鉄欠乏性貧血とは?症状・原因・治療法と鉄分の多い食べ物20選
「健康診断で貧血を指摘された」「最近疲れやすい」「めまいや立ちくらみが増えた」――このような症状の原因として多いのが、鉄欠乏性貧血です。
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで、酸素を運ぶヘモグロビンが十分に作れなくなる状態です。特に、月経のある女性、妊娠・授乳中の方、成長期の子ども、偏食やダイエット中の方に多くみられます。
この記事では、鉄欠乏性貧血の症状・原因・検査・治療法・鉄分の多い食べ物20選について、患者さん向けにわかりやすく解説します。
鉄欠乏性貧血とは?原因と仕組みをわかりやすく解説
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足することで赤血球の中にあるヘモグロビンが十分に作れなくなり、全身に酸素を運ぶ力が低下する病気です。
ヘモグロビンは、血液の中で酸素を運ぶ重要な成分です。そして、このヘモグロビンを作るためには鉄が必要です。鉄が不足すると、赤血球が小さくなったり、ヘモグロビンの量が減ったりして、体が酸素不足のような状態になります。
そのため、鉄欠乏性貧血では、疲れやすい、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れなどの症状が出やすくなります。
鉄欠乏性貧血は、貧血の中でもよくみられるタイプです。軽い場合は自覚症状がないこともありますが、進行すると日常生活に支障が出ることもあります。適切な検査と治療により改善が期待できるため、早めに原因を調べることが大切です。
鉄欠乏性貧血の主な症状
鉄欠乏性貧血の症状は、ゆっくり進行すると気づきにくいことがあります。「いつも疲れているだけ」「年齢のせい」と思っていた症状が、実は貧血によるものだったということも少なくありません。
よくみられる症状
- 疲れやすい
- 体がだるい
- めまい・立ちくらみ
- 動悸
- 息切れ
- 頭痛
- 顔色が悪い
- 集中力の低下
- 階段や坂道で息が上がりやすい
鉄欠乏に特徴的な症状
鉄分不足が続くと、貧血症状だけでなく、皮膚・粘膜・爪などにも変化が出ることがあります。
- 口角炎:口の端が切れやすい
- 舌炎:舌が赤くツルツルする、しみる
- 爪が割れやすい
- スプーン状爪:爪が反り返る
- 氷を無性に食べたくなる
- 髪が抜けやすい
- 肌が荒れやすい
特に、疲れやすい、めまい、動悸、息切れ、氷を食べたくなるといった症状が続く場合は、鉄欠乏性貧血の可能性があります。自己判断で様子を見続けず、血液検査で確認しましょう。
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏性貧血の原因は、大きく分けると鉄の摂取不足、鉄の必要量の増加、出血による鉄の喪失、鉄の吸収低下です。
1. 鉄分の摂取不足
偏食、極端なダイエット、食事量の低下などにより、食事から摂る鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血の原因になります。
特に、肉や魚をあまり食べない方、食事制限をしている方、朝食を抜くことが多い方は注意が必要です。
2. 月経による出血
月経のある女性では、毎月の出血により鉄を失います。特に、月経量が多い方、月経期間が長い方、子宮筋腫や子宮内膜症がある方では、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
「昔から月経量が多いから普通」と思っていても、実際には治療が必要な月経過多が隠れていることがあります。
3. 妊娠・授乳・成長期による鉄需要の増加
妊娠中は、胎児の成長や母体の血液量増加により、より多くの鉄が必要になります。また、授乳中も鉄の需要が高まります。
成長期の子どもや思春期の若者も、体の発育に伴って鉄の必要量が増えるため、鉄欠乏性貧血を起こしやすい時期です。
4. 消化管からの出血
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患などにより、消化管から少しずつ出血している場合もあります。
特に、男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血を認めた場合は、月経による出血では説明できないため、胃カメラや大腸カメラなどで消化管出血の原因を調べることが重要です。
5. 鉄の吸収低下
胃の手術後、胃酸を抑える薬の長期使用、慢性的な消化器疾患などにより、鉄の吸収が低下することがあります。
鉄剤を飲んでもなかなか改善しない場合は、吸収の問題や他の病気が隠れていないか確認が必要です。
鉄欠乏性貧血になりやすい人
| なりやすい人 | 理由 |
|---|---|
| 月経のある女性 | 毎月の出血で鉄を失いやすいため |
| 月経量が多い方 | 出血量が多く、鉄不足になりやすいため |
| 妊娠・授乳中の女性 | 胎児や母乳への鉄供給が必要になるため |
| 成長期の子ども・思春期の若者 | 体の成長により鉄の必要量が増えるため |
| 偏食・ダイエット中の方 | 食事からの鉄分摂取が不足しやすいため |
| 胃や腸の病気がある方 | 慢性的な出血や吸収低下が起こることがあるため |
| 胃を切除した方 | 鉄の吸収が低下することがあるため |
| 高齢者 | 食事量低下や消化管出血が隠れていることがあるため |
これらに当てはまる方は、症状が軽くても定期的な血液検査を受けることが大切です。
鉄欠乏性貧血の検査・診断
鉄欠乏性貧血は、主に血液検査で診断します。単に「ヘモグロビンが低い」だけでなく、鉄が本当に不足しているか、体内の貯蔵鉄が減っているかを確認します。
主な血液検査の項目
| 検査項目 | 鉄欠乏性貧血での変化 | 意味 |
|---|---|---|
| ヘモグロビン(Hb) | 低下 | 貧血の有無を確認する |
| 赤血球数(RBC) | 低下することがある | 赤血球の数を確認する |
| MCV | 低下しやすい | 赤血球の大きさを示す。鉄欠乏では小さくなりやすい |
| 血清鉄(Fe) | 低下 | 血液中の鉄の量を示す |
| フェリチン | 低下 | 体内に蓄えられている鉄の量を示す |
| TIBC・UIBC | 上昇することがある | 鉄を運ぶ力を反映する |
特にフェリチンは、体内に蓄えられている鉄の量をみる重要な検査です。ヘモグロビンがまだ大きく低下していなくても、フェリチンが低い場合は「隠れ鉄欠乏」の状態であることがあります。
また、鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄を補うだけでなく、なぜ鉄が不足したのかを調べることが大切です。必要に応じて、便潜血検査、胃カメラ、大腸カメラ、婦人科受診などを検討します。
鉄欠乏性貧血の治療法
鉄欠乏性貧血の治療は、主に鉄の補充と原因の治療です。食事だけで改善を目指すことも大切ですが、貧血が進んでいる場合は鉄剤による治療が必要になることがあります。
1. 経口鉄剤
鉄欠乏性貧血の治療では、まず飲み薬の鉄剤を使用することが一般的です。
- 鉄を内服して不足分を補う
- 数週間から数か月かけて改善を目指す
- ヘモグロビンが改善しても、貯蔵鉄を回復させるために継続が必要なことがある
鉄剤の副作用として、吐き気、胃もたれ、便秘、下痢、黒色便などが起こることがあります。副作用がつらい場合は、自己判断で中止せず、内服方法や薬の種類を変更できないか医師に相談しましょう。
2. 静脈内鉄剤
飲み薬の鉄剤で改善しない場合、副作用で内服が難しい場合、重度の貧血がある場合などには、点滴による鉄剤を検討することがあります。
近年は、外来で使用できる注射用鉄剤もあり、患者さんの状態に応じて選択されます。ただし、点滴の鉄剤にも副作用や注意点があるため、医師の判断のもとで行います。
3. 原因の治療
鉄欠乏性貧血では、鉄を補うだけでなく、原因を治療することが重要です。
| 原因 | 対応 |
|---|---|
| 月経過多 | 婦人科での治療、ホルモン治療、子宮筋腫などの評価 |
| 消化管出血 | 胃カメラ・大腸カメラ、潰瘍やポリープの治療 |
| 偏食・ダイエット | 食事内容の見直し、栄養指導 |
| 吸収低下 | 胃腸の病気や薬剤の確認 |
鉄剤で一時的に数値が改善しても、出血などの原因が続いていると再発することがあります。そのため、鉄欠乏性貧血では「鉄を補うこと」と「原因を探すこと」の両方が大切です。
鉄分の多い食べ物20選
鉄欠乏性貧血の予防や再発予防には、毎日の食事も大切です。鉄分は、レバー、赤身肉、魚介類、大豆製品、青菜類、海藻類などに多く含まれます。
以下は、鉄を多く含む食品の例です。食品に含まれる鉄の量は、食品の種類や調理法によって変わります。
| 食品名 | 特徴 |
|---|---|
| 豚レバー | 鉄を多く含む代表的な食品 |
| 鶏レバー | 鉄だけでなくビタミン類も含む |
| 牛赤身肉 | 吸収されやすいヘム鉄を含む |
| かつお | 魚介類の中でも鉄を摂りやすい |
| まぐろ赤身 | ヘム鉄を含む魚 |
| あさり | 鉄を含む貝類 |
| しじみ | 鉄やミネラルを含む |
| 煮干し | 少量でも鉄を摂りやすい |
| 干しえび | 料理に加えやすい鉄分食品 |
| 卵 | 日常的に取り入れやすい食品 |
| 納豆 | 大豆由来の鉄を含む |
| 豆腐 | 毎日の食事に取り入れやすい |
| 高野豆腐 | 鉄やたんぱく質を含む保存食品 |
| きなこ | ヨーグルトや牛乳に加えやすい |
| 小松菜 | 青菜の中でも鉄を摂りやすい |
| ほうれん草 | 鉄を含む野菜として知られる |
| 枝豆 | 鉄とたんぱく質を含む |
| ひじき | 鉄を含む海藻類 |
| ごま | 料理に少量加えやすい |
| オートミール | 朝食に取り入れやすい食品 |
ただし、すでに鉄欠乏性貧血がある場合、食事だけで短期間に改善するのは難しいことがあります。食事はあくまで予防や再発予防として大切であり、貧血がある場合は医療機関で検査と治療を受けましょう。
鉄分を効率よく摂る食事のコツ
鉄には、動物性食品に多いヘム鉄と、植物性食品に多い非ヘム鉄があります。
- ヘム鉄:肉・魚・レバーなどに多く、吸収されやすい
- 非ヘム鉄:野菜・豆類・海藻類などに多く、吸収率はやや低い
非ヘム鉄は、ビタミンCを一緒に摂ることで吸収がよくなります。たとえば、以下のような組み合わせがおすすめです。
- 小松菜のおひたし+みかん
- 納豆+野菜たっぷりの味噌汁
- 赤身肉+ブロッコリー
- あさりの味噌汁+果物
- オートミール+きなこ+果物
一方で、お茶やコーヒーに含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げることがあります。鉄剤を飲む場合や鉄分を意識した食事の直後は、濃いお茶やコーヒーを避けるとよいでしょう。
鉄剤やサプリメントを自己判断で飲んでもよい?
市販の鉄サプリメントを飲むことで、軽い鉄不足の予防に役立つ場合はあります。しかし、貧血の原因を調べずに鉄剤やサプリメントだけで様子を見ることはおすすめできません。
なぜなら、鉄欠乏性貧血の背景に、月経過多、胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなどの病気が隠れていることがあるためです。
また、鉄は多く摂ればよいというものではありません。過剰摂取により、胃腸症状や体への負担が起こることもあります。貧血を指摘された場合は、まず医療機関で血液検査を受け、原因を確認したうえで治療を行いましょう。
受診したほうがよい症状
次のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 健康診断で貧血を指摘された
- 疲れやすさ、めまい、動悸、息切れが続く
- 階段や坂道で息切れしやすい
- 氷をよく食べたくなる
- 月経量が多い、月経期間が長い
- 便が黒い、血便がある
- 体重減少や食欲低下がある
- 鉄剤を飲んでも改善しない
特に、男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血を認めた場合は、消化管からの出血が隠れている可能性があるため、詳しい検査が必要になることがあります。
鉄欠乏性貧血についてよくある質問
Q. 鉄欠乏性貧血は食事だけで治りますか?
軽い鉄不足であれば食事の見直しが役立つこともあります。ただし、すでに貧血がある場合は食事だけで改善するのに時間がかかるため、鉄剤による治療が必要になることがあります。
Q. 鉄剤はどのくらい飲む必要がありますか?
一般的には、ヘモグロビンが改善した後も、体内に蓄えられた鉄を回復させるためにしばらく継続することがあります。内服期間は貧血の程度や原因によって異なるため、医師の指示に従いましょう。
Q. 鉄欠乏性貧血で氷を食べたくなることはありますか?
あります。鉄欠乏では、氷を無性に食べたくなる「氷食症」がみられることがあります。氷をよく食べるようになった場合は、血液検査で鉄不足がないか確認しましょう。
Q. 男性の鉄欠乏性貧血は注意が必要ですか?
男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血がある場合、消化管からの出血が隠れていることがあります。胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなどの確認が必要になることがあります。
Q. 鉄サプリを自己判断で飲んでもよいですか?
軽い予防目的で使われることはありますが、貧血を指摘された場合は原因を調べることが重要です。病気による出血が隠れていることもあるため、まず医療機関で相談しましょう。
まとめ:鉄欠乏性貧血は原因を調べて治療することが大切です
鉄欠乏性貧血は、鉄分が不足することでヘモグロビンが十分に作れなくなり、全身に酸素を運ぶ力が低下する状態です。
主な症状には、疲れやすい、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、頭痛、集中力低下などがあります。また、口角炎、舌炎、爪が割れやすい、氷を食べたくなるといった鉄欠乏に特徴的な症状が出ることもあります。
治療では、鉄剤による鉄の補充が中心になりますが、それだけでは不十分なこともあります。月経過多や消化管出血など、鉄不足の原因を調べることが再発予防につながります。
健康診断で貧血を指摘された方、疲れやすさやめまいが続く方は、自己判断で放置せず、医療機関で相談しましょう。

