男性更年期障害(LOH症候群)とは?疲れ・うつ・性欲低下の原因はテストステロン低下かもしれません
「最近、疲れが抜けない」「やる気が出ない」「気分が落ち込みやすい」「性欲が低下した」――。
40代以降の男性で、このような不調が続いている場合、単なる疲労や年齢のせいだけではなく、男性更年期障害(LOH症候群)が関係していることがあります。
男性更年期障害は、医学的にはLOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性・性腺機能低下症)と呼ばれます。主に男性ホルモンであるテストステロンの低下により、心身のさまざまな症状が現れる状態です。
女性の更年期障害に比べると、男性更年期障害はまだ十分に知られていません。しかし、仕事のパフォーマンス、家庭生活、気分、睡眠、性機能などに影響することがあり、早めに気づいて相談することが大切です。
この記事でわかること
- 男性更年期障害(LOH症候群)とは何か
- 疲れ・うつ・性欲低下などの主な症状
- テストステロンが低下しやすい人の特徴
- 男性更年期障害の検査・診断方法
- 生活習慣改善・漢方・ED治療・テストステロン補充療法
- 何科を受診すればよいか
- 受診した方がよい症状の目安
1. 男性更年期障害(LOH症候群)とは?
男性更年期障害とは、主にテストステロンという男性ホルモンの低下により、身体・心・性機能に不調が出る状態です。テストステロンは、単に「男性らしさ」や性機能だけに関わるホルモンではありません。筋肉量、骨密度、意欲、集中力、睡眠、脂質代謝、血糖コントロールなどにも関係しています。そのため、テストステロンが低下すると、次のような幅広い症状が出ることがあります。
- 疲れやすい
- やる気が出ない
- 気分が落ち込む
- イライラしやすい
- 眠りが浅い
- 筋力や体力が落ちた
- 性欲が低下した
- 勃起力が落ちた
これらの症状は、うつ病、睡眠不足、ストレス、生活習慣病、自律神経の乱れなどとも似ています。そのため、男性更年期障害を疑う場合でも、「ホルモンだけが原因」と決めつけず、全身の状態を確認することが大切です。
2. 男性更年期障害の主な症状|身体・心・性機能に出るサイン
男性更年期障害の症状は、大きく分けて身体症状・精神症状・性機能症状の3つがあります。
身体に出る症状
- 疲れやすい、だるい
- 筋力や体力の低下
- 寝ても疲れが取れない
- ほてり、発汗
- 関節痛や筋肉痛
- 体重増加、お腹まわりの脂肪増加
- 睡眠の質の低下
心に出る症状
- やる気が出ない
- 気分が落ち込む
- 不安感が強い
- イライラしやすい
- 集中力や記憶力の低下
- 仕事のパフォーマンスが落ちたと感じる
性機能に出る症状
- 性欲の低下
- 朝立ちの減少
- 勃起力の低下(ED)
- 性生活への関心低下
特に、性欲低下・朝立ちの減少・EDはテストステロン低下と関連しやすい症状とされています。一方で、疲労感や気分の落ち込みだけでは、ストレス、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患、貧血など他の病気が隠れていることもあります。
ポイント:男性更年期障害は「気の持ちよう」ではありません。ただし、症状が似ている病気も多いため、自己判断せずに医療機関で相談することが大切です。
3. 男性更年期障害になりやすい人の特徴
テストステロンは年齢とともに少しずつ低下する傾向があります。ただし、すべての男性が男性更年期障害になるわけではありません。生活習慣、ストレス、睡眠、持病なども関係します。
| 要因 | 男性更年期障害との関係 |
|---|---|
| 加齢 | 40代以降でテストステロンが低下しやすくなります。 |
| 強いストレス | 仕事・家庭・介護などのストレスがホルモンバランスに影響することがあります。 |
| 睡眠不足 | テストステロンは睡眠と関係しており、睡眠の質が低いと低下しやすくなります。 |
| 肥満 | 内臓脂肪が多いとテストステロン低下や生活習慣病につながりやすくなります。 |
| 運動不足 | 筋肉量や代謝の低下により、さらに疲れやすくなる悪循環につながります。 |
| 糖尿病・高血圧・脂質異常症 | 生活習慣病を持つ男性では、低テストステロンが関連することがあります。 |
| 過度な飲酒・喫煙 | ホルモン分泌や血管機能に悪影響を与えることがあります。 |
特に、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群がある方は、男性更年期障害に似た症状が出やすく、全身の評価が重要です。
4. 男性更年期障害の検査・診断方法
男性更年期障害の診断では、症状だけでなく、血液検査でテストステロン値を確認します。ただし、数値だけで機械的に診断するのではなく、症状・生活背景・持病・薬の影響・血液検査を総合的に判断します。
問診・チェックリスト
診察では、疲労感、気分の落ち込み、睡眠、性欲、ED、仕事や生活への影響などを確認します。医療機関によっては、AMSスコアなどの質問票を使って、身体症状・精神症状・性機能症状を点数化することがあります。ただし、チェックリストだけで男性更年期障害と診断できるわけではありません。うつ病や睡眠障害などでも点数が高くなることがあるため、あくまで症状を整理するための目安です。
血液検査
テストステロンは日内変動があるため、検査は一般的に午前中に行うことが多いです。日本の手引きでは、診断の目安として、以下のような基準が示されています。
- 総テストステロン:250ng/dL以下
- フリーテストステロン:7.5pg/mL以下
ただし、テストステロン値が基準値より少し高くても症状が強い方もいれば、値が低くても症状が目立たない方もいます。そのため、「検査値」と「困っている症状」の両方を見ることが重要です。
他の病気がないかも確認します
男性更年期障害に似た症状を起こす病気は少なくありません。必要に応じて、次のような検査を行います。
- 貧血の検査
- 肝機能・腎機能
- 血糖値・HbA1c
- 脂質検査
- 甲状腺機能
- 睡眠時無呼吸症候群の評価
- うつ病・不安障害の評価
- PSAなど前立腺の評価
大切なこと:「疲れやすい=男性更年期」とは限りません。内科的な病気や睡眠障害が隠れていることもあるため、全身をみる視点が大切です。
5. 男性更年期障害の治療法
男性更年期障害の治療は、症状の程度、テストステロン値、年齢、持病、前立腺の状態、妊娠希望の有無などを考えて決めます。
1)生活習慣の改善
軽症の場合や、テストステロン値が明らかに低くない場合は、まず生活習慣の見直しが大切です。
- 睡眠を整える:睡眠不足は疲労感やホルモン低下につながります。
- 運動を習慣にする:ウォーキングや筋力トレーニングは、体力・気分・性機能の改善に役立つ可能性があります。
- 体重を適正化する:内臓脂肪を減らすことは、ホルモン環境や生活習慣病の改善につながります。
- 飲酒を控える:過度な飲酒は睡眠の質やホルモンバランスに影響します。
- 禁煙する:血管機能やEDの改善にも関係します。
- ストレスを減らす:仕事量、休息、人間関係を見直すことも治療の一部です。
「薬を使うかどうか」だけでなく、生活習慣病や睡眠の問題を一緒に整えることで、症状が改善することがあります。
2)漢方薬・対症療法
症状に応じて、漢方薬や睡眠の治療、気分の落ち込みへの治療を行うことがあります。たとえば、ほてり、不眠、イライラ、疲労感、気分の落ち込みなどに対して、体質や症状に合わせて漢方薬を検討することがあります。ただし、うつ症状が強い場合は、男性更年期障害だけでなく、うつ病としての評価や治療が必要なこともあります。
3)ED治療
勃起力の低下が主な悩みの場合は、PDE5阻害薬などのED治療薬を検討することがあります。EDはテストステロン低下だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化、喫煙、ストレス、睡眠不足などとも関係します。EDは血管の不調のサインとして現れることもあるため、生活習慣病の確認も大切です。
4)テストステロン補充療法(TRT)
症状が強く、テストステロン低下が確認され、適応がある場合には、テストステロン補充療法(TRT)を検討します。日本では、医療機関での筋肉注射が一般的に行われます。海外では外用薬なども使用されていますが、国内での使用可否や保険適用は医療機関によって確認が必要です。
| 治療法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 筋肉注射 | 一定間隔でテストステロン製剤を注射します。 | 定期的な通院と血液検査が必要です。 |
| 外用薬 | 海外や一部の自由診療で使用されることがあります。 | 国内での取り扱いや費用は医療機関により異なります。 |
| hCG療法など | 妊孕性を考慮する場合などに検討されることがあります。 | 専門的な判断が必要です。 |
TRTの注意点
テストステロン補充療法は、適切に行えば症状改善が期待できる一方で、誰にでも行える治療ではありません。治療前には、前立腺の評価、PSA、血液検査、多血症の有無、心不全の有無などを確認します。
- 前立腺がんや男性乳がんがある場合は原則として行えません。
- PSAが高い場合は、前立腺がんの可能性を評価してから慎重に判断します。
- 多血症、前立腺肥大症、うっ血性心不全がある方は注意が必要です。
- 睡眠時無呼吸症候群がある場合、悪化に注意が必要です。
- 将来子どもを希望する方では、精子形成への影響を考えて治療選択を慎重に行います。
注意:テストステロン補充療法は、自己判断で行う治療ではありません。必ず医師の診察・検査・定期的なフォローのもとで行う必要があります。
6. 男性更年期障害は何科に相談すればいい?
男性更年期障害が疑われる場合、相談先としては以下の診療科があります。
| 診療科 | 相談しやすい内容 |
|---|---|
| 泌尿器科 | テストステロン検査、ED、性欲低下、TRTの相談など。 |
| 内科・総合診療科 | 疲労感、生活習慣病、睡眠、ストレス、全身の不調をまとめて相談したい場合。 |
| 心療内科・精神科 | 気分の落ち込み、不安、不眠、仕事に行けないほどのメンタル不調が強い場合。 |
| 男性外来・メンズヘルス外来 | 男性更年期障害や性機能の悩みを専門的に相談したい場合。 |
「疲れ」「気分の落ち込み」「性欲低下」などが混在している場合は、まず内科・総合診療科で全身の評価を受け、必要に応じて泌尿器科や心療内科と連携するのもよい方法です。
7. 受診した方がよい症状の目安
次のような症状が続く場合は、男性更年期障害を含めて、一度医療機関に相談しましょう。
- 疲れやだるさが1か月以上続いている
- 以前より明らかにやる気が出ない
- 気分の落ち込みや不安が続いている
- 眠れない、途中で目が覚める
- 性欲低下やEDが気になる
- 仕事や家庭生活に支障が出ている
- 体重増加、筋力低下、ほてり、発汗が気になる
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症があり、疲労感も強い
また、気分の落ち込みが強く、死にたい気持ちがある場合や、日常生活が送れないほどつらい場合は、男性更年期障害かどうかに関わらず、早めに医療機関へ相談してください。
8. よくある質問
Q. 男性更年期障害は何歳くらいから起こりますか?
40代以降で相談が増えますが、強いストレス、睡眠不足、肥満、生活習慣病などがある場合は、年齢だけでなく症状をもとに評価することが大切です。
Q. 男性更年期障害は自然に治りますか?
睡眠、運動、体重、ストレス、生活習慣病の改善で症状が軽くなることがあります。一方で、症状が強い場合や長く続く場合は、検査と治療を検討した方がよいこともあります。
Q. テストステロン補充療法をすれば必ず良くなりますか?
必ず全員に効果があるわけではありません。症状の原因が睡眠障害、うつ病、甲状腺疾患、貧血、生活習慣病などの場合、TRTだけでは改善しないこともあります。治療前の評価が重要です。
Q. 市販のサプリメントで治りますか?
亜鉛やビタミンDなどの栄養状態は健康維持に大切ですが、サプリメントだけで男性更年期障害が治るとは限りません。症状が強い場合は、まず検査で原因を確認しましょう。
Q. プラセンタ注射は男性更年期障害に効果がありますか?
疲労感や更年期症状に対して自由診療で使われることがありますが、男性更年期障害の中心的な原因であるテストステロン低下そのものを診断・治療するものではありません。症状や目的に合わせて、医師と相談して選択することが大切です。プラセンタ注射については、プラセンタ注射の記事もご参照ください。
9. まとめ|疲れ・うつ・性欲低下を「年のせい」とあきらめないで
男性更年期障害(LOH症候群)は、テストステロン低下が関係して、疲れ、やる気の低下、気分の落ち込み、性欲低下、ED、睡眠障害などを起こすことがあります。一方で、同じような症状は、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患、貧血、糖尿病、高血圧、脂質異常症などでも起こります。大切なのは、「年齢のせい」と決めつけず、原因を確認することです。適切な検査と治療、生活習慣の見直しにより、体調や気分、生活の質が改善する可能性があります。疲れや気分の落ち込み、性欲低下が続いている方は、一度医療機関で相談してみましょう。
当院で相談できること
疲労感、気分の落ち込み、睡眠の悩み、生活習慣病、男性更年期障害が心配な方のご相談を受け付けています。必要に応じて血液検査や専門医への紹介も行います。
「なんとなく不調が続く」「年齢のせいかもしれないけれど気になる」という段階でも、お気軽にご相談ください。

