突然の動悸・息苦しさはパニック発作?パニック障害の症状・原因・対処法を医師が解説

スポンサーリンク
スポンサーリンク
病気について

はじめに|突然の動悸や息苦しさはパニック発作かもしれません

「突然、心臓が激しくドキドキした」「息が吸えず、このまま死んでしまうのではないかと思った」「検査では異常がないのに、同じ症状を繰り返している」

このような症状は、パニック発作によって起こることがあります。パニック発作では、実際には生命を脅かす危険がなくても、体の警報装置が急激に作動し、動悸、息苦しさ、胸の痛み、めまい、発汗、手足のしびれなどが現れます。ただし、心筋梗塞、不整脈、肺塞栓症、気管支喘息、甲状腺機能亢進症などでも、よく似た症状が起こります。特に初めての発作や、これまでとは異なる強い胸痛・呼吸困難がある場合は、最初から「パニック発作だろう」と決めつけないことが重要です。

この記事では、パニック発作とパニック障害の違い、症状、原因、有病率、診断、薬物療法・非薬物療法、発作が起きたときの対処法、救急受診が必要な症状について、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。

先に大切なこと

初めて経験する激しい胸痛や呼吸困難、意識を失う、片側の手足が動かしにくい、唇が紫色になる、症状が長く続く場合は、パニック発作ではなく緊急性の高い病気の可能性があります。迷った場合は救急要請を検討してください。


1.パニック発作とパニック障害の違い

パニック発作とは

パニック発作とは、強い恐怖または不快感が突然高まり、数分以内にピークに達する状態です。動悸や息苦しさなどの身体症状だけでなく、「死んでしまう」「気が狂ってしまう」「自分をコントロールできなくなる」といった強い恐怖を伴います。発作は明らかなきっかけがなく起こることもあれば、電車、人混み、閉鎖された空間、過去に発作を起こした場所など、特定の状況で起こることもあります。パニック発作は、それ自体が一つの病名とは限りません。強いストレスのほか、社交不安症、心的外傷後ストレス障害、特定の恐怖症、うつ病、身体疾患、薬物やカフェインの影響などでも起こることがあります。

パニック障害とは

パニック障害は、現在の診断基準では「パニック症」と呼ばれることもある不安症の一つです。次のような状態がそろったときに診断が検討されます。

  • 予期しないパニック発作を繰り返している
  • 少なくとも1回の発作後、1か月以上にわたって次の発作を強く心配している
  • 「心筋梗塞になるのでは」「倒れるのでは」など、発作の結果を過度に心配している
  • 電車に乗らない、外出しない、一人にならないなど、発作を避けるために行動が変化している
  • 薬物、身体疾患、ほかの精神疾患だけでは説明できない
項目 パニック発作 パニック障害
位置づけ 突然起こる症状・発作 繰り返す発作と予期不安を特徴とする病気
発作の回数 1回だけでも起こり得る 予期しない発作を繰り返す
発作後の不安 必ずしも続かない 1か月以上の予期不安や行動変化がある
生活への影響 一時的な場合もある 外出、通勤、運転などが制限されることがある
治療 原因の確認と状況に応じた対応 認知行動療法、薬物療法などを行う

広場恐怖症との関係

パニック障害の人では、「逃げることが難しい」「発作が起きても助けてもらえない」と感じる場所を避けるようになることがあります。例えば、電車、バス、高速道路、映画館、人混み、行列、エレベーター、一人での外出などです。このような状態を広場恐怖症と呼びます。現在の診断基準では、広場恐怖症はパニック障害とは別の診断として扱われ、両方が併存することもあります。


2.パニック発作の症状

パニック発作では、強い恐怖または不快感が急激に高まり、通常は数分以内にピークに達します。DSM-5-TRでは、その際に以下の13症状のうち4つ以上が現れることを、パニック発作の目安としています。

  1. 動悸、心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 体や手足の震え
  4. 息切れ、息苦しさ
  5. 喉が詰まる、窒息するような感覚
  6. 胸の痛み、胸部不快感
  7. 吐き気、腹部不快感
  8. めまい、ふらつき、気が遠くなる感覚
  9. 寒気または熱感
  10. 手足や口の周りのしびれ、ピリピリ感
  11. 現実ではないように感じる、自分が自分ではない感覚
  12. 自分をコントロールできなくなる、気が狂うことへの恐怖
  13. 死ぬことへの恐怖

症状の数が4つ未満でも、本人にとって非常につらい発作となることがあります。また、すべての人に過呼吸が起こるわけではありません。

発作はどのくらい続く?

多くのパニック発作は数分以内に最も強くなり、その後は徐々に軽くなります。強い症状は10~30分程度で落ち着くことが多いものの、不安感、疲労感、胸部の違和感などがその後もしばらく残ることがあります。「1時間以上ずっと同じ強さで悪化し続ける」「意識が戻らない」「呼吸状態が改善しない」といった場合は、パニック発作以外の病気も考える必要があります。


3.パニック発作・パニック障害の有病率

パニック発作そのものは、パニック障害よりもはるかに多くの人が経験します。25か国、14万人以上を対象とした世界精神保健調査では、生涯のうちにパニック発作を経験する人は約13.2%、パニック障害の生涯有病率は約1.7%と報告されています。つまり、パニック発作を経験しても、そのすべてがパニック障害になるわけではありません。

日本のWorld Mental Health Japan Surveyでは、DSM-IVに基づくパニック障害の有病率は、生涯有病率が約0.8%、過去12か月の有病率が約0.3%でした。診断基準、調査方法、対象年齢によって数値は変わるため、単純な比較には注意が必要です。パニック障害は女性に多く、思春期後半から成人早期に発症することが多いとされています。ただし、男性や中高年、高齢者にも起こります。


4.パニック発作はなぜ起こる?

パニック障害は、性格の弱さや気持ちの持ち方だけで起こる病気ではありません。現在は、遺伝的ななりやすさ、脳の恐怖反応、身体感覚への敏感さ、学習・条件づけ、生活環境やストレスなどが組み合わさって発症すると考えられています。

体の警報装置が誤作動する

人の体には、危険を察知すると心拍数や呼吸数を増やし、筋肉を緊張させる「闘争・逃走反応」が備わっています。パニック発作では、実際には差し迫った危険がないにもかかわらず、この警報反応が急激に作動します。その結果、心拍数の増加を「心臓が止まる」、息苦しさを「窒息する」、めまいを「意識を失う」と解釈し、さらに恐怖が高まる悪循環が生じます。

身体感覚への過敏さ

心拍、呼吸、ふらつき、胃の動きなど、体の内部の変化を強く感じやすい人では、わずかな変化を危険の兆候として受け取ることがあります。これを内受容感覚への過敏さといいます。

遺伝的要因

パニック障害には家族内で起こりやすい傾向があります。ただし、特定の一つの遺伝子で決まる病気ではなく、複数の遺伝的要因と環境要因が影響すると考えられています。

ストレスや生活環境

次のような出来事が、発症や症状悪化のきっかけになることがあります。

  • 仕事、受験、育児、介護などによる慢性的なストレス
  • 睡眠不足や過労
  • 病気、事故、けが、身近な人との死別
  • 転職、引っ越し、結婚、出産などの環境変化
  • 過去の強い恐怖体験や心的外傷

ただし、明らかなストレスがない状態で発症する人もいます。

カフェイン・ニコチン・アルコールなど

カフェイン、ニコチン、一部の刺激薬は、動悸、震え、発汗、不眠を引き起こし、パニック症状を悪化させることがあります。エナジードリンクやカフェインを多く含むサプリメントにも注意が必要です。アルコールは一時的に不安を軽く感じさせることがありますが、酔いがさめる過程や離脱時に不安や動悸が強くなることがあります。不安を抑える目的で飲酒量が増えている場合は、医療機関に相談しましょう。

「完璧主義だから発症する」とは限らない

几帳面、責任感が強い、内向的といった性格だけで、パニック障害になるかどうかを判断することはできません。「本人が考えすぎるから」「気が弱いから」と責めることは、症状の改善にはつながりません。


5.パニック発作と似た症状を起こす病気

パニック発作の診断では、まず緊急性のある身体疾患や、治療可能な別の原因がないかを確認します。

分野 鑑別が必要な病気・状態
心臓・血管 不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、肺塞栓症
呼吸器 気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、気胸、肺炎
内分泌・代謝 甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、電解質異常
血液 貧血、出血
神経・耳鼻科 てんかん、前庭性片頭痛、良性発作性頭位めまい症
薬剤・嗜好品 カフェイン、覚醒作用のある薬、甲状腺ホルモン、気管支拡張薬、薬物やアルコールの離脱
精神疾患 社交不安症、PTSD、特定の恐怖症、全般不安症、うつ病、双極症

必要な検査は、年齢、既往歴、症状、診察所見によって異なります。すべての人に同じ検査を行うわけではありません。

診察で確認する内容

  • 発作が始まった時期、頻度、持続時間
  • 発作が起きた場所や状況
  • 突然始まったか、徐々に強くなったか
  • 胸痛、失神、発熱、喘鳴などの有無
  • 発作後の予期不安や回避行動
  • 服用薬、サプリメント、カフェイン、飲酒、喫煙
  • うつ症状、躁症状、自殺を考える気持ちの有無

行われることがある検査

  • 血圧、脈拍、酸素飽和度、身体診察
  • 心電図
  • 血算、血糖、電解質、甲状腺機能などの血液検査
  • 必要に応じて胸部画像検査、ホルター心電図など

パニック障害重症度評価尺度(PDSS)などの質問票が、症状の重さや治療効果の確認に使用されることもあります。ただし、質問票だけで診断することはできません。


6.パニック障害の診断基準

パニック障害の診断では、主に次の点を確認します。

  1. 予期しないパニック発作を繰り返している
  2. 少なくとも1回の発作後、次のいずれかが1か月以上続いている
    • 次の発作が起こることへの持続的な心配
    • 倒れる、死ぬ、気が狂うなど、発作の結果への心配
    • 外出を避ける、運動を控えるなどの不適応な行動変化
  3. 薬物、医薬品、身体疾患の影響では説明できない
  4. ほかの精神疾患に伴う発作だけでは説明できない

例えば、人前で話す場面だけで発作が起こる場合は社交不安症、過去の事故を思い出したときだけ起こる場合はPTSDなど、別の病気に伴うパニック発作の可能性があります。


7.すぐに救急受診・救急要請を考える症状

過去にパニック発作と診断されていても、すべての胸痛や息苦しさがパニック発作とは限りません。次の場合は、救急受診を検討してください。

  • 初めて経験する激しい胸痛や呼吸困難
  • 締め付けられる胸痛が続く、顎・背中・腕に広がる
  • 冷や汗、強い吐き気を伴う胸痛
  • 意識を失った、けいれんした
  • 片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、激しい頭痛
  • 唇が紫色になる、酸素飽和度が低い
  • 安静にしても呼吸困難が改善しない
  • 血痰、片脚の急な腫れや痛みがある
  • 妊娠中または産後に、急な胸痛や呼吸困難がある
  • 薬物の過量摂取や離脱が疑われる
  • 死にたい、自分を傷つけたいという気持ちがある

心臓病や肺疾患のリスクがある人、中高年になって初めて発症した人、以前とは症状の性質が変わった人も、身体疾患の評価を受けることが大切です。


8.パニック障害の治療

パニック障害の主な治療は、病気についての正しい理解、認知行動療法、薬物療法です。症状の重さ、広場恐怖症の有無、本人の希望、通院のしやすさ、副作用などを考慮して治療を選びます。

8-1.心理教育

最初に、発作が起こる仕組みや治療の見通しを理解することが重要です。

  • 発作の症状は非常につらいが、恐怖反応によって説明できる
  • パニック発作と身体疾患を適切に見分ける必要がある
  • 発作への恐怖と回避行動が、症状を長引かせることがある
  • 適切な治療によって改善が期待できる

「発作を絶対に起こさないこと」だけを目標にすると、わずかな身体変化にも敏感になりやすくなります。治療では、発作が起きても対処できるという感覚を身につけ、避けていた生活を少しずつ取り戻すことを目指します。

8-2.認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、パニック障害に対する第一選択の心理療法です。一般的には、次のような内容を組み合わせます。

認知再構成

「動悸がしたら心臓が止まる」「めまいがしたら必ず倒れる」といった自動的な考えを確認し、実際の危険性をより現実的に評価できるようにします。

身体感覚への曝露

専門家の指導のもとで、心拍数の増加、軽い息切れ、めまいなど、恐れている身体感覚を安全に体験します。身体感覚そのものが危険ではないことを学ぶ方法で、内受容感覚曝露と呼ばれます。

状況への段階的曝露

電車、買い物、一人での外出など、避けている状況に難易度の低いものから段階的に取り組みます。無理に一気に克服するのではなく、治療計画に沿って繰り返すことが大切です。

呼吸や注意の向け方の練習

過度に速い呼吸を整える方法や、身体症状を常に監視する状態から注意を切り替える方法を練習します。

対面式のCBTだけでなく、治療者の支援を受けながら行うオンラインCBTやガイド付きセルフヘルプも選択肢になります。

うつ病の認知行動療法(CBT)とは?効果・やり方・薬だけに頼らない治療法を医師が解説
うつ病の治療で使われる認知行動療法(CBT)とは?考え方のクセに気づき、気分や行動を整える方法、効果、薬との併用、自宅でできるセルフケアを医師がわかりやすく解説します。

8-3.薬物療法

SSRI・SNRI

薬物療法では、SSRIやSNRIと呼ばれる抗うつ薬が第一選択です。抗うつ薬という名称ですが、パニック障害や不安症にも効果があります。日本でパニック障害に対する保険適用を持つSSRIには、主にセルトラリン、パロキセチンがあります。使用できる薬や保険適用は国によって異なります。パニック障害の人は、薬を開始した直後の吐き気、落ち着かなさ、不安感などに敏感なことがあります。そのため、一般的には少ない量から開始し、状態を確認しながら徐々に調整します。効果は服用直後ではなく、数週間かけて現れます。十分に改善した後も、再発を防ぐために一定期間治療を継続します。治療期間は症状、再発歴、併存疾患によって異なりますが、改善後も少なくとも6か月程度以上の継続が検討されます。SSRI・SNRIを突然中止すると、めまい、吐き気、不安、しびれ感、不眠などの中止症状が起こることがあります。自己判断で中止せず、医師と相談しながら段階的に減量します。

薬の種類 位置づけ 主な注意点
SSRI 薬物療法の第一選択 開始初期の吐き気、不安増強、性機能への影響、中止症状など
SNRI 国際的には第一選択の一つ 吐き気、血圧上昇、発汗、中止症状など。国内適応を確認する
三環系抗うつ薬 SSRIなどで十分な効果が得られない場合の選択肢 口渇、便秘、眠気、起立性低血圧、心電図への影響など
ベンゾジアゼピン系薬 例外的に短期間使用されることがある 眠気、ふらつき、転倒、依存、耐性、離脱症状

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

ベンゾジアゼピン系薬は比較的速く不安を和らげますが、長期使用では依存、耐性、眠気、認知機能への影響、転倒、離脱症状などが問題になります。パニック障害の日常的な長期治療としては推奨されず、使用する場合も、症状、治療歴、ほかの薬との関係を考慮して慎重に判断します。連日服用している薬を突然中止すると、強い不安、不眠、震え、けいれんなどが起こることがあるため、自己判断で中止してはいけません。

β遮断薬は標準治療ではない

プロプラノロールなどのβ遮断薬は、動悸や震えを抑える目的で使用されることがあります。しかし、パニック障害そのものに対する有効性を支持する根拠は十分ではなく、標準的な第一選択治療ではありません。気管支喘息、低血圧、徐脈などがある人には適さない場合もあります。

8-4.薬とCBTはどちらがよい?

CBTと薬物療法は、いずれも有効性が示されている治療です。本人の希望、症状の重さ、治療を受けられる環境、副作用、過去の治療反応を考慮して選びます。症状が強い場合、広場恐怖症を伴う場合、一方の治療だけで十分な効果が得られない場合には、CBTと薬物療法を組み合わせることがあります。


9.日常生活でできる非薬物的な対策

生活習慣の改善だけでパニック障害を治療できるとは限りませんが、発作を起こしやすくする要因を減らすことは役立ちます。

  • 起床・就寝時刻を整え、睡眠不足を避ける
  • 食事を極端に抜かず、低血糖を防ぐ
  • コーヒー、エナジードリンクなどのカフェインを減らす
  • 喫煙やニコチン製品の使用を見直す
  • 不安を抑える目的での飲酒を避ける
  • 無理のない範囲で定期的に体を動かす
  • 過労が続く場合は休養や仕事量を調整する
  • 発作の状況、睡眠、カフェイン摂取などを記録する

一方で、「心拍数が上がるのが怖いから運動しない」「発作が怖いから一人で外出しない」といった回避が続くと、恐怖が強化されることがあります。運動や外出の再開は、必要に応じて医師や治療者と計画を立てて段階的に行いましょう。


10.パニック発作が起きたときの対処法

1.まず安全を確保する

運転中であれば、安全な場所に停車します。駅のホーム、階段、道路上など危険な場所にいる場合は、転倒や事故を避けられる場所へ移動しましょう。

2.初めての症状はパニックと決めつけない

過去に医師からパニック発作と診断され、今回も同じ症状である場合には、発作への対処を始めます。ただし、初めての強い胸痛や呼吸困難、これまでとは違う症状の場合は、救急疾患を除外する必要があります。

3.大きく吸い込まず、ゆっくり吐く

息苦しいと、何度も大きく息を吸いたくなります。しかし、速く深い呼吸を繰り返すと過換気が強まり、めまいやしびれが悪化することがあります。肩の力を抜き、鼻から無理なく吸い、口をすぼめてゆっくり長めに吐きます。例えば「3秒で吸って、6秒ほどかけて吐く」など、吐く時間をやや長くする方法があります。秒数にこだわりすぎず、呼吸を無理に止めないことが大切です。

4.紙袋を使った呼吸は行わない

以前は紙袋の中で呼吸する方法が紹介されることがありましたが、現在は一般的に勧められません。心臓病、肺疾患、肺塞栓症、喘息などによる呼吸困難だった場合、酸素不足を悪化させる可能性があります。

5.足の裏や周囲の感覚に注意を向ける

両足を床につけ、椅子や床に体が支えられている感覚を確認します。周囲に見えるもの、聞こえる音、触れている感覚などに注意を向けるグラウンディングも役立つことがあります。例えば、次のように数えます。

  • 見えるものを5つ
  • 触れられるものを4つ
  • 聞こえる音を3つ
  • 感じるにおいを2つ
  • 味または自分を落ち着かせる言葉を1つ

6.発作の波が下がるのを待つ

「すぐに完全に消さなければ」と焦るほど、体への注意が強くなることがあります。「つらいが、発作の波は徐々に下がる」「今は安全な場所にいる」と確認します。

7.周囲の人は短く落ち着いて声をかける

付き添う人は、「落ち着いて」と何度も急かすよりも、「そばにいます」「安全な場所に移動しました」「ゆっくり息を吐きましょう」と、短く穏やかに伝えます。大勢で取り囲んだり、本人の同意なく体を強く押さえたりしないようにします。

8.処方されている薬だけを指示どおり使用する

発作時の頓服薬が処方されている場合は、医師から指示された方法で使用します。家族の薬を借りたり、自己判断で追加服用したり、アルコールと一緒に飲んだりしてはいけません。


11.パニック障害は治る?経過と再発予防

パニック障害は、適切な治療によって症状の軽減や生活機能の回復が期待できる病気です。ただし、症状が良くなったり悪くなったりしながら経過することもあります。再発予防では、単に発作回数を減らすだけでなく、次の点が重要です。

  • 予期不安や回避行動を減らす
  • 電車、外出、運転など必要な行動を段階的に取り戻す
  • うつ病、広場恐怖症、アルコール問題などを同時に治療する
  • 薬を自己判断で中止しない
  • 再発の兆候と対処法をあらかじめ決めておく

発作を恐れて生活範囲が狭くなっている場合は、早めに治療を始めることが大切です。


12.何科を受診すればよい?

初めて強い動悸、胸痛、呼吸困難が起こった場合は、まず内科、循環器内科、救急外来などで身体疾患の有無を確認します。検査で重大な身体疾患が否定され、発作を繰り返す、予期不安が強い、電車や外出を避けている場合は、次の診療科が相談先になります。

  • かかりつけ医・総合診療科
  • 心療内科
  • 精神科

心理療法を受ける場合は、パニック障害の認知行動療法に対応している医療機関や心理職がいるかを確認するとよいでしょう。


13.パニック発作・パニック障害に関するよくある質問

パニック発作で死ぬことはありますか?

適切に診断されたパニック発作そのものは、通常は生命を直接脅かすものではありません。しかし、心筋梗塞や肺塞栓症などでも似た症状が起こるため、初回の発作や症状が変化した場合は医療機関での評価が必要です。

心筋梗塞とパニック発作は自分で見分けられますか?

症状だけで完全に見分けることは困難です。胸の圧迫感、冷や汗、吐き気、息苦しさは、どちらでも起こることがあります。持続する胸痛、運動時の胸痛、失神、心血管リスクがある場合は、救急受診を優先してください。

パニック発作は気の持ちようですか?

いいえ。恐怖に関係する脳機能、自律神経反応、身体感覚への敏感さなどが関与する医学的な状態です。本人が意図的に症状を起こしているわけではありません。

薬を飲めばすぐに治りますか?

SSRIなどの効果が現れるまでには通常ある程度の時間がかかります。また、発作だけでなく予期不安や回避行動を改善するためには、CBTなどを組み合わせることが有用です。

カフェインは完全に禁止ですか?

すべての人が完全に禁止する必要はありませんが、カフェインで動悸や不安が強くなる場合は、摂取量を減らします。急に大量のカフェインをやめると頭痛などが起こることがあるため、徐々に減らす方法もあります。

発作が怖いので外出しないほうがよいですか?

危険な状態や身体疾患が疑われるときは休む必要があります。一方、パニック障害による回避を長く続けると、外出への恐怖が強くなる場合があります。医師や治療者と相談し、安全を確認したうえで段階的に行動範囲を戻すことが大切です。


14.まとめ

  • パニック発作は、強い恐怖や不快感が突然高まり、数分以内にピークに達する発作です
  • パニック発作を1回経験しただけでは、パニック障害とは限りません
  • パニック障害では、予期しない発作を繰り返し、1か月以上の予期不安や回避行動がみられます
  • 診断では、不整脈、心筋梗塞、肺塞栓症、甲状腺疾患などの除外が重要です
  • 治療の中心は認知行動療法とSSRI・SNRIです
  • ベンゾジアゼピン系薬は、依存や離脱症状のため長期使用に注意が必要です
  • 発作時は大きく息を吸い続けず、ゆっくり長めに吐きます
  • 紙袋を使った呼吸は行わないでください
  • 初めての強い胸痛や呼吸困難は、パニック発作と決めつけず受診しましょう

パニック障害は、本人の弱さや気の持ちようによるものではありません。発作への恐怖から生活範囲が狭くなる前に、かかりつけ医、心療内科、精神科などへ相談することをおすすめします。


参考文献

  1. American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5-TR)
  2. National Institute for Health and Care Excellence:Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults(CG113)
  3. NICE:Recommendations for panic disorder
  4. 国立精神・神経医療研究センター:認知行動療法(CBT)とは

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。胸痛、呼吸困難、意識障害などがある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

この記事について

この記事は、公的機関・診療ガイドライン・医学論文などを参考に作成しています。

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療を代替するものではありません。 気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆者:小林 知貴
所属:いしうちファミリークリニック 院長
資格:医学博士/家庭医療専門医/総合診療専門医/総合内科専門医

病気について
スポンサーリンク
いしうちファミリークリニック院長をフォローする
タイトルとURLをコピーしました