1.熱中症とは?体に熱がこもって起こる危険な状態です
熱中症とは、暑い環境や湿度の高い環境で、体温調節がうまくできなくなり、体の中に熱がこもることで起こる体調不良の総称です。私たちの体は、汗をかいたり、皮膚から熱を逃がしたりすることで体温を一定に保っています。しかし、気温や湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、水分不足があると、体の熱をうまく外に逃がせなくなります。その結果、めまい、頭痛、吐き気、だるさ、筋肉のけいれん、意識障害などの症状が出ることがあります。
熱中症というと、炎天下でのスポーツや屋外作業をイメージする方が多いかもしれません。しかし実際には、熱中症は家の中でも起こります。特に高齢者、乳幼児、持病のある方は、室内や夜間でも注意が必要です。
なお、熱中症は早めに気づいて、涼しい場所へ移動し、水分・塩分を補給することで改善することがあります。一方で、意識がもうろうとする、呼びかけに反応が悪い、自力で水分が飲めない場合は命にかかわるため、すぐに救急要請が必要です。高体温と発熱の違いについては、こちらの記事も参考にしてください。

2.熱中症の症状|初期症状から危険なサインまで
熱中症の症状は、軽いものから命にかかわる重症例まで幅があります。日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024では、重症度をI度、II度、III度、IV度に分類しています。以前はI〜III度の3段階で説明されることが多くありましたが、2024年版では、より重症な状態を見逃さないためにIV度が新しく整理されています。
熱中症の重症度分類
| 重症度 | 主な症状 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| I度:軽症 | めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の汗、筋肉痛、こむら返り、手足のしびれ | 涼しい場所へ移動し、水分・塩分を補給。改善しなければ受診 |
| II度:中等症 | 頭痛、吐き気、嘔吐、強いだるさ、集中できない、判断力の低下 | 医療機関の受診を検討。自力で水分が飲めない場合は救急要請 |
| III度:重症 | 意識障害、けいれん、肝機能障害、腎機能障害、血液凝固異常など | 入院治療が必要。すぐに救急要請 |
| IV度:最重症 | 深部体温が高い、重い意識障害、全身状態の悪化、臓器障害が強い状態 | 救命処置が必要。迅速な冷却と集中治療が必要 |
軽症でも油断してはいけない症状
熱中症の初期には、次のような症状が出ることがあります。
- めまい
- 立ちくらみ
- 生あくび
- 筋肉のこむら返り
- 手足のしびれ
- 大量の発汗
- 気分不快
この段階で、涼しい場所へ移動して体を冷やし、水分と塩分を補給できれば、改善することがあります。
すぐに受診・救急要請が必要な危険なサイン
次のような症状がある場合は、重症の熱中症の可能性があります。
すぐに119番を考える症状
- 呼びかけへの反応が悪い
- 意識がもうろうとしている
- けいれんしている
- まっすぐ歩けない
- 自分で水分を飲めない
- 何度も吐いている
- 体が非常に熱い
- 涼しい場所で休んでも症状が改善しない
特に、意識がおかしい、自力で水分が飲めない、けいれんがある場合は、家庭で様子を見ず、救急車を呼んでください。
3.熱中症は家の中でも起こる?
結論からいうと、熱中症は家の中でも十分に起こります。消防庁の熱中症救急搬送データでも、熱中症の発生場所として住居は非常に多いことが報告されています。つまり、熱中症は「外で運動する人だけの病気」ではありません。
家の中で熱中症が起こる主な理由
- エアコンを使っていない
- 室温や湿度が高い
- 夜間も部屋に熱がこもる
- 水分摂取が少ない
- 高齢者が暑さやのどの渇きを感じにくい
- 入浴後や睡眠中に脱水が進む
- 風通しが悪い
特に高齢者では、暑さを感じにくく、のどの渇きにも気づきにくいことがあります。そのため、本人が「大丈夫」と言っていても、実際には脱水や熱中症が進んでいることがあります。
室内の熱中症で注意したい場面
- 寝室でエアコンを使わずに寝ている
- 台所で火を使って調理している
- 風呂上がりに水分をとっていない
- 閉め切った部屋で過ごしている
- 節電のためにエアコンを我慢している
- 一人暮らしの高齢者で室温管理が不十分
「家の中だから安全」とは限りません。暑い日は、室温や湿度を確認し、無理せずエアコンを使うことが大切です。
4.熱中症になりやすい人
熱中症は誰にでも起こりますが、特に注意が必要な方がいます。
高齢者
高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、体温調節機能も低下しやすいため、熱中症が重症化しやすい傾向があります。また、心臓病、腎臓病、糖尿病、高血圧などの持病がある方では、脱水によって体調が悪化することがあります。
乳幼児・子ども
子どもは体温調節機能が未熟で、身長が低いため地面からの照り返しの影響を受けやすい特徴があります。ベビーカーや車内では、短時間でも高温になることがあるため注意が必要です。
屋外で働く人・運動する人
建設現場、農作業、部活動、スポーツ大会などでは、暑さに加えて運動や作業による熱産生が加わるため、熱中症のリスクが高くなります。
持病がある人・薬を飲んでいる人
利尿薬、降圧薬、抗精神病薬、睡眠薬など、一部の薬は脱水や体温調節に影響することがあります。持病や内服薬がある方は、暑い時期の過ごし方について、かかりつけ医に相談しておくと安心です。
5.熱中症の診断|病院では何を確認する?
熱中症は、症状だけでなく、暑い環境にいたかどうか、脱水の程度、意識状態、体温、血液検査などを総合して診断します。
診断で確認するポイント
- 暑い環境にいたか
- 屋外作業や運動をしていたか
- 室内でエアコンを使用していたか
- 水分や食事がとれていたか
- 意識状態に異常がないか
- 体温が高くないか
- 脱水や電解質異常がないか
- 腎臓や肝臓に障害が出ていないか
病院で行うことがある検査
- 体温測定
- 血圧・脈拍・酸素飽和度の確認
- 血液検査
- 尿検査
- 心電図
- 必要に応じて画像検査
血液検査では、脱水、電解質異常、腎機能障害、肝機能障害、筋肉の障害を示すCK上昇などを確認します。また、発熱、感染症、脳卒中、低血糖、薬剤の影響など、熱中症に似た症状を起こす病気との区別も重要です。
6.熱中症の応急処置|まず何をすればよい?
熱中症が疑われる場合は、早めの対応が大切です。特に、意識があるか、自分で水分が飲めるかを確認してください。
家庭や現場でできる応急処置
- 涼しい場所へ移動する
エアコンの効いた室内、日陰、風通しのよい場所へ移動します。 - 衣服をゆるめる
ベルトや襟元をゆるめ、体にこもった熱を逃がします。 - 体を冷やす
首、わきの下、足の付け根などを冷やします。水をかけて風を当てる方法も有効です。 - 水分と塩分を補給する
意識がはっきりしていて、自分で飲める場合は、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と塩分を補給します。 - 改善しない場合は医療機関へ
休んでも症状が続く場合や、頭痛・吐き気・強いだるさがある場合は受診を検討してください。
水だけを大量に飲むのは注意
大量に汗をかいた後に水だけを大量に飲むと、体内の塩分バランスが崩れることがあります。汗をたくさんかいたときは、水分だけでなく塩分も一緒に補うことが大切です。
こんなときは迷わず119番
- 意識がない
- 呼びかけに反応が悪い
- けいれんしている
- 自力で水分が飲めない
- 歩けない
- 体が非常に熱い
- 症状がどんどん悪化している
救急車を待つ間も、可能であれば涼しい場所で体を冷やし続けてください。
7.熱中症の治療|医療機関では何をする?
熱中症の治療では、重症度に応じて、体を冷やす処置、水分・電解質の補正、臓器障害の管理を行います。
軽症の場合
軽症で意識がはっきりしており、水分が自分で飲める場合は、涼しい場所で休み、経口補水液などで水分・塩分を補給します。ただし、症状が改善しない場合や、吐き気で水分が飲めない場合は、医療機関での診察が必要です。
中等症の場合
頭痛、吐き気、嘔吐、強いだるさ、判断力の低下などがある場合は、点滴や検査が必要になることがあります。脱水や電解質異常、腎機能障害がないかを確認します。
重症の場合
意識障害、けいれん、高体温、臓器障害がある場合は、入院治療や集中治療が必要になります。重症の熱中症では、できるだけ早く体温を下げることが重要です。医療機関では、冷却処置、点滴、臓器障害の管理などを行います。
8.熱中症予防|家庭でできる対策
熱中症は、予防がとても大切です。特に暑い日や湿度が高い日は、早めに対策を行いましょう。
基本の熱中症対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 暑さを避ける | 日中の外出を控え、涼しい時間帯に行動する |
| エアコンを使う | 室内でも我慢せず、適切に冷房を使う |
| 水分補給 | のどが渇く前に、こまめに飲む |
| 塩分補給 | 大量に汗をかいたときは塩分も補う |
| 服装の工夫 | 通気性・吸湿性のよい服、帽子、日傘を使う |
| 室温・湿度の確認 | 温度計・湿度計を見て、体感だけに頼らない |
| 休憩をとる | 運動や作業中は無理せず休む |
室内での予防ポイント
- エアコンや扇風機を上手に使う
- 温度計・湿度計を設置する
- 夜間も暑い日は冷房を使う
- 入浴前後や起床時に水分をとる
- 高齢者には家族が声かけをする
- 無理な節電をしない
特に高齢者は、暑さを感じにくいことがあります。「暑くない」と感じていても、室温が高ければ熱中症になることがあります。室温や湿度を数字で確認することが大切です。
熱中症警戒アラートを確認しましょう
暑い時期は、環境省と気象庁が発表する熱中症警戒アラートや暑さ指数(WBGT)を確認しましょう。熱中症警戒アラートが出ている日は、熱中症の危険性が非常に高い日です。不要不急の外出を控え、運動や屋外作業は中止・延期も含めて検討してください。
暑熱順化も熱中症予防に大切です
暑熱順化とは、体が暑さに少しずつ慣れていくことです。急に暑くなった日や、梅雨明け直後は、まだ体が暑さに慣れていないため、熱中症が起こりやすくなります。無理のない範囲で、軽い運動や入浴などで汗をかく機会を作ると、暑さに慣れやすくなります。ただし、体調が悪い日や気温が高い日は無理をしないでください。

9.熱中症で病院を受診する目安
熱中症は、軽症であれば休息と水分・塩分補給で改善することもあります。しかし、次のような場合は医療機関の受診をおすすめします。
受診を考える症状
- 頭痛が続く
- 吐き気や嘔吐がある
- 強いだるさがある
- 水分が十分にとれない
- 涼しい場所で休んでも改善しない
- 高齢者、子ども、持病のある方で症状がある
救急要請が必要な症状
- 意識がぼんやりしている
- 呼びかけに反応しにくい
- けいれんしている
- 自分で水分を飲めない
- 歩けない
- 体が非常に熱い
「少し休めば大丈夫」と思っていても、熱中症は急速に悪化することがあります。特に高齢者や子どもでは、早めの受診が大切です。
10.まとめ|熱中症は屋外だけでなく家の中でも起こります
熱中症は、暑さや湿度によって体温調節がうまくできなくなり、体に熱がこもることで起こる病気です。屋外での運動や作業中だけでなく、家の中、夜間、睡眠中にも起こることがあります。特に高齢者、子ども、持病のある方は注意が必要です。熱中症を防ぐためには、エアコンの使用、水分・塩分補給、室温・湿度の確認、無理な外出や運動を避けることが大切です。また、意識障害、けいれん、自力で水分が飲めない、歩けないなどの症状がある場合は、迷わず119番に連絡してください。
参考文献
- 日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2024. https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
- 日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2024 公表のお知らせ. https://www.jaam.jp/info/2024/info-20240624.html
- 環境省. 熱中症予防情報サイト. https://www.wbgt.env.go.jp/
- 環境省. 熱中症警戒アラート. https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php
- 総務省消防庁. 熱中症情報. https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
- 厚生労働省. 熱中症を防ぎましょう 普及啓発用資材. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pamph.html

