乳糖不耐症とは?症状・原因・検査・治し方と牛乳を飲む工夫を解説

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こどもの症状

「牛乳を飲むとお腹が痛くなる」「カフェラテを飲んだあとに下痢をする」「子どもが胃腸炎になってからミルクを飲むと便がゆるくなった」――このような症状の原因の一つが乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)です。

乳糖不耐症は、牛乳や乳製品に含まれる糖質である乳糖(ラクトース)を十分に消化できず、腹痛や下痢、お腹の張り、ガスなどが起こる状態です。日本人を含む東アジア人では、成長とともに乳糖を分解する酵素の働きが低下しやすいことが知られています。ただし、乳糖を吸収しにくい人が、必ず症状を起こすわけではありません。また、乳糖不耐症があるからといって、すべての乳製品を一生完全に避ける必要があるとも限りません。

この記事では、乳糖不耐症の原因や症状、診断、治療、小児と大人の違い、牛乳アレルギーとの違い、日常生活でできる対策について、最新の知見をもとに医師がわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 乳糖不耐症は、乳糖を分解する「ラクターゼ」の働きが不足して起こります。
  • 主な症状は腹痛、下痢、お腹の張り、ガス、吐き気です。
  • 乳糖の吸収不良があっても、症状が出なければ乳糖不耐症とは限りません。
  • 乳児の先天性ラクターゼ欠損症は極めてまれです。
  • 小児では胃腸炎などに伴う一時的な二次性乳糖不耐症が重要です。
  • 多くの人は、乳製品を完全除去せず、量や種類を調整することで対応できます。
  • 牛乳アレルギーとは原因も治療も異なります。

乳糖不耐症とは?

乳糖不耐症とは、乳糖を摂取したあとに腹痛、下痢、膨満感、ガスなどの消化器症状が起こる状態です。乳糖は、牛乳、母乳、育児用ミルク、ヨーグルト、アイスクリームなどに含まれる糖質です。通常は、小腸の表面にあるラクターゼという消化酵素によって、ブドウ糖とガラクトースに分解されたあと、体内に吸収されます。ラクターゼの働きが弱いと、乳糖の一部が消化されないまま大腸まで届きます。大腸内では乳糖が腸内細菌によって発酵され、水素、二酸化炭素、メタンなどのガスが発生します。さらに、消化されなかった乳糖は腸管内に水分を引き込むため、便が水っぽくなります。これにより、以下のような症状が起こります。

  • お腹がゴロゴロする
  • お腹が張る
  • おならが増える
  • 腹痛が起こる
  • 下痢や軟便になる

「乳糖吸収不良」と「乳糖不耐症」は同じではない

乳糖不耐症を理解するうえで大切なのが、乳糖吸収不良と乳糖不耐症を区別することです。

用語 意味
ラクターゼ活性低下 小腸のラクターゼという酵素の働きが低下している状態
乳糖吸収不良 摂取した乳糖の一部が小腸で十分に吸収されない状態
乳糖不耐症 乳糖の摂取後に腹痛、下痢、膨満感などの症状が起こる状態

呼気検査で乳糖吸収不良が確認されても、本人に症状がなければ、必ずしも治療や乳製品の制限が必要とは限りません。一方、検査では明らかな吸収不良がなくても、過敏性腸症候群などによって腸が刺激に敏感になっていると、乳製品を摂取したあとに症状を感じることがあります。現在の呼気試験のガイドラインでも、検査値だけでなく、検査中に実際の腹痛や膨満感などが起きたかを同時に評価することが重視されています。

乳糖不耐症の原因と種類

乳糖不耐症の原因となるラクターゼの低下は、大きく4つに分けられます。

種類 主な原因 発症時期・特徴
一次性ラクターゼ欠損 成長に伴う生理的・遺伝的なラクターゼ活性の低下 幼児期以降から成人期に徐々に現れる
二次性ラクターゼ欠損 胃腸炎、セリアック病、炎症性腸疾患などによる小腸粘膜の障害 乳児・小児にも多く、原因疾患が改善すると回復することがある
発達性ラクターゼ欠損 早産児などで腸管の成熟が十分でない 成長と腸管の成熟に伴い改善しやすい
先天性ラクターゼ欠損症 LCT遺伝子の病的変異 出生直後から重い水様便を起こす極めてまれな病気

小児の乳糖不耐症

1.先天性ラクターゼ欠損症

先天性ラクターゼ欠損症は、生まれつきラクターゼがほとんど作られない遺伝性疾患です。一般に「先天性乳糖不耐症」と呼ばれることもありますが、医学的には先天性ラクターゼ欠損症と表現されます。LCT遺伝子の病的変異による常染色体潜性遺伝の疾患で、世界的にも報告数が少ない極めてまれな病気です。

母乳にも乳糖が含まれているため、授乳開始直後から以下のような症状が現れます。

  • 繰り返す激しい水様便
  • 哺乳後の腹部膨満
  • 脱水
  • 体重が増えない
  • 高ナトリウム血症などの電解質異常

授乳を始めた直後から重い下痢が続く場合には、感染症、牛乳アレルギー、グルコース・ガラクトース吸収不良症なども含め、専門的な評価が必要です。先天性ラクターゼ欠損症では、原則として乳糖を含まない栄養法が必要になります。自己判断でミルクを変更せず、小児科や小児消化器科で治療を受ける必要があります。

2.発達性ラクターゼ欠損

ラクターゼの活性は妊娠後期に高くなるため、早産児では一時的にラクターゼの働きが不十分な場合があります。これを発達性ラクターゼ欠損と呼びます。ただし、早産児に一律で乳糖除去やラクターゼ製剤が必要になるわけではありません。腸管の成熟に伴って改善することが多いため、在胎週数、体重増加、便の状態、基礎疾患などを考慮して個別に判断します。

3.小児の一次性乳糖不耐症

健康な乳児は、母乳の乳糖を消化するために高いラクターゼ活性を持っています。そのため、乳児期から一次性乳糖不耐症を起こすことは一般的ではありません。一次性ラクターゼ欠損では、離乳後から成長に伴ってラクターゼの活性が徐々に低下します。低下する時期には個人差や遺伝的な違いがあり、東アジア系では比較的早い時期から低下する傾向があります。学童期以降に、牛乳を飲むたびに腹痛や下痢を繰り返す場合には、一次性乳糖不耐症が考えられます。ただし、便秘、過敏性腸症候群、機能性腹痛症、食物アレルギーなど、ほかの原因との区別が必要です。

4.胃腸炎後に起こる二次性乳糖不耐症

小児で比較的よく問題になるのが、感染性胃腸炎のあとに起こる二次性乳糖不耐症です。ラクターゼは小腸の絨毛先端部に存在するため、ウイルス性胃腸炎などで小腸粘膜が傷つくと、一時的にラクターゼの働きが低下しやすくなります。

次のような経過がみられる場合には、胃腸炎後の乳糖不耐症を疑います。

  • 嘔吐や発熱は治ったのに下痢だけが長引く
  • 母乳やミルクを飲んだあとに便が水っぽくなる
  • 便の回数がなかなか減らない
  • お尻が強くかぶれる
  • 体重が減る、または増えない

多くは腸粘膜の回復とともに改善する一時的な状態です。軽い急性胃腸炎であれば、通常の授乳や食事を続けられることが多く、すべての子どもに乳糖除去が必要なわけではありません。一方、下痢が長引いている、乳糖を摂取するたびに明らかに悪化する、脱水や体重減少がある場合には、医師の判断で一時的に低乳糖・無乳糖ミルクを使用することがあります。

5.乳児の「泣き止まない」は乳糖不耐症?

乳児疝痛、いわゆる「黄昏泣き」や「コリック」が、すべて乳糖不耐症によって起こるわけではありません。2024年に報告されたランダム化比較試験の系統的レビューでは、乳児疝痛に対するラクターゼ補充の効果は研究によって異なり、明確な有効性を示すには十分な根拠がありませんでした。赤ちゃんがよく泣くという理由だけで、自己判断で母乳を中止したり、無乳糖ミルクへ変更したりすることは避けましょう。

大人の乳糖不耐症

大人の乳糖不耐症で最も多いのは、成長とともにラクターゼの活性が低下する一次性乳糖不耐症です。これは「成人型低ラクターゼ症」や「ラクターゼ非持続性」とも呼ばれます。ヒトを含む多くの哺乳類では、離乳後にラクターゼ活性が低下するのが本来の状態です。一部の集団では、成人後もラクターゼ活性が維持される遺伝的特徴が広がりましたが、日本人を含む東アジア人ではラクターゼ非持続性が多いとされています。ただし、ラクターゼ活性が低いことと、実際に牛乳で下痢をすることは同じではありません。症状の有無は、以下の要因によって変わります。

  • 一度に摂取した乳糖の量
  • 空腹時か食事と一緒か
  • 食品が液体か固形か
  • 腸内細菌の構成
  • 胃や腸の動く速さ
  • 過敏性腸症候群の有無
  • 本人の腸管知覚の敏感さ

そのため、「牛乳はだめでもヨーグルトは食べられる」「少量なら症状が出ない」「空腹時は下痢をするが、食事中なら飲める」といった個人差が生じます。

大人に起こる二次性乳糖不耐症

成人でも、小腸粘膜が傷つく病気によってラクターゼ活性が低下することがあります。原因となる病気や状態には、以下のようなものがあります。

  • 感染性胃腸炎
  • セリアック病
  • クローン病などの炎症性腸疾患
  • ジアルジア症などの寄生虫感染症
  • 小腸の手術後
  • 抗がん剤治療
  • 小腸への放射線治療
  • 重度の低栄養

以前は問題なく牛乳を飲めていたのに急に症状が出るようになった場合や、体重減少、貧血、血便などを伴う場合には、単なる体質と思い込まず、原因疾患がないか医療機関で確認することが大切です。

乳糖不耐症の主な症状

乳糖不耐症の症状は、一般に乳糖を含む食品を摂取してから数十分~数時間以内に現れます。

  • 腹痛
  • 腹部膨満感
  • お腹がゴロゴロ鳴る
  • おならが増える
  • 軟便または水様便
  • 便意が急に強くなる
  • 吐き気
  • まれに嘔吐

症状の強さは、ラクターゼ活性だけでなく、一度に摂取した乳糖の量や食べ方によっても変わります。乳糖不耐症では、通常、じんましん、唇の腫れ、呼吸困難、アナフィラキシーなどは起こりません。これらがある場合には、牛乳アレルギーを疑う必要があります。

乳糖不耐症と牛乳アレルギーの違い

乳糖不耐症と牛乳アレルギーは、まったく異なる病気です。

比較項目 乳糖不耐症 牛乳アレルギー
原因 乳糖を分解するラクターゼの不足 カゼインや乳清たんぱくなど、牛乳たんぱく質に対する免疫反応
主な症状 腹痛、下痢、膨満感、ガス じんましん、咳、喘鳴、嘔吐、血便、アナフィラキシーなど
少量摂取 少量なら症状が出ない人が多い 少量でも症状が出ることがある
乳糖ゼロ牛乳 利用できることが多い 牛乳たんぱくを含むため原則として使用できない
乳糖分解酵素 症状を軽減する可能性がある 効果はない
緊急性 通常は生命に関わらない アナフィラキシーを起こす可能性がある

特に乳児では、牛乳アレルギーによる腸炎で小腸粘膜が傷つき、二次的にラクターゼ活性が低下することがあります。そのため、両者が併存する場合もあります。なお、乳糖除去ミルクや乳糖ゼロ牛乳には、牛乳たんぱく質が残っている製品があります。牛乳アレルギーの治療用ミルクとは異なるため、混同しないようにしましょう。

乳糖不耐症の診断方法

1.症状と食事内容の確認

診断で最も大切なのは、乳糖を含む食品と症状の関係を詳しく確認することです。

  • 何を食べたときに症状が起きるか
  • 牛乳を何mL飲むと症状が出るか
  • 症状が出るまでの時間
  • ヨーグルトやチーズでも症状が出るか
  • 乳製品を控えると改善するか
  • 再び摂取すると症状が再現するか

1~2週間程度、食事と症状を記録すると、診断の参考になります。ただし、長期間にわたる自己流の完全除去は栄養不足につながる可能性があります。

2.乳糖除去・再負荷

一定期間、乳糖の摂取量を減らして症状が改善するかを確認し、その後、乳糖を再び摂取して症状が再現するかをみる方法です。実際の生活に近い評価ができますが、思い込みによる影響や、乳製品に含まれる脂肪、糖アルコール、そのほかの発酵性糖質の影響を受けることがあります。

3.水素・メタン呼気試験

水素呼気試験は、乳糖吸収不良を評価する代表的な検査です。乳糖を摂取したあと、一定時間ごとに呼気中の水素やメタンを測定します。吸収されなかった乳糖が大腸内で発酵されると、水素などのガスが増加し、一部が血液を介して呼気に排出されます。ただし、呼気中の水素が上昇しただけでは「乳糖吸収不良」を示すにとどまります。乳糖不耐症と診断するためには、検査中に腹痛、膨満感、下痢などが起きたかも同時に評価します。また、腸内細菌の状態、検査前の食事、喫煙、抗菌薬の使用、小腸内細菌異常増殖症などによって、結果が影響を受けることがあります。

4.乳糖負荷試験

乳糖を摂取したあとに血糖値を測定し、血糖値が十分に上昇するかを調べる方法です。乳糖が分解・吸収されると血糖値が上がりますが、呼気試験と比べて精度に限界があり、現在は補助的に行われます。

5.便のpH・還元糖検査

乳児や幼児では、便の酸性化や還元糖を調べることがあります。しかし、ほかの糖質の吸収不良でも異常になるため、乳糖不耐症だけに特異的な検査ではありません。

6.遺伝子検査

遺伝子検査によって、成人後もラクターゼ活性を維持しやすい遺伝的特徴を調べられる場合があります。ただし、欧州系集団で利用される遺伝子多型が、すべての人種や地域に当てはまるわけではありません。また、遺伝的にラクターゼ活性が低下しやすくても、必ず症状が出るとは限らないため、日本の日常診療で必須の検査ではありません。

7.内視鏡・小腸生検

乳糖不耐症だけを診断する目的で、通常は内視鏡検査を行いません。ただし、セリアック病、炎症性腸疾患、そのほかの吸収不良症候群が疑われる場合には、原因疾患を調べるために血液検査や内視鏡検査、小腸生検を行うことがあります。

乳糖不耐症と区別が必要な病気

牛乳を飲んだあとの腹痛や下痢が、すべて乳糖不耐症とは限りません。次のような病気との区別が必要です。

  • 牛乳アレルギー
  • 感染性胃腸炎
  • 過敏性腸症候群
  • 機能性腹痛症
  • セリアック病
  • 炎症性腸疾患
  • 小腸内細菌異常増殖症
  • 果糖や糖アルコールなど、ほかの糖質の吸収不良
  • 慢性膵炎などによる消化吸収障害
  • 甲状腺機能亢進症
  • 大腸がんなどの器質的疾患

特に過敏性腸症候群では、本人が乳糖不耐症だと感じていても、実際の乳糖吸収不良と一致しないことがあります。乳製品以外でも腹痛や便通異常が続く場合には、別の原因も検討します。

乳糖不耐症の治療と対応

1.乳製品を完全にやめるとは限らない

乳糖不耐症の基本的な対応は、症状が出ない範囲まで乳糖の摂取量を調整することです。乳糖に対する許容量には大きな個人差があります。研究では、乳糖不耐症がある人でも、1回約12g、牛乳約1カップ相当の乳糖を無症状または軽い症状で摂取できる場合があるとされています。ただし、日本人では少量でも症状が出る人がいるため、12gを全員が摂取すべきという意味ではありません。まずは少量から試し、自分の許容量を確認します。

2.少量ずつ分けて摂取する

一度に大量の牛乳を飲むよりも、少量ずつ複数回に分けた方が症状を起こしにくくなります。例えば、牛乳200mLを一度に飲むと症状が出る場合には、50~100mL程度から試します。症状がなければ、少しずつ量を増やして自分が飲める範囲を確認します。

3.空腹時を避けて食事と一緒に摂る

牛乳だけを空腹時に飲むよりも、食事と一緒に摂取した方が胃から腸への移動が緩やかになり、症状が軽くなることがあります。シリアルに少量かける、料理に使用する、パンや食事と一緒に飲むなどの方法があります。

4.ヨーグルトや熟成チーズを試す

ヨーグルトは、乳酸菌が持つβ-ガラクトシダーゼの働きなどにより、牛乳よりも乳糖を消化しやすい場合があります。また、ハードチーズや長期間熟成されたチーズは、製造過程で乳糖の多くが除かれるため、比較的症状が出にくい食品です。ただし、ヨーグルトやチーズにも製品差があります。加糖ヨーグルト、乳飲料、フレッシュチーズ、アイスクリームなどは乳糖を比較的多く含むことがあります。

食品 乳糖の傾向 対策
普通牛乳 比較的多い 少量に分け、食事と一緒に摂る
乳糖分解牛乳・乳糖ゼロ牛乳 少ない、またはほぼ含まない 普通牛乳で症状が出る人の選択肢
ヨーグルト 製品によって異なる 少量から試す
ハードチーズ・熟成チーズ 少ないことが多い 比較的取り入れやすい
アイスクリーム 比較的多いことがある 量を控え、症状との関係を見る
バター 通常は少量 少量であれば耐えられる人が多い
生クリーム 製品や摂取量による 脂肪による胃もたれとの区別も必要

5.乳糖分解牛乳を利用する

乳糖分解牛乳は、製造時にラクターゼを加えて乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解した製品です。通常の牛乳と比べて乳糖による症状を起こしにくく、カルシウムやたんぱく質などの栄養素も摂取できます。乳糖が分解されているため、普通の牛乳より甘く感じることがあります。なお、牛乳たんぱく質は含まれているため、牛乳アレルギーの人は利用できません。

6.ラクターゼ製剤・乳糖分解酵素を利用する

乳糖を含む食品を食べる直前や一緒に、ラクターゼ製剤を使用すると、乳糖の消化を助けて症状を軽減できる場合があります。ただし、製品によって酵素量や効果に違いがあり、すべての人に同じ効果が得られるわけではありません。また、乳糖を摂取してから時間がたって使用しても、十分な効果が得られないことがあります。乳児や小児に使用する場合は、年齢、症状、原因によって対応が異なるため、医師や薬剤師に相談してください。

7.二次性乳糖不耐症では原因疾患を治療する

胃腸炎、セリアック病、炎症性腸疾患などに伴う二次性乳糖不耐症では、乳糖を制限するだけでなく、原因疾患の治療が必要です。腸粘膜が回復すればラクターゼ活性も改善し、再び乳製品を摂取できるようになることがあります。症状が改善したあとも乳糖を長期間完全除去するのではなく、医師や管理栄養士と相談しながら少量ずつ再開します。

8.プロバイオティクスは有効?

一部の乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスが、乳糖の消化や腹部症状を改善する可能性が報告されています。一方で、効果は菌株、摂取量、製品によって異なり、乳糖不耐症に対する標準治療として、すべてのプロバイオティクスを一律に推奨できる段階ではありません。まずは乳糖量の調整、乳糖分解製品、ヨーグルト、ラクターゼ製剤など、効果を確認しやすい対策を優先します。

小児では母乳やミルクをやめるべき?

自己判断で母乳を中止する必要はありません。

母乳には乳糖が含まれていますが、一般的な乳児では乳糖を消化する能力が備わっています。乳児の下痢や腹部症状の原因が、必ずしも乳糖とは限りません。胃腸炎後の二次性乳糖不耐症が疑われる場合でも、軽症であれば授乳を継続できるケースが多くあります。下痢が長引く、体重が減る、脱水がある、哺乳のたびに大量の水様便が出る場合には、小児科を受診してください。医師が必要と判断した場合には、一時的に以下のような対応を行います。

  • 低乳糖・無乳糖ミルクへの変更
  • 乳糖分解酵素製剤の使用
  • 授乳量や回数の調整
  • 経口補水療法
  • 原因となっている胃腸炎や腸疾患の治療

なお、牛乳アレルギーが疑われる場合には、低乳糖・無乳糖ミルクではなく、加水分解乳やアミノ酸乳などが必要になることがあります。両者は治療法が異なるため、医師の診断を受けましょう。

乳製品を控えるときの栄養不足に注意

乳製品を長期間完全に除去すると、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質などが不足する可能性があります。特に、成長期の子ども、妊婦、高齢者、骨粗鬆症のリスクがある人では注意が必要です。2025年に報告された日本人成人の研究でも、自分を乳糖不耐症だと考えている人では、乳製品やカルシウムの摂取量が少なく、骨密度との関連が示されました。ただし、横断研究であり、乳糖不耐症が直接骨密度低下を起こしたと断定するものではありません。乳製品を減らす場合には、次のような食品も活用します。

  • 乳糖分解牛乳
  • ヨーグルトや熟成チーズ
  • カルシウム強化豆乳
  • 豆腐や厚揚げ
  • 小魚
  • 骨ごと食べられる缶詰
  • 小松菜などの緑黄色野菜
  • カルシウムを強化した食品

植物性ミルクは製品によってカルシウム、たんぱく質、ビタミンDの含有量が大きく異なります。「牛乳の代わり」として使用する場合には、栄養成分表示を確認しましょう。特に乳幼児では、一般的な植物性飲料を育児用ミルクの代わりに使用することはできません。

ヤギ乳なら飲める?

ヤギ乳や羊乳にも乳糖が含まれているため、乳糖不耐症の根本的な代替品にはなりません。また、牛乳アレルギーでは、牛乳たんぱくとヤギ乳・羊乳のたんぱく質が交差反応する可能性があり、安全な代替品とはいえません。

薬に含まれる乳糖は問題になる?

錠剤やカプセルの添加物として、少量の乳糖が使われることがあります。一般的な成人型乳糖不耐症では、医薬品に含まれる乳糖は少量であり、通常は大きな問題になりません。しかし、非常に少量でも症状が出る人や先天性ラクターゼ欠損症では、医師や薬剤師への確認が必要です。なお、牛乳アレルギーと乳糖は別物ですが、乳由来成分の混入リスクについて個別に確認が必要な製剤もあります。

乳糖不耐症で医療機関を受診する目安

牛乳や乳製品を摂取するたびに腹痛や下痢を繰り返す場合には、内科、消化器内科、小児科などに相談しましょう。特に、以下の症状がある場合には、乳糖不耐症以外の病気が隠れている可能性があります。

  • 血便や黒い便が出る
  • 発熱が続く
  • 夜中に下痢や腹痛で目が覚める
  • 原因不明の体重減少がある
  • 成長や体重増加が悪い
  • 貧血を指摘された
  • 繰り返し嘔吐する
  • 強い腹痛が続く
  • 脱水症状がある
  • じんましん、咳、呼吸困難を伴う
  • 乳児が授乳開始直後から激しい水様便を繰り返す

救急受診を考える症状

乳製品を摂取したあとに呼吸困難、顔や唇の腫れ、ぐったりする、意識が悪いなどの症状がある場合は、乳糖不耐症ではなくアナフィラキシーの可能性があります。直ちに救急要請を検討してください。

乳糖不耐症についてよくある質問

乳糖不耐症は治りますか?

一次性乳糖不耐症では、低下したラクターゼ活性そのものを元に戻すことは一般に困難です。ただし、乳糖の量や摂取方法を調整すれば、症状を抑えながら乳製品を取り入れられることがあります。胃腸炎などによる二次性乳糖不耐症は、腸粘膜が回復すると改善する可能性があります。

牛乳を飲み続ければ慣れますか?

少量ずつ摂取すると症状が軽くなる人はいますが、牛乳を無理に大量摂取してラクターゼ活性が必ず回復するわけではありません。症状を我慢して飲み続ける必要はなく、自分が無理なく摂取できる量を見つけることが大切です。

乳糖不耐症でもヨーグルトは食べられますか?

ヨーグルトは牛乳よりも消化しやすく、食べられる人が少なくありません。ただし、個人差や製品差があるため、無糖ヨーグルトなどを少量から試します。

乳糖ゼロ牛乳は栄養が少ないですか?

一般に、乳糖分解牛乳でも、カルシウムやたんぱく質などの主要な栄養素は通常の牛乳と大きく変わりません。製品ごとの栄養成分表示を確認してください。

乳糖不耐症は遺伝しますか?

成人型のラクターゼ活性低下には遺伝的な背景があります。ただし、実際に症状が出るかどうかは、摂取量や腸内環境、腸の感受性などにも左右されます。先天性ラクターゼ欠損症はLCT遺伝子の病的変異による遺伝性疾患ですが、極めてまれです。

まとめ:乳糖不耐症は「すべて除去」ではなく自分に合った量を知ることが大切

乳糖不耐症は、乳糖を分解するラクターゼの働きが不足し、牛乳や乳製品の摂取後に腹痛、下痢、お腹の張り、ガスなどが起こる状態です。小児では、極めてまれな先天性ラクターゼ欠損症のほか、早産に伴う発達性ラクターゼ欠損、胃腸炎後に起こる一時的な二次性乳糖不耐症があります。成人では、成長に伴ってラクターゼ活性が低下する一次性乳糖不耐症が中心です。多くの場合、乳製品を完全に避ける必要はありません。少量ずつ分ける、食事と一緒に摂る、ヨーグルトや熟成チーズを選ぶ、乳糖分解牛乳やラクターゼ製剤を利用するなど、自分に合った方法を探します。一方、乳児の重い下痢、血便、体重減少、貧血、夜間症状、呼吸困難などがある場合には、牛乳アレルギーや腸疾患など、別の病気が隠れている可能性があります。自己判断で長期間の除去食を続けず、医療機関へ相談しましょう。

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  8. Orphanet:Congenital lactase deficiency

※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合や乳幼児の下痢、体重増加不良、血便、アレルギー症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

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