【注意喚起】パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)とは?〜家庭でも起こる突然のアレルギー反応〜

おとなの病気

1.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)とは?

パンケーキ症候群という言葉を聞いたことはありますか?これは、「経口ダニアナフィラキシー」という医学的な名前を持つ、食事をきっかけに起こる重篤なアレルギー反応のことを指します。

特に、小麦粉を使ったパンケーキやお好み焼きなどを食べたあとに、蕁麻疹(じんましん)や息苦しさ、血圧低下などのアナフィラキシー症状を起こすことで知られています。実は、原因は食材そのものではなく、「ダニの混入」。特に開封後の粉物を常温保存していた場合に起こりやすいのです。

「パンケーキ症候群」は一般的な食物アレルギーとは異なり、意外な形で家庭内でも命に関わる健康被害をもたらします。この記事では、そのメカニズムから予防法までをわかりやすく解説します。


2.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)の症状

経口ダニアナフィラキシーでは、以下のような急性のアレルギー症状が現れます。

主な症状

  • 皮膚症状:じんましん、かゆみ、紅斑、顔や唇の腫れ(血管性浮腫)
  • 呼吸器症状:息苦しさ、喘鳴(ぜんめい)、喉の違和感、咳
  • 消化器症状:吐き気、腹痛、下痢
  • 循環器症状:めまい、意識消失、血圧低下(ショック)

症状の特徴

  • 食後数分〜30分以内に発症することが多い
  • 初回は軽症でも、再度の摂取で重症化するケースも
  • 特に若年成人や思春期以降で発症報告が多い

3.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)の原因・機序

パンケーキ症候群の最大の特徴は、原因が食品自体ではなく「混入したダニ」にあることです。

原因となるダニの種類

  • コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)
  • ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)
  • ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)など

なぜダニが小麦粉に?

  • 開封後に高温多湿なキッチンに常温保存していると、ダニが侵入・繁殖しやすくなります。
  • 特に夏場や湿度の高い時期は危険性が上昇。

アナフィラキシーを引き起こすメカニズム

  1. ダニに対してアレルギー感作された人が、
  2. ダニが混入した粉物(例:パンケーキ、お好み焼き)を加熱調理して摂取し、
  3. 胃腸から吸収されたアレルゲンが全身で反応し、アナフィラキシーを誘発

加熱してもダニ由来アレルゲンは変性しにくく、アレルギー反応を引き起こします


4.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)の検査と診断

医師による問診と診察

  • 発症時の状況、食べた物の内容、保存状況の確認が重要
  • 特に「自宅調理で症状が出た」場合は要注意

検査方法

  • 血液検査:特異的IgE抗体(ダニに対する感作の有無)
  • 皮膚プリックテスト:ダニアレルゲンへの反応確認
  • 経口負荷試験:リスクがあるため慎重に実施

家庭での再現実験

  • 実際に使用していた小麦粉からダニの混入を顕微鏡で確認するケースもあります


5.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)の治療

急性期対応

アナフィラキシー症状が現れた場合は、一刻も早く治療が必要です。

治療内容

  • アドレナリン筋注(エピペン):第一選択。即時対応が命を救います。
  • 抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、β2刺激薬(気管支拡張薬):補助的に使用されます
  • 酸素投与、点滴などの全身管理が必要なことも

入院が必要になるケースも

特に呼吸器症状や血圧低下を伴う場合は、ICUなどでの厳重管理が求められます。


6.パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)にならないために

自宅でできる簡単な予防法

予防法 詳細
粉物は冷蔵保存 開封後は必ず密閉容器に入れて冷蔵庫へ。ダニの繁殖を防ぎます。
賞味期限・保存方法を確認 開封後はなるべく早く使い切る。1ヶ月以内が目安。
食品庫・キッチンの清掃 ダニの住処にならないよう、湿気対策と清掃を心がけましょう。
加熱調理ではなく保存管理が重要 加熱ではダニアレルゲンは不活化されにくいため、調理前の管理がカギです。

高リスクな人は医師に相談を

  • 既にダニアレルギーがある方
  • アトピー性皮膚炎や喘息がある方は、アナフィラキシー発症リスクが高いとされています。

参考文献

  1. Sasaki K, et al. “Oral mite anaphylaxis: Pancake syndrome.” J Allergy Clin Immunol. 2003;112(1):120-122.
  2. 日本アレルギー学会「アナフィラキシー診療ガイドライン」改訂第2版
  3. 安藤潤, 他. 「経口ダニアナフィラキシーの実態調査」 アレルギー 2010;59(4):428-435.
  4. 野村孝一. 「食品に混入したダニによるアレルギー」日本衛生学雑誌 2014;69(3):239-244.
  5. 厚生労働省「食中毒・アレルギーに関する注意喚起」
タイトルとURLをコピーしました