不明熱とは?原因や診断、受診のタイミングまで徹底解説【医師監修】

おとなの病気

1.不明熱とは?

「熱が続いているけど、原因がわからない」——そんな経験をされた方はいませんか?
このような状態を医学的には「不明熱(ふめいねつ)」または「原因不明の発熱(Fever of Unknown Origin:FUO)」と呼びます。

風邪やインフルエンザなど、一般的な発熱の多くは数日で改善するものですが、不明熱は何週間も続き、原因がすぐに特定できないのが特徴です。慢性的な体調不良の背景に重大な疾患が隠れていることもあるため、正確な診断と適切な対応が求められます。


2.不明熱の定義

不明熱は、1961年にPetersdorfとBeesonによって提唱された古典的な定義に基づいています(Petersdorf & Beeson, 1961):

  • 38.3℃以上の発熱が3週間以上続いている
  • 1週間以上にわたる入院で診断がつかない

現在では以下のように分類されることもあります(Durack & Street, 1991):

不明熱の分類 特徴
古典的FUO 健常成人に起こる原因不明の発熱
院内発症FUO 入院後に新たに発熱が始まり、診断がつかない場合
免疫不全関連FUO 好中球減少や免疫抑制状態における不明熱
HIV関連FUO HIV陽性者での原因不明の発熱

このように不明熱には複数のパターンがあり、それぞれに応じた対応が求められます。


3.不明熱の原因となる頻度の高い疾患

不明熱の原因となる疾患は多岐にわたりますが、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます(Bleeker-Rovers et al., 2007)。

① 感染症(約30〜40%)

  • 結核(特に肺外結核)
  • 感染性心内膜炎
  • 腹部膿瘍
  • HIVやCMVなどのウイルス感染
  • リケッチア、ブルセラなどの希少感染症

② 膠原病・自己免疫疾患(約20〜30%)

  • 成人発症Still病
  • 関節リウマチ
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • 血管炎(巨細胞性動脈炎など)

③ 悪性腫瘍(約10〜20%)

  • 悪性リンパ腫
  • 白血病
  • 原発不明癌(特に肝臓・腎臓など)

④ その他・診断不能(20〜30%)

  • 薬剤熱
  • サルコイドーシス
  • 血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓など)
  • 精神的要因(身体表現性障害)

4.不明熱の検査と診断

不明熱の診断は「総合的かつ段階的なアプローチ」が求められます。初期の診察では以下のポイントが重要です。

🔍 基本的な問診と身体診察

  • 発熱のパターン(毎日・波があるか)
  • 海外渡航歴、ペットとの接触、既往歴
  • 関節痛・皮疹・リンパ節腫脹などの随伴症状

🧪 初期検査

検査項目 内容
血液検査 CRP、白血球、肝・腎機能、フェリチン、血清ACEなど
尿検査 尿中白血球・蛋白・潜血の有無
画像検査 胸部X線、腹部エコー、CTなど
血液培養 感染症を疑う際に重要

🧬 進行検査

  • PET-CT:全身の炎症・腫瘍部位を特定
  • 骨髄検査:血液疾患の診断
  • 自己抗体検査:膠原病の鑑別に有用
  • 生検(リンパ節・肝・皮膚など):病理組織から診断を得る

🔍 診断までに時間がかかることも…

不明熱の30%以上は数週間以上かかっても明確な原因が特定できない場合があります。そのため、患者さん本人の体調管理と医療者との連携が非常に大切です。

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5.こんな時は受診を

以下のような症状がある場合、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 38℃以上の熱が1週間以上続いている
  • 熱が下がっても繰り返す
  • 著しい体重減少、夜間の発汗、疲労感が強い
  • 皮疹、リンパ節の腫れ、関節痛などの他の症状がある

特に高齢者や免疫力が低下している方は、重症化するリスクもあるため注意が必要です。


6.不明熱はどこ(何科)を受診したらいい?

🔷 まずは「内科」や「総合診療科」へ

不明熱は様々な疾患が関与するため、臓器別の専門医(循環器内科、呼吸器内科など)よりも総合的な視点をもった「総合内科」「総合診療科」「感染症内科」などの受診が推奨されます。

地域のクリニックで原因が特定できない場合には、大学病院や感染症専門医への紹介も選択肢です。


参考文献

  1. Petersdorf, R. G., & Beeson, P. B. (1961). Fever of unexplained origin: report on 100 cases. Medicine, 40(1), 1-30.
  2. Durack, D. T., & Street, A. C. (1991). Fever of unknown origin–reexamined and redefined. Current Clinical Topics in Infectious Diseases, 11, 35–51.
  3. Bleeker-Rovers, C. P., Vos, F. J., de Kleijn, E. M. H. A., et al. (2007). A prospective multicenter study on fever of unknown origin: the yield of a structured diagnostic protocol. Medicine, 86(1), 26–38.
  4. 日本内科学会. 不明熱の診療ガイドライン(2021年版)
  5. 日本感染症学会. 感染症専門医テキスト第3版(南江堂)
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