「子どもが注射を嫌がる」
「インフルエンザワクチンを打たせたいけれど、毎年泣いてしまう」
「注射ではないインフルエンザ予防法はないの?」
このようなお悩みを持つ保護者の方に注目されているのが、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチン 「フルミスト」 です。フルミストは、注射ではなく鼻に噴霧する経鼻インフルエンザワクチンです。痛みがほとんどなく、注射が苦手なお子さんにとって受けやすい予防接種の選択肢になります。一方で、フルミストは「生ワクチン」であるため、接種できる年齢や体調、持病によっては使用できない場合があります。
この記事では、フルミストの効果、対象年齢、副反応、通常のインフルエンザワクチンとの違い、接種できない人について、わかりやすく解説します。インフルエンザワクチンについては以下の記事を参考にしてください。

1.フルミストとは?
フルミストは、インフルエンザの予防を目的とした 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン です。従来のインフルエンザワクチンは、腕などに注射して接種します。一方、フルミストは鼻の中にスプレーするだけで接種が完了します。そのため、注射の痛みが苦手なお子さんや、毎年インフルエンザワクチンを嫌がるお子さんにとって、心理的な負担が少ないワクチンです。
フルミストの主な特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ワクチンの種類 | 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン |
| 接種方法 | 鼻にスプレーする |
| 接種対象 | 2歳以上19歳未満 |
| 接種回数 | 通常1回 |
| 痛み | 注射ではないため、痛みが少ない |
| 特徴 | 鼻やのどの粘膜免疫も期待できる |
フルミストは、インフルエンザウイルスが体に入ってくる入口である「鼻の粘膜」に直接作用する点が特徴です。そのため、全身の免疫だけでなく、鼻やのどの粘膜での防御反応も期待されています。
2.フルミストの効果はいつから?いつまで続く?
フルミストに限らず、インフルエンザワクチンは接種してすぐに効果が出るわけではありません。一般的に、ワクチン接種後、免疫がつくまでには 約2週間 かかるとされています。そのため、インフルエンザが本格的に流行する前に、早めに接種しておくことが大切です。
効果の持続期間
フルミストの効果は、接種後おおよそ数か月から1シーズン程度持続すると考えられています。インフルエンザは毎年流行するウイルスの型が変わるため、フルミストを接種した場合でも、基本的には毎シーズンの接種が必要です。
フルミストは小児で効果が期待されるワクチン
フルミストは、特に小児で効果が期待されているワクチンです。海外の研究では、幼児において経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが、注射型の不活化インフルエンザワクチンよりも高い予防効果を示したという報告があります。ただし、ワクチンの効果はその年に流行するインフルエンザウイルスの型、年齢、基礎疾患の有無、過去の感染歴や接種歴によって変わります。そのため、「フルミストなら絶対にインフルエンザにかからない」というわけではありません。大切なのは、フルミストも通常の注射型インフルエンザワクチンも、インフルエンザの発症予防や重症化予防を目的とした選択肢のひとつとして考えることです。
3.フルミストと通常のインフルエンザワクチンの違い
フルミストと通常のインフルエンザワクチンの大きな違いは、接種方法とワクチンの種類です。
| 項目 | フルミスト | 通常のインフルエンザワクチン |
|---|---|---|
| 接種方法 | 鼻にスプレー | 注射 |
| ワクチンの種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
| 対象年齢 | 2歳以上19歳未満 | 生後6か月以上で接種可能 |
| 痛み | ほとんどない | 注射の痛みがある |
| 接種回数 | 通常1回 | 年齢により1回または2回 |
| 免疫の特徴 | 粘膜免疫+全身免疫が期待される | 主に全身免疫 |
| 妊婦への接種 | 不可 | 不活化ワクチンは接種可能 |
フルミストの最大のメリットは、やはり 注射をしなくてよいこと です。特に小さなお子さんでは、「注射が怖い」という理由でワクチン接種をためらうことがあります。フルミストは鼻にスプレーするだけなので、接種へのハードルを下げることができます。一方で、フルミストは生ワクチンであるため、妊娠中の方、免疫が低下している方、重い喘息がある方などには使用できない場合があります。そのため、どちらのワクチンがよいかは、年齢、体調、持病、生活環境を踏まえて選ぶことが大切です。
4.フルミストの副反応
フルミストは鼻にスプレーするワクチンのため、接種後に鼻やのどの症状が出ることがあります。多くは軽い症状で、数日以内に自然に改善することがほとんどです。
比較的よくみられる副反応
フルミスト接種後にみられることがある副反応には、次のようなものがあります。
鼻水・鼻づまり・咳・のどの痛み・頭痛・発熱・だるさ・食欲低下・筋肉痛
特に、鼻水や鼻づまりなど、かぜのような症状が出ることがあります。これはフルミストが鼻の粘膜に作用するワクチンであるためです。
まれに注意が必要な副反応
頻度は高くありませんが、以下のような症状には注意が必要です。
- 強い喘鳴、ゼーゼーする呼吸
- 呼吸が苦しい
- 全身のじんましん
- 顔や唇の腫れ
- ぐったりしている
- 高熱が続く
- 意識がぼんやりする
このような症状がある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。特に喘息や反復する喘鳴の既往があるお子さんでは、接種前に医師へ必ず相談しましょう。
5.フルミストのメリット
1.注射が不要で痛みが少ない
フルミストの最大のメリットは、注射をしなくてよいことです。鼻にスプレーするだけなので、注射の痛みがありません。そのため、注射が苦手なお子さん、ワクチン接種のたびに強い不安を感じるお子さんにとって、受け入れやすいワクチンです。
2.鼻の粘膜で免疫が期待できる
インフルエンザウイルスは、主に鼻やのどの粘膜から体内に侵入します。フルミストは鼻に直接投与するため、ウイルスの入口である鼻粘膜で免疫反応を起こすことが期待されています。この点は、注射型のインフルエンザワクチンとは異なる特徴です。
3.1回接種で済む
フルミストは、国内では通常1回接種です。注射型インフルエンザワクチンでは、年齢によっては2回接種が必要になる場合があります。接種回数が少ないことは、保護者にとってもお子さんにとっても負担軽減につながります。
4.子どもの接種ハードルを下げられる
インフルエンザワクチンは、接種しなければ効果は期待できません。注射への恐怖心が強く、毎年ワクチンを避けてしまうお子さんにとって、フルミストは「受けられるワクチン」として有用な選択肢になります。
6.フルミストと他のワクチンは同時接種できる?
フルミストは、医師が必要と判断した場合、他のワクチンと同時接種することができます。ただし、同時接種を行うかどうかは、年齢、接種歴、体調、自治体の助成制度などによって判断が必要です。
同時接種の考え方
| ワクチンの種類 | 同時接種 | 補足 |
|---|---|---|
| 不活化ワクチン | 可能 | 日本脳炎、肺炎球菌、四種混合など |
| mRNAワクチン | 可能 | 新型コロナワクチンなど |
| 生ワクチン | 可能 | 麻しん風しん、水痘、BCGなど |
| 同時接種しない生ワクチン | 間隔に注意 | 医師・自治体の指示に従う |
同時接種ができる場合でも、発熱や体調不良があるときは接種を延期することがあります。また、自治体の助成制度を利用する場合は、接種間隔や対象年齢のルールが決められていることがあります。実際の接種スケジュールは、医療機関で確認しましょう。
7.フルミストを接種できない人・注意が必要な人
フルミストは便利なワクチンですが、すべての人が接種できるわけではありません。生ワクチンであるため、接種できない人や注意が必要な人がいます。
フルミストを接種できない主なケース
| 対象 | 理由 |
|---|---|
| 2歳未満 | 安全性の面から対象外 |
| 19歳以上 | 国内での適応対象外 |
| 妊娠中の方 | 生ワクチンのため接種不可 |
| 明らかな発熱がある方 | 体調悪化や判断困難を避けるため |
| 重い急性疾患にかかっている方 | 接種を延期する必要がある |
| 免疫が大きく低下している方 | 生ワクチンのため注意が必要 |
| 重い喘息や喘鳴の既往がある方 | 呼吸器症状悪化の可能性 |
| アスピリン内服中の小児 | ライ症候群のリスクに注意 |
| ワクチン成分で重いアレルギーを起こしたことがある方 | アナフィラキシーのリスク |
接種前に医師へ相談した方がよい人
次に当てはまる場合は、フルミストを希望する前に医師へ相談してください。
- 喘息がある
- ゼーゼーしやすい
- 免疫を抑える薬を使っている
- 抗がん剤治療中である
- 重い基礎疾患がある
- 妊娠の可能性がある
- 過去にワクチンで強い副反応があった
- 同居家族に重度の免疫不全の方がいる
フルミストが使えない場合でも、注射型のインフルエンザワクチンを選択できることがあります。無理にフルミストにこだわるのではなく、その人に合った予防方法を選ぶことが大切です。
8.フルミストに関するよくある質問
Q1.鼻づまりがあるときでもフルミストは接種できますか?
鼻づまりが強い場合は、ワクチンが鼻の粘膜に十分届きにくい可能性があります。そのため、かぜやアレルギー性鼻炎で鼻づまりが強いときは、体調がよくなってから接種するか、注射型ワクチンを検討することがあります。軽い鼻水程度であれば接種できる場合もありますが、最終的には診察時の状態を見て判断します。
Q2.フルミスト接種後にインフルエンザ迅速検査が陽性になることはありますか?
フルミストは弱毒化した生ワクチンです。接種後しばらくの間、鼻の中にワクチン由来のウイルスが存在することがあります。そのため、接種後数日以内にインフルエンザ迅速検査を行うと、ワクチン由来のウイルスが検出される可能性があります。発熱や症状がある場合は、接種歴を医師に伝えるようにしましょう。
Q3.フルミスト接種後、妊婦さんと接触してもよいですか?
フルミストを接種した人が、妊婦さんと日常生活で接触することは、通常は避ける必要はないと考えられています。ただし、妊婦さん本人はフルミストを接種できません。妊娠中にインフルエンザワクチンを希望する場合は、一般的には注射型の不活化インフルエンザワクチンが選択されます。
Q4.フルミストを接種すればインフルエンザにかかりませんか?
フルミストを接種しても、インフルエンザに絶対かからないわけではありません。しかし、発症を予防したり、かかった場合の重症化を防いだりする効果が期待されます。ワクチンに加えて、手洗い、換気、十分な睡眠、体調不良時の休養なども大切です。
Q5.注射型ワクチンとフルミストはどちらがよいですか?
注射が苦手で、対象年齢に入っており、持病や禁忌がないお子さんでは、フルミストは有力な選択肢になります。一方で、妊婦さん、免疫が低下している方、重い喘息がある方、19歳以上の方などは、フルミストではなく注射型ワクチンを検討します。どちらが適しているかは、年齢や体調によって異なります。
9.まとめ:フルミストは「注射が苦手な子ども」にとって有力な選択肢
フルミストは、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。注射が不要で痛みが少ないため、注射を怖がるお子さんにとって接種しやすい予防法です。また、鼻の粘膜に作用するという特徴があり、インフルエンザウイルスの侵入経路である鼻やのどでの免疫反応も期待されています。一方で、フルミストは生ワクチンであるため、接種できる人が限られます。特に、2歳未満、19歳以上、妊娠中の方、免疫が低下している方、重い喘息がある方などは注意が必要です。インフルエンザ予防は、自分自身だけでなく、家族や周囲の人を守ることにもつながります。「フルミストがよいのか」「通常の注射型ワクチンがよいのか」で迷う場合は、年齢、持病、生活環境を踏まえて、医療機関で相談しましょう。
参考文献・出典

