家族性高コレステロール血症とは?原因・診断基準・治療を医師が解説

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健康診断で「LDLコレステロールがかなり高い」「悪玉コレステロールが180mg/dL以上ある」と言われた方の中には、家族性高コレステロール血症という体質が隠れていることがあります。

家族性高コレステロール血症は、英語ではFamilial Hypercholesterolemia、略してFHと呼ばれます。生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい病気で、若いころから動脈硬化が進みやすく、狭心症や心筋梗塞のリスクが高いことが特徴です。

「コレステロールが高いだけなら、食事に気をつければよいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、家族性高コレステロール血症では、生活習慣だけで十分にLDLコレステロールを下げることが難しいことが多く、早期診断と治療がとても重要です。

この記事では、家族性高コレステロール血症の原因、診断基準、特徴的な所見、心筋梗塞との関係、寿命への影響、治療の種類と目標について、わかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • ✅ 家族性高コレステロール血症とはどのような病気か
  • ✅ LDLコレステロールが何mg/dL以上だと疑うのか
  • ✅ アキレス腱肥厚や黄色腫などの特徴的な所見
  • ✅ 心筋梗塞・狭心症のリスクが高い理由
  • ✅ 平均寿命への影響と、治療で予後が改善すること
  • ✅ 治療薬の種類とLDLコレステロールの目標値
  • ✅ 家族も検査した方がよい理由

家族性高コレステロール血症とは?

家族性高コレステロール血症とは、遺伝的な要因により、血液中のLDLコレステロールが生まれつき高くなりやすい病気です。LDLコレステロールは、いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれる脂質です。LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進行します。一般的な脂質異常症では、中年以降に生活習慣の影響でLDLコレステロールが高くなることが多いです。一方、家族性高コレステロール血症では、若いころから、場合によっては子どものころからLDLコレステロールが高いことが特徴です。そのため、動脈硬化のスタートが早く、治療しないままだと若くして狭心症や心筋梗塞を起こすことがあります。

家族性高コレステロール血症の原因

家族性高コレステロール血症の多くは、LDLコレステロールを血液中から肝臓へ取り込む仕組みに関わる遺伝子の変化によって起こります。通常、血液中のLDLコレステロールは、肝臓にあるLDL受容体などによって回収されます。しかし、家族性高コレステロール血症では、この回収の仕組みがうまく働きにくくなるため、血液中にLDLコレステロールがたまりやすくなります。家族性高コレステロール血症には、大きく分けて以下のタイプがあります。

タイプ 特徴
ヘテロ接合体FH 片方の親から原因となる遺伝子変化を受け継いだタイプ。家族性高コレステロール血症の多くはこちらです。
ホモ接合体FH 両親から原因となる遺伝子変化を受け継いだ重症タイプ。非常にまれですが、LDLコレステロールが著しく高く、幼少期から強力な治療が必要になります。

家族性高コレステロール血症は、本人だけの問題ではありません。親、きょうだい、子どもにも同じ体質がある可能性があるため、診断された場合は家族の検査も大切です。

家族性高コレステロール血症の診断基準

成人の家族性高コレステロール血症では、主に以下の3つの項目を確認します。

診断項目 内容
1. 高LDLコレステロール血症 未治療時のLDLコレステロールが180mg/dL以上
2. 腱黄色腫・皮膚結節性黄色腫 手の甲、肘、膝などの腱黄色腫、アキレス腱肥厚、皮膚結節性黄色腫など
3. 家族歴 第一度近親者に家族性高コレステロール血症、または早発性冠動脈疾患がある

この3項目のうち、2項目以上を満たす場合に家族性高コレステロール血症と診断します。また、2項目を満たさない場合でも、以下のような場合には家族性高コレステロール血症を強く疑います。

  • LDLコレステロールが250mg/dL以上
  • 腱黄色腫または家族歴があり、LDLコレステロールが160mg/dL以上
  • 遺伝学的検査で家族性高コレステロール血症に関わる病的変異が確認された場合

すでにコレステロールの薬を飲んでいる場合は、現在の数値だけで判断するのではなく、治療を始める前のLDLコレステロール値を参考にします。

特徴的な所見|アキレス腱肥厚・黄色腫に注意

家族性高コレステロール血症では、LDLコレステロールが長期間高い状態になることで、血管だけでなく腱や皮膚にもコレステロールがたまることがあります。

アキレス腱肥厚

代表的な所見がアキレス腱肥厚です。アキレス腱にコレステロールが沈着し、腱が厚くなります。アキレス腱肥厚は、見た目だけではわかりにくいこともあります。そのため、必要に応じてX線検査や超音波検査で厚さを測定します。

検査方法 アキレス腱肥厚の目安
X線検査 男性8.0mm以上、女性7.5mm以上
超音波検査 男性6.0mm以上、女性5.5mm以上

腱黄色腫・皮膚結節性黄色腫

手の甲、肘、膝などの腱に黄色っぽいしこりができることがあります。これを腱黄色腫といいます。また、皮膚に黄色っぽい結節ができる皮膚結節性黄色腫がみられることもあります。ただし、まぶたにできる眼瞼黄色腫は比較的よく見られる所見であり、家族性高コレステロール血症の診断基準に含まれる皮膚結節性黄色腫とは区別されます。

家族性高コレステロール血症のリスク

家族性高コレステロール血症で最も注意すべきなのは、若いころから動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症を起こしやすいことです。LDLコレステロールは、血管の壁に入り込み、プラークと呼ばれる動脈硬化のかたまりを作ります。プラークが大きくなると血管が狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなります。これが狭心症です。さらに、プラークが破れて血のかたまりができると、血管が急に詰まり、心筋梗塞を起こすことがあります。

動脈硬化が進む場所 起こりうる病気
心臓の血管 狭心症、心筋梗塞
脳の血管 脳梗塞、一過性脳虚血発作
足の血管 末梢動脈疾患
大動脈や弁 大動脈弁狭窄、弁上狭窄、大動脈瘤など

特にホモ接合体FHでは、動脈硬化の進行が非常に早いため、専門医による評価と強力な治療が必要です。

平均寿命は短い?治療で改善できます

家族性高コレステロール血症について調べると、「寿命が短い」「若くして心筋梗塞になる」といった情報を目にして、不安になる方も多いと思います。確かに、未治療の家族性高コレステロール血症では、心筋梗塞や冠動脈疾患のリスクが高く、平均寿命が短くなることが知られています。一方で、ここでとても大切なのは、家族性高コレステロール血症は「見つけて治療することで予後を改善できる病気」だということです。早い段階で診断し、LDLコレステロールをしっかり下げる治療を続けることで、心筋梗塞や狭心症のリスクを減らすことが期待できます。

⚠️ 大切なポイント

家族性高コレステロール血症は、放置すると心筋梗塞のリスクが高くなります。しかし、早期に診断して治療を続けることで、将来の心臓病を予防できる可能性があります。

家族性高コレステロール血症は治療が必要です

家族性高コレステロール血症では、生活習慣の改善はもちろん大切ですが、それだけでLDLコレステロールを十分に下げることは難しいことが多いです。そのため、診断された場合は、食事・運動・禁煙などの生活習慣改善と同時に、薬によるLDLコレステロール低下治療を行うことが基本になります。「薬はできるだけ飲みたくない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、家族性高コレステロール血症の治療は、単に検査値を下げるためではありません。将来の心筋梗塞や突然死を防ぐための治療です。

治療目標|LDLコレステロールをどこまで下げる?

家族性高コレステロール血症の治療では、LDLコレステロールをしっかり下げることが重要です。

区分 対象 LDLコレステロール目標
一次予防 まだ狭心症や心筋梗塞などを起こしていない方 100mg/dL未満
二次予防 すでに狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患などを起こした方 70mg/dL未満

ただし、家族性高コレステロール血症ではLDLコレステロールが非常に高い場合もあり、目標達成が難しいこともあります。その場合でも、可能な限りLDLコレステロールを下げることが重要です。特に、糖尿病、高血圧、喫煙、慢性腎臓病、家族歴などがある方では、より厳格な管理が必要になります。

治療の種類

家族性高コレステロール血症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行います。

1. 食事療法

食事療法では、LDLコレステロールを上げやすい食品を控え、血管にやさしい食事を意識します。

控えめにしたい食品

  • 脂身の多い肉
  • ベーコン、ソーセージ、ハムなどの加工肉
  • バター、ラード、生クリーム
  • 洋菓子、菓子パン、スナック菓子
  • 揚げ物の食べすぎ
  • 卵、魚卵、レバーなどの食べすぎ

積極的に取り入れたい食品

  • 魚、特に青魚
  • 大豆製品:豆腐、納豆、豆乳など
  • 野菜
  • 海藻
  • きのこ
  • 玄米、もち麦、全粒粉パンなど
  • 低脂肪の乳製品

ただし、家族性高コレステロール血症では、食事を頑張ってもLDLコレステロールが十分に下がらないことがあります。食事療法は大切ですが、薬物療法の代わりになるとは限りません。

2. 運動療法

ウォーキング、速歩、自転車、水泳などの有酸素運動は、脂質異常症や動脈硬化予防に役立ちます。ただし、すでに狭心症や心筋梗塞が疑われる方、胸の痛みや息切れがある方、ホモ接合体FHが疑われる方では、運動を始める前に心臓の評価が必要です。特に重症の家族性高コレステロール血症では、心臓の血管や大動脈弁に病気が隠れていることがあるため、自己判断で強い運動を始めないようにしましょう。

3. 禁煙

喫煙は動脈硬化を強く進める危険因子です。家族性高コレステロール血症に喫煙が重なると、心筋梗塞のリスクはさらに高くなります。家族性高コレステロール血症と診断された方、または疑われる方は、禁煙も治療の一部と考えましょう。

4. スタチン

薬物療法の中心となるのがスタチンです。スタチンは、肝臓でコレステロールが作られるのを抑え、LDLコレステロールを下げる薬です。家族性高コレステロール血症では、スタチンを基本に治療を開始し、効果や副作用を確認しながら調整します。

5. エゼチミブ

エゼチミブは、小腸からのコレステロール吸収を抑える薬です。スタチンだけでLDLコレステロールが十分に下がらない場合に併用されることがあります。

6. PCSK9阻害薬

PCSK9阻害薬は、LDLコレステロールを強力に下げる注射薬です。スタチンやエゼチミブを使っても目標に届かない場合、特にリスクが高い方で検討されます。

7. レジン・プロブコールなど

症例によっては、陰イオン交換樹脂製剤、プロブコールなどの薬を併用することがあります。薬の組み合わせは、LDLコレステロールの値、心血管リスク、副作用、併存症などを考えて判断します。

8. LDLアフェレシス

非常に重症で薬だけではLDLコレステロールが十分に下がらない場合、LDLアフェレシスという治療を行うことがあります。LDLアフェレシスは、血液を体外に取り出し、血液中のLDLコレステロールを吸着・除去する治療です。特にホモ接合体FHや、薬剤抵抗性で重度の冠動脈疾患がある場合に検討されます。

9. ホモ接合体FHに対する専門的治療

ホモ接合体FHでは、LDLコレステロールが非常に高く、若年期から動脈硬化が急速に進むことがあります。そのため、専門医のもとで、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、LDLアフェレシスなどを組み合わせ、できるだけ早くLDLコレステロールを下げる治療が必要です。

家族も検査した方がよい理由

家族性高コレステロール血症は遺伝する病気です。そのため、本人が診断された場合、親、きょうだい、子どもなどにも同じ体質がある可能性があります。家族の中にまだ診断されていない方がいる場合、若くして心筋梗塞を起こす前に見つけられる可能性があります。このように、患者さんをきっかけに家族を調べることをカスケードスクリーニングと呼びます。特に以下に当てはまるご家族は、LDLコレステロールの検査をおすすめします。

  • 親、きょうだい、子ども
  • LDLコレステロールが高いと言われたことがある家族
  • 若くして狭心症や心筋梗塞を起こした家族
  • アキレス腱が太い、黄色腫がある家族

医療機関を受診した方がよい目安

以下に当てはまる場合は、家族性高コレステロール血症の可能性があるため、医療機関で相談しましょう。

  • LDLコレステロールが180mg/dL以上
  • LDLコレステロールが250mg/dL以上
  • 若いころからLDLコレステロールが高い
  • 家族にもLDLコレステロールが高い人がいる
  • 家族に若くして心筋梗塞や狭心症になった人がいる
  • アキレス腱が太いと言われたことがある
  • 手の甲、肘、膝などに黄色っぽいしこりがある
  • すでに狭心症、心筋梗塞、脳梗塞を起こしたことがある

特にLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、「体質だから仕方ない」と自己判断せず、家族性高コレステロール血症の可能性を確認することが大切です。

よくある質問

Q. 家族性高コレステロール血症は治りますか?

遺伝的な体質そのものを完全になくすことはできません。しかし、LDLコレステロールを下げる治療を続けることで、心筋梗塞や狭心症のリスクを減らすことが期待できます。早期診断と継続治療がとても大切です。

Q. 食事だけで治療できますか?

家族性高コレステロール血症では、食事療法は重要ですが、食事だけでLDLコレステロールを十分に下げることは難しいことが多いです。多くの場合、薬物療法を組み合わせて治療します。

Q. LDLコレステロールが180mg/dL以上なら必ず家族性高コレステロール血症ですか?

必ずしもそうではありません。甲状腺機能低下症、腎臓病、糖尿病、薬の影響などでLDLコレステロールが高くなることもあります。ただし、LDLコレステロール180mg/dL以上は家族性高コレステロール血症を疑う重要な目安です。

Q. 家族性高コレステロール血症だと寿命は短いですか?

未治療のままだと、若くして心筋梗塞や狭心症を起こしやすく、平均寿命が短くなることがあります。しかし、早期に診断してLDLコレステロールをしっかり下げることで、予後を改善できる可能性があります。

Q. 子どもにも遺伝しますか?

家族性高コレステロール血症は遺伝する病気です。親が家族性高コレステロール血症の場合、子どもにも同じ体質がある可能性があります。家族内でLDLコレステロールが高い方がいる場合は、子どもも含めて検査を相談しましょう。

Q. 薬は一生飲む必要がありますか?

家族性高コレステロール血症では、長期的な治療が必要になることが多いです。自己判断で薬を中止するとLDLコレステロールが再び上がり、動脈硬化が進む可能性があります。薬の継続や変更は、必ず医師と相談しましょう。

まとめ|家族性高コレステロール血症は早期診断と治療が大切です

家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい病気です。若いころから動脈硬化が進みやすく、放置すると狭心症や心筋梗塞のリスクが高くなります。成人では、未治療のLDLコレステロール180mg/dL以上、腱黄色腫やアキレス腱肥厚、家族歴などが診断の重要な手がかりになります。未治療の家族性高コレステロール血症では、平均寿命が短くなることがあります。しかし、早く見つけて治療を続けることで、心筋梗塞や狭心症を予防できる可能性があります。治療では、生活習慣の改善に加えて、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、LDLアフェレシスなどを組み合わせ、LDLコレステロールをしっかり下げることを目指します。LDLコレステロールが180mg/dL以上の方、家族に若くして心筋梗塞や狭心症になった方がいる方、アキレス腱肥厚や黄色腫がある方は、家族性高コレステロール血症の可能性があります。不安な場合は、健診結果を持って医療機関で相談しましょう。

🩺 受診を迷う方へ

家族性高コレステロール血症は、早く見つけるほど将来の心筋梗塞を防ぎやすい病気です。「LDLが高いだけ」と放置せず、一度ご相談ください。

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参考文献

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