ギラン・バレー症候群とは?初期症状・原因・治療・後遺症を医師が解説

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病気について

「風邪が治った後から、両足に力が入りにくい」
「手足のしびれが広がり、階段を上れなくなった」

このような症状が数時間から数日のうちに進行する場合、ギラン・バレー症候群の可能性があります。ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は、免疫の異常によって末梢神経が障害され、手足の筋力低下やしびれ、顔面麻痺、呼吸障害などを引き起こす病気です。症状が急速に進行することがあるため、早期の受診と全身状態の観察が重要です。

この記事では、ギラン・バレー症候群の初期症状、病態、原因、検査・診断、治療法、後遺症、救急受診が必要な症状についてわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 風邪や下痢などの感染症から数日~4週間ほど後に発症することが多い
  • 両足の脱力、歩きにくさ、手足のしびれなどが急速に進行する
  • 重症になると飲み込みや呼吸が難しくなる
  • 治療の中心は免疫グロブリン療法または血漿交換療法
  • ステロイド単独療法は、一般的なギラン・バレー症候群には有効ではない
  • 多くの人は回復するが、疲労、筋力低下、しびれ、痛みなどが残ることがある

1.ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群は、身体を守るはずの免疫が誤って末梢神経や神経根を攻撃してしまう急性の自己免疫性神経疾患です。末梢神経とは、脳や脊髄から手足、顔、呼吸筋、内臓などへ信号を伝える神経です。ギラン・バレー症候群では、この神経の表面を覆う「髄鞘」や、神経の本体である「軸索」が障害されます。その結果、脳から筋肉へ命令が伝わりにくくなり、手足の筋力低下や麻痺が起こります。感覚神経が障害されると、しびれ、ピリピリ感、痛みなども生じます。年間発症率は、おおむね人口10万人あたり1~2人前後とされる比較的まれな病気です。子どもから高齢者まで発症しますが、男性や高齢者でやや多くなる傾向があります。通常は一度だけ発症する「単相性」の経過をたどり、多くは発症から4週間以内に症状のピークを迎え、その後は安定期を経て徐々に回復します。

2.ギラン・バレー症候群の病態

感染症に対する免疫が神経を攻撃する

ギラン・バレー症候群では、感染症を排除するためにつくられた抗体が、誤って末梢神経の成分にも反応すると考えられています。一部の細菌やウイルスの表面には、末梢神経に存在する「ガングリオシド」と呼ばれる糖脂質と似た構造があります。そのため、病原体を攻撃する抗体が神経にも結合し、補体などの免疫反応を介して神経を傷つけることがあります。この仕組みは分子相同性(分子擬態)と呼ばれます。特にカンピロバクター腸炎後のギラン・バレー症候群では、この機序が詳しく研究されています。

脱髄型と軸索型

障害される部位によって、ギラン・バレー症候群は主に次のタイプに分類されます。

病型 主な障害部位・特徴
AIDP 急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー。神経を覆う髄鞘が主に障害される
AMAN 急性運動性軸索型ニューロパチー。運動神経の軸索が主に障害され、感覚障害は目立ちにくい
AMSAN 急性運動感覚性軸索型ニューロパチー。運動神経と感覚神経の軸索が障害される
フィッシャー症候群 眼球運動障害、運動失調、腱反射低下を特徴とする関連疾患

病型によって症状や回復までの時間が異なることがあります。ただし、病型だけで予後が決まるわけではなく、重症度や呼吸障害の有無、年齢などを含めて総合的に判断します。

3.ギラン・バレー症候群の原因・きっかけ

ギラン・バレー症候群そのものの原因を一つに特定できないこともありますが、多くの患者さんでは、発症前4週間以内に感染症などの先行イベントがみられます。国際的な観察研究では、およそ4人に3人で発症前に何らかの先行イベントが確認され、上気道感染や胃腸炎が多いと報告されています。

関連が知られている感染症

  • カンピロバクター腸炎:加熱不十分な鶏肉などによる食中毒。下痢や腹痛の後に発症することがある
  • サイトメガロウイルス
  • Epstein-Barrウイルス
  • 肺炎マイコプラズマ
  • インフルエンザ
  • E型肝炎ウイルス
  • 新型コロナウイルス感染症
  • ジカウイルス感染症:流行地域で関連が報告されている

感染症が治った後に神経症状が始まることが多いため、「風邪や下痢は治ったから関係ない」とは限りません。

ワクチン接種との関係

ワクチン接種後にギラン・バレー症候群を発症した例は報告されていますが、多くのワクチンでは明確な因果関係は証明されていません。季節性インフルエンザワクチンでは、リスク増加が確認されたシーズンでも、追加発症は100万回接種あたり1~2人程度とされています。一方、インフルエンザ感染そのものに伴うギラン・バレー症候群のリスクは、ワクチン接種後より高いと考えられています。過去の一部の新型コロナウイルス・アデノウイルスベクターワクチンや、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンでは、わずかなリスク増加が報告されています。ただし、接種による利益とリスクは、年齢や基礎疾患、感染症の流行状況によって異なります。以前、ワクチン接種から6週間以内にギラン・バレー症候群を発症したことがある人は、次回の接種について主治医と相談してください。過去にギラン・バレー症候群を発症したという理由だけで、すべてのワクチンが一律に接種できなくなるわけではありません。

感染症以外の先行イベント

まれですが、大きな手術、外傷、免疫チェックポイント阻害薬などの使用後に発症することもあります。特に免疫チェックポイント阻害薬による末梢神経障害は、通常のギラン・バレー症候群とは治療方針が異なる場合があります。

4.ギラン・バレー症候群の初期症状

典型的には、足先のしびれや両足の力の入りにくさから始まり、数時間から数日かけて症状が上半身へ広がります。ただし、すべての患者さんが「足から上へ進む」とは限りません。腕や顔の症状が目立つタイプや、歩行時のふらつき、眼球運動障害が中心となるタイプもあります。

症状 具体的な訴え
筋力低下 足に力が入らない、立ち上がれない、階段を上れない、物を持ちにくい
歩行障害 ふらつく、転びやすい、足が前に出にくい
しびれ・異常感覚 手足がピリピリする、ジンジンする、触った感覚が鈍い
腱反射の低下 診察で膝やアキレス腱の反射が弱くなる。ただし発症初期には正常なこともある
痛み 腰痛、背中の痛み、脚の痛み、神経痛。筋力低下より先に痛みが出ることもある
顔面神経麻痺 口から水がこぼれる、目を閉じにくい、表情をつくりにくい
球麻痺 飲み込みにくい、むせる、ろれつが回らない、声が弱くなる
眼球運動障害 物が二重に見える、目を動かしにくい
呼吸筋障害 息が浅い、横になると苦しい、咳が弱い、痰を出せない
自律神経障害 血圧の大きな変動、頻脈・徐脈、不整脈、発汗異常、便秘、排尿障害

日本の全国調査では、人工呼吸管理が必要となった患者さんは約13%と報告されています。国際的なデータでは、人工呼吸器を必要とする割合は16~17%程度です。呼吸状態が悪化していても、初めは強い息苦しさを自覚しない場合があります。そのため、入院後は肺活量や咳の強さ、飲み込みの状態などを繰り返し確認します。

5.症状はどのように進行する?

ギラン・バレー症候群は、一般的に次のような経過をたどります。

  1. 進行期:数時間~数週間かけて症状が悪化する
  2. 極期・安定期:症状が最も強くなり、しばらく変化しない
  3. 回復期:神経機能が少しずつ回復する

発症から7日以内に約3分の1、14日以内に約7割、21日以内に8割以上が症状のピークに達したという報告があります。ただし、診断上は発症後4週間以内に最重症となることが典型的な経過です。4週間を超えて症状が進行し続ける場合や、治療後も何度も悪化する場合には、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)など、別の病気を検討します。

6.受診の目安

当日中に医療機関を受診したい症状

  • 風邪や下痢の後から、両足に力が入りにくくなった
  • 手足のしびれと筋力低下が数時間~数日で広がっている
  • 階段を上れない、椅子から立ち上がれない
  • 歩くとふらつく、何度も転びそうになる
  • 両側の顔が動かしにくい
  • 物が二重に見え、歩行も不安定になった

進行する筋力低下がある場合は、通常の外来予約日まで待たず、当日中に医療機関へ相談してください。ギラン・バレー症候群が疑われる場合には、脳神経内科のある病院での評価が必要です。

救急車を呼ぶ目安

  • 息苦しい、呼吸が浅い、会話が続かない
  • 唾液や水を飲み込めない、むせ込みが強い
  • 急速に手足が動かなくなっている
  • 立てない、歩けない
  • 咳ができず、痰を出せない
  • 動悸、失神、著しい血圧変動がある
  • 尿が出せない

これらは呼吸筋障害、嚥下障害、自律神経障害などを示している可能性があります。自家用車で無理に移動せず、救急要請を検討してください。

7.ギラン・バレー症候群の検査と診断

ギラン・バレー症候群は、一つの検査だけで診断する病気ではありません。症状の始まり方、進行速度、神経学的診察、髄液検査、神経伝導検査などを組み合わせて診断します。

問診と神経学的診察

次のような点を確認します。

  • 筋力低下が急速に進行しているか
  • 左右両側に症状があるか
  • 腱反射が低下または消失しているか
  • 発症前に風邪、発熱、下痢などがなかったか
  • 顔面麻痺、嚥下障害、眼球運動障害がないか
  • 呼吸筋や自律神経が障害されていないか

典型的には左右対称の筋力低下と腱反射低下がみられますが、発症初期や一部の軸索型では腱反射が保たれることがあります。

神経伝導検査・筋電図検査

末梢神経に電気刺激を与え、信号が伝わる速さや強さを調べます。脱髄型か軸索型かを判断するうえでも重要です。ただし、発症直後には異常がはっきりしないことがあります。初回検査が正常でも、症状から疑われる場合には1~2週間後に再検査することがあります。

髄液検査

腰から針を刺して脳脊髄液を採取します。ギラン・バレー症候群では、細胞数があまり増えていないにもかかわらず蛋白濃度が上昇する蛋白細胞解離が特徴的です。しかし、発症後3日以内では約半数の患者さんで髄液蛋白が正常とされています。発症初期に髄液検査が正常でも、ギラン・バレー症候群を否定することはできません。

血液検査

血液検査では、電解質異常、感染症、炎症、肝機能・腎機能などを確認し、ほかの病気を除外します。抗GM1抗体や抗GQ1b抗体などの抗糖脂質抗体が診断を支持することがあります。フィッシャー症候群では、抗GQ1b抗体が高率に陽性となります。ただし、抗体が陰性でもギラン・バレー症候群は否定できません。

呼吸・嚥下・循環状態の評価

診断と同時に、重症化リスクを評価することが重要です。

  • 肺活量などの呼吸機能
  • 咳の強さ
  • 飲み込みの状態
  • 酸素飽和度
  • 心電図、脈拍、血圧
  • 排尿・排便状態

酸素飽和度が正常でも、呼吸筋の筋力低下が進んでいることがあります。そのため、酸素飽和度だけではなく肺活量などを継続的に評価します。

MRI検査

MRIはギラン・バレー症候群を単独で確定する検査ではありません。脊髄圧迫、脊髄炎、脳幹梗塞など、ほかの病気を除外する目的で行われます。造影MRIで脊髄神経根や馬尾に造影効果がみられることがありますが、ギラン・バレー症候群に特有の所見ではなく、MRIが正常でも否定できません。

8.ギラン・バレー症候群と区別が必要な病気

急速な筋力低下を起こす病気には、ギラン・バレー症候群以外にもさまざまなものがあります。

  • 脊髄圧迫、頸髄症、急性横断性脊髄炎
  • 脳幹梗塞などの脳血管障害
  • 重症筋無力症
  • ボツリヌス中毒
  • 低カリウム血症、周期性四肢麻痺
  • 急性ポルフィリン症
  • ビタミンB1欠乏症
  • 急性発症型CIDP
  • 薬剤や毒物による末梢神経障害

感覚障害の明確な境界がある、排尿障害が最初から強い、発熱が続いている、意識障害がある、左右差が非常に強い場合などは、別の病気も慎重に検討します。

9.ギラン・バレー症候群の治療

ギラン・バレー症候群が疑われ、筋力低下が進行している場合には、多くのケースで入院が必要です。治療は、免疫反応を抑える治療と、呼吸・循環管理などの支持療法に分けられます。

免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)

健康な人の血液から精製された免疫グロブリンを点滴し、神経を攻撃する自己抗体や免疫反応の働きを調整する治療です。一般的には総量2g/kgを投与し、0.4g/kg/日を5日間投与する方法などが用いられます。比較的施行しやすいため、日本では第一選択となることが多い治療です。一方、腎機能障害、血栓症、頭痛、無菌性髄膜炎、アレルギー反応などの副作用に注意が必要です。

血漿交換療法

血液から血漿を分離し、神経を攻撃する抗体や免疫関連物質を取り除く治療です。複数回に分けて施行します。免疫グロブリン療法と血漿交換療法には、全体としてほぼ同等の治療効果があると考えられています。年齢、体格、腎機能、循環状態、血管確保の可否、血栓症リスクなどを考慮して選択します。

IVIgと血漿交換は併用する?

免疫グロブリン療法と血漿交換療法を連続して行っても、単独治療を明らかに上回る効果は確認されていません。そのため、初回治療として両者をルーチンに併用することは一般的ではありません。治療後も悪化する場合や、一度改善した後に再び悪化する治療関連変動がみられる場合には、専門医が追加治療を個別に検討します。

ステロイド治療

ギラン・バレー症候群は免疫性の病気ですが、一般的なギラン・バレー症候群に対するステロイド単独療法の有効性は否定されています。免疫グロブリン療法や血漿交換療法にステロイドを追加する治療についても、明確な上乗せ効果は確認されておらず、通常は積極的に行いません。ただし、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象など、通常のギラン・バレー症候群とは異なる病態では、ステロイドが使用されることがあります。

呼吸管理

呼吸筋の筋力低下が進行した場合には、気管挿管や人工呼吸管理が必要になります。呼吸状態が急に悪化してから挿管するより、肺活量、嚥下障害、咳の強さ、症状の進行速度などをもとに、適切な時期を判断することが重要です。

自律神経障害への対応

ギラン・バレー症候群では、血圧が急激に上がったり下がったりする、不整脈が起こるなど、生命にかかわる自律神経障害を生じることがあります。重症例では心電図、血圧、脈拍を連続的に監視し、必要に応じて集中治療室で管理します。排尿障害、便秘、発汗異常、低ナトリウム血症にも注意します。

合併症を予防する治療

  • 誤嚥性肺炎の予防と栄養管理
  • 深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防
  • 床ずれの予防
  • 関節拘縮の予防
  • 神経障害性疼痛の治療
  • 排尿・排便管理
  • 不安や抑うつへの心理的支援

手足がほとんど動かせない重症例でも、意識や理解力は保たれていることが一般的です。会話が難しい場合には、視線や文字盤などを使ったコミュニケーション支援も大切です。

10.リハビリテーション

急性期から、呼吸状態や循環状態に注意しながら関節拘縮や廃用を予防します。回復期には、筋力や疲労度に合わせて理学療法、作業療法、嚥下訓練などを行います。

  • 関節可動域訓練
  • 寝返り、座位、立位の練習
  • 歩行訓練
  • 上肢や手指の動作訓練
  • 食事・更衣・入浴などの日常生活動作訓練
  • 嚥下・発声訓練
  • 職場や学校への復帰支援

ギラン・バレー症候群では、筋力が回復しても強い疲労感が残ることがあります。無理な筋力トレーニングや過度の運動は疲労を悪化させる可能性があるため、体調を確認しながら段階的に負荷を増やします。

11.回復までの期間と予後

多くの患者さんは、症状が安定した後、数週間から数か月かけて徐々に回復します。神経の損傷が強い場合には、回復に1年以上かかることもあります。現在の免疫療法が普及した状況では、発症6か月後に自力歩行が可能な患者さんは、おおむね8割前後と報告されています。アジアの研究では、6か月後の独歩可能率が約88%だったという報告もあります。一方で、治療を受けても一部の患者さんには重い運動障害が残り、数%の患者さんが自律神経障害、呼吸器合併症、感染症、血栓症などで亡くなることがあります。

予後に影響する要因

  • 発症時の年齢が高い
  • 症状の進行が速い
  • 入院時の筋力低下が強い
  • 呼吸筋障害や嚥下障害がある
  • 人工呼吸管理を必要とする
  • 下痢やカンピロバクター感染が先行している
  • 神経伝導検査で運動神経の反応が大きく低下している

ただし、発症時に重症で人工呼吸器が必要となった患者さんでも、長期間かけて大きく回復することがあります。急性期の状態だけで、最終的な回復の程度を断定することはできません。

12.ギラン・バレー症候群の後遺症

歩けるようになった後も、次のような症状が残ることがあります。

  • 手足の筋力低下
  • 手足のしびれや感覚異常
  • 神経痛、筋肉痛、関節痛
  • 強い疲労感
  • バランスの悪さ
  • 手先の細かい作業のしにくさ
  • 運動後に症状が悪化する感覚
  • 不安、抑うつ、睡眠障害

長期的な研究では、約4割の患者さんに筋力低下、痛み、疲労など何らかの症状が残るとされています。ただし、この数字には日常生活に大きな支障を来さない軽い症状も含まれます。疲労や痛みは外見から分かりにくいため、職場や学校、家族の理解も重要です。必要に応じて勤務時間の短縮、休憩時間の確保、通勤方法の変更などを検討します。

13.ギラン・バレー症候群は再発する?

ギラン・バレー症候群は通常、一度の発症で改善に向かう病気ですが、まれに再発することがあります。回復後に再び手足の脱力やしびれが進行した場合には、ギラン・バレー症候群の再発だけでなく、CIDPなど別の免疫性末梢神経疾患の可能性もあります。自己判断で様子を見ず、脳神経内科を受診してください。

14.よくある質問

ギラン・バレー症候群は人にうつりますか?

ギラン・バレー症候群そのものが人から人へうつることはありません。先行する風邪や胃腸炎などの感染症はうつる可能性がありますが、感染した人全員がギラン・バレー症候群を発症するわけではありません。

しびれだけでもギラン・バレー症候群ですか?

しびれだけで筋力低下がない場合は、ほかの原因のほうが多くなります。ただし、両手足のしびれが急速に広がる、歩きにくさや脱力を伴う、風邪や下痢の後に始まった場合には早めに受診してください。

治療をすれば完全に治りますか?

多くの患者さんは歩行や日常生活ができるまで回復しますが、回復の程度や期間には個人差があります。筋力低下、しびれ、痛み、疲労などが長期間残ることもあります。

子どもも発症しますか?

子どもにも発症します。小児では、筋力低下をうまく訴えられず、「歩きたがらない」「抱っこを求める」「足が痛い」「何度も転ぶ」といった症状で気づかれることがあります。

過去に発症したらワクチンは受けられませんか?

すべてのワクチンが一律に接種できなくなるわけではありません。以前の発症時期、原因として疑われた感染症やワクチン、現在の年齢、基礎疾患、感染症にかかった場合のリスクを踏まえて個別に判断します。

15.まとめ

ギラン・バレー症候群は、感染症などをきっかけに免疫が末梢神経を攻撃し、手足の筋力低下やしびれを引き起こす病気です。典型的には両足の脱力から始まり、数時間から数日で症状が進行します。重症になると、顔面麻痺、嚥下障害、呼吸筋麻痺、自律神経障害を来すことがあります。治療の中心は、免疫グロブリン大量静注療法または血漿交換療法です。ステロイド単独療法は一般的なギラン・バレー症候群には有効ではなく、IVIgと血漿交換のルーチン併用も推奨されません。風邪や下痢の後に、両手足のしびれや力の入りにくさが急速に進行する場合は、早めに医療機関を受診してください。息苦しさ、飲み込みにくさ、歩行不能などがある場合には、救急受診が必要です。


参考文献

  1. 日本神経学会「ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024」
  2. European Academy of Neurology/Peripheral Nerve Society Guideline on diagnosis and treatment of Guillain-Barré syndrome
  3. Leonhard SE, et al. Diagnosis and management of Guillain-Barré syndrome in ten steps. Nat Rev Neurol. 2019.
  4. National Institute of Neurological Disorders and Stroke:Guillain-Barré Syndrome
  5. CDC:Influenza Vaccine Safety―Guillain-Barré Syndrome
  6. Yuki N, Hartung HP. Guillain-Barré Syndrome. N Engl J Med. 2012.

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。実際の診断や治療は、症状、検査結果、年齢、基礎疾患などによって異なります。

この記事について

この記事は、公的機関・診療ガイドライン・医学論文などを参考に作成しています。

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断や治療を代替するものではありません。 気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

執筆者:小林 知貴
所属:いしうちファミリークリニック 院長
資格:医学博士/家庭医療専門医/総合診療専門医/総合内科専門医

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