬変、肝がんへ進むことがあります。特に糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症を合併している方は注意が必要です。

Q. 何科を受診すればよいですか?

まずは内科、消化器内科、肝臓内科、またはかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて、血液検査、腹部超音波検査、専門医療機関への紹介を行います。

まとめ:肝機能異常は「症状がないうち」に確認しましょう

健康診断で肝機能異常を指摘されても、症状がないことは珍しくありません。しかし、肝臓は沈黙の臓器です。アルコール、脂肪肝、MASLD、MASH、B型肝炎、C型肝炎、A型肝炎、薬剤性肝炎、PBC、自己免疫性肝炎など、原因はさまざまです。放置すると、慢性肝炎、肝線維化、肝硬変、腹水、黄疸、肝がんへ進む病気が隠れていることもあります。肝機能異常は、早い段階で原因を調べることで、将来の肝臓病を防ぐチャンスになります。

健診で肝機能異常を指摘された方へ

AST、ALT、γ-GTPが高いと言われた方、脂肪肝や飲酒量が気になる方、B型肝炎・C型肝炎の検査を受けたことがない方は、一度医療機関でご相談ください。

健診結果をもとに、必要な検査や生活習慣の見直しについて一緒に確認していきましょう。

参考文献

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