卵アレルギーでもインフルエンザワクチンは接種できる?注射・フルミストの最新情報【2026年】

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ワクチン・予防医療

「卵アレルギーがあるので、インフルエンザワクチンは打てませんよね?」

このように心配される患者さんや保護者の方は少なくありません。

確かにインフルエンザワクチンの多くは、製造過程で発育鶏卵(鶏の卵)を使用しています。そのため、以前は「卵アレルギーがある人にはインフルエンザワクチンを接種しないほうがよい」と考えられていた時代がありました。

しかし、その後多くの研究が行われ、現在では考え方が大きく変わっています。

結論からいうと、卵アレルギーがあるという理由だけで、インフルエンザワクチンをあきらめる必要はありません。

海外の最新ガイドラインでは、過去に卵を食べてアナフィラキシーを起こしたことがある人を含め、卵アレルギーの重症度にかかわらず、年齢や健康状態に適したインフルエンザワクチンを接種できるとされています。

この記事では、通常の注射タイプのインフルエンザワクチンと、鼻に噴霧する弱毒生ワクチン「フルミスト」について、卵アレルギーとの関係や接種できないケースを最新のエビデンスをもとに解説します。

結論|卵アレルギーでもインフルエンザワクチンは接種できます

まず最も重要なポイントをまとめます。

  • 卵アレルギーだけを理由にインフルエンザワクチンを避ける必要はありません。
  • じんましん程度の卵アレルギーはもちろん、過去に卵でアナフィラキシーを起こしたことがある人についても、海外のガイドラインでは接種可能とされています。
  • 通常の注射型インフルエンザワクチンだけでなく、条件を満たせばフルミストも卵アレルギーだけを理由に禁止されるものではありません。
  • ただし日本の添付文書では、鶏卵・鶏肉などにアレルギーを起こすおそれがある人は「接種要注意者」とされています。
  • 卵アレルギーと「インフルエンザワクチンそのものによるアナフィラキシー」は別問題です。

つまり、「卵が食べられない=インフルエンザワクチンが打てない」という認識は、現在のエビデンスとは一致しません。

なぜインフルエンザワクチンと卵アレルギーが関係するの?

日本で一般的に使用されているインフルエンザHAワクチンは、インフルエンザウイルスを発育鶏卵で増殖させて製造します。鼻に噴霧するフルミストも、弱毒化したインフルエンザウイルスを発育鶏卵で培養して製造されています。そのため、製造工程に由来するごく微量の鶏卵由来成分が問題になるのではないかと、以前から懸念されてきました。しかし、現在使用されているワクチンでは残存する卵由来タンパク質は非常に少なく、多数の卵アレルギー患者に対する研究でも、重篤なアレルギー反応が増加することは確認されていません。

最新のエビデンス|重症の卵アレルギーでも接種可能

米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)およびACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)は、現在、次のように推奨しています。

「6か月以上の卵アレルギーがある人は、卵を用いて製造されたものを含め、年齢や健康状態に適したどのインフルエンザワクチンでも接種できる」

さらに、2023-2024シーズン以降は、過去の卵アレルギーがどれほど重症であったかにかかわらず、卵アレルギーのない人と比べて特別な追加措置を行う必要はないとされています。

ACIPが行ったエビデンスレビューでは、季節性不活化インフルエンザワクチンを接種した卵アレルギー患者1,591人において、アナフィラキシーは認められませんでした。この中には重症の卵アレルギー・卵によるアナフィラキシー歴がある322人も含まれていましたが、アナフィラキシーは0例でした。

米国小児科学会(AAP)も、卵アレルギーのある子どもについて、通常の注射ワクチン(IIV)だけでなく、経鼻弱毒生ワクチン(LAIV)についても、卵アレルギーを禁忌とはしていません。

卵アレルギーがある場合、注射のインフルエンザワクチンは接種できる?

基本的には接種できます。

日本で一般的に使用されているインフルエンザHAワクチンの添付文書では、鶏卵、鶏肉、その他の鶏由来成分に対してアレルギーを起こすおそれのある人は「接種要注意者」とされています。ここで重要なのは、「接種要注意者」と「接種してはいけない人」は違うということです。卵アレルギーがあるだけで接種が禁止されているわけではありません。

接種前に、

  • 卵を食べるとどのような症状が出るか
  • じんましんだけなのか
  • 呼吸困難や血圧低下を伴ったことがあるか
  • 過去にインフルエンザワクチンそのものでアレルギーを起こしたことがあるか

などを確認したうえで医師が判断します。

ゆで卵は食べられないけれど、加工品なら食べられる場合は?

このような比較的軽い卵アレルギーであれば、通常はインフルエンザワクチンを接種できます。ワクチンを少量ずつ分けて接種したり、事前にワクチンの皮膚テストを行ったりすることも、現在は通常必要ありません。

卵でアナフィラキシーを起こしたことがある場合は?

ここが最も誤解されやすい点です。

CDC/ACIPやAAPでは、過去に卵を食べてアナフィラキシーを起こした人についても、卵アレルギーだけを理由にインフルエンザワクチンを避ける必要はないとしています。

ただし日本では、添付文書上は鶏卵アレルギーが「接種要注意者」に位置づけられているため、重症の卵アレルギー歴がある場合には、あらかじめ接種医に伝えてください。どのワクチンについても、ごくまれにアナフィラキシーが起こる可能性はあるため、ワクチン接種を行う医療機関ではアナフィラキシーに対応できる体制を整えておくことが重要です。

卵アレルギーがあってもフルミストはできる?

卵アレルギーだけを理由にフルミストが禁止されるわけではありません。

フルミストは、鼻の中に噴霧する経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。

日本では2歳以上19歳未満が接種対象です。

フルミストも製造過程で発育鶏卵を使用していますが、日本の添付文書では、鶏卵・鶏肉・その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある人は「接種要注意者」とされており、卵アレルギーそのものは接種不適当者には指定されていません。

米国のCDC/ACIPやAAPでは、卵アレルギーのある子どもについても、年齢や健康状態など他の条件を満たしていれば、経鼻弱毒生ワクチンを接種できるとしています。

注射とフルミスト|卵アレルギーの場合の違い

項目 注射のインフルエンザワクチン フルミスト
ワクチンの種類 不活化ワクチン 弱毒生ワクチン
日本での対象年齢 生後6か月以上 2歳以上19歳未満
卵アレルギー 原則として接種可能 原則として接種可能
日本の添付文書 鶏卵等へのアレルギーは接種要注意 鶏卵等へのアレルギーは接種要注意
妊娠中 接種可能 接種できない
免疫抑制状態 状態をみて接種可能 原則接種できない
重い喘息・喘鳴 接種を検討可能 接種に注意が必要

卵アレルギーより重要|インフルエンザワクチンそのものへのアレルギー

「卵でアナフィラキシーを起こしたことがある」のと、「インフルエンザワクチンを接種してアナフィラキシーを起こしたことがある」のは意味が違います。

過去にインフルエンザワクチンそのもの、またはワクチンに含まれる成分によってアナフィラキシーを起こしたことがある場合には、より慎重な判断が必要です。

ワクチンには卵由来成分以外にも複数の成分が含まれています。

特にフルミストには安定剤として精製ゼラチンが含まれており、ゼラチン含有食品やゼラチン含有製剤で重いアレルギー反応を起こしたことがある場合は、事前に医師へ伝える必要があります。

インフルエンザの注射ワクチンを接種できない人は?

卵アレルギーではなく、次のようなケースでは接種できない、または延期する必要があります。

  • 明らかな発熱がある
  • 重篤な急性疾患にかかっている
  • そのワクチンの成分によって過去にアナフィラキシーを起こしたことがある
  • その他、医師が予防接種を行うことが不適当と判断した場合

一方、軽い風邪や軽度の鼻水程度であれば、必ずしもワクチンを延期する必要があるわけではありません。実際の接種可否は当日の状態をみて判断します。

フルミストを接種できない人・注意が必要な人

フルミストは生きたウイルスを弱毒化した「生ワクチン」であるため、注射の不活化ワクチンとは異なる制限があります。

日本の添付文書上、フルミストを接種できない人

  • 明らかな発熱がある人
  • 重篤な急性疾患にかかっている人
  • フルミストの成分によって過去にアナフィラキシーを起こした人
  • 明らかな免疫機能異常がある人
  • 免疫抑制をきたす治療を受けている人
  • 妊娠している人
  • その他、医師が接種不適当と判断した人

また、日本では適応年齢が2歳以上19歳未満のため、2歳未満や19歳以上は通常の接種対象ではありません。

フルミストで特に注意する人

  • 重度の喘息がある、または喘鳴がある
  • 過去にけいれんを起こしたことがある
  • ゼラチンで重いアレルギー反応を起こしたことがある
  • 免疫不全の既往がある、または家族に先天性免疫不全症がある
  • 心疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患などの基礎疾患がある
  • アスピリンなどサリチル酸系薬剤を使用している
  • 最近、抗インフルエンザ薬を使用した

このような場合には、フルミストではなく注射タイプのインフルエンザワクチンを選択したほうが適していることがあります。

「卵を一度も食べたことがない赤ちゃん」はどうする?

離乳食開始前などで卵をまだ食べたことがないからといって、インフルエンザワクチンの前にわざわざ卵を食べさせてアレルギーがないことを確認する必要はありません。

インフルエンザHAワクチンは生後6か月から接種できます。

「卵をまだ食べていない=ワクチンを打てない」ということではありません。

卵アレルギーがある人は接種後に長く待つ必要がある?

CDC/ACIPは、卵アレルギーがあるという理由だけで、特別に長時間観察したり、専門病院に限定して接種したりする必要はないとしています。ただし、ワクチンによるアナフィラキシーは卵アレルギーの有無にかかわらず、非常にまれながら起こる可能性があります。そのため、すべてのワクチン接種は、急性アレルギー反応を認識し適切に対応できる体制で行われることが重要です。

よくある質問

Q. 卵を食べるとじんましんが出ます。インフルエンザワクチンは打てますか?

多くの場合、接種可能です。じんましんだけの卵アレルギーを理由にインフルエンザワクチンを避ける必要はありません。

Q. 卵でアナフィラキシーを起こしたことがあります。接種できますか?

海外のCDC/ACIPやAAPの推奨では、卵によるアナフィラキシー歴があってもインフルエンザワクチンを接種できます。日本では鶏卵アレルギーが「接種要注意者」とされているため、接種前に必ず医師へ伝えてください。

Q. 卵アレルギーがあってもフルミストはできますか?

卵アレルギーだけを理由に接種禁止にはなりません。ただしフルミストには、免疫抑制状態、妊娠、重度の喘息・喘鳴、ゼラチンアレルギーなど、卵とは別に確認すべき条件があります。

Q. 卵アレルギーなら注射とフルミストのどちらが安全ですか?

卵アレルギーだけで両者の安全性を大きく分ける必要はありません。むしろ、年齢、喘息・喘鳴の有無、免疫抑制状態、妊娠、使用している薬などによって選択することが重要です。

Q. インフルエンザワクチンの前に卵アレルギー検査は必要ですか?

通常は必要ありません。卵アレルギーが心配だからという理由だけで、インフルエンザワクチン接種前に血液検査や皮膚テストを行うことは一般的には推奨されません。

まとめ|「卵アレルギーだから接種できない」は過去の考え方になりつつあります

インフルエンザワクチンと卵アレルギーについて、最も大切なのは「卵アレルギー=インフルエンザワクチン禁忌ではない」ということです。

現在のエビデンスでは、卵アレルギーがある人は、過去に卵で強いアレルギー反応を起こしたことがある場合も含め、年齢や健康状態に適したインフルエンザワクチンを接種できると考えられています。

日本の添付文書上は、鶏卵・鶏肉などへのアレルギーは現在も「接種要注意者」とされていますが、これは接種禁止という意味ではありません。

一方で注意したいのは、卵アレルギーよりも、過去のインフルエンザワクチンそのものによるアナフィラキシーや、フルミストの場合には免疫抑制、妊娠、喘息・喘鳴、ゼラチンアレルギーなどです。

卵アレルギーがあるからと自己判断でインフルエンザワクチンをあきらめず、これまでのアレルギー症状を接種医に伝えたうえで相談しましょう。

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参考文献・参考情報

※本記事は2026年9月時点の公的資料および医学的エビデンスをもとに作成しています。ワクチンの適応・接種可否は年齢、基礎疾患、アレルギー歴、使用薬剤などによって異なるため、実際の接種については医師にご相談ください。

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