【医師監修】ED(勃起不全)とは?原因・治療薬・副作用までわかりやすく解説

おとなの病気

1.ED(勃起不全)とは?

ED(Erectile Dysfunction)=勃起不全とは、性行為に十分な勃起が得られない、もしくは維持できない状態を指します。日本語では「勃起障害」や「インポテンツ」とも呼ばれてきましたが、近年は「ED」という言葉が一般的に使われています。

一時的な勃起不全は誰にでも起こりうるものですが、慢性的に繰り返す場合は治療の対象となります。厚生労働省の報告によると、40代男性の約4人に1人、60代では約2人に1人がEDに悩んでいるとされています。

EDの主な原因

  • 加齢(血管や神経の機能低下)
  • 生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)
  • 喫煙・飲酒・ストレス
  • 精神的要因(うつ、不安、パートナーとの関係性)
  • 手術や外傷(前立腺がん治療後など)

2.ED(勃起不全)の症状

EDの症状は、単に「勃起しない」だけでなく、以下のような幅広い症状が含まれます。

よくある症状

症状 説明
勃起が起こらない 性的刺激に反応できない
勃起が維持できない 性交中に中折れしてしまう
勃起が弱い ペニスが完全に硬くならない
朝立ちが減少した 生理的勃起の減少もEDの一因

これらの症状は、日常生活の質(QOL)を著しく低下させることがあり、早期の相談・治療が重要です。

3.ED(勃起不全)の診断

EDの診断は、主に問診と簡易検査によって行われます。泌尿器科や男性更年期を扱うクリニックで相談可能です。

主な診断方法

  1. 問診(発症時期・症状の程度・生活背景など)
  2. IIEF-5スコア(国際勃起機能スコア):5問で重症度を数値化
  3. 血液検査(糖尿病、ホルモン異常などを評価)
  4. 超音波検査(血流の確認)
  5. 夜間勃起測定(NPT):就寝中の自然な勃起を確認(精神因性か器質因性かを判別)

EDと鑑別が必要な疾患

  • テストステロン低下症(LOH症候群)
  • 前立腺疾患
  • 神経障害(脊髄損傷、糖尿病性神経障害など)

4.ED(勃起不全)の治療

EDの治療には、大きく分けて以下の4つのアプローチがあります。

1. 生活習慣の改善

  • 禁煙、節酒、運動習慣の導入
  • ストレスマネジメント
  • 睡眠の改善

2. 薬物療法(PDE5阻害薬)

  • 日本で承認されているED治療薬(内服薬)は以下の通りです(次章で詳述)。

3. 心理的アプローチ

  • カウンセリングや精神科治療(うつ病やパートナー関係の改善)

4. 他の治療法

  • 陰圧式勃起補助具(バキュームデバイス)
  • 陰茎海綿体注射療法(ICI療法)
  • 陰茎プロステーシス(手術による人工勃起装置)

5.治療薬の種類と比較

ED治療薬の中心はPDE5阻害薬で、血管を拡張し、勃起をサポートする効果があります。代表的な3剤の比較を以下に示します。

薬剤名(商品名) 服用タイミング 効果持続時間 特徴
シルデナフィル(バイアグラ) 性行為の1時間前 約4〜6時間 世界初のED薬。即効性あり
タダラフィル(シアリス) 性行為の1〜3時間前 約36時間 食事の影響少なく自然な勃起に近い
バルデナフィル(レビトラ) 性行為の1時間前 約8〜10時間 比較的即効性が高く安定した効果

※すべて保険適用外の自費診療です(2025年時点)

選び方のポイント

  • 即効性を求める → バイアグラやレビトラ
  • 食事の影響を避けたい → シアリス
  • 週末を通して自然に過ごしたい → シアリスの36時間持続効果

6.治療薬の副反応

PDE5阻害薬は基本的に安全性が高いですが、副作用が出る場合もあります。

主な副作用

副作用 発現頻度
頭痛 約10~20%
ほてり 約10~15%
鼻づまり 約5~10%
胃のむかつき・消化不良 5%前後
視覚異常(青みがかるなど) シルデナフィルで稀に報告

服用できない人

  • 硝酸薬(ニトログリセリン)を使用している人(重篤な低血圧を起こす)
  • 重度の肝障害や腎不全
  • 脳卒中・心筋梗塞の既往が最近ある人

安全な服用のために

自己判断での服用や、インターネットでの個人輸入は危険(偽薬・健康被害のリスク)です。必ず医師の診察を受けましょう。

7.まとめ:EDは治療可能な疾患です

EDは恥ずかしいことではなく、適切に治療できる病気です。生活習慣の見直しや内服治療によって、多くの人が性生活の質を取り戻しています。

また、EDは動脈硬化などの全身の血管疾患の兆候であることもあるため、早期に医師に相談することが重要です。


参考文献

  1. 厚生労働省. 「平成28年 国民生活基礎調査」
  2. 日本泌尿器科学会. 「ED診療ガイドライン2022」
  3. Viagra. Pfizer社製品情報
  4. Cialis. Eli Lilly社製品情報
  5. Vardenafil(レビトラ)製品情報. Bayer Pharma AG
  6. Rosen R, et al. “The International Index of Erectile Function (IIEF): a multidimensional scale for assessment of erectile dysfunction.” Urology. 1997;49(6):822–830.
タイトルとURLをコピーしました